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猪瀬直樹 田原総一朗『戦争・天皇・国家』角川書店(2015/07/10)


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目次は以下
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ペリー来航による開港から現代までの日本について、概略をまとめ、猪瀬直樹氏と田原総一朗氏が語り合った本。

 

日本が大東亜戦争に突入したのは、「軍部を含めた官僚機構が縦割り化してそれぞれの部局ごとに暴走し・・・国家としての意思統合ができない状況に置かれた」と分析している。(p.19)

そのとおりだと思う。

「公正な評価」とは陸軍士官学校の席次であり、縦割りの官僚機構の中で成績のよい秀才たちが順番にポストに就き、意思決定を先送りしていくシステムができあがっていった。(p.33)

結局、熱河作戦では、政府と大本営が別々の方針で、関東軍の暴走を許したことで・・・戦争への泥沼を突き進むことになった。(p.37)

関東軍を罰していたら違っていたと思うが、罰せられなかったので戦争へと進んだのだと思う。

実際には戦前も戦後も「官僚主権」なのである。(p.53)

そのとおりだと思う。

陸軍と海軍の意見が一致しないときは天皇のところで裁可する以外にないけれど、要するに全部がバラバラで意思決定ができない。(p.101)

天皇は意思を表明できないのだが、陸海軍で方針がバラバラで、結局、国家としての意思決定ができなかったのだと思う。

戦後の日本経済界の仕組みを作ったのは岸信介で、それは「1940年体制」と呼ばれる。具体的には、直接税中心の税制、補助金として地方に配る仕組み、終身雇用・年功序列源泉徴収制度、日本銀行法、経済統制の道具として重要産業団体令に基づいた業界団体の立ち上げ、公社・公団の設立などの政策だ。

源泉徴収制度は凄い発明だった、と思っていたが、それも岸信介だったのかぁ・・・。

そして、猪瀬氏は戦後の日本を、アメリカが門番で安全保障について考えなくてよい「ディズニーランド」に例える。

一度、自立について考えてほしい。その上で、自立するコストについて考える。失っているものについて考えてみる。自立するためのコストと失っているもののコストを比べてみるべきだ。(p.203)

新書だから読みやすかった。官僚が縦割りで統一した国家意思を持っていないのは、現在でもそうだと思う。将来の日本のためにどうするか、考えるためにも概要をよくまとめた本だと思う。