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猪瀬直樹『昭和16年夏の敗戦』中央公論新社 (2010/06/25)

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■猪瀬直樹

■昭和16年夏の敗戦

■出版社: 中央公論新社 (2010/06/25)

■ISBN-10: 4122053307

■ISBN-13: 978-4122053304

■発売日: 2010/06

 

 日中戦争をしながら米英蘭と総力戦ができるかどうかを、昭和16年夏に総力戦研究所という内閣直属の機関がシミュレーションしていたというのは、本書を読んで初めて知った。

 その分析の結果は、原爆以外はほぼ史実通りに、日本の惨敗だった。日本の政策決定者は、その結果を見て、他の手段を考えず、真珠湾攻撃に突き進み国を亡ぼしたのだ。「当時の優秀な頭脳を持った官僚の方々よ。事前にそこまでわかっていたのだから、何か他の方法を考えろよ。」と思わず言いたくなってしまった。

 これは日本の組織がある一つの方向に進むと、なかなか方向転換できない典型例だ。担当範囲が縦割りで、総意という形をとるため意思決定者が曖昧で時間がかかり、信賞必罰が徹底していない。途中までは科学的、定量的に物事を考えるが、ある所からは思考停止してしまう。

 これらは、日本の組織最大の欠点であり、現代に続いていることだとあらためて思う。

 日中戦争時の陸海軍官僚は、成績優秀で、お勉強のできる人達だった。しかし、陸海軍官僚が日本を亡ぼしたのだ。成績優秀な現代日本の官僚が将来日本を亡ぼしてしまう可能性は・・・?