『破綻の先に』
『ビッグコミック』2024/12/25号, 2025/01/10号, 2025/01/25号
脚本協力 加久時丸
120ページ
依頼者:フロリダ州ユダヤ人会の長老
ターゲット:フロリダ州ユダヤ人会の大物マックス・ホフマン
依頼金額:不明
殺害場所:マックス・ホフマンが住む高層マンションの下
殺害人数:1人
殺害相手:フロリダ州ユダヤ人会の大物マックス・ホフマン
H:0人
前編(2024/12/25号)
Part1 狙撃直前
2021年朝6:00。フロリダ州マイアミ
起床した標的をM16で狙うゴルゴ13。
引き金を引こうとしたその時、ゴルゴ13がいたビルが崩落しゴルゴ13も巻きこまれて気絶した。
Part2 究極の保険取引
1982年ロンドン、ロイズ保険取引所
フォークランド紛争が始まった頃だ。リグビー卿はロイズで最も成功した保険引受人だ。リグビー卿は「究極の保険取引」をやってみたいと考えていた。
それは、保険対象も保険料も保険金額も依頼人の自己申告にまかせ引受人は黙ってそれに応じるというものだった。
それは”無謀な博打”だと批判する者もいた。
そこにゴルゴ13が現れ、リグビー卿に保険の依頼をした。
Part3 緊急ビーコン発動
米国東部時間 午前6時15分
意識を取り戻したゴルゴ13は、うなじにつけた緊急ビーコンを発信した。
ロンドン郊外、(英国時間)午前11時15分
リグビー卿に緊急ビーコンの知らせが北。
ロンドン、ハイドパーク(英国時間)午前11時半
リグビー卿の孫娘エレノアがベンチにいた。アメリカのコンドミニアムの大崩落が既にニュースになっていた。違法建築の疑いがあるようだ。
そこへエレノアをナンパしに来た男は一本背負いで投げ飛ばされ、スリーパーホールドで首を絞められた。
エレノアのもとにリグビー卿から連絡が入った。
彼女は急いでハイドパークからリグビー卿の屋敷に自転車を走らせた。
パーカーという執事が門を開けた。
Part4 Gへのコミット
リグビー卿の部屋に入ったエレノア。
リグビー卿は、人間社会において仕事とは、何をするかではなく、誰とするかだ、とエレノアに話す。そして、リグビー卿は、"Mr.G"の名を出し、これまで彼と数千回に及ぶ保険契約を交わしてきたと話した。損害保険の一部で、Mr.Gの仕事に対し未達時の損失補償を目的とした保険を設けてきたのだ。保険料と保険金の設定は、Mr.Gの自己申告という、世界で唯一のものだった。そして保険金の支払いはこれまで一度も発生していなかった。総計で1億ポンド(1ポンド=150円とすると約150億円)を超える金額をMr.Gは支払ってきた。
リグビー卿は損失補償が生じたら一瞬にして破産する可能性もあるが、博打ではなく、無限に人を信じてみたかったのだ。それがリグビー卿のノブレス・オブリージュなのだ。
エレノアはMr.Gに関して質問する。
リグビー卿が話した瞬間、エレノアはMr.Gにコミットする(=分かちがたい関係になる)ことになる。
2021年から20年前のこと、ロバート・リグビー卿の一人息子、ジェームズが結婚してエレノアが生まれた。ロバートはガン宣告を受けていたので、息子ジェームズにMr.Gとの仕事を秘密厳守を条件に継がせようとした。しかしジェームズは仕事への恐怖を妻に語り、秘密厳守を破った。そのことをMr.Gにリグビー卿は伝えた。翌日、ジェームズ・リグビーと、その妻は、Mr.Gによって射殺された。
エレノアは両親が祖父によってMr.Gに殺されたことを聞き、部屋を出ようとした。
ロバート・リグビー卿は、リボルバー拳銃を取り出し、自分の頭を撃とうとする。
エレノアが仕事を受けるか、ロバート・リグビー卿が死ぬか、二択なのだ。
Part5 残酷さ比べ
厩舎に向かったエレノアは足首を痛めたサンシャインという馬に乗り、塀を跳ぼうとしたが、サンシャインは転倒した。ロバート・リグビー卿から取り上げたリボルバー拳銃で、サンシャインを殺した。
サンシャインがかわいそうだ、というパーカーに、「私が殺したのではなく、リグビー卿の銃がサンシャインを殺したのです!!」と言うエレノア。
そしてエレノアは、Mr.Gとは何者なのか、リグビー卿に質問する。
「それを聞いたら、もう引きかえせんぞ!!」と念押しするリグビー卿。
[感想]
ゴルゴ13がビルの崩落に巻きこまれて大怪我する始まりには驚いた。
さすがのゴルゴ13も、ビルの崩落まではさすがに予見できなかったのだ。
もう一つ驚いたのが、ゴルゴ13が自分の仕事に損害保険をかけていたことだ。そんな保険を引き受けるリグビー卿にも驚くが、ゴルゴ13が一体どういう条件の保険をかけていたのか気になる。
絶体絶命の状況にあるゴルゴ13だが、この後、どういう展開になるのか、楽しみだ。
中編 2025/01/10号
Part1 全権委任
リグビー卿もゴルゴ13と直接会ったのは2度しかない。
最初はゴルゴ13から奇想天外な保険契約を提示されたときだった。
二度目は20年前、つまりエレノアが生まれる直前、リグビー卿がガン治療で病床にあったときだった。リグビー卿は後継者についてゴルゴ13と会話していた。彼は息子は信頼に値すると断言した。
そしてリグビー卿は、ゴルゴ13に、失敗がないのになぜ大金を注いで保険を設定するのか質問した。
ゴルゴ13は、「神は自らを信じ切っている、あるいは自らに疑いを抱いているーお前ならいずれの神を信じる?」と逆に質問する。
リグビー卿は「いずれの神も信じる気になれません。」と答える。
ゴルゴ13は「では”信じる”とはなんだ?」と質問を続ける。
リグビー卿はその質問でわかったようで「過信と疑心、その相互の間にこそ、真の神は宿る・・・!!」と答える。
ゴルゴ13は、医学雑誌掲載予定論文によるとリグビー卿のガンに適合する新薬が開発されたと伝えて去った。
リグビー卿はエレノアにMr.Gがゴルゴ13である、と話す。
そして、彼の緊急ビーコンが作動していること、米国フロリダ州マイアミ近郊のチェーンパームタワーにいることを話した。
リグビー卿は、エレノアに全権委任した。
ゴルゴ13のミッション未達に対する損害補償として3億3,500万ポンド(約502.5億円)を払うのみよし。放置するのもよし。ゴルゴ13の死体を見物しすべてを終わらせるのもよし、とリグビー卿は言った。
エレノアがリグビー関係者にいつお披露目されたか、きくと、「お前が両親というものを失い、代わりに私を得た時からだ。」と答えた。
リグビー卿が乗馬中にサンシャインから振り落とされ、下半身不随となり馬も足首を痛め走れぬ身となったときに、なぜ真の情けをほどこさなかったのか、とエレノアは質問し答を待たずに彼女はゴルゴ13のいる現場に向かった。
Part2 殺人の経験
自家用ジェットの中で、エレノアに同行するマッケンジーが自己紹介した。彼はかつてSAS(英国陸軍・特殊空挺部隊)にいた。エレノアはマッケンジーに殺人の経験とその時の気持ちを質問した。
マッケンジーは、愚者は"なぜ生きるのか"と悩み、強者は"いかに生きるか"と考える。戦場には弱者は死者のことで、あとに残るのは強者と愚者だ、と答えた。
エレノアは生まれて一週間で両親を失い、両親の記憶は何もない。
Part3 名はエレノア
瓦礫の下で、ゴルゴ13は、ロンドン・ウェストミンスター地区で、かつて、エレノアの両親を殺した時を思い出していた。エレノアの母は、ゴルゴ13に殺すならエレノアも一緒に殺せ、と言ったが、ゴルゴ13が拳銃の引き金を引いた時、エレノアをゴルゴ13に投げた。ゴルゴ13はエレノアを受け取った。エレノアの母は、「名前はエレノア・・・」と言って死んだ。
Part4 リグビーの顧客
エレノアはリグビー卿との会話を心の中で繰り返す。
ゴルゴ13が絶命したら、契約者消滅ですべて終了
救命されたらミッション未達のため損失補償としてエレノアに支払義務が発生する。最高額は3億3,500万ポンドだ。リグビー家が破産する可能性もある。しかしそれは最悪ではない。リグビー卿にとっての最悪は、ゴルゴ13の正体が世間に露見することだ。
エレノアはマッケンジーにCDC(米国疾病予防管理センター)防疫チームを偽装するように指示する。
マッケンジーはリグビー卿が、「エレノア・リグビーは必ずや最強の道を歩む」と言った、とエレノアに伝えた。
Part5 用件は二つ
エレノアはCDCを偽装して現地に到着し、南米出血熱の可能性がある、と伝え、ゴルゴ13の元に到着した。
ゴルゴ13は既に救出チームに輸液や薬剤について依頼していた。
エレノアがゴルゴ13に話しかけると、「リグビー家を継ぐのはお前か。」と質問した。「すべての”選択肢”を私が握っていることを理解していますよね!」と確認するエレノア。ゴルゴ13は「もうすぐ雨が降る。」と謎のセリフを話す。
CDCの救急車に運び込まれたゴルゴ13は、下肢と胸部に骨折があった。痛み止めを処方しようとする医師にゴルゴ13は心身が鈍磨する麻酔系は不要だと伝えた。そしてエレノア・リグビーと二人きりで話す。
サンルーフ付きのワゴン車の調達とホテルに予備の装備があるのでエレノア自身で取ってきてほしい、とゴルゴ13はエレノアに依頼する。仕事を続行するためだった。
祖父からすべてを聞いたエレノアには亡き父や母への愛がある、そんな私を信用できるのか、とゴルゴ13を問い詰める。
ゴルゴ13は「お前の言う”選択肢”とやらで、答えを出せ。」と答える。
エレノアはここで終わりにする、と答えた。
[感想]
この回は、神学論争のようで、何が正解なのかよくわからない。
リグビー卿は、「過信と疑心、その相互の間にこそ、真の神は宿る・・・!!」と答えて、答を見つけたようだが、私にはさっぱり理解できない。
エレノアの質問に「お前の言う”選択肢”とやらで、答えを出せ。」と答えるゴルゴ13の言葉の意味もさっぱりわからない。
ただ、ゴルゴ13最大の危機が訪れていることはわかる。
怪我をし、武器もない。身体も縛られている。手は使えるが、下肢や胸部を骨折している。この状況で親の仇討ちをする可能性があるエレノアと1対1だ。
どうやってこのピンチを脱してミッションを遂行するのだろうか?
次回が楽しみだ。
後編 2025/01/25号
Part1 戦場での決断
ゴルゴ13は、エレノアを指差し、「お前の”愛”とは、この”銃”と同じだ。今、お前は撃たれ、すべてが終わった。」と言う。
エレノアはゴルゴ13の指示に従うことを選択した。
Part2 セッティング
エレノアは、マッケンジー中尉に3億3500万ポンドの軍事的な価値を質問する。
マッケンジー中尉は、ステルス仕上げの戦術輸送ヘリ・ブラックホーク2機と超精鋭20人を乗せて、ウサマ・ビンラディン級の高難度ターゲットを狙える、と答えた。
エレノアはゴルゴ13のもとに戻った。
ゴルゴ13は、一週間前を回想していた。依頼者は在米ユダヤ人会の長老だった。在米ユダヤ人会も慎重派と熱狂派に二分していて、前大統領のドナルド・Tはその分断を意図的に利用していた。フロリダ州ユダヤ人会の大物マックス・ホフマンは慎重派ユダヤ人を攻撃していた。
しかし、マックス・ホフマンは本当はWASP右派によって送られた偽ユダヤ人で反ユダヤ工作員だった。
気がついたゴルゴ13は、エレノアに、M16の組立を頼む。
ミッション未達の場合、保険金を支払うエレノアは、ゴルゴ13に、保険金が出た場合、ゴルゴ13が何をするか、質問した。ゴルゴ13は、「・・・・」だった。代行者を立ててでも仕事を達成する、と念を押すエレノアに「・・・」と答えるゴルゴ13だった。
エレノアが組み立てたM16を、ゴルゴ13は確認し、「問題ない。いい手技だ。」と褒めた。
ゴルゴ13は、自分を乗せてワゴン車を、崩落現場へ戻るよう、エレノアに指示する。
Part3 ゲヘナを見よ
ゴルゴ13は、エレノアにルカ伝の一節を、メガホンで叫べ、と指示する。
目の前のビルが崩落したので狙われる懸念がなくなったホフマンはエレノアのメガホンの声を聞き、バルコニーに出て、下を見た。そこにはワゴン車があり、ゴルゴ13がM16で狙っていた。
ゴルゴ13の銃弾が垂直にしたから上へホフマンの眉間を見事に貫いた。
「エレノア・リグビー、お前に礼を言っておく。」と言ってゴルゴ13は気を失った。
Part4 敗者はいない
ベッドに横たわるゴルゴ13を見ながら、エレノア・リグビーは、親の仇であるゴルゴ13をどうするか、決着をつけようとする。
エレノア・リグビーは、リボルバー拳銃をゴルゴ13に向けながら、親を撃ったときの気持ちを、ゴルゴ13に質問した。
ゴルゴ13は「覚えていない。」と答える。そしてオートマチックの拳銃をエレノア・リグビーに向ける。
一発目の弾丸は空中で衝突させ、二発目を早く撃てるのはどちらか、とゴルゴ13が言う。
拳銃を降ろしたエレノア・リグビー。そして今回の契約が終了したことを告げ、今後の契約は自分次第だと言う。「私は・・・あなたを死に追い込むこともできた。そのことだけは忘れないでください。」と言ってエレノア・リグビーはゴルゴ13の病室を後にした。
[感想]
ゴルゴ13がエレノアを指差し、「お前の”愛”とは、この”銃”と同じだ。今、お前は撃たれ、すべてが終わった。」と言ったことや、ホフマンをおびき寄せるためにエレノア・リグビーに叫ばせたルカ伝の一説の意味など、この回も、神学論争のようで、どういう意味なのかよくわからない。
エレノア・リグビーが親の仇であるゴルゴ13に銃口を向けたが、撃たなかったその心境の変化も私にはよくわからなかった。
ゴルゴ13の狙撃の凄さと保険をかけていることの驚きが光る作品だが、難しい作品だった。
次回は第646話『医務官手帳』だ。隠退した医務官がリビアの日本大使館に赴任していた頃の話だそうだ。日本人が登場しそうで居酒屋の提灯の絵が描かれている。次回が楽しみだ。
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