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さいとう・たかを『ゴルゴ13 106 オフサイド・トラップ』(リイド社)(1998/05/06)

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第328話 BEST BANK II オフサイド・トラップ(1994/01作品)

 

脚本協力:静夢
ページ数:129ページ
依頼者:大蔵省国際金融局山崎
ターゲット:財界の大物ランドルフ
依頼金額:不明
殺害場所:

  1)アメリカ・ニューヨークのハイウェイ上

  2)アメリカ・ニューヨークのホテル
殺害人数:

  1)1人

  2)1人
殺害相手:

  1)財界の大物ランドルフ

  2)大蔵省国際金融局山崎
H:0人

 

1993年夏、東京では円高が進み1ドル100円に達しようとしていた。

 
Part1 灼熱
 元・日銀総裁の松下は、円高の進展に困っていた。大蔵事務次官の荒井がそばにいる。そこにアメリカ財務次官リプケンから電話が入った。リプケンは今後も円高誘導を進める、と言った。元東亜銀行頭取の坂本が生きていれば、と悔しがる松下だった。

 

Part2 追憶

 元東亜銀行(現やまと銀行)秘書室長・滝田は坂本の葬儀を思い出していた。そこへ丸山がやって来て、食事に誘う。

 

Part3 憂鬱

 四菱グループ総帥・志村の屋敷でやまと銀行頭取の山城ともう一人の男がいて話をする。二年以内に1ドル90円体制を作り上げる、と言った。

 

Part4 思惑

 アメリカ、ニューヨークの競馬場で財務次官リプケンと財界の大物ランドルフが、競馬は為替相場のようにはうまくいかない、と笑う。リプケンは、松下に日米包括協議における数値目標の設定を迫ったので、返事を待つ間少し円安に戻す、と言った。

 ケネディ国際空港にゴルゴ13が降り立った。

 

Part5 遺志

 大蔵省国際金融局の山崎が、やまと銀行秘書室長の滝田に接触した。そして坂本の遺志は自分の中に生きていて、今から同行してほしい、と言った。2人は坂本の墓前に行き、話をする。山崎は、バブルの清算に追われる日本を考えると円安に向かってもいいのに円高に向かっているのはアメリカの罠だと言った。坂本は、アメリカが政治力を背景に為替問題を人質に日本を脅迫する日が来ることを予見しアメリカの横暴を阻止する"計画"を山崎に託したのだ。

 

Part6 第3の男

 元日銀総裁の松下のところに、四菱グループ総帥の志村とやまと銀行頭取の山城ともう一人の男が来た。松下は赤字国債を発行して減税しろ、と言うのか、ときいた。志村らは黙っている。松下は自助努力が先だ、と言う。志村らは名案があると言われたから来た、と言った。松下はそんな話はしていない、と言った。

 そこへ、大蔵省国際金融局の山崎が、やまと銀行秘書室長の滝田が入ってきた。2人は、坂本の遺志だ、と話し始めた。

 

Part7 キャンペーン

 アメリカワシントンD.C.では、ヒラリーが国民皆保険制度の確立を唱えていた。山崎は、ボブに金を出して、ヒラリーに国民皆保険制度を実行させようとしていた。

 

Part8 報復

 リプケンは、松下に、目標数値の設定について問いただした。松下は断った。円高がどんどん進み始めた。

 

Part9 逆転

 リプケンと、軍需屋の男GP社のスタインベックが鹿狩りを楽しんでいた。スタインベックは、自分達に逆らうとJFKと同じ運命を辿る、と脅す。リプケンは四菱電算をおみやげにする、と言った。工場進出の便宜を図る代わりにGP社との技術提携を約束させ、GP社の株買取も約束させた。スタインベックは喜んだ。

 

Part10 接近

 やまと銀行秘書室長滝田が、ニューヨーク、ウォール街にある全米公務員退職者年金基金を訪問した。滝田はGP社の株式議決権を買い取りたい、と言った。

 ドイツのベルリンでは大蔵省国際金融局の山崎が、国際連合での常任理事国入りの話をして、坂本の遺志である計画を話し始めた。

 

Part11 危機

 リプケンと財界の大物ランドルフは、進む円高に高笑いする。

 滝田はニューヨークでバスに乗る。ナイフを持った2人組が襲ってきた。バスの中にゴルゴ13がいて、滝田を助け、2人組を痛めつけ追い出した。

 

Part12 対決

 山崎は女を抱きながら、明日、たっぷり思い知らせてやる、と思う。

 GP(ゼネラル・パシフィック)社の役員会で、四菱電算との技術提携が発表された。そこへ滝田が入ってきた。

 

Part13 提案

 滝田はGP社の発行株式の3%を持っている。また株式議決権行使代理人とする委任状が発行株式の48%あった。そしてスタインベック会長の解任を要求した。

 

Part14 破滅

 100円を割った円高を見てリプケンが得意の絶頂にあった。そこへ大蔵国際金融局の山崎が現れた。日本がGP社の株式議決権の過半数を握ったことを告げ、自分に協力しろ、と話した。

 滝田はルームナンバー2203の山崎の部屋を訪ねた。そこにはゴルゴ13がいた。山崎は、ゴルゴ13がスナイパーだと話し、坂本が松下と志村によって殺された、と言った。そして明日午前10時にランドルフ暗殺を依頼した、と話した。滝田は反対した。

 

Part15 狙撃

 山崎は、リプケンを訪ね、ランドルフが事故にあうこと、明日、日本とドイツが公定歩合の利下げをする、と言った。リプケンは動きがとれなくなった。山崎は古い秩序に引退してもらうつもりだった。その頃、ゴルゴ13は財界の大物ランドルフを狙撃していた。滝田が警察に通報していたため、すぐに警察がやって来た。ゴルゴ13は隣のビルに飛び移って逃走した。

 

Part16 宣告

 リプケンと山崎がテレビ会議で、松下や志村と話している。山崎をほめる松下や志村だったが、山崎は、古い体制を払拭する、と宣告した。

 

Part17 裏切り

 坂本の遺志を継いで、松下や志村に引導を渡したことを喜ぶ山崎だったが、部屋にはゴルゴ13がいた。ゴルゴ13は、裏切りは許さない、と言った。ゴルゴ13は山崎を射殺した。

 

Part18 帰郷

 日本に帰ろうとした滝田は新聞でランドルフが殺されたこと、山崎も殺されたことを知った。日独は協調利下げをしていた。

 

【感想】
 第320話『BEST BANK』の続編だ。SPコミックスの目次では『オフサイド・トラップ』という表題だが、本編やSPコミックス・コンパクトの目次では、『BEST BANK II オフサイド・トラップ』と書かれている。オフサイド・トラップとは、相手チームの選手をオフサイドポジションに誘い込むことで、相手チームにオフサイドの反則を取らせるプレーだ。ディフェンスラインを横一直線の状態にし、相手がパスを出す瞬間にディフェンスラインを少し引き上げ、パスを受ける相手をオフサイドポジションに置き去りにして、オフサイドにするのだ。

 坂本の遺志で山崎や滝田がやろうとしたことをたとえたのだろう。

 山崎は殺されたが警察に通報した滝田が殺されなかったのはなぜだろう。山崎は滝田の名前をゴルゴ13に話していないが、ゴルゴ13なら警察に通報したのが滝田だとすぐ調べてわかるだろう。ゴルゴ13が滝田に借りもないので、不思議だ。

 

第322話 直線と曲線の荒野(1993/07作品)

脚本協力:さいとうひろし
ページ数:85ページ
依頼者:

 1)アメリカの石油会社社長 E・マクレガー

 2)大統領書記官ピルゼンスキー

 3)不明
ターゲット:

 1)デンバーの友人

 2)アルバトフ少将と魔弾AK-93の図面と製造施設

 3)アメリカの石油会社社長 E・マクレガー
依頼金額:

 1)50万ドル

 2)50万ドル

 3)不明
殺害場所:

 1)アメリカ

 2)ロシア共和国、ウラル地方、チェリャビンスク、ユジノ兵器開発局の弾薬庫

 3)ロシア共和国
殺害人数:

 1)1人

 2)2人

 3)1人
殺害相手:

 1)デンバーの友人

 2)ユジノ社のアルバトフ少将とそのボディーガードであるアンドレイ・セミョーノフ

 3)アメリカの石油会社社長 E・マクレガー

H:1人(娼婦ナターリア)

 

Part1 赤い発明家の野心
 ロシア共和国、ウラル地方、チェリャビンスク、ユジノ兵器開発局が廃止されるとともにアルバトフ少将も退官する。だが、実際には、中央は独立採算の反民間企業(コペラティブ)にしてアルバトフ少将の発明を外国に売り飛ばそうとしていた。アルバトフ少将は、中央に密告していたグレチコ大佐を元スペツナズ伍長のアンドレイ・セミョーノフに殺させた。

 

Part2 "G"を薦める男

 モスクワで大統領書記官ピルゼンスキーがアメリカの石油会社のE・マクレガーと会っていた。ピルゼンスキーはトランス・ウラルの政令第2257~2261鉱区に関する原油の開発権、採掘利用権をむこう99年間分、売り渡した。しかしそこは少数民族の自治区と境界が入り組んでいて政情不安定な地区だった。

 マクレガーは、ピルゼンスキーに”G”カードについて説明した。10年以上前、デンバーの古い友人でカスピ海の油田を探していた男がGRU(旧ソ連国防軍情報管理本部)のデータベースの中にG-13というファイルを見つけ、それがゴルゴ13だった。マクレガーは50万ドルで、友人の始末をゴルゴ13に依頼した。

 その結果、マクレガーの会社は躍進した。

 
Part3 モスクワの夜

 アンドレイ・セミョーノフは娼婦の名ターリアがお気に入りだったが、彼女は東洋人の男に買い切りされていた。その男はゴルゴ13だった。ゴルゴ13は、ナターリアの出身地がチェリャビンスクだと知っていた。その上で、ナターリアのアパートでもっと話を聞きたい、と言った。ナターリアのアパートに向かう時、アンドレイ・セミョーノフと目が合った。

 

Part4 遠来の客

 ユジノ社に台湾人の東を、アンドレイ・セミョーノフが案内する。ユジノ社内の銃コレクションを見せるアルバトフ少将は、M-16やその試作自動小銃AR-10を見せる。だが東が知りたがっていたのはAK-93だった。

 

Part5 "AK-93"の正体

 試射場に案内したアルバトフ少将は、AK-93の正体が、横風の影響をまったく受けずに直進する7.62mmライフル弾頭だった。アンドレイ・セミョーノフが試射した弾丸は横風の影響を全く受けず直進した。

 

Part6 中央と地方の確執

 アンドレイ・セミョーノフは、ユジノ社に侵入した男をAK-93で殺した。どうやら中央が派遣した男のようだった。

 

Part7 悩み多き"中央"

 モスクワのロシア共和国政府では、ピルゼンスキーが大統領に呼ばれていた。トランス・ウラルで大量の最新武器を用いた反乱暴動の兆しが見えていた。民間企業に転換した一兵器開発局が裏で後援している気配が濃厚だった。万一、独立すると、有望な油田の一部、一個の戦略空軍基地、東ウラル軍需工業コンプレクスがロシア共和国から分離される可能性があった。ピルゼンスキーは解決のために50万ドル必要だと話した。

 

Part8 弾薬庫地区での取り引き

 アルバトフ少将と東がAK-93の取り引きを始めた。中央が研究所を監視し始めたので弾薬庫で契約をすることになったのだ。契約の手付金9万9千ドルを受け取るまで中央に邪魔されたくないのだ。アルバトフ少将はゴルゴ13がチェリャビンスクに向かっている、という情報をアンドレイ・セミョーノフに伝えた。

 

Part9 "魔弾"の餌食

 警察が契約の現場に踏み込み東が拘束され、図面と現金を持って行かれた。アンドレイ・セミョーノフにアルバトフ少将が、警察を仕留め、金と図面を取り戻すよう命令した。アンドレイ・セミョーノフは警察の3人を殺した。

 

Part10 弾薬庫地区炎上

 ゴルゴ13が弾薬庫を次々と爆破していった。

 東と警察が乗っていた車に銃弾が当たり図面とカネが炎上した。どうやらゴルゴ13の射撃のようだ。アルバトフ少将が弾薬庫の一つに向かって逃走した。そこへアンドレイ・セミョーノフとゴルゴ13が姿を現した。

 アンドレイ・セミョーノフが撃った。ゴルゴ13がかわした。超低伸弾道であることを見抜いた。ゴルゴ13は立ち上がって引き金を引いた。弾道はグイッとバナナのように曲がってアンドレイ・セミョーノフを殺した。弾薬庫に逃げ込んだアルバトフ少将だったが、扉のすき間からゴルゴ13がアルバトフ少将を狙撃した。次の弾丸を弾薬庫内の弾薬に命中させ弾薬庫を爆破した。

 

Part11 "切り札"を使った男

 ピルゼンスキーは、チェリャビンスク市の軍研究所の弾薬庫地区の爆発事故を報じるテレビを見ながらほくそ笑む。

 彼がゴルゴ13への依頼者だった。次のニュースはアメリカの石油会社社長E・マクレガーの死を報じていた。彼の会社は多額の違約金を支払い石油鉱区から撤退する模様だった。

 

【感想】
 ソ連崩壊に伴い、軍や政府機関が生き残りのためにビジネスに走る様子が描かれている作品だ。ピルゼンスキーがE・マクレガーを殺すよう依頼したのか、ゴルゴ13との契約を破ってピルゼンスキーに話したからゴルゴ13が有罪と判定して殺したのかわからない。アンドレイ・セミョーノフの直進する弾丸とゴルゴ13によるバナナ・シュート弾の対決が見物だが、さすがはゴルゴ13だ。

 

増刊第34話 血液サンプルG(1993/08作品)

脚本協力:竹内とおる
ページ数:43ページ
依頼者:なし
ターゲット:なし
依頼金額:なし
殺害場所:アメリカ・ニューヨーク
殺害人数:3
殺害相手:ゴルゴ13の血液とゴルゴ13の血液を分析しようとしたジェームス・シンプソン博士と助手のソフィア・マイルズとCIAのレスリー
H:0人

 

アメリカ、ニューヨークのホテルで、腸チフス患者が判明し専門の医療班が向かっている、という放送が入った。
 
Part1 血液学者シンプソン
 血液学者ジェームス・シンプソンが遺伝子から人種が明らかになる、と講演で話をしていた。約12万年前に白人種、蒙古系グループが黒人種から分化し、約6万年前に蒙古系と白人種が分化したという説がある。

 看護師がゴルゴ13から採血する。ゴルゴ13が、「間違っても・・・俺の血液を腸チフス検査の目的以外に・・・使わない事だ・・・」と警告した。

 

Part2 背後にいる者

 シンプソン博士の講演の最後に血液型による性格判断について質問が出たが、明言は避けた。

 シンプソン博士はゴルゴ13の血液分析をCIAのレスリーに依頼されていた。ゴルゴ13から採血したのは助手のソフィア・マイルズだった。

 

Part3 血液データ・バンク

 ゴルゴ13の血液を分析すると、蒙古系民族特有の遺伝子ab3stを持っていた。分析を進めてゴルゴ13のルーツがどこか判明するのだ。

 

Part5 危険なビジネス

 CIAはゴルゴ13が泊まっているホテルの宿泊客に腸チフス菌を感染させ、ゴルゴ13に腸チフス感染の疑いをかけて採血した。その理由をソフィアはシンプソン博士に質問した。シンプソン博士は最重要機密だと答えた。そこにゴルゴ13から電話が入った。シンプソン博士は、腸チフス菌が検出されなかったから退院していい、と答えた。ゴルゴ13は「断っておくが・・・残った俺の血液は焼却処分することだ・・・くれぐれも・・・」と警告した。

 ゴルゴ13の血液分析が進み、バイカル、中国東北部、日本に絞られてきた。

 

Part6 ルーツ判明

 中国東北部が消えた。日本かバイカル湖周辺どちらかになってきた。ゴルゴ13はシンプソン博士がCIAのレスリーに電話しているところを盗聴して、「有罪(ギルティ)・・・」と断定した。そして送電線を狙撃して停電させた。

 ゴルゴ13の血液をクーラーボックスに入れて運び出そうとしたとき、その試験管をゴルゴ13が狙撃して破壊した。二弾目でシンプソン博士を射殺した。ソフィアは何も知らないから撃たないでくれ、と命乞いした。しかし電気がつくとコンピュータにゴルゴ13のルーツが判明した結果が表示された。そこで「あなたのルーツがわかったわ・・・あなたのルーツ、それは・・・」と言ったため、三弾目でソフィアは射殺された。四弾目でCIAのレスリーを射殺した。


 
【感想】
 ゴルゴ13の血液を分析してルーツを探ろうとしたCIAとシンプソン博士だったが、もう少しで判明するところで失敗した。ソフィアは命乞いして逃げればよかったのに、結果が判明したら、それを言おうとして殺された。ゴルゴ13はコンピュータを破壊したのかどうかは作品中では描かれていない。ゴルゴ13のルーツがどこだって、CIAなど世界の諜報機関にとって今さら関係ないと思うのは私だけだろうか?

 
 

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