表紙

もくじ

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第476話 アナライズ・ウクライナ(2007/11作品)
脚本協力:加久時丸
ページ数:121ページ
依頼者:
1)不明
2)MI6のハーベイ・マクミラン
ターゲット:
1)MI6のケネス・バディマー東欧担当部長
2)ガリツィア師団の生き残り ウクライナ名アレクサンデル・ティモチュチュク 英国名アレックス・オニール。
依頼金額:
1)不明
2)不明
殺害場所:
1)イギリス M40の高速道路
2)イギリス 北ウェールズ地方の古城
殺害人数:
1)1人
2)2人
殺害相手:
1)MI6のケネス・バディマー東欧担当部長
2)ガリツィア師団の生き残り ウクライナ名アレクサンデル・ティモチュチュク 英国名アレックス・オニールと、孫息子のティモシー・オニール
H:0人
Part1 MI6に入った情報
2007年夏、ロンドン-イギリス-
MI6・イギリス情報局秘密情報部
ジェレミー・デイビスは新聞広告で実施された工作員募集に応募した男だったが、地味な作業に愚痴をこぼしていた。彼がトイレの中にいるとき、同僚が、ウクライナのエロシェンコ大統領とマルケビッチ首相が1時間以内に狙撃された、という話をしているのを聞いた。
Part2 元情報員ダグ
元MI6調査員で今は飲んだくれているダグに、ジェレミー・デイビスは、ウクライナのエロシェンコ大統領とマルケビッチ首相の狙撃事件のことを分析させてみる。
「エロシェンコ大統領は、カラー革命時にダイオキシン中毒とみられる症状で顔面が変形し同乗票を得た。今度は同じ手を使えないので公表しないだろう。選挙で優勢なマルケビッチ首相は何もしない方が有利なので公表しないだろう。」とダグは分析した。
ただ偶然の一致にしては偶然すぎるし防弾ガラスで守られている車をなぜ狙撃したか、が謎だ、とダグは続けた。
ジェレミー・デイビスは、トイレの中で同僚が、「この件にはGが絡んでいるようだ」と言っていたことを思いだした。ダグの顔色が変わり、酒場を去った。
Part3 "G"と呼ばれる男
ダグは回想していた。かつて、MI6のバディマー部長がロシアに情報を売っていたことをつきとめ、"G"に外注したことを思い出していた。
そしてその時話していたハーベイに電話した。
Part4 昔馴染みの二人
ロンドン・ハイドパークでハーベイ・マクミランとダグ・ヒギンズが会った。
ダグ・ヒギンズは、ウクライナのエロシェンコ大統領とマルケビッチ首相がほぼ同時に狙撃された事件について、ハーベイ・マクミランから聞き出そうとした。
SBU(ウクライナ保安庁)所属のある職員の衛星携帯電話の交信頻度が上がり、その通信内容から、”G”が関わっている、とハーベイ・マクミランは考えていた。
ダグ・ヒギンズは、弾道分析の結果を聞いた。大統領の致命的部位をはずしており、や首相の場合、ターゲットに完全に命中していなかった。そこから、ダグ・ヒギンズは、この件に関しては”G”が絡んでいる可能性はかなり低い、と分析した。
「では、"G"は誰だ?」とハーベイ・マクミランがきいた。
ダグ・ヒギンズは、答えられなかった。
Part5 アナリストの誇り
ダグ・ヒギンズは、ジェレミー・デイビスにSBU内査局のスタッフのプロフィールを調べるよう、依頼した。
Part6 依頼
10年前
ダグ・ヒギンズとハーベイ・マクミランが彼等の上司ケネス・バディマー東欧担当部長殺しを依頼した。しかしゴルゴ13は断った。ダグ・ヒギンズは、怒りに震えたが、ハーベイ・マクミランが止めた。その時、ダグ・ヒギンズの中で何かが壊れた。
Part7 ジェレミーの調査
寿司屋でダグ・ヒギンズとジェレミー・デイビスが会った。イリチェビツ・グゼフ、1983年10月31日キエフ生まれで、3歳でウクライナ西部の都市リヴィウに移った。その直後、ソ連共産党幹部だった父親がソ連共産党を脱党しようとして、査問中に急死した。
1986年はチェルノブイリ原子力発電所の事故があった年だ。ダグ・ヒギンズは、父親がチェルノブイリの事故の邪悪さを知っており、リヴィウへ移ったのだろう、と推理した。
”G”の謎が解けた、と叫んだダグ・ヒギンズは、寿司屋を出た。
Part8 ガリツィア師団
イリチェビツ・グゼフはリヴィウで育った。そこは昔から”ガリツィア”と呼ばれていた。ダグ・ヒギンズは、”G”はガリツィアの事だ、と断言した。
1939年、独ソ両軍がガリツィアに侵攻した。
1943年、ウクライナ人志願兵からなる武装親衛隊ガリツィア師団を編成した。
1945年、ドイツ降伏。ガリツィア師団は、イタリアへ移管され、旧ポーランド国民としてソ連と戦ったと主張し経緯不明ながら8000人の兵士が英国に渡った。
今回のウクライナ事件の首謀者は、ガリツィア師団の生き残りで、祖国ウクライナに対して欧米にもロシアにもなびくな、と警告、いや恫喝しているだろう、とダグ・ヒギンズは、推理した。
ウクライナは20世紀に6回独立宣言を行い、5回の挫折を味わっていた。また1932-33年には、スターリンの人為的飢饉の犠牲になって数百万人が餓死し、第二次世界大戦ではドイツによる強制労働などで数百万人も減少した。
ガリツィア師団の生き残りの老兵は、”完全なる独立”を求めている。イリチェビツ・グゼフは、父親をソ連共産党に奪われ、故郷をチェルノブイリ原発事故に奪われ、今、祖国が東西の間で激しく揺れており、ガリツィア師団の老人の影響下にのみこまれていったのだろう。
ジェレミー・デイビスは、イギリスがガリツィア師団を受け入れた理由をダグ・ヒギンズにきく。ダグ・ヒギンズは、対ソ用のスパイ候補として採用したのだろう、と言った。
ダグ・ヒギンズは、この件はもう忘れろ、とジェレミー・デイビスに警告した。
Part9 ダグの転落
10年前、ゴルゴ13と会ったダグ・ヒギンズは、自暴自棄になり、ゴルゴ13への依頼費用の30万ポンドに手をつけ、ハーベイ・マクミランに見つかり、二人の関係はギクシャクした。
M40の高速道路で、バディマー東欧担当部長が眉間を撃ち抜かれて即死した。
ゴルゴ13がダグ・ヒギンズとハーベイ・マクミランの依頼を断ったのは二重依頼だったためだった。
悔恨と羞恥にさいなまれたダグ・ヒギンズは、家族を失い、MI6の職も失った。
Part10 "G"の正体
ロンドン・ハイドパークでハーベイ・マクミランに会ったダグ・ヒギンズは、Gの正体がガリツィア師団だ、と言った。
ソ連崩壊時にロシアのエリツィン、ウクライナのクラフチューク、ベラルーシのシュシケビッチの三首脳が会った会談で、独立国家共同体(CIS)が結成された。その時、ウクライナが”独立”を絶対条件として入れるよう強く主張した。
それほどウクライナの独立への思いは強い。独立は孤立に暴走する恐れがあり、そもそもこの件はイギリスが蒔いた種だから刈り取らねばならぬ、とダグ・ヒギンズは、言いたかった。それをハーベイ・マクミランは理解した。
だがハーベイ・マクミランはダグ・ヒギンズを殴って、二度と自分の前に姿を現すな、と言って去った。
Part11 ダグのアナライズ
MI6のハーベイ・マクミランのオフィスに、部下が入ってきて、ガリツィア師団の男について、報告した。ウクライナ名アレクサンデル・ティモチュチュク。英国名アレックス・オニール。彼の携帯電話の交信記録にSBU(ウクライナ保安庁)の不穏分子イリチェビツ・グゼフとの交信が見つかった。
半年前、孫のティモシー・オニールがエストニアに行き、ウクライナから、SBUの特殊部隊の狙撃手でアルヤロスラフ・ルキアネンコという男もエストニアに入った。その男が大統領と首相を狙撃したというわけだった。
ハーベイ・マクミランはゴルゴ13に依頼することにした。
Part12 再会
ハーベイ・マクミランは、10年前と同じ部屋でゴルゴ13と再会した。ゴルゴ13はダグ・ヒギンズが同席していたことを覚えていた。
Part13 古城の標的
北ウェールズ地方の古城に標的のアレックス・オニールが孫とともに現れた。
ゴルゴ13がM16で狙撃した。孫息子のティモシー・オニールも狙撃した。
Part14 すべて闇の中
ジェレミー・デイビスは同僚に書類を持っていくが、ここはお前達の来る場所ではない、と拒否される。そこへ、部長からの呼び出しがあった。ジェレミーデイビスはその同僚のパソコンをのぞき見する。
Part15 挫折と葛藤の果て
ジェレミー・デイビスは、アレックス・オニールがガリツィア師団の生き残りだろう、ということをダグ・ヒギンズに話に行った。酒に溺れるダグ・ヒギンズは、酒瓶をジェレミー・デイビスに投げつけ、出て行け、と叫んだ。
【感想】
ソ連という国家があった時、ロシアと白ロシアとウクライナは一体だと、無知な私は思っていた。ウクライナとロシアの戦争が始まった時、過激派の内ゲバ、または内戦みたいなものかと思った。
しかし、ゴルゴ13のこの作品を読んで、ウクライナの苛烈な歴史がよく伝わってきた。
多民族が複雑にひしめき合う大陸で一国が主権を主張し独立独行することがいかに難しいか、島国のイギリス人、ましてやアメリカの庇護下にある日本人にはまったくわからないことだ。作品p.72中で、「国家としての主張さえふやけてしまい、彼ら(日本人のこと)には、真の独立への渇望もなければ闘争心もない」(下線は本書では傍点)と日本人を批判している。これがこの作品で一番言いたかったことだと思う。
本作品が描かれてから18年目になるが、ウクライナの人々が幸福になることを祈らずにはいられない。
第470話 東ドイツの残骸(2007/03作品)
脚本協力:ながいみちのり
123ページ
依頼者:元シュタージのスパイで”チャイカ”(カモメ)で、現在ドイツ・エネルギー省代表のウォルフガング・ハインツ
ターゲット:FSBのバレンスキー中佐と彼が持っているSファイルの抹殺
依頼金額:不明
狙撃場所:
1)ロシアのカバン職人コリャーキンの店
2)路上
3)ウォルフガング・ハインツの自宅(?)
殺害人数:
1)1人
2)1人
3)1人
殺害相手:
1)ロシアのカバン職人コリャーキン
2)FSBのバレンスキー中佐と彼が持っているSファイルの抹殺
3)元シュタージのスパイで”チャイカ”(カモメ)で、現在ドイツ・エネルギー省代表のウォルフガング・ハインツ
H:0人
ボン-ドイツ- ボン自由大学
サンドラに、マイヤーが、旧東ドイツ諜報機関"シュタージ"の幹部だったマルクス・ウォルフが亡くなった、と言った。
マイヤーは東ドイツ政治史を研究していた。
二人の師であるユルゲンスは、ロシアの寒村で取材旅行中だった。
Part1 元KGB要員の回想
コトラス-ロシア-
ガンで老い先短いカレリン大佐に、ユルゲンスがインタビューしていた。
カレリン大佐は、東ドイツに存在していたS(シュタージ)ファイル輸送計画に携わっており、列車三編成分の荷物だった。行く先はチャウシェスクのいるルーマニアだった。
チャウシェスクが民主化の波で殺されると、ロシア本国へ空輸された。ルーマニア駐留ロシア空軍の少佐はウラノフで副官がアゾフだった。
空輸は成功した。
インタビュー後、カレリン大佐は逝った。
Part2 ふたつのファイル
モスクワ郊外で、ロシアのエネルギープロムとドイツのエネルギー省代表との天然ガス交渉が始まる、という新聞記事を読んだウラノフが、古い記録を出し、ウォルフガング・ハインツという名前を確認した。
ボンでは、マイヤーが、サンドラに"東ドイツにおける犯罪捜査"という研究テーマが面白いか、と話しかける。ユルゲンス教授は未解決事件や暗殺事件も研究していて、Gファイルという史料も持っている、とサンドラが話した。
モスクワ郊外で、ユルゲンスは、ウラノフに会った。ウラノフはアゾフとともに、Sファイルの一部を盗み出していた。
ウラノフはただでその史料をユルゲンス教授に渡した。
Part3 第二の訪問者
アゾフがウラノフのもとを訪れ、Sファイルを盗み出そうとしていた。暗号名(コードネーム)”チャイカ(カモメ)”のプロフィールが金になるはずだ、とみて探しに来たのだ。
しかし、ファイルはなかった。ドイツの大学教授の連絡先を机上に見つけたアゾフはウラノフを殺しすぐにドイツに飛ぶことにした。
Part4 恐怖を呼ぶファイル
サンドラと会ったマイヤーが、帰国したばかりのユルゲンス教授のところに行こうとする。
ユルゲンス教授の家では、アゾフがユルゲンスを縛り付けてSファイルのありかを聞き出そうとしていた。
サンドラとマイヤーがユルゲンス教授の家に向かう途中で、アゾフとすれ違った。
ユルゲンス教授は殺されていた。
Part5 ”Sファイル"の行方
サンドラとマイヤーがユルゲンス教授の葬儀に出席した。
モスクワで、アゾフは義兄のロシア連邦保安局(FSB)中佐のバレンスキーに会って、Sファイルを売り込もうとしていた。それはKGBと一心同体だった秘密警察"シュタージ"に協力していたスパイたちの名簿だった。
Part6 Gファイル発見!
ボンで、ユルゲンス教授の家を整理していたマイヤーとサンドラはGファイルを発見した。バレンスキー中佐は二人を尾行していた。
Part7 "チャイカ"への届け物
ドイツのエネルギー省代表のもとに花束が送られてきた。そこには「チャイカへーロシアより愛を込めて・・・・」と書かれていた。ドイツエネルギー省代表は、頭を抱える。
Part8 マイヤーの災難
Gファイルがゴルゴ13に関するファイルだとサンドラは知った。
マイヤーはGファイルの存在をサンドラに口止めされていたが、家に帰ると、バレンスキーがいて、縛られて薬を注射され、Sファイルのありかをきかれた。Sファイルを知らないマイヤーに、冥土のみやげだ、と言って、暗号名チャイカ、ドイツのエネルギー省代表のウォルフガング・ハインツがスパイだった、と話した。
マイヤーの家についたサンドラは、マイヤーからSファイルのことを聞いた。彼女はGファイルを持って、チャイカに届けることにした。
Part9 アゾフの焦り
金に困ったアゾフがバレンスキーに金の無心に行く。
アゾフの借金の三倍の金を出すからSファイルのことを忘れろ、と取引をするバレンスキーにアゾフが同意した。
Part10 同じ犠牲者
ベルリンで、ウォルフガング・ハインツにサンドラはGファイルを託した。
モスクワの地下鉄で、アゾフがSファイルをバレンスキーに渡した。バレンスキーが金が入ったアタッシェケースを渡したが、そこに金は入っていなかった。そしてバレンスキーはアゾフを地下鉄に突き飛ばした。
Part11 接触
ウォルフガング・ハインツは、Gファイルにある、グアテマラの孤児院に手紙と寄付を送ると院長夫人がお礼の談話を載せ、その談話の中に会見場所が示される、という会見方法によって、ゴルゴ13と会った。
ウォルフガング・ハインツの依頼はFSBのバレンスキーとSファイルの抹殺だった。Sファイルはバレンスキーが使用している機密書類用の防護板を張った特製トランクに入れてある。
ゴルゴ13はウォルフガング・ハインツに連絡方法をどうやって知ったか質問した。ウォルフガング・ハインツは大学教授から聞いた、と答えた。
ゴルゴ13は依頼を受けた。
Part12 特製トランク
ロシアのカバン職人コリャーキンのところで、バレンスキーの特製トランクと同じ物を買ったゴルゴ13。
コリャーキンは金を受け取ってすぐバレンスキーに電話した。
ゴルゴ13が帰ってきたコリャーキンを殺した。
Part13 Sファイルを抱いて
Sファイルを抱いて車に乗ったバレンスキー。
エネルギー会議終了まであと2日だった。
バレンスキーの乗った車を見下ろすゴルゴ13は、背後からバレンスキーの胸を狙撃した。銃弾はバレンスキーの胸を貫通しSファイルが入ったトランクを燃やした。
Part14 墓前に立つ者
ユルゲンス博士とマイヤーの墓参りに行ったサンドラの前にゴルゴ13が来て、質問した。
Part15 許されざる者
ウォルフガング・ハインツは、自分が生き残ったことを喜ぶ。そして、ゴルゴ13を専属契約にしよう、と企む。だが、ゴルゴ13への連絡方法の孤児院が閉院していた。
困ったウォルフガング・ハインツのもとへ、ゴルゴ13がやって来た。連絡方法について、ウォルフガング・ハインツが嘘をつき、Gファイルの存在を隠した、と言って、ウォルフガング・ハインツを殺した。そしてGファイルを燃やした。
Part16 それぞれの空に雲は流れる
モスクワで、バレンスキーが徹甲焼夷弾で殺された、という報告を受けていた。
サンドラは、ユルゲンス教授の研究を引き継ぐ気になれず、マイヤーのことも思い出しながら、早い時間に大学を後にした。
【感想】
冷戦時は、共産圏の互いに監視しあう体制だった。ベルリンの壁崩壊やソ連解体によって、そういう体制がなくなったが、それでも過去の残骸(本作品ではSファイル)に悩まされる人達が多数いて、そんな人達を描いた好作品だ。
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