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諸星大二郎『夢のあもくん』角川書店(2022/03/30)

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少年の頃、ふと思ったちょっとした非日常の世界。

あるいは、夢で見た物語。

 

そんなどこかで共感を感じる漫画だ。

人形を持っている少女と人形が入れ替わってしまう「人形少女」

さなぎになってしまう「羽毛田君の奥さん」

うどんの先に女の頭がついている「こっちでもへび女はじめました」

道を歩いて行ったら道の壁から首を出している草になってしまう「塀の穴」

人の横顔そっくりな山に登ってみたら口から食べられてしまう「登山君の遭難」

海に多数いる遭難者の幽霊たちが登場する「海で呼ぶもの」は本当に恐い。

マスクに口がついてしまう「風の強い日」は新型コロナでマスクをつけることが増えて本当にありそうで恐い。

給水塔の角度や高さや位置が見る場所によって変わって見えるのは実際に子どもの頃に感じていたが、それを思い出させる「給水塔」

妖怪ハンターの稗田礼二郎がゲスト出演する「夢のともだち」

筆と薄墨でムンクの『さけび』にインスピレーションを得て描いた「ムンクの女」

ママの俎板汁出る死体生のまま、殺人鬼の男子が死んだの近日さ、暴れるレバアという回文をテーマにした「回談」もとの回文が恐いのでそれをそのまま漫画にしているので結構こわい。

誰かに追われナイフで刺される夢は誰でも見たことがあるだろうが、そんな話の「しつこい夢」

マスクをしているとそのマスクに自分の口や鼻がのりうつってしまい、マスクが勝手に飛び跳ねるようになる「マスク」は新型コロナでマスクをつけることが増えたのでありそうな恐い話だ。

他人と夢を共有する「夢の集会」この物語の怖さは生きている人とだけ夢を共有するのではなく、死んだ人とも夢を共有している点だ。

排水口や川の流れはそこに落ちたら死ぬかも知れない、と思うからか恐い存在だが、「またまたあもくん」ではそんな怖さを描いている。

影は実物があっての影だが、実物とは別な存在が潜んでいて実物とは異なる行動をとるのではないか、と錯覚することがある。そんな怖さを描いたのが「逢魔が時」だ。

「あもくん 夢は全部真実(ほんとう)なのよ」という言葉で終わる「夢の劇場」

 

夢や少年時代に空想する恐ろしい物語を見事な短編に仕上げている。