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白土三平『忍者武芸帳-影丸伝-』小学館(1976/04/20)

 

白土三平の代表作。個人的には『カムイ伝』よりこちらの方が好きだ。登場人物の数が『カムイ伝』では多すぎて追い切れない。本作だと十分追い切れる

また、実現不可能ではあるが、忍術の種明かしがある。

 

実在の人物や事件を題材に、架空の人物を配し、戦国時代から豊臣秀吉の全国統一までを、一揆を起こす百姓や馬借達から描いた大河漫画だ。

 

主人公、影丸は、無風の弟子で、一揆を起こすことで、大名から権力を奪い百姓らの自治政府を実現しようとする。

無風は、金をもらい暗殺を請け負い、その金を貧しい人達に渡すことで、社会を変えようとする。しかし、金を得ると欲に目がくらむ人達、そのために仲間割れをする人達を見て、金では社会を変えられないことを悟り、即身仏になる。

無風と対照的に描かれるのが上泉信綱だ。無風が剣技は殺人のための手段に過ぎないと考えるのに対して、上泉信綱は剣技を磨くことが人の心を磨くことにつながる、と考える。無風はそれを強く批判し、対決し、上泉信綱に勝つ。

 

忍者出身の坂上主膳は、明智光秀の影武者となり、本能寺の変織田信長を倒すが、影丸によって明智光秀として殺される。本物の明智光秀がどうなったかは描かれていない。その妹、蛍火は、明智十人衆の一人となるが、影丸と影一族との戦いで殺される。

 

林崎甚助と結城重太郎は、どちらも坂上主膳を仇と狙う剣客だ。二人とも、仇を討った後については、何も考えていなかったが、林崎甚助は世話になった北畠具教やその娘小萩の遺体を見て、考えが変わり、弟子を持ち、居合道を広めてゆくことになる。結城重太郎は、恋人明美影丸に殺されたと思い込み、影丸を追う。本当は明美影丸の妹で、明美の死は坂上主膳と蛍火の陰謀だった。陰謀であることに気づいた重太郎だったが、時既に遅く、影丸は八つ裂きにされる。

その時、影丸森蘭丸に「我ら遠くから来た。そして遠くまで行くのだ・・・」と無声伝心の法で伝えた。

 

様々な人間が登場し、それぞれがそれぞれの生を精一杯生きる。

影丸の試みは、社会主義共産主義だが、その試みは、織田信長によって、破綻する。

そうして時が移り変わって歴史が進んでいく。全ては諸行無常

白土三平社会主義の思想に人だと言われるが、それとは違うと私は思う。影丸が八つ裂きになったこと、一時は優勢だった一揆勢が分裂によって壊滅していく描写から、白土三平社会主義の限界を描きたかったと思う。

カムイ伝』でもそうだが、食うか食われるかの生態学的な自然世界の描写を随所に入れる。無風には鴨長明の『方丈記』の冒頭「ゆく川の流れは絶えずして・・・」を語らせている。苔丸とゴマメが農地を耕すことで終わるラストのコマ。食うか食われるかの自然、仏教的無常な世界。そんな世界でそれぞれ懸命に生きる人々が、本当は白土三平の描きたかったことなのではないか。

 

【第1巻】
 疾風編
  脱獄
  仇討 永禄三年(1560)伏影城 結城隼人光春の死
  疾風剣 永禄七年(1564)北條氏と里見氏の戦い 上泉秀胤が疾風剣を重太郎に見せて死ぬ
  無風道人 謎の雲水 無風道人の登場
  秘太刀
  幻の使者 明美が3年間兄(影丸)を探していると語る
 落城編
  通り魔
  雷雲党
  忍剣 重太郎が片腕を失う。
  
【第2巻】
  土一揆 永禄年間(1558年から1570年)伏影城での土一揆
  地摺り残月剣
  雷雲砦
  密偵
  天神戦法
  落城
 放浪編(一) 永禄9年(1566年)大和国柳生正木坂の荘

【第3巻】
 放浪編(一)
  第2巻「落城」の続き
  伏影城落城後、重太郎が主膳を取り逃がす
 放浪編(二)
  廃虚 伏影城落城後城の石垣が取り壊される。それを茫然とみる結城重太郎
   永禄9年(1566年)大和国柳生正木坂の荘で重太郎と柳生宗厳(むねとし)が戦う
  無宿
  第二の影 主膳が明智光秀の影武者になる。
 放浪編(三)
  陰の流れ 重太郎と上泉秀胤の父、上泉信綱の出会い
   愛洲移香斎=+=>小七郎惟修=+=>上泉信綱=>疋田文五郎=>山田浮月斎
           |             |
                |            +=>柳生宗厳(むねとし)=>宗矩=+=>庄田喜兵衛
                |             |                  |
                |             |                 +=>十兵衛三厳
                |             |
                |             |
                |            +=>奥山休賀=>小笠原玄信斎=>神谷伝心斎
               +=>古藤織之助(天狗太郎)=>無風=>影丸(陰の流れ)
  対決 信長による稲葉山城攻略戦(弘治2年(1556年)から永禄10年(1567年)までのいつか)
  
【第4巻】
 放浪編(四)
  馬借 永禄5年(1562年)山城国 影丸、水中に落ちる
 放浪編(五)
  一の太刀 永禄8年(1565年)塚原卜伝林崎甚助の出会い。足利義輝暗殺
 放浪編(六)
  会合
  化性
  八ツ身
【第5巻】
 激流編(一)
  地走り

【第6巻】
 激流編(二)
  怪人 元亀元年(1570年)
  蔵六
  神
  影一族<しびれ>
  無風 林崎甚助と無風の会

【第7巻】
 怪異編
  地落し
  獣屍 無風が獣の死骸から信長の影武者を殺す
  顕形
  落首 影丸林崎甚助の会話から無風が影丸を殺す

【第8巻】
 不死鳥編(一)
  影丸見参 元亀元年(1570年)7月 無風が影丸の首を信長に渡す
  毛塚用水 無風が正直な竹蔵と千代に金を渡す
 不死鳥編(二)
  波の鼓 天正4年(1576年)安土にて明智光秀林崎甚助の出会い。
     主膳が林崎甚助を襲うがそれは結城重太郎だった。
     重太郎の七年前の回想 宗忍性との出会い
  変幻 主膳と蛍火が明美を捕らえる
  瘢瘡 天正5年(1577年) 天正伊賀の乱
 
【第9巻】
 影一族編(一)
  第一話 くされ 天文年間(1532年から1555年) 飛騨でくされこと小助 若かりし頃の無風と影丸登場
  第二話 しびれ 炭焼きに身をやつした伝蔵(影丸)と捨吉
 
【第10巻】
 影一族編(二)
  第三話 岩魚 水魔と恐れられていた平太
 
【第11巻】
 影一族編(三)
  第四話 蔵六 土佐(長宗我部氏)と伊予の間 享禄4年(1512年)鬼吉と夜叉姫の出会い
        天文10年(1541年)京 夜叉姫の死
        影丸と鬼吉の出会い
  第五話 三つ 影丸が三つ子のお産を手伝うが、鬼吉に奪われる。そのため三つは天文10年(1541年)生まれ
        十九年後、永禄二年(1559年)影丸と鬼吉(蔵六)合流。

【第12巻】
 無慚編
  根切り 天正二年(1574年)8月 長島一向一揆
  影丸見参
  地摺り蛍
  神隠し 蛍火が明美の身代わりを捕らえる
  処刑 主膳が明美の身代わりを処刑
  御前試合
  残骸 明美死す
 
【第13巻】
 群狼編
  罠
  風刃
  群狼
  気胸 林崎甚助と北畠具教とおばばとの出会い
  梁山泊 苔丸たち
  気胸 おばばの正体は愛洲移香の娘か天狗太郎の妹
  刺客 無風が北畠具教を殺す(天正4年11月25日(1576年12月15日))
 
【第14巻】
 壊滅編
  斬光
  群生
  清水寺の血煙 林崎甚助がニセの坂上主膳を殺す
  百足火 天正二年(1574年)正月 越前で富田長秀による反乱
  葉隠れ 林崎甚助に殺されたニセの坂上主膳の人生
    永禄元年(1558年)最上岩代村の長助 二年間中条流、吉岡道場で二年間、柳生道場で1年、松永久秀に召し抱えられ家族を持つ。5年後林崎甚助と戦い死ぬ。
  分裂 
  影の地帯 天正3年(1575年)明智十人衆が影丸暗殺に向かう
 
 
【第15巻】
 壊滅編
  影の地帯 天正3年(1575年)明智十人衆が影丸暗殺に向かうが、蛍火以外全滅する。
   その蛍火も自らの死とともに、その時に影一族の水源に毒を流し、影一族を全滅させる。
   流砂に沈んだ蔵六を除いて

【第16巻】
 大砂塵編(一)
  陰流異変
  廃虚
  血の代償 天正3年(1575年)織田信長 越前攻略
  流水
 
【第17巻】
 大砂塵編(二) 上泉信綱と無風の戦い。無風が勝つが、信綱を生かしておく。
 雑賀一揆 天正4年(1576年)4月 織田信長が木津川沖の合戦に勝利する。
      天正5年(1577年)2月 織田信長が雑賀一揆に攻撃開始 3月2日雑賀一揆の狩猟鈴木孫市降伏
 北部戦線 日本海側の信長と一向一揆の戦い
 不死鳥落つ 影丸死す。森蘭丸に「我ら遠くから来た。そして遠くまで行くのだ・・・」と無声伝心の法で伝えて。
   天正8年(1580年)本願寺降伏
 三日天下 天正10年(1582年)無風が即身仏になる
      天正10年6月 本能寺の変 主膳が信長を討つ。その主膳は蔵六によって殺される。
 大砂塵
  1588年8月29日(天正16年7月8日)に豊臣秀吉によって出された刀狩り以後
  蔵六と太郎は亀によって流砂から逃れる。
  林崎甚助、重太郎がすれ違う。
  苔丸とゴマメが「物をつくりだすのは俺たちさ」と言う。