アジア太平洋戦争、当時の言い方だと大東亜戦争、アメリカの呼び名では太平洋戦争末期から戦後にかけてのアメリカによる検閲についてまとめた本。アメリカのメリーランド大学付属マッケルディン図書館とスートランドの合衆国国立公文書館分室に通って、一次資料を渉猟し、アメリカが日本に対して実施した検閲について研究した本だ。
小さな組織で始まり、検閲方針さえない状態で始まった組織が、徐々に大きくなり、人員を増やしや検閲基準を自転車操業で定め、占領後の日本でどのように検閲をしたかがよくわかる。
そしてアメリカによる検閲に対して、たくましく対応していく日本の出版人達の姿が生き生きと描かれている。
本書で一番驚いたのが、p.223だ。少し抜粋すると、「戦前戦中の日本の国家権力による検閲は、接触を禁止するための検閲であった。天皇、国体、あるいは危険思想等々は、それとの接触が共同体に「危険」と「汚染」をもたらすタブーとして、厳重に隔離されなければならなかった。被検閲者と国民は、いわば国家権力によって眼かくしされたのである。」(引用者注:下線部分は本書中では傍点)
普通、検閲とはそういうものだろう。しかし、「これに対して、CCD(引用者注:アメリカの検閲機関)の検閲は、接触を不可避にするための検閲であった。」(引用者注:下線部分は本書中では傍点)
どういうことだろうか?
「要するに占領軍当局の究極の目的は、いわば日本人にわれとわが眼を刳り貫かせ、肉眼のかわりにアメリカ製の義眼を嵌めこむことにあった。」
すごい表現だが、なるほど~、とうなずいてしまった。
一次資料を丹念に調査した結果、出されたこの文には、とても説得力があった。
日本の戦後史に興味ある人は必読の書である。