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日経サイエンス 2021/11号

 

 特集は『mRNAワクチン』

 mRNAワクチンの仕組み、研究の歴史がわかりやすい。

新型コロナのパンデミックに対してずいぶん早くワクチンができて不思議に思っていたが、その仕組みと研究史を読んで納得した。

 

 mRNAワクチンは、ウイルスのスパイク部分の設計図を脂質のカプセルで包んだものだ。ウイルスのスパイク部分の設計図だからウイルスの病原性はない。また採取された新型コロナウイルスから読み取ったものだ。

 ワクチンを注射すると、樹状細胞その他の細胞に取り込まれ、スパイクを生成し放出する。そのスパイクは自分自身が作ったのに異物として認識され、樹状細胞からその他の免疫細胞に伝えられる。実際にウイルスが侵入したときに備えるのだ。

 自分でスパイク作って自分で異物と認識して免疫つくる、というところが驚きだ。

 

 新型コロナウイルスパンデミック後すぐにワクチンできたのには驚いたが、そのために30年に渡る研究史があったのも驚いた。始まりは1990年。J.A.ウォルフがmRNAを注射しタンパク質を合成させることに成功したことだ。ただmRNAは壊れやすい分子なので1993年、F.マーチノがmRNAを脂質で包むことで体内に運び込むことにした。しかしそれでは身体は危険な侵入者とみなし過剰な免疫反応(炎症)を引き起こした。

 2005年K.カリコとD.ワイスマンが、自身のRNAには外来RNAにはない「目印」があることを発見。2010年P.カリスが薬物送達技術(DDS)を改善した。カチオニック脂質という、周囲が酸性だと正の電荷を持つ膜で覆うことで、小胞がワクチンを取り囲むと酸性になり小胞の膜とカチオニック脂質の膜が融合しmRNAが放出される仕組みを作った。

 これらの組み合わせで、あの短期間で新型コロナウイルスのワクチンができたことがよくわかった。

 

 また、村山斉氏へのインタビュー『宇宙の暗黒に迫る』という記事も面白かった。宇宙のうち人類は5%しかわかっていない。30%弱が暗黒物質、70%弱が暗黒エネルギーで、それらを調べるための装置や南部陽一郎氏の業績がよくわかった。