====もくじ=====
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第548話 最終通貨の攻防(2014/11作品)
脚本協力:テーラー平良
ページ数:137ページ
依頼者:
1)アメリカ共和党
2)ロシア政府
3)NSA(アメリカ国家安全保障局)
4)奈良N大学の数学者でディールコインを創った佐久元滋の父佐久滋
ターゲット:
1)2兆ドルのプラチナ硬貨を使い物にならない様にする
2)ロシアの天才的な数学者、イワン・ベンケンドルフ
3)アメリカの天才数学者、ハワード兄弟(マシューとネイサン)
4)ゴルデンシルト一族の刺客
依頼金額:不明
殺害場所:
1)アメリカの路上
2)キプロス
3)アメリカ ニューヨークの105階のホテル
4)アフリカ バラカ共和国
殺害人数:
1)0人
2)0人
3)5人
4)2人
殺害相手:
1)なし
2)なし
3)ハワード兄弟を警護する男達
4)ゴルデンシルト一族の刺客トロイとソフィー
H:1人(娼婦)
Part1 オマハ政権の焦燥
ホワイトハウス-USA-
オマハ大統領は、双子の赤字(経常収支と財政収支の赤字)で財政破綻が目に見えている、と焦る。ルーカス首席補佐官はデフォルト(債務不履行)だけは避けないと、と焦る。ハイデン副大統領は債務に上限があり、2兆ドルの財政出動はFRB(連邦準備制度理事会)も共和党も首を縦に振らない、と言う。
ルース法律顧問は、1兆ドルの特別なプラチナ硬貨を2枚発行し財政出動の代わりとするのだ、と言う。合衆国法典第31編第5112条によると、プラチナ硬貨発行は財務長官が独自にできるのだ。スミス補佐官も賛成する。ルーカス首席補佐官は反対する。
Part2 共和党からの依頼
フィラデルフィア
2兆ドルのプラチナ硬貨を使い物にならない様にするのが、共和党からゴルゴ13への依頼だった。
ゴルゴ13がスコープでプラチナ硬貨を運ぶトラックを狙っていると、12台のバイクがトラックを囲み、トラックの正面にいる1台のバイクに乗った男がショットガンを撃ち、護衛の警官を殺した。
トラックのタイヤを撃ち、崖下に転落させた。
トラックから出てきた男に、バイクの男がショットガンの銃口を向け、2兆ドルのプラチナ硬貨をショットガンで破壊した。
仲間の女が「あそこに誰か居るわよ!」と指さす。男は、共和党からの回し者かもしれない、と言う。
そして、男はヒゲやカツラを取り、女のバイクの後ろに乗り、バイクを破壊して去った。
ゴルゴ13はその様子を見ていて「・・・・・」だった。
Part3 それは単なる偶然?
オマハ大統領にプラチナ硬貨2枚が破壊された、と報告が上がった。
ハイデン副大統領が、奴らの警告かもしれない、と言う。
奴らとは、FRBをかつて支配していたヨーロッパ系財閥のことを指す。
FRBはドルの発行権を持っているが、日英の中央銀行と違って、民間銀行で、アメリカ政府は一株さえ持っていない。株はインター・シティ・バンクやバンク・オブ・ウォール・ストリートなどの有力民間銀行が保有している。だが、インター・シティ・バンクやバンク・オブ・ウォール・ストリートなどの株式はヨーロッパ系財閥が相当握っていた。つまり間接的に実権をヨーロッパ系財閥に握られているのだ。
ヨーロッパ系財閥に大きな力が集まったのは、独立戦争当時、戦費をまかなうために紙幣を乱発したため、ドルが紙くず同然になった。独立戦争に勝利したアメリカだったが、経済面ではヨーロッパ系財閥の植民地だったのだ。
新政府に金を提供する条件として、財務長官に自分達の息のかかった男を擁立し、通貨発行銀行を設立させ、それが今のFRBの元だ。
ヨーロッパ系財閥に逆らって独自の紙幣を発行したリンカーン、ガーフィールド、ケネディは、皆、暗殺された。
ヨーロッパ系財閥の力はかつてほどではないが、力を誇示したいものがいてもおかしくない。
プラチナ硬貨はサンプル品だったのだ。もし実際に使えるものだったら、オマハ大統領も暗殺されたかもしれなかった。
Part4 ドルの正体
ロンドン-イギリス-イングランド銀行
ゴルデンシルト一族を、銀行頭取ら総出で出迎える。
ゴルデンシルト一族の長老は、大統領への警告を行ったか、ときいた。きかれた男は、間違いなくやったが今時あのやり方ははやらない、と答えた。長老は自分が生きている限り植民地の大統領に好き勝手なマネはさせない、と断言した。
博物館・旧理事室
長老が家族の者達に、この部屋で金融制作委員会が金利を決定した、と話した。風が東から吹くと世界中の帆船がロンドン港に集まり大商いが始まった、と話した。
十七世紀の頃、ウィリアム三世がフランスと戦争していた頃、国王は戦費をまかなうのに苦労し、ロンドン商人達から融資を受けた。その時のロンドン商人達の出した条件が紙幣発行権だった。
そして、商人達が民間銀行を作り、その銀行が国王の債務を引き受ける代わりに紙幣を発行したのだ。そして金の心配をせずイギリスは戦争ができたのだ。そのやり方をアメリカは真似しているのだ。
ゴルデンシルト一族の先祖は、イングランド銀行の株式の大半を手中に収めた。その後、未発展だったアメリカに資金を投入した。その見返りにドルの発行権を手に入れた。ドル紙幣の一番上にある"Note"とは"債券証書"という意味だった。つまり、ドルはFRBの債権証書だ。アメリカ大統領が発行した国債をFRBがいったん引き受け、その額だけFRBがドルを刷る、これがドルの正体だった。そしてその利子をFRBがもらうのだった。
FRBを支える米十二銀行の株式は、ゴルデンシルト一族を始め、ヨーロッパ系財閥が持っている。
少年が僕がアメリカ人ならすぐに新しい通貨システムを作る、と言った。
その時、顧問のサリバンから、ケンブリッジ大学名誉教授にしてイギリス財務省相談役のアイザック・スペンサー教授を屋敷に連れてきているので、すぐに屋敷に戻るように、と連絡が入った。
用件は、利子も手数料も発生しない新しい基軸通貨が出現しそう、という事だった。
Part5 長老の苛立ち(いらだち)
Part6 参加者全員が管理者!?
ディールコイン、暗号通貨について、スペンサー教授が説明を始めた。通貨は元来、共同幻想にすぎないので、数字の羅列である暗号も通貨になり得る。
暗号通貨ディールコインは、銀行を一切通さず、スマホやPCのアドレスでやり取りされサーバーさえ通さない。参加者全員が取引の管理者なのだ。海外送金も一瞬で手間をかけずにできる。
Part7 悪魔の名はサトル・ナカタ
ディールコインを新たに手に入れるには、ディールコインマイニングソフトで暗号を解く必要があり、それが発掘(マイニング)だ。さらにディールコインの発行は2100万ディールと決まっている。ドルは無闇にFRBが発行でき、そのおかげでゴルデンシルト一族は大もうけできたが、それも不可能だった。
発明者のサトル・ナカタは、ディールコインに関する論文と一連のソフトを近々ネット上に公開する、と手紙に書いていた。
長老はそれはならん、と怒鳴る。
Part8 背後にはGが!?
スイス
プラチナ硬貨を破壊した男トロイと彼をバイクの後ろに乗せた女ソフィーがSEXをしている。そこにヘリコプターが下りてきた。依頼者がサトル・ナカタの論文をトロイとソフィーに見せる。サトル・ナカタの可能性があるのは3組、4名だ。キプロスのイワンという男、ニューヨークの双子、奈良在住の日本人だった。
トロイは手始めにイワンを始末しようという。
依頼者は、この件に関してゴルゴ13が動いている、という情報がある、と言った。
トロイが一瞬驚くが、この男のことは全て調べ尽くしてある、と言ってゴルゴ13の写真をビリビリに破り捨てた。
Part9 国が滅ぶ前に・・・
ゴルゴ13がクルーザーに乗ったロシアの天才的な数学者、イワン・ベンケンドルフをスコープにとらえた。
ゴルゴ13は依頼時を回想する。
イワンは盲目だが、FSB(ロシア連邦保安庁)を辞めた後、キプロスで暗号通貨を制作している。ロシア財閥やマフィアがキプロスの銀行で資金隠しに使っていた。破綻しそうなギリシャ国債も大量に抱えている。ギリシャの財政破綻前にロシアマフィアがイワンにディールコインを創らせ、キプロスの通貨をディールコインに移しかえるつもりだ。もしディールコインが出回ると、ロシア国民がルーブルから乗り換える恐れがある。そうなるとロシアは滅んでしまう。だからそうならないよう、イワンを殺してくれ、とロシア政府の男がゴルゴ13に依頼した。
ゴルゴ13が引き金を引く直前、トロイとソフィーがイワンを殺した。
Part10 "旧敵"からの依頼
ニューヨーク
第373話『最終暗号』(SPコミックス第129巻)でゴルゴ13がいい思いを持っていないと懸念するNSA(アメリカ国家安全保障局)が、数学者を多数雇っているが、双子のハワード兄弟は極めて優秀だったが、メキシコの麻薬カルテルの手先になっていた。彼らがディールコインを創ると、資金洗浄が簡単に行えてしまうので、ハワード兄弟殺しをゴルゴ13に依頼するのだ。
高さ105階のホテルをカルテルが買収し鉄壁の守りを固めていた。
標的は100階にいる。
Part11 カルテルの目論み
最上階のスペシャルルームでカルテルの男達が会話している。万一に備えて、ハワード兄弟のうち兄のマシューは90階に移していた。100階の弟のネイサンの部屋は、政府が踏み込んだら爆破して証拠を消す予定だった。
ゴルゴ13はホテルの下からホテルを見上げて、標的は100階だな、と考えた。
Part12 殺し屋は1人
ゴルゴ13は回想する。
娼婦を抱き、彼女に22:00きっかりに入口を警護する男にサービスすることを約束させる。
ゴルゴ13はホテルの1階から侵入し、防弾チョッキを着た5人の男をS&W M500という拳銃で射殺する。そして屋上までエレベーターで上昇する。
Part13 またもトロイが・・・
ゴルゴ13は屋上に出た。
上空を見上げるとソフィーとトロイが乗るヘリコプターが舞っていた。
Part14 落下するG
ゴルゴ13は第315話『メデジンカルテル』(SPコミックス第102巻)で屋上から落下しながら標的を撃ったことがある、とトロイは知っていた。トロイは、105階から100階までは15m、通過時の速度は約60km、部屋を0.27秒で通り過ぎる。90階の時は時速100kmを超え通過する速度は0.1秒、と計算した。
ソフィーが、トロイに数学者になれ、とすすめる。トロイは、数学者に必要な調和が自分にない、自分には破壊が似合っている、と言って、ヘリコプターから飛び降りた。
ゴルゴ13も屋上から飛び降りた。
100階で、ホワイトボードに書かれた数式を見たゴルゴ13は射撃しなかった。
トロイは射撃し、弟のネイサンを殺した。
トロイは90階にいる兄のマシューも撃ち殺した。
ゴルゴ13は、「・・・・・」で漆黒の夜空を飛ぶ。
Part15 天才数学者の息子
奈良-ジャパン-
佐久元滋(もとしげ)がディールコインを創った、と電話で話す父の佐久滋。電話の相手はイギリスにいるスペンサー教授だ。スペンサー教授はゴルデンシルト一族がディールコインを創った者を狙っている、という。元滋の父はディールコインを創った者の名前に自分の名前を入れることで、元滋を守ろうとしていた。
Part16 数学者の孤独
リンカンシャー州-イギリス-
ゴルデンシルト一族の長老アイロスの容態が悪化し、トロイの仕事をせかそうとしていた。トロイは、イワンやハワード兄弟がディールコインを創っていないことを見抜いていた。理由は彼らが孤独ではなかったからだった。
トロイはニュートンやガロアやチューリングらを例にあげる。
トロイは佐久滋の生い立ちをきくが、わからなかったので、トロイが自分で調べる、と言った。
ゴルゴ13はトロイの車を遠くから追跡していた。
Part17 判明した発明者
イギリス、ケンブリッジ大学 スペンサー教授の研究室
トロイはスペンサー教授を縛り上げてディールコインの発明者を聞き出そうとする。
スペンサー教授の机上には、佐久滋と少年時代の佐久元滋と3人で撮った写真が飾ってあった。スペンサー教授と佐久滋は親友で、佐久滋は第373話『最終暗号』(SPコミックス第129巻)で、ゴルゴ13の力を借りてNSAでも解読できない暗号を創った。だが、ディールコインを創った男ではない、とトロイは断言する。数学者の寿命はスポーツ選手と一緒で短いから、佐久滋は年をとりすぎている。
トロイは写真の佐久滋の息子がディールコインを創った男で、佐久滋から自分を売るように言われた、と推理した。そしてスペンサー教授を殺して出て行った。
Part18 天才数学者の講義
奈良ージャパン-N大学
講義をする佐久滋。学生から、通貨制度が宗教に似ている、という意見が出た。佐久滋は、宗教的対立がない分宗教より優れている、と答えた。学生から、ユダヤ教に利子を取ってはならない、という教えがあるが本当か、という質問がきた。
佐久滋は、それは本当で、利子を取るのは神が与えてくれた時間を盗むことだと考えた、と説明した。
佐久滋は窓の外の街路樹にゴルゴ13を見つけた。
Part19 因縁の再会
東大寺
佐久滋はゴルゴ13に会う。
佐久滋は息子の元滋が孤独で自分が間違っていたのかもしれない、と言う。
ゴルゴ13は、岡潔もアンリ・ポアンカレも数学の本質は調和だと言っており、ディールコインの論文を元滋が書いたのなら真の調和を見いだせる大人に成長した、とゴルゴ13がほめる。
佐久滋は息子に天寿をまっとうさせるために、彼のボディガードをゴルゴ13に依頼する。ゴルゴ13はボディガードは受けない、と断る。佐久滋は、ゴルデンシルト一族からの刺客の始末を依頼した。ゴルゴ13は引き受けた。
Part20 元滋の意図
バラカ共和国-アフリカ-
元滋は、海外青年協力隊の一員でここに来て住み着いた。彼は日本人が昔からやっていた収穫後の残渣を溜め微生物の力で発酵させて堆肥として利用する方法を現地の人達に教えた。
しかし彼は畑仕事をしなくなった。
銀行家が村に来て、ローンで工作機械を買わせ、ローンを返すために昔から村で決められていた以上に焼畑をし、かんばつになり、利子を返せなくなった村人に銀行家がさらに金を貸した。翌年も干ばつとなり、村の若者達は外国に行って働き、家族に送金した金で返済していた。
元滋は変わり果てた村を見て激怒し、部屋にこもった。元滋は利子を取る銀行が必要無くなる新たな通貨とそれを簡単に使える仕組みを作ろうとしていた。
この村のために佐久元滋はディールコインを創ったことを知ったゴルゴ13。
Part21 終焉の地、アフリカ
ソフィーとトロイがヘリコプターに乗って、佐久元滋のいる村にやって来た。
トロイはここにゴルゴ13がいることも予期していた。ゴルゴ13が拳銃を抜く速さは0.17秒。トロイのそれは0.16秒。トロイもゴルゴ13の銃弾を受けるだろうが、トロイの弾丸が一瞬早くゴルゴ13の心臓をぶち抜くと計算するトロイ。
ヘリコプターから降りたトロイ。ゴルゴ13もトロイの正面に立つ。
二人が拳銃を抜いた。トロイの銃弾はゴルゴ13の右をかすめ、ゴルゴ13の銃弾はトロイの胸を貫いた。銃を抜く速さより正確さこそが勝敗を分けるカギであることを悟り斃れるトロイ。
これまで3回ともゴルゴ13が引き金を引かなかった理由を、ソフィーがきく。
プラチナコインには米財務省の刻印"United States"ではなく"Federal Reserve"の刻印がされていた。つまりオマハ大統領はFRBに刃向かう気がなかったことだ。
キプロスのイワンは谷山志村予想を利用して暗号を作っていたことを読唇術で知っていた。
ハワード兄弟はディールコインではない他の暗号通貨を創っていたことをビルから落下しているときのホワイトボードの式を見てゴルゴ13はわかった。ディールコインはハッシュ関数だが、ハワード兄弟はカニンガム鎖だった。
ソフィーは「あなたこそが、数学者になるべきよ!」と言って、死んだトロイに抱きつく。
ゴルゴ13の拳銃が火を噴いた。
佐久元滋のディールコインが完成した。
【感想】
通貨制度、仮想通貨、数学者の人生を、ストーリーの中にふんだんに盛り込んだ読み応えたっぷりの内容の濃い物語だ。しかもストーリー展開を崩さないのはさすがだ。
経済は自然界にはなく、完全に人間が創ったものだが、人間が思うようにコントロールできない不思議なものだ、と私は思っている。それでも、21世紀は、20世紀やそれ以前に比べればだいぶコントロールできるようになってきているとは思う。
この作品は仮想通貨が出始めた頃に発表された作品で、仮想通貨と既得権ある銀行の戦いをうまくストーリーに散りばめて描いている。敵のトロイとソフィーも魅力的だ。
トロイに標的を殺されミッションを行わなかったゴルゴ13は依頼主に返金したと思うがその場面は作品中に描かれていない。
第552話 受難の帰日(きにち)(2015/04作品)
脚本協力:綾羅木恭一郎
ページ数:69ページ
依頼者:ヴォルフスアウト社社長ヴァーゲナー
ターゲット:メキシコ国外でヴォルフスアウト社プエブラ工場の技師長ホアキン・バスケスの悪事を明るみに出すこと
依頼金額:不明
狙撃場所:日本 豊橋の神野(じんの)埠頭の沖
殺害人数:0人
狙撃対象:Grille Type Nというシールを貼ったヴォルフスアウト社の車のブレーキホース
H:0人
メキシコ ベニート・フアレス国際空港に東洋通信の記者梶本が気乗りしない様子で現れた。その時テレビでタマウリバス州マリポーサ市の市長ロドルフォ・ゴメス氏がバラバラにされて発見されたと報じられた。梶本はゴルゴ13を思い出した。梶本は、第381話『両洋の狭間に』(SPコミックス第131巻)、第394話『ODA異聞』(SPコミックス第135巻)、増刊第91話『人形の家』(SPコミックス第167巻)で、ゴルゴ13の恐ろしさを嫌というほど知っていた。
Part1 気乗りのしない帰国
東洋通信メキシコ支局
梶本の母に頼まれ梶本を高校の同窓会に出席させるために適当なディスクを1枚持たせて、矢島支局長は梶本を日本の本社に向かわせた。
東京-ジャパン-
港区東新橋、東洋通信本社
ディスクを渡した梶本は、名古屋駅前のプラザロイヤルホテルの同窓会会場に向かう。
Part2 スクープの予感
プラザロイヤルホテル 愛知県立真清田高校第55期卒業生同窓会会場
同窓会で一人飲みする梶本に、同じクラスだった小畑が声をかける。小幡は第427話『爆弾魔(ボマー)』(SPコミックス第151巻)、第512話『日・ASEAN会場』(SPコミックス第184巻)にも登場した。
煙草を吸いに喫煙所に行った梶本は、そこでメキシコ経済省次官のオクタビア・ポンセを見つけた。プエブラ州にあるヴォルフスアウトの工場の技師長ホアキン・バスケスも一緒だった。彼らは税関や警察は心配ない、という主旨のことを話していた。彼らはそのホテルで開催されていた輸入自動車連合会中部支部総会懇親会のために来ていた。スクープのにおいを嗅ぎ取った梶本は同窓会から抜け出した。
Part3 小畑への依頼
小畑に、上司が、今日からしばらく薬物銃器対策課の前田警部補に協力するよう指示が出た。豊橋の沢上モータースにヴォルフスアウト社のメキシコの現地工場の人間が来る、ということだった。
Part4 張り込み失敗
豊橋市、愛知県
梶本はポンセ達を追跡したが振り切られていた。沢上モータースの正面にあるファミレスに入った梶本だが、そこへオクタビア・ポンセとホアキン・バスケスが現れた。
沢上モータースに侵入しようとした梶本だったが、警備員に止められた。裏手に回った梶本を背後から何者かが押さえつけた。
Part5 密輸のからくり
沢上モータースの男は裏の工場にオクタビア・ポンセとホアキン・バスケスを案内する。新車の枠組みの中に補強充填剤と称した密輸覚醒剤が入っていた。税関のX線検査もすり抜けるし、新車一台を廃車にしても、覚醒剤の価格に比べれば安い物だった。
Part6 刑事VSブン屋
梶本を捕まえたのは小畑と前田警部補だった。小畑は愛知県警の国際捜査課で、前田は薬物銃器対策課だった。名古屋を根城にする暴力団組織”昇愕会”が沢上モータースを通じて覚醒剤を密輸しているらしいことがわかり捜査していた。
梶本は前田警部補に脅されてオクタビア・ポンセがメキシコ経済省の次官だ、と話した。
Part7 社長からの依頼
1週間前、ドイツ
デューク・トウゴウとヴォルフスアウト社社長ヴァーゲナーがホテルの一室で会った。メキシコのプエブラ工場の技師長ホアキン・バスケスが技師長に上りつめたが、彼が麻薬カルテルの幹部だということがわかった。製造段階で麻薬を仕込み輸出していることがわかった。ホアキン・バスケスは、警察もメキシコ経済省次官のオクタビア・ポンセも取り込んでいるので、表立って動けない。
Part8 蛇(じゃ)の道は蛇(へび)
現在 三河港蒲郡地区-ジャパン-
ゴルゴ13がボートを出して豊橋の神野(じんの)埠頭に向かう。
ゴルゴ13はヴォルフスアウト社社長ヴァーゲナーの依頼を回想する。
ヴォルフスアウト社社長ヴァーゲナーの依頼は、メキシコ国外でホアキン・バスケスの悪事を明るみに出すことだった。ホアキン・バスケスを殺しても誰かが後を継ぐだけだし、カルテルは報復しようとするからだ。メキシコ国内ではうやむやにされるからメキシコ国外で悪事を明るみにすることが依頼内容なのだ。
ゴルゴ13はGrille Type Nというシールを貼ったヴォルフスアウト社の車を見つけ、ライフルで撃った。車は電柱に激突し割れたフレームから麻薬が見つかった。
ゴルゴ13はセントレア(中部国際空港)に向かう。
Part9 梶本の活躍
神野埠頭で事故を起こしたヴォルフスアウト社の車から覚醒剤が出た。メーカー自体が密輸に関与していることがわかったのだ。小畑と前田警部補は、沢上モータースに入り、沢上克俊を覚醒剤取締法及び関税法違反の疑いで逮捕した。梶本はスペイン語通訳として捜査に協力した。
Part10 編集長の顔が・・・
3日後
梶本はヴォルフスアウト社の新車を利用した覚醒剤密輸に関する記事を編集長に渡した。
メキシコに向かおうと空港にいた梶本を見送りに、小畑が来た。そして神野埠頭で事故を起こした車のブレーキホースからライフルによる弾痕が出た、とう話をした。
梶本はゴルゴ13の顔を思い出した。その時空港で梶本はゴルゴ13の姿を見た。おびえた梶本は小畑と飲むために一泊すると言って、飛行機に乗ることをやめた。
【感想】
気が小さくてどこかにくめない東洋通信の梶本が活躍する話だ。
今回は見事にスクープをモノにできた。
メキシコ工場で新車のフレームに覚醒剤を入れて密輸する、という凄い手口を阻止するゴルゴ13の狙撃が光る。
第543話 13年蝉の夏(2014/06作品)
脚本協力:ながいみちのり
ページ数:35ページ
依頼者:
1)不明
2)シェリーの夫で大金持ちのロバート
ターゲット:
1)有名な上院議員
2)ロバートの妻シェリー
依頼金額:
1)不明
2)不明
殺害場所:
1)ミシシッピ州 1km以上離れた強風が吹いていた丘の上
2)ミシシッピ州 ゴルゴ13とシェリーが会った、13年蝉が大発生している樹の下
殺害人数:
1)1人
2)1人
殺害相手:
1)有名な上院議員
2)大金持ちのロバートの妻シェリー
H:1人(大金持ちのロバートの妻シェリー)
ミシシッピ州-USA-
アメリカ北部には13年ごと、17年ごとに大発生する素数蝉がいる。
大金持ちのロバートの妻シェリーは、13年ぶりの蝉の大発生で13年前を思い出す。
夫のロバートは、ゴルフと称して、またあの若い"男"の所に行くのだった。
ロバートは、シェリーのことを「ちょうど良い玩具」だと言い切った。
酒を呑んだシェリーが運転手のパーカーに車を止めてもらい、素数ゼミが鳴く木の下で休む。
そこにゴルゴ13が立っていた。シェリーはダウンタウンの店でのランチをさそう。
二人がランチを食べている所にケラー保安官が現れた。
そして夕方ゴルゴ13とシェリーが寝る。
夫のロバートを失ったシェリーはゴルゴ13との一夜を忘れられない。
ケラー保安官は13年前の狙撃事件で、ケラー元保安官になってしまった。1km以上離れた横風吹き荒れる丘の上からの狙撃だった。
ゴルゴ13の姿がまた町で見つかった。ケラーとシェリーはゴルゴ13を追う。
ゴルゴ13は13年前と同じホテルに泊まった。
シェリーはケラーの元を訪れ、ゴルゴ13のことをきく。
ケラーは、13年前に起こった上院議員殺害事件の犯人かもしれない、と話す。
ケラーが警察に電話しようとすると、シェリーは灰皿をケラーの頭に叩きつけて彼を殺した。
ホテルのゴルゴ13に伝言を遺したシェリーの元にゴルゴ13がやってきた。
シェリーは自分に会うためにゴルゴ13が戻ってきたと思っていた。
夫を階段から突き落とし事故に見せかけて殺した、ケラーも灰皿の一撃で殺した、と告白し、ゴルゴ13とともに逃げようと提案する。
ゴルゴ13は「・・・・」だ。
シェリーはゴルゴ13が自分に会いに来たのではないのなら、自分を殺して、と言う。
ゴルゴ13はふところから拳銃を出し、銃口をシェリーに向け、13年蝉の鳴き声の中で。シェリーを撃ち殺した。
ゴルゴ13が、回想する。シェリーの夫、ロバートが、自分が事故死したら間違いなくシェリーに殺されたから、シェリーを自分のもと(つまりあの世)に送ってほしい、と言った。女に興味の無いロバートが妻をめとったのは、女としてこれほどの屈辱はなかっただろう、妻には本当に悪いことをしたと思っていた。
ゴルゴ13に依頼したのは、シェリーを苦しませずに天国に送れるから、とロバートが考えたからだった。
【感想】
哀しい女シリーズの一作と言える作品だ。
大金持ちの夫を持ったが、夫は女に興味の無いゲイの男だった。女としては屈辱だろう。そして、ゴルゴ13やその他の男と浮気を重ね、ついには夫を階段から突き落として殺した。そして夫に依頼されたゴルゴ13に殺される・・・
なんと哀しいストーリーだろう。
2024年の夏は221年ぶりに、13年蝉と17年蝉が揃って地上に出てくる年だった。テレビのニュースで見たが、その数は凄まじかった。
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