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『内側から見たノアの崩壊』宝島社 (2012/03/15)

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■出版社: 宝島社 (2012/03/15)

■ISBN-10: 4796697829

■ISBN-13: 978-4796697828

■発売日: 2012/3/15

 

■評価=★★★★☆

 プロレスリングノアに所属していた前座レスラー泉田純へのインタビューをもとに、彼がどのように詐欺師にだまされたか、をまとめている。

 徳島の老人から集めた金で、ノアのレスラー達に「金持ちの大口スポンサー」と思わせる。そして、信用を得てからは、「国税庁の査察が入ったため一時的に金を動かせないから、少し貸してくれ」と言って金をだましとり、返済を迫られたらわずかな金を振り込むという、詐欺師の典型的な手口が具体的に描かれている。力道山以来の相撲界のごっちゃん体質が、未だにプロレス界から抜けていないのがよくわかる。

 だまされた泉田にも問題があるが、驚いたのは泉田の信用力だ。彼はジャイアント馬場や曙のような圧倒的な体格ではない。藤原喜明や木戸修のような関節技がすごいわけでもない。ジャンボ鶴田や藤波辰巳のような美しいスープレックスができるわけでもない。ミル・マスカラスや初代タイガーマスクのような華麗な空中殺法ができるわけでもない。フレッド・ブラッシーやタイガー・ジェット・シンのようにファンに恐怖をまきちらす大悪役でもない。アントニオ猪木や天龍源一郎のような魂のこもったファイトをするわけでもない。要するに、泉田純というレスラーは、頑丈で地味で寡黙な一前座レスラーにすぎない。そんな泉田が、詐欺師にだまされたとはいえ、知人や親戚から9000万円を借り集める信用力を持っていたのが驚きだ。自分なら1000万円も集められないだろう。

 本書の中で、本人はその信用に応えるために、がんばって借金を返していこう、と宣言している。ぜひ、がんばって生き抜いていってほしい。と書いたすぐ後で気になるのは泉田は宝島社からいくらもらえたのだろうか?人のいい泉田のことだから、とても悪い条件で本書のインタビューを引き受けたのではないか気になってしまう・・・。