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尾脇秀和 『氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書) 新書』

 

名前という身近なものの歴史がよくわかり面白い!

もとが学術論文だが、とても面白いので[E:#x2605][E:#x2605][E:#x2605][E:#x2605][E:#x2605]

 

戦国時代は、木下藤吉郎=>羽柴秀吉=>豊臣秀吉と名前が変わっていったのが当たり前。

また、織田信長は、愛知県の人なのになぜか「上総介」を名乗っていた。

江戸時代も、その流れは変わらなかった。

という風に日本人の名前はともかくややこしかった。

今は、氏名になっており、親が決めた名を原則として変更できないし、苗字も結婚で変わることがあっても、羽柴秀吉のように新たに作ることはできない。この変化がいつどこでどんな理由で起こったのか?という問いに対して答えてくれる本だ。

 

現在のように、氏名に統一されたのは、何と明治維新後のわずか5年くらいの間だったのに驚いた。実態を伴わないのに古代の官職名(上総介や越前守など)を名乗ることを禁止したり、古代の公家風に名前システムを変更して同姓同名が増えて混乱を招いたりしながら、現在の形に落ち着いたようだ。夫婦別姓の議論を何年間やっているのかわからないが、明治時代のスピードには驚いた。

 

江戸時代の名前システムは下記のようになっており、②に古代の役職名が使われているのがほとんどだった。〇〇衛門も古代役職名由来とは言われてみるとそうだよなぁ~と感心した。

①家の名前(苗字) ②事実上の個人名(あざな) ③古代擬制上の一族名 ④③に属する爵位的要素(姓・尸(し)) ⑤古代擬制上の個人名 ⑥私称(号・屋号など)

 

 

日本の名前システムの歴史も面白い。名前のパーツの呼び方や意味が、武士・庶民のと公家で異なる、という話が面白かった。

 

江戸時代も庶民は苗字を持っていたが、それはわざわざ外部に言うものではなく、身内が知っていればよかったものだったそうだ。

武士は苗字を外部に言える、という特権を持っていたのだということだ。

江戸時代の名前が社会システムの中の職業や社会的身分を表すものであり、現在のように個人を表すものではなかった、というのも発見だった。落語や相撲や歌舞伎の世界では今でも「襲名」がある。名を継ぐことで、どのくらいの「格」の人なのかがわかるのは、そういうことだったのか、と納得。

明治時代になって、徴税や徴兵のために、氏名を国家が管理する必要になり、氏名に一本化し変更も原則禁止になったそうだ。

 

夫婦別姓の話題がやかましいが、本書ではわずかなページしか書いていない。

だが本書を読んでみて、「名前の名乗り方、呼び方なんか、長い時を経て変わっていくんだし、これからは国家が管理するのはマイナンバーなんだから、名前なんかどっちでもいいじゃん」と思ってしまった。

 

■著者 : 尾脇秀和
■氏名の誕生 ――江戸時代の名前はなぜ消えたのか (ちくま新書) 新書
■出版社 : 筑摩書房 (2021/4/8)
■言語 : 日本語
■新書 : 312ページ
■ISBN-10 : 4480073760
■ISBN-13 : 978-4480073761