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アリスX

アリスⅩ  アリスが再結成して出したアルバム。学生時代の青春の美しさと、それが終わって社会人としての現実生活をテーマにしたアルバムだ。社会人が目前に迫った大学三年生の時のアルバムだけに自分の人生と重なり合って思い出深いアルバムだ。 1.さよならD.J.  ラジオの深夜放送D.J.に憧れていた学生時代が終わり、就職しサラリーマンになり、昔の夢を忘れ、日々の忙しさに流される人生。これでいいのだろうか?仕事を持った人は誰でも思う疑問だろう。この曲を初めて聴いた時、私は大学3年生。来年は就職活動。そしてこの曲の主人公のように、流される人生を送るのだろう、と自分の将来を歌った曲だと思うと感慨深い作品だ。  就職し何年も経ち、自分の人生の局面ごとにこの曲を聴きながら、自分自身に問いかけるきっかけになる曲だ。 2.BURAI  家賃1万6千円。風呂なし。私の学生時代の下宿だ。本屋のバイトの後の風呂屋の有線放送でこの曲を聴いた時の興奮は未だに忘れられない。曲名はわからないが明らかに谷村新司堀内孝雄のダブルボーカル。アリス復活!!  翌日すぐレコードショップに駆け込んだ。解散したバンドの復活をビジネスにしたのは活動停止したアリスが最初だろう。  大学3年生だった私はいやでも来年の卒業と友人達との別れを意識しないわけにはいかなかった。ちょうどこの曲の主人公と重なり合ったのだ。そんなわけでアリスの好きな曲の中でも五指に入る曲だ。 3.アガサ  この曲のタイトルは矢沢透の店の名前と同じなのが気になる。砂と灼熱の大地、パリーダカールラリーの舞台と白い麻のスーツを着たアガサが対比され、映画のような光景が浮かぶ。   4.平凡  「幸せとは平凡なことですか」と問いかける歌詞が印象的だ。まさか後にシングルカットされるとは思わなかった。この曲を聴くと平凡な人生を歩いた自分の母親を思い出してしまう。母親世代は、平凡こそ幸せと信じ込まされて生きてきた世代である。また世界にはいまだにそう信じ込まされている地域がある。そんなことを考えさせられる歌詞だ。 5.テーブルという名の海  浮気者の男に振り回されてきた女が男と別れて自立を決心した時を描いた曲。『平凡』の続編のような曲だ。男女の心理的な距離を、小さなテーブルという空間が巨大な海のように広がる巧みな喩えが光る。 6.4月の魚  恋人達を魚に喩え、「4月になれば愛をつかめる」と4月を待ち焦がれる男の気持ちを素直に歌った曲だ。結婚式があるのか、彼女が卒業するのか、単身赴任している赴任地に彼女が来るのか...。4月に何があるのかいろいろなイメージが膨らむ。 7.穏やかな月  激しく燃え上がった恋は永遠に続くことはない。そんなに激しく燃えたら人は死んでしまうからだ。やがて穏やかな愛に変わる。激しい恋が太陽なら、穏やかな愛は月である。  初めて聴いた時はピンと来なかったが、今なら強く共感できる。 8.心の場所  女に振られた男が彼女の育った街に来て、3日かけて彼女を忘れようとする歌。アリス得意の失恋&旅&再起を歌った歌。 9.19の時  19歳の時、夢と愛だけで一緒にいられた男女。女は"生活"のためには"金"が必要であることに気づく。そして19歳の男が、夢だけで経済力の無い男である現実に気づいたとき、男は捨てられる。1000万人が住む東京で同じようなドラマが一体、何個繰り広げられているだろう。 10.セントエルモスの火  映画『セント・エルモス・ファイヤー』にインスパイアされた曲だ。同じような夢を持ち、共に生活する大学生仲間。しかし、時の流れはそれぞれの境遇を変え、生きる道が変わっていく。幻の炎であるセント・エルモス・ファイヤーのように学生生活が過ぎて行き、否応なく現実に飲み込まれ、バラバラになってゆく。  大学三年生だった私の一年後を予言している曲だった。それだけに心に染み込んだ思い出の曲だ。