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やっぱり勝てない?太平洋戦争制作委員会『やっぱり勝てない?太平洋戦争』シミュレーションジャーナル(2005/05/01)

 

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■著者:やっぱり勝てない?太平洋戦争制作委員会
■タイトル:やっぱり勝てない?太平洋戦争
■発行:シミュレーションジャーナル ■発売:並木書房
ISBN:4-89063-186-0
■発行年月日:2005/5/01
■価格:1,800円

 太平洋戦争については、意外なほどに数字での分析が行われていないと思う。あるいは逆に兵器のカタログスペックにこだわり、運用面を無視した議論が多い。そして、感情的に、「もう少しで勝てた。」「こうすれば勝てた」という書が多い。  本書は、冷静に数字で太平洋戦争の虚構を分析した本だ。
「運命の5分間はなかった」では、利根4号機が30分前に出発していたら、その時には敵空母が別な所にいたので敵空母を発見できなかったという当たり前のことだが、議論の盲点になっていることをきちんと説明している。
「ソロモン機動部隊の戦い」では、日米空母戦を5個の要素(航空索敵能力、目標到達能力、防空能力、攻撃能力、ダメージコントロール能力)に分けて、数字で比較している。驚くほどに互角だということがわかる。日本海軍が有利と言われてきた緒戦でさえ、互角だったことが明瞭にわかる。
「仮想戦闘 日米戦艦の戦い」や「無敵戦艦大和という虚像」では、漸減作戦やアウトレンジ戦術が無理な作戦だったかがよくわかる。25km以遠での砲撃戦では、測距儀で相手との距離を求め、命中弾を与えることが難しいと、戦前にわかっていたことが驚きだ。空中観測無しには当たらないのだ。そして「砲撃の時には25km以内に接近すべし」と当時のマニュアルに書いてあったそうだ。
「崩壊する帝国の戦争経済」では当時の日本の船舶量630万t。民需に最低300万t。1個師団の輸送に13万t必要。1tの物資を運ぶのに1ヶ月かかる場合を1とする稼行率という数字で、日本の海上輸送が太平洋戦争を闘うのには不足していたことがよくわかる。
 それにしても本当に昔の日本人はこんな無謀な戦いをよく4年近くも闘ったものだと感心する。 小学生でも計算できる計算なのに、当時の日本人はもう冷静さを失っていたのだろう。優秀な頭脳を持った当時のエリート官僚が、こんなばかげた戦争を始めたわけだが、誰でもそうなる可能性があると思う。二度とあのようなばかげた判断をしないよう、戦史に学びたいものだ。
太平洋戦争史に興味のある人に、★★★★★


■本書のマインドマップ
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