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永井豪『デビルマン』講談社漫画文庫版(1997/4/11)小学館画業50周年愛蔵版(2017/12/4)


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講談社漫画文庫版と小学館画業50周年愛蔵版を読み比べてみた。

講談社漫画文庫版は章ごとに分かれている。

第1巻

第1章 神話大戦

第2章 悪魔復活

第2巻

第1章 妖鳥死麗濡

 小学館版ではこの後、『闇の蜘蛛、『夏の日』、『魔界のジャンヌ・ダルク』、『恐怖のジンメン』、『すすむちゃん大ショック』、『終りの始まり』、『崩壊』、『堕天使』、『ハルマゲドン』という順序となる。

第2章 すすむちゃん大ショック

第3章 恐怖のジンメン

第3巻 

第1章 魔界のジャンヌ・ダルク

第2章 ウィーンの晩い春

第3章 美しき軍神 サモトラケのニケ

第4章 ベルサイユの妖妃

第5章 リトル・ビッグホーンの悪魔

第6章 闇の蜘蛛

第4巻

第1章 夏の日

第2章 終りの始まり

第5巻

第1章 堕天使

第2章 崩壊

第3章 ハルマゲドン

 

講談社漫画文庫版の第3巻は飛鳥了不動明が時の流れに乗って過去に遡り、ジャンヌ・ダルクアドルフ・ヒトラーサモトラケのニケ、マリ・アントワネット、カスター将軍らとその周囲にいる悪魔を退治する物語だ。

いずれも短編としてはとても面白いのだが、ストーリー全体を見ると勢いを止める感は否めない。個人的には『ウィーンの晩い春』が好きな話だ。悪魔は、後のアドルフ・ヒトラーに当然とりついている、と思っていたが、実は、ユダヤ人の画商にとりついており、ヒトラーから彼女とその肖像画を金の力で奪うのだった。その結果、ユダヤ人に恨みをもったヒトラーユダヤ人大虐殺を行うのだった。悪魔は実は人の心の中にある、という『デビルマン』のテーマが描かれている。

 

講談社漫画文庫版に比べて小学館版は、飛鳥了の表情を恐ろしくしており、戦いの場面をより緻密に描いている。

 

飛鳥了の正体は実は、悪魔に進化した地球上の生物を滅ぼそうとした神と、かつて戦った堕天使サタンだった。長い眠りから覚めた彼は地上にうごめく敵、人類を知るためにサイコジェニーによって記憶を変えて飛鳥了として不動明の近くに現れたのだった。想定外だったのは両性具有のサタンが不動明を愛してしまい、人類を滅ぼすが、不動明は何とかして生かそうと思ったことだった。

 

悪魔が正体を現し、第三次世界大戦が始まり核戦争が起こったとき、謎の白い球体が現れ、それに包まれたものを塩に変えてしまった。

旧約聖書のソドムとゴモラの話を彷彿とさせる。

 

サタンの命令により、悪魔は人類に誰からかまわず乗り移る作戦に出る。

悪魔に乗り移られて醜い姿となって死んだ人たちを見て疑心暗鬼になった人類は悪魔特捜隊を編成しお互いに殺し合う。不動明の恋人や家族も殺されてしまう。このシーンは衝撃的だった。

 

デビルマンデビルマン軍団を組織し、悪魔と戦うことを選択した。二十年の時が流れ、やがて平穏が訪れる。海のそばで飛鳥了のサタンが不動明デビルマンに語りかける。デビルマンの下半身はなく、彼が死んでいることがわかる。そして海の向こうから白い球体とたくさんの天使達が近づいてくるところで物語は終わる。この後、サタンはどうなるのだろうか?

 

聖書の神の考えは人智を超えており私には理解できない。『デビルマン』でも「なぜ悪魔を滅ぼそうとしたのか?」「なぜ堕天使サタンの裏切りをそのままにしたのか?全知全能の神ならサタンが裏切ることがわかるだろうし、サタンを殺すことも自由にできただろう」「なぜ第三次世界大戦の時に人類を塩に変えたのか?」「なぜせっかく助けた人類をやはり滅ぼしたのか?」「なぜデビルマンと悪魔の戦いを止めなかったのか?」疑問は尽きない。

だが、永井豪が人間の中に潜む悪魔性を、漫画という形で描いたことはよくわかる。

アニメのコミック版として始まった本作品だが、アニメとは全く別な独立した物語として完成している。

永井豪の最高傑作だと私は思う。