『ジェットエンジン AL-31の涙』(脚本協力 テーラー平良) (『ビッグコミック』2024/03/25号, 2024/04/10号, 2024/04/25号, 2024/05/10号)
依頼者:GRU所属の男 ドミトリイ
ターゲット:ウクライナ人技術者を脅しているもの 中国側に協力する場合依頼者ドミトリイの弟ローマン コピーエンジンを作っている工場
依頼金額:不明
殺害場所:人質監禁兵舎 秘密基地
殺害人数・相手:監視の3人 炎少佐 宗少将 副官洪 管制塔にいる兵士
前編(2024/03/25号)
Part1 高難度の着艦
ロシアのウクライナ侵攻前、南シナ海・・・
風速20m、波高3.5mの嵐の中、3機の戦闘機が中国海軍航空母艦に着艦しようとしていた。
パイロットの一人はゴルゴ13だった。
空母の艦上では、かつて米軍空母の前に涙を飲んだ祖父を持つ男が台湾統一の夢を実現する空母を中国海軍が持ったことを誇りに思っていた。
一方、戦闘機のパイロットの一人が、エンジン出力が安定しないことを愚痴り、やはりコピーではなく本物のロシア製エンジンがほしいといっていた。
Part2 コピーされた技術
1ヶ月前 クリミア半島・サーキ訓練飛行場・・・
ゴルゴ13を前にして、中国海軍がロシア製航空機をコピーすることに怒っている男がいた。
ゴルゴ13が中国側がコピーしたと分かった理由を質問した。男には、ウクライナに嫁に行った父の妹に子供がいなかったため、男の2つ下の弟であるローマンがもらわれていった。その弟が中国に拉致されたのだ。
男はGRU(軍の情報機関)で情報流出の監視をしているが、他にも何人かのウクライナ人技術者が姿を消していることがわかった。拉致されたウクライナ人達は中国の秘密基地で働かされていたのだ。
その秘密基地には何か別な目的があるようだが、ロシア側は把握できていなかった。中国側がウクライナ空軍にテストパイロットをよこすよう依頼していたのだった。
ゴルゴ13はウクライナのタタール系東洋人テストパイロットとしてその秘密基地に潜り込むことになった。そしてウクライナ空軍にいるGRU工作員一人と接触するように言った。その時の合言葉は「クロームメッキ」だ。
ウクライナ人技術者が脅されて協力させられているなら脅しているものを始末し、男の弟は残って中国のためにエンジン開発を続けるといったら始末し、コピーエンジンを作っている工場も破壊するように、と男は依頼した。
Part3 腕利きのパイロット
たった一ヶ月の訓練で、中国秘密基地に潜入しにいったゴルゴ13を心配する男に、ゴルゴ13を訓練した男が大丈夫だと言う。彼は最期の戦闘訓練でゴルゴ13に撃墜されたのだった。
ゴルゴ13はホロブレイという名前のウクライナ人テストパイロットとして空母に見事に着艦した。
他の2機も嵐の中着艦に成功した。
Part4 ウクライナ人技師
ホロブレイ(ゴルゴ13)は、エンジンの出力不足で、実戦では燃料かミサイルかどちらかを半分にしないと飛べない、と言う。
中国人技師が、ウクライナ人技師ニコライに、もっとパワーが出る燃料にしろ、と命じる。
ニコライは、艦載機の燃料が、爆発して空母が沈まないように静電気防止剤を入れ、引火点を高くして燃えづらくしていることを話す。口答えするな、と殴りつけて中国人は去って行った。
ニコライはジェット燃料の硫黄成分が海水と反応して硫化ナトリウムによる腐食が起こることをゴルゴ13に説明する。中国の海は黒海の塩分濃度の倍もあり通常の錆止めが効かないと言う。ここでゴルゴ13が「クロームメッキはどうだ?」と合言葉を言う。ニコライはその言葉でホロブレイことゴルゴ13が彼らウクライナ人技師を助けに来た男だとわかった。
空母のガスタービンとボイラー担当のユーリとイワンは過労死させられた。エンジン設計のローマンがいることがわかった。皆、ウクライナ友好会に家族共々呼ばれて拉致されたのだ。
ローマンはもう一隻の空母「南海」にいるとのことだ。
「南海」は3週間ぶりのメンテナンスのために明日からこの空母と同じ港に入るのだ。
しかし、ローマンに会うには特別な訓練に参加しなければいけないのだ。
[感想]
ウクライナ情勢、中国の空母保有、台湾情勢など今まさに一番ホットな水面下の戦いが舞台で楽しみだ。
中編1(2024/04/10号)
Part1 3Dシミュレーション
宗(ゾン)少将が自分の空母で戦果を上げるため、相当無茶な訓練をパイロットにやらせるという噂だった。
宗(ゾン)少将が作戦を説明する。
台湾の東にある海岸山脈は海岸ギリギリにせり出しており、佳山基地はその下にあり、破壊するには世界でも最難関の基地だ。1000mを越える山脈の下にあるので核兵器さえ効かない。そこを破壊するのが目的だ。
副官の洪(ホン)が3D映像を作って具体的に説明する。
台湾海峡を高度15m以下で渡る。
海峡を渡るとすぐに山脈が見える。谷をぬって侵入し山脈の頂上に出たら山を越えながら機体を反転させ急降下し麓に近づいたら機首を上げて佳山基地に接近する。基地の出入り口は3ヶ所。レーザー誘導ミサイルでその出入り口を破壊するのだ。
扉自体の厚さは2m重さ100tもある鋼鉄製でミサイルの直撃でもビクともしない。台湾軍が訓練のために扉を開けた時に狙うのだ。
空母は台湾東岸で攻撃隊を待ち受ける。
炎(イェン)少佐が、ロシア製エンジン搭載機なら、全方位変更ノズルやカナードを使って、山脈越え後速度を落とせるが、中国製戦闘機だと勢いがつきすぎて頂上で機体を反転する前に山頂から大きく飛び出し、台湾のレーダーにつかまり天弓ミサイルが襲いかかってくる、と指摘した。また開いている扉も2分で閉まるということだ。
代案として、頂上越えを低速で尾根沿いに行うことを、別なパイロットである林(リン)中尉が提案した。
その案が採用された。
この作戦のために佳山基地とそっくりな同じ構造の基地を中国は作っていた。
ホロブレイことゴルゴ13もその訓練に参加することになった。
Part2 林中尉の真意
林中尉は中国奥地の少数民族だった。そのため、共産党員になって出世するために功を焦っていた。
Part3 テストパイロット
訓練が始まった。
林中尉機は、速度を落としていたのに山頂に出たとき、少し出過ぎてレーダーにつかまった。
山脈を通過した林中尉機は勢いがつきすぎて機首を上げられず、そのまま岩に激突した。
ホロブレイことゴルゴ13機は、山頂で急降下をやめて、さらに上昇して行った。
ゴルゴ13は「エンジンから異音がするからエンジンの開発責任者に会わせろ」と言う。
宗少将と副官の洪は、ホロブレイ(ゴルゴ13)の言うことに不満は持ちながらもローマンに会わせることにする。
[感想]
佳山基地襲撃作戦の全貌が明らかになった。
中国の少数民族問題や共産党に関することも含めながら、物語が進む。
ゴルゴ13は依頼を実行できるだろうか?
中編2(2024/04/25号)
Part1 技術者との接触
ゴルゴ13が宗少将と副官洪とともに基地に入っていく。
Part2 エンジン開発状況
ゴルゴ13が乗っていた機体のエンジンを調査している中国人は1000時間も飛んでいないのに異音がしたのは変だ、と言う。ローマンが圧縮ブレードだ、と指摘する。中国人が調べるとブレードにヒビが入っていた。
Part3 高性能の部品
ロシア製の最新型戦闘機SU-35が搭載しているエンジンAL-41もこの基地内にあった。
AL-31をもとにローマンに開発させているエンジンは出力がロシア製に比べてだいぶ劣っていた。
中国のエンジンの合金は1300度に耐えるのがやっとだった。ロシアは1800度にも耐えられる合金で造られている。
宗少将は、中国製品が劣っているとの指摘に、中国が電気自動車大国になっている、と反発する。電気自動車の部品は3,000点、燃焼エンジン車の部品は約30,000点。高度なジェットエンジンの部品は200,000点にもなる、とローマンが指摘する。日本のベアリング技術の凄さを見せるローマン。
中国製ベアリングは回転時間が3分の1しか耐久性がないと言う。
ゴルゴ13がF-22のエンジン完成までに約30年かかっていると言うと、ローマンがロシア製エンジンも同じように30年かかったと言う。
宗少将は、「州書記長に台湾進行はあと30年待ってくださいと言えというのか!?この軍区の監査部の視察も近いのだ!」とキレる。
監査部に厳しく調べさせ、無能な官僚や軍人は次々と労働改造所に送られているのだ。宗少将は、以前、ドローン開発チームが労働改造所に送られたのを思いだした。
宗少将は、ローマンに「きさまも死ぬ気でやれ。でないと家族の命は無いぞ。」と脅迫する。
ホロブレイ(ゴルゴ13)の妻も到着したが、それは中国側の人質になったことを意味する。
その時、明日、監査部が視察に来ると連絡が入った。
Part4 軍区監査部の視察
中国製空母の一日のソーティ(出撃回数)は20回ほどだった。米軍ニミッツ級空母は日に120回で戦時には倍になるという。中国軍のエンジン稼働率は約30%とかなり低い。ニミッツの稼働率は80%なのに対して、中国軍は艦載機が35機でも実働10機にしかならないのだ。
監査部の男は、来週、実戦形式で佳山基地に似せた基地を落としてみせろ、といい、宗少将も仕方なく承知する。
軍区監査部の男達が帰って行った。副官の洪がなぜそんなに上層部が開発を急がせるのか、と質問する。ロシアと戦うのか、ロシアがどこかと戦争するのか、などと話す。宗少将は中国軍がロシア製兵器を使っているので前者は否定したが、後者は可能性があると話す。だからこそなんとしても自力でなんとかする必要があり、ウクライナから技術者を拉致して違法な開発を進めているのだ。
炎少佐が自分にまかせろ、と言う。
Part5 ホロブレイの妻・・・
ホロブレイの妻は、依頼者の男ドミトリイに電話し、無事に潜入した、と伝えた。
この女はドミトリイの娘のエレナだった。
ローマンの娘アンナとその子供はアレクセイとナディアといった。
この基地に拉致されているウクライナ人は技術者やその家族で全部で7人だった。
一週間後にロシアの在中国大使が交代のため専用機で帰国するので、エレナがロシア大使館専用リムジンで拉致されたウクライナ人を乗せて空港に向かい政府関係者の家族として同乗させる手はずだった。
そのために監視の3人を始末しなければいけない。ゴルゴ13は決行の朝、見張りが交代したときに3人の監視を始末するが、自分に構わず先に逃げろ、と言った。
[感想]
ようやく依頼者の名前が判明した。
炎少佐は一体、どうするつもりなのだろうか?
ゴルゴ13は依頼をどうやって完遂するのだろうか?
次回が楽しみだ。
後編(2024/05/10号)
Part1 監査前日の小細工
炎少佐は自分の機体にロシア製新型エンジンAL-41を搭載することだった。
宗少将は労働改造所に送られなくて済ますためにその案でいくことにした。
Part2 人質監禁兵舎にて
監視の3人が殺されたことが宗少将や副官の洪に伝わった。宗少将が逃げたウクライナ人達を捕まえるように命じた。
7人のウクライナ人人質が飛行場に着いた。
Part3新型機のテスト
最新のSU-35はコブラという技を使える、と話す弁大佐。コブラとは全方位変更ノズルを使って機首を持ち上げて停止に近い状態にまでする技だ。弁大佐が準備しているところにゴルゴ13が忍びより、SU-35に乗った。そこへ弁大佐が現れ、SU-35に乗った男がウクライナ人パイロットだと話した。
だが、ゴルゴ13はSU-35を奪って飛び立った。
Part4 奪われた最新機
宗少将にウクライナ人パイロットがSU-35を奪ったことが伝わった。炎少佐が監査部の視察前の腕ならしとばかりに、ゴルゴ13を撃墜すると行った。ゴルゴ13のSU-35はステルス性が高くレーダーで探知できない。炎少佐がゴルゴ13を追い、背後からゴルゴ13が乗るSU-35を攻撃する。
ゴルゴ13はフレアを焚いて炎少佐が発射したミサイルをかわす。
ゴルゴ13がコブラの態勢に入る。
このままだとゴルゴ13のSU-35をオーバーシュートして前方に出てしまうので、炎少佐もコブラを試みる。しかし右のエンジンが止まった。ゴルゴ13の前方に出た炎少佐機をゴルゴ13が撃墜した。
ゴルゴ13は秘密基地にミサイルを撃ち込み破壊し、宗少将がいる管制塔にもミサイルを叩きつけ破壊した。
Part5 エンジンは涙する
ロシア・モスクワ・・・2022年2月24日
ドミトリイが電話で誰かと話していた。エレナがそれを聞いていた。
AL-31に関わったウクライナ人技術者全員を始末した、と言う。つまり、ドミトリイの弟ローマンやその家族アレクセイやナディアも死んだのだ。
ロシアとウクライナが戦争状態になったため、AL-31の技術が西側に伝わることを未然に防ぐためだった。
泣き崩れるドミトリイとエレナだった。
[感想]
ゴルゴ13がロシア製最新鋭機を奪って炎少佐が乗る中国製コピー機と戦った。
この話の戦闘機の絵はとても丁寧で綺麗で迫力あってカッコいい。
作画担当の誰が描いているのか気になる。
ロシアによるウクライナ侵攻のせいで、ドミトリイは自ら弟ローマンとその家族を殺めなければいけなくなった。切なく哀しいラストだった。