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さいとう・たかを『ゴルゴ13 57 河豚(フグ)の季節(とき)』(リイド社)(1985/08/05)

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====もくじ=====

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第187話 河豚(フグ)の季節(とき)(1982/08作品)

脚本協力:きむらはじめ
ページ数:161ページ
依頼者:リビア カダフィ大佐
ターゲット:マインベルグ商会社長M・H・マインベルグ
依頼金額:40万ドル
殺害場所:中国 上海の旧ユダヤ人収容所跡地
殺害人数:1人
殺害相手:マインベルグ商会社長M・H・マインベルグ
H:0人

 

Part1 外道
 記者のムラさんこと村本は、東京神田で古本漁りをするのが唯一の趣味だ。
 家に帰り、古本屋で入手した本を読み始めると、満洲にユダヤ人がいた、という極秘の文書が入っていた。
 
Part2 さぐり
 村本は、戦後最大の謎の人物マインベルグを追いたがっていた。
 村本らが追った一連の武器輸出についてマインベルグが関与している、と村本は見ていた。
 マインベルグはポーランド系で戦時中は上海にいた。その時、日本の黒幕と結びついた、と村本は推理していた。
 デスクは、もう十分、キャンペーン効果があった、と言う。
 村本は、上海でユダヤ人難民を担当した辻重民海軍大佐が存命なのでその取材をさせてくれ、と懇願する。
 
Part3 魚信(あたり)
 辻重民元海軍大佐を訪ねた村本は、ユダヤ人定住計画について、辻から聞く。
 河豚(フグ)計画と呼ばれたユダヤ人定住計画は、ユダヤ人を利用するのはフグ料理みたいなものだから、と名付けられた。
 ドイツに排斥されたユダヤ人を満洲に定住させれば、ユダヤ人の技術で地下資源を開発でき、英米のユダヤ資本も満洲に投下され、米政府も動かして日貨排斥も止められると考えたのだ。
 ドイツを追われたユダヤ人は満洲に行かずに上海共同租界に流れた。
 そして、太平洋戦争が始まり、河豚(フグ)計画は頓挫した。
 辻重民元海軍大佐は、マインベルグや日本の黒幕たちが40年前上海で何をしたか話し始めた。
 
Part4 バレ・その1
 地下鉄で、村本は、辻重民元海軍大佐のインタビュー・テープが入った鞄を網棚の上に置いた。
 口ひげの外国人がその隣に鞄を置いた。
 帰宅した村本がテープを聞こうとしたが音声が消されてしまっていた。
 胸騒ぎがした村本は辻重民元海軍大佐の家に行ったが、ガス漏れで辻が死んだ。
 
Part5 バレ・その2
 ワシントンの議会図書館にあるフグ計画書の原本を見るために、村本は休暇を使って向かう。
 仕事での出張はデスクの許可が下りなかったのだ。
 ワシントンの図書館で目的の文書を見つけた村本だったが、コピーをとろうとしたら、その文書は消えていて、村本は図書館からつまみ出された。
 
Part6 坊主
 村本がオフィスに戻ると、武器輸出取材班は解散していた。
 マインベルグの妹のナタリアと日本海軍東郷明少尉の件で聞きたいことがある、と言って村本は、マインベルグ商会に直接乗り込んだ。
 マインベルグが出てきた。
 
Part7 フグの告白
 マインベルグは、上海で難民代表委員でありながら、帝國陸軍上海地区司令官橋川や、政商の丘珠が、ユダヤ人難民に送られてくる金品を横領したり国際赤十字の援助物資を横流しするのを黙認していたことを、村本が問い詰める。
 これは戦後アメリカ議会の調査団に証言していることで今さら隠すことではなかった。
 それをネタに日本の黒幕たちに武器輸出に協力させている、と問い詰める村本だったが、マインベルグはノーコメントだった。
 フグ計画、ユダヤ人定住計画について、村本がきくと、初耳だとマインベルグは答えた。
 
Part8 フグの群れ
 マインベルグは42年前の夏、ポーランドからリトアニア国境を越え、両親とはぐれ、妹のナタリアとともに、老師ラビ・シャパティに励まされて、リトアニアのコブノへ向かった。
 コブノで日本の通過査証(トランジット・ビザ)を得たマインベルグとナタリアはシベリア鉄道でウラジオストックへ向かった。
 ウラジオストックからは船で敦賀に上陸しその後神戸に着いた。
 二ヶ月後、ナチスはコブノに入り、25,000人のユダヤ人を処分した。
 1941年夏、彼らは上海租界に入った。
 
Part9 上海のフグたち
 上海の港には、海軍大佐辻重民とその部下東郷明少尉がいた。
 しかし生活は厳しかった。
 
Part10 短い凪(なぎ)
 辻大佐の紹介でフランス租界のクロードさん宅でナタリアは仕事を得た。
 マインベルグも東欧ユダヤ人に委員会の会計係という仕事に就いた。
 やがて東郷明少尉とナタリアの間に恋が芽生え、二人は結婚し男の子を授かり英治と名付けた。
 太平洋戦争が始まると、上海のユダヤ人は共同租界内の収容所に移された。
 日本の軍人たちは、丘珠を囲み酒を飲んでいた。
 東郷明少尉は、盗泉の水は飲まない、と言って、軍人たちを日本刀の鞘で倒した。
 丘珠には日本刀を抜いたが、「お前など刀の汚れだ・・・」と言って刀を鞘に戻した。
 
Part11 時化(しけ)
 東郷明少尉は、蒔田少尉ら5人の復讐にあい、射殺された。
 ナタリアは輪姦された。
 
Part12 潮目
 東郷明少尉殺しの捜査は進展しなかった。
 辻重民大佐は南方に転出することになった。
 マインベルグはナタリアと英治を収容所にひきとった。
 マインベルグは、難民経済委員という地位を利用して、上海地区陸軍司令官橋川将軍の庇護の下、ドルやスイスフランを円や軍票に変え、わずかのマージンをスイス銀行に貯めていった。
 丘珠はそれらの外貨を政府に相場より高いレートで売り渡していた。
 
Part13 フグ料理の注文①
 リビア・トリポリ郊外・エルガネ砂漠
 リビアのカダフィ大佐が砂漠の真ん中で護衛も無く祈っていた。
 そこへゴルゴ13が現れた。
 
Part14 フグの"園(シオン)"
 マインベルグの話は続く。バルフォア宣言に基づき、パレスチナの地にユダヤ民族の祖国を作ろうとするシオニズム運動が強まっていた。
 ドイツが敗れた。マインベルグは日本の敗北を早めるために、中共軍を通じて、日本軍の秘密通信基地の所在を米軍に渡した。
 その秘密通信基地はアメリカ軍の空襲を避けるためユダヤ人収容所内にあった。
 アメリカ軍の空襲で、爆弾が収容所内にも落ちた。
 その空襲でナタリアが死んだ。
 日本敗戦後、英治をラバ・シャパティに託して、祖国イスラエルに送った。
 英治は、ラビ・シャパティの友人でのパルマハ(打撃部隊)の指揮官J・B・ハガナー将軍に気に入られ、銃器と格闘技に異常な才能を示した。
 しかし、イスラエルでも差別はあり、有色人種は、差別されていた。
 1967年の第三次中東戦争で英治の属する部隊は全滅し英治も行方不明になった。
 英治は、単なるナショナリズムに堕したシオニズムに失望し死を選んだのかもしれない、マインベルグは言った。
 英治が生きていれば40歳。二度と会えないのだ、とマインベルグは言った。
 
Part15 フグ料理の注文②
 リビア・トリポリ郊外・エルガネ砂漠
 カダフィ大佐の依頼は、ユダヤ人武器商人M(モシェ)・H(ハルツ)・マインベルグ暗殺だった。
 イスラエルは、マインベルグを通じて、日本の優れた部品を買い、これを組み込み、兵器を作って武器を売っているのだ。
 シナイ半島返還が成った今、レーガンがアラブ諸国に武器売却を始める。
 イスラエルはそれに対抗して、マインベルグを通じて日本から新半導体を大量に買い入れようとしている。
 カダフィ大佐にとってはマインベルグは商売敵でもあった。

 

Part16 調理人の追跡
 トリポリ
 カダフィ大佐とゴルゴ13が接触したことに気づいたモサドはゴルゴ13を尾行する。
 ゴルゴ13は羊の群れを使って尾行をまいた。
 モサドは、空港で賄賂を使ってゴルゴ13がカイロ、モスクワ経由で東京に向かったことを知った。
 
Part17 フグの守り
 東京 マインベルグ商会
 ゴルゴ13に狙われている、という情報が、マインベルグに伝わった。
 ゴルゴ13の顔写真を見て、また、ゴルゴ13が東郷と名乗ることがあると聞いて、マインベルグは、動揺する。
 
Part18 ポイントの選択①
 熱海に避難しようとしたマインベルグは、味方もまいて新宿西口行きのバスに乗り込んだ。
 
Part19 ポイントの選択②
 イスラエル テルアビブ
 ゴルゴ13が東京に向かっていること、マインベルグが特別警護班を断ったこと、マインベルグが消えたことが報告された。
 
Part20 仕掛け
 東京・永田町 首相官邸前
 幹事長が丘珠の屋敷に急いだ。
 ゴルゴ13がマインベルグを狙っていること、マインベルグを守ることは、日本の兵器産業を守ることにつながり、日本の国益なのだ、と言う丘珠だった。
 
Part21 無駄網
 ゴルゴ13は、モスクワからイルクーツク経由で中国へ向かった。
 マインベルグは一人上海へ向かっていた。
 
Part22 フグ料理
 上海を一人歩くマインベルグは、ナタリアや英治のことを思い出していた。
 そこへゴルゴ13が現れた。
 マインベルグは、ゴルゴ13に、おいの英治・マインベルグ・東郷として話しかける。
 ゴルゴ13は無言でマインベルグを射殺した。
 
Part23 大バレ
 村本はデスクに記事を見せた。
 そこへマインベルグが上海で殺された、と連絡が入った。
 村本の記事はボツになった。
 季節は夏だった。
 

【感想】
 ゴルゴ13出生譚である。
 東郷明少尉とユダヤ人ナタリアの息子英治・マインベルグ・東郷がゴルゴ13候補だ。
 この頃の軍人が外国人と制式に結婚できたとは思えない。
 確か当時の軍人は結婚時に厳格な身分調査がなされたはずだ。
 だから東郷明少尉とナタリアの間も、正式な結婚ではなかったかもしれない。
 物語中で他の軍人が東郷明少尉に言った言葉の中で「囲っている」という表現があったから、そうだったのかもしれない。
 
 今回の依頼者は、リビアの独裁者カダフィ大佐だ。彼は2011年に死んでいるが、1982年のこの作品発表時は、現役バリバリだった。
 ゴルゴ13の歴史の長さを感じる。
 
 この作品は、満洲建国時の五族協和や、大東亜共栄圏の理想と現実、シオニズム運動の理想と現実の乖離がストーリー中に巧みに描かれた傑作だ。

 

 

第191話 ラスト・ループ(1982/12作品)

脚本協力:北鏡太
ページ数:80ページ
依頼者:アメリカ空軍アクロバット・チームのリーダー、マイクルの母であるメラニー
ターゲット:マイクルの機体に細工をしてアクロバット・チームの名を死なせたアンディ・パーカー
依頼金額:不明(政府からの弔慰金の一部)
殺害場所:アメリカ
殺害人数:1人
殺害相手:マイクルの機体に細工をしてアクロバット・チームの名を死なせたアンディ・パーカー
H:0人

 

Part1 メラニー大尉の母
 ウィスコンシン州・ミルウォーキー
 マッジの誕生日祝いに、飛行機乗りである息子マイクルは駆けつけられない。
 マッジの夫でマイクルの父は爆撃機操縦中に亡くなった。

 

Part2 隊長を訪ねた男
 ネバダ州・インディアンスプリングス・ネリス空軍基地
 マイクルはアメリカ空軍アクロバット・チームの一員だった。
 マイクルは仲間と一緒に、バーから、母親に誕生日祝いの電話した。
 マッジは初孫を見たい、と言い、息子が夫の二の舞になることを心配していた。
 そこへアンディ・パーカーという男がやって来た。
 マイクルは自分の部屋にパーカーを連れて行く。
 
Part3 意志の弱い人間
 パーカーは、マイクルに、復帰の相談に来たのだ。
 パーカーはかつて麻薬に溺れたのだった。
 また、人種偏見があるのも問題だった。
 
Part4 パーカーは去った
 復帰を断られたパーカーは航空機の格納庫に行き、垂直尾翼に1のマークがある機体を見つめていた。
 パーカーを探しに来たネッドに、見納めだからなごりを惜しませてくれ、と言ってからパーカーは去った。
 
Part5 最後の訓練飛行
 マイクルたちが曲技飛行の訓練をしていた。
 マイクルは、高度計が狂っていること、無線が通じないことに気づいた!!
 しかし遅すぎた!!
 4機とも地上に激突した。
 
Part6 その頃・・・のふたり
 パーカーは麻薬を注射してうつろだった。
 マイクルの母メラニーの所に電話がかかってきた。

 

Part7 パーカーの哄笑
 パーカーはテレビで曲技飛行チームの事故を見て、大笑いしていた。
 
Part8 伍長の告白
 テキサス州ダラス
 ネッド伍長がメラニーに、パーカーが格納庫に入り細工をした可能性があることを話した。
 
Part9 母親の決心
 ウィスコンシン州・ミルウォーキー
 メラニーはロバーツ弁護士にネッド伍長の告白の件を相談した。
 しかし、証拠がないこと、パーカーが麻薬常習者であることから、心神喪失で無罪になるだろう、と弁護士は話した。
 
Part10 朝もやの湖畔にて
 ミシガン湖
 メラニーは3年前まで国防相に勤めていたのでゴルゴ13のことは知っていた。
 メラニーは、パーカーが白か黒かはっきりさせた上で、復讐してほしい、とゴルゴ13に依頼した。
 
Part11 "判決"への行動
 ロックウェル・スパローコマンダーに乗って、畑に農薬を撒くパーカーを車から観察するゴルゴ13。
 
 ユタ州 州都ソルトレーク・シティー
 ゴルゴ13が求人広告を出した。
 またラジオ局を訪れ、カネを出して依頼する。
 
Part12 証人喚問
 アンディ・パーカーのもとに事故調査委員会と名乗る者が訪れ、証人として喚問された。
 またラジオでは、曲技飛行チームの事故が人為的な工作による可能性があると報じていた。
 その放送は、ゴルゴ13がラジオ局に依頼して、アンディ・パーカーの飛行機の直下で放送していた。
 
Part13 逃走したパーカー
 パーカーは飛行場へ行き、飛行機で逃走した。
 
Part14 "判決"は"有罪"
 証人喚問を恐れて逃亡したので、ゴルゴ13による判決で、パーカーは有罪となった。
 複葉機に乗ったゴルゴ13がパーカーの目の前に現れ、M16で狙撃した。
 
【感想】
 ゴルゴ13が、パーカーの有罪無罪の判断をどうやるのか、と思った。
 求人広告を出し事故調査委員会を装わせ、ラジオ局に偽の放送を流させて、判決を下す展開が面白かった。
 複葉機でパーカーの機体を追跡(待ち伏せか?)したゴルゴ13だった。
 複葉機だと射撃時に安定するからだとは思うが、パーカー機が全速力で逃走した場合、追いつけるのか心配だ。
 ゴルゴ13のことだから、そこは計算済だとは思うが。

 

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