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さいとう・たかを『ゴルゴ13 109 五十年の孤独』(リイド社)(1998/10/05)

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第334話 五十年の孤独(1994/08作品)

 

脚本協力:国分康一
ページ数:123ページ
依頼者:ゴールドシュミット財閥のドン、ユダヤ人の誇りであるレオポルト・ゴールドシュミット会長
ターゲット:レオポルト・ワレンバーグを収容している収容所長のメンコフ大佐が持っているリモコンスイッチとワレンバーグの身に危険を及ぼそうとする相手の排除
依頼金額:不明
狙撃場所:
  1)ロシア・北ウラル丘陵地帯の収容所
  2)ロシア・北ウラル丘陵地帯の湖のほとり
  3)ロシア・フィンランド湾
殺害人数:
  1)0人
  2)5人
  3)2人
狙撃対象:
  1)レオポルト・ワレンバーグを収容している収容所長のメンコフ大佐が持っているリモコンスイッチ
  2)ロシア・北ウラル丘陵地帯の収容所の警備兵とコワルスキー大尉
  3)レオポルト・ワレンバーグを収容している収容所長のメンコフ大佐とヘリコプターのパイロット
H:0人

 ロシア・北ウラル丘陵地帯の収容所にたった一人の収容者がいた。
 医師の診察では、収容者はガンで一刻も早く大病院に移送する必要があった。
 メンコフ大佐は医師の提案に対してどうするか思案していた。
 
Part1 小都市の蠢動
 チェチェン人武器商人に対して、AKM(カラシニコフ・オートマチックライフル)、対戦車ロケットランチャー、催涙グレネード弾、手榴弾を要求した男が、もう一つデカい得物がほしい、と言った。
 ロシア・サンクトペテルブルク(旧レニングラード)から約180km離れた、人口20万の小都市・ノブゴロドのホテルに、アメリカ人のジム・モリソンがやって来た。
 ジム・モリソンの部屋にバードがやってきた。
 武器調達はネイサンガ実施した、とバードが言った。
 水陸両用機も入手できたのであとは指令を待つだけだった。
 
Part2 ユダヤ人の名誉のために
 ニューヨークで、ゴールドシュミット財閥のドン、ユダヤ人の誇りであるレオポルト・ゴールドシュミット会長が、CIA特別工作局本部長のマイヤーを招待した。
 レオポルト・ゴールドシュミット会長が、ユダヤ人にとっては神に等しいラウル・ワレンバーグが生きていた、と言った。
 ワレンバーグは、第二次世界大戦中に、10万人のユダヤ人を救った男だった。
 北ウラル丘陵地帯の収容所に監禁されているのだ。
 ゴールドシュミット会長が傭兵を集めているのはそのためだった。
 ゴールドシュミット会長は、マイヤーにゴルゴ13へのコンタクトを依頼した。
 
Part3 エルミタージュ
 ロシア、サンクトペテルブルク、エルミタージュ国立美術館にゴルゴ13が現れ、M16を入手した。
 ジム・モリソンらに決行が明後日朝と決まったと連絡が入った。
 
Part4 ホロコーストの記憶
 ゴールドシュミット会長が、マイヤーに、思い出を語る。
 ナチスドイツがユダヤ人抹殺を始めた頃、アメリカのルーズベルト大統領が、ユダヤ人救済のためにWRB(戦時難民庁)を設立し、ワレンバーグに白羽の矢を立てた。
 ワレンバーグは時に刃賄賂を渡してユダヤ人を助けた。
 1944年10月15日、ハンガリーのファシスト、矢十次党が武装蜂起し、政権を奪い、シュッツパス(保護証書)を認めないと通告した。
 ワレンバーグは12月に、ナチスのアイヒマンに命を狙われていた。
 1945年1月17日、ソ連軍によるハンガリー解放の日、ワレンバーグは姿を消した。
 
Part5 強制収容所の一夜
 メンコフ大佐はノブゴロドに滞在中の外国人全員をコワルスキー大尉に調べさせた。
 メンコフ大佐の手には、ワレンバーグの体につけたプラスチック爆弾のリモコンスイッチがあった。
 
Part6 傭兵たちの一夜
 明朝6時30分、決行だ。
 
Part7 決行の朝
 傭兵達が持ち場に着いた。しかし決行の合図の銃声がまだしない。誰が銃声を発するのかも彼らは知らなかった。
 ゴルゴ13がM16を構えた。
 ゴールドシュミット会長からの依頼は、ワレンバーグの体につけたプラスチック爆弾のリモコンスイッチ狙撃だった。
 そして、ワレンバーグの身に危険を及ぼそうとする相手の排除を依頼した。
 ゴルゴ13がメンコフ大佐が手に持つリモコンスイッチを狙撃して破壊した。
 傭兵達が突入し、ワレンバーグを救出した。
 
Part8 追う者、追われる者
 メンコフ大佐は、ワレンバーグの体にプラスチック爆弾の他に発信器も取り付けていた。
 メンコフ大佐とコワルスキー大尉らが傭兵達を追跡する。
 
Part9 脱出地点の湖
 脱出地点に傭兵達がやって来たが、後方にはメンコフ大佐らが乗った装甲車が追跡していた。
 ゴルゴ13が装甲車の操縦士を狙撃する。
 バードは撃たれた。
 5台の装甲車を葬るが、湖に止めてあった脱出用のフロート機が破壊された。
 ゴルゴ13と生き残った傭兵ジム・モリソンとワレンバーグがジープで逃走する。
 
Part10 依頼者の苛立ち
 ニューヨークで、ゴールドシュミット会長は作戦がうまくいっていないことに苛立っていた。
 ゴールドシュミット会長は、ワレンバーグが連行されたとき、自分の命惜しさに見送ったことを後悔していたのだ。
 
Part11 救出者にあらず
 ゴルゴ13とジム・モリソンとワレンバーグが船に乗り込んでフィンランド湾を渡ってヘルシンキへ向かう。
 メンコフ大佐らはヘリコプターで追跡する。
 
Part12 CIAの陰謀
 アメリカ・バージニア州・ラングレー・CIA本部で、マイヤーに何らかの命令が出された。
 メンコフ大佐が乗ったヘリコプターが、ゴルゴ13らが乗った船を追跡し銃撃を始めた。
 ジム・モリソンも死んだ。
 ゴルゴ13がM16でヘリコプターの燃料タンクを狙撃した。 
 ゴルゴ13は発煙弾を撃ち込み、ヘリコプターを撃墜した。
 ワレンバーグは自分のために死んだ若者達を見て悲嘆に暮れる。そしてゴルゴ13がアドルフ・アイヒマンと同じ目をしている、と言った。
 しかし一つだけアイヒマンにないものがゴルゴ13にはある、と続けた。
 目の奥に・・・ひっそりと眠る哀しみだ、と。
 
Part13 ユダヤ人である前に
 ニューヨーク郊外で、ゴールドシュミット会長に、マイヤーがワレンバーグが保護された、と報告した。
 CIAは、ゴールドシュミット会長が何らかの意図をもって、ワレンバーグを救出した、と見て、ワレンバーグを再び監禁した。
 そしてマイヤーはゴールドシュミット会長を射殺した。

【感想】
 50年間も監禁されたワレンバーグはやっと救出された、と思ったら、今度はCIAに監禁された。
 踏んだり蹴ったりの人生だ。
 そしてCIAがゴールドシュミット会長をラストで殺すどんでん返しにはただただ驚くばかりだ。

 

増刊第37話 雪上の悪魔(1994/05作品)

脚本協力:横溝邦彦
ページ数:37ページ
依頼者:なし
ターゲット:なし
依頼金額:なし
殺害場所:フィンランド・ムストラ北東の山間部
殺害人数:1人
殺害相手:国境警備隊のスキュレ
H:0人

 フィンランド・ムストラ北東の山間部をスキュレと呼ばれる男が歩いていた。
 背中には女をおぶり、ソリを引いていた。
 氷点下30℃の吹雪の中を、単独で救助に向かったのだ。
 スキュレはアルベールビルの金メダリストだが、リレハンメルのバイアスロン競技を辞退した。
 スキュレは、競技より国境警備の任務が優先だと答えた。
 
 スキュレは、真の"大物"は狼だ、と言った。4人の猟師や祖父が灰色の悪魔(グレーデビル)と呼ばれる狼に殺されたのだ。
 スキュレはサーメ人だった。
 スキュレは何者かが山に入ったことに気づき追跡した。
 男を発見したスキュレ達が追跡すると、男は逃走した。スキュレも追い、雪崩を起こした。男は雪崩から逃れて逃走を続ける。
 男の銃が雪上に残されていた。
 男は逃走を続ける。スキュレが撃つが、男は射撃手の射撃の"間"を読んで銃弾をかわした。
 まるで灰色の悪魔(グレーデビル)のように・・・
 ロシアとの国境付近で男が消えた。ワナで死んだヘラ鹿の死体があった。
 そのそばからナイフが飛んできてスキュレの胸に刺さった。ナイフを投げたのはゴルゴ13だった。
 スキュレは死んだ。


【感想】
 ゴルゴ13がなぜフィンランドの山間部にいたのか、作品中では語られない。
 超人的な人命救助能力を持つサーメ人のスキュレだったが、ゴルゴ13にはかなわなかった。
 もの悲しい読後感が残る作品だ。

 

第331話 13カウント(1994/05作品)

脚本協力:風巻龍平
ページ数:82ページ
依頼者:プロボクサーのアルベルト・メンデス
ターゲット:メキシコ政府軍ガルシア将軍とアルベルト・メンデス
依頼金額:不明
殺害場所:アメリカ・ニューオーリンズのボクシング会場
殺害人数:2人
殺害相手:メキシコ政府軍ガルシア将軍とアルベルト・メンデス
H:0人

 

Part1 王者
 ボクシングジムでプロボクサーのアルベルト・メンデスが練習をしている。彼はチャンピオンだった。
 
Part2 獣と獣
 アメリカ・ニューオーリンズでアルベルト・メンデスがロードワークをしており一人の男の背後に迫った。
 男は突然右水平チョップを繰り出した。
 アルベルト・メンデスはとっさにかわした。
 男はゴルゴ13だった。「失礼した・・・」と謝ったゴルゴ13は走り去った。
 
Part3 悲しみ
 教会で祈るアルベルト・メンデス。
 彼は少年時代を思い出していた。
 
Part4 痛手
 翌朝、アルベルト・メンデスは、走っているゴルゴ13を見つけ、背後から抜かそうとする。
 ゴルゴ13が右水平チョップと右後ろ廻し蹴りを出す。
 アルベルト・メンデスはすんでのところでかわした。
 ゴルゴ13は、「どうやら、左眼に異常があるようだな・・・」と言って走り去った。
 アルベルト・メンデスはトレーナーに右フックを顔面に打ち込むよう指示する。
 トレーナーは何かに気づいた。

 

Part5 タイトルマッチ
 眼科医がメンデスの左眼の網膜に小さな裂孔がある、と告げた。網膜剥離の初期症状だ。
 本当は試合をやめて手術するべきだが、タイトルマッチまで時間がないので、レーザー光線で周りを焼き付けることにした。
 タイトルマッチが始まった。
 挑戦者は世界ウェルター級1位のオリンピックのゴールドメダリスト、"ライジングサン"トーマス・ライトだった。
 チャンピオンは"戦う聖者"アルベルト・メンデスだ。
 アルベルト・メンデスはデビュー以来49連勝、20回目のタイトル防衛戦だった。
 
 アルベルト・メンデスは弟ホセとともに国境線を越えようとしていた。
 ホセは犬に噛まれて国境の柵から落ちた。アルベルト・メンデスは弟を見捨ててアメリカに逃げた。
 
Part6 チャンピオン優勢
 試合は第4ラウンドに入った。アルベルト・メンデスが優勢だった。
 トーマス・ライトのトレーナーがアルベルト・メンデスの左眼を狙え、と指示した。
 
Part7 悪い報せ
 アセンダトス(大土地所有者)の圧制と貧困からの解放のためにEZLN(メキシコ・サバティスタ民族解放軍)が武装蜂起したが、ホセの部隊はチアバス州で全滅した。
 アルベルト・メンデスにホセの遺品が届けられた。
 相手はガルシア将軍だった。
 アルベルト・メンデスの妻はアルベルト・メンデスの運転手と浮気していた。
 
Part8 チャンピオン危うし
 トーマス・ライトがチャンピオンの左眼を狙ってから、優勢になり、とうとう、アルベルト・メンデスがダウンした。
 
Part9 贖罪と誇りのために
 アルベルト・メンデスがゴルゴ13に会って、ホセの仇を依頼した。
 アルベルト・メンデスが逆転KOをした。
 アルベルト・メンデスは引退を発表した。
 引退の10カウントのあと3カウントを打つと言った。
 1つは愛する妻のために、1つはチャンスをくれたアメリカのために、最後に祖国メキシコのために!
 観客のガルシア将軍もリングに上がった。
 アルベルト・メンデスがガルシア将軍とハグしたとき、ゴルゴ13の一弾が二人を撃ち抜いた。
 
【感想】
 メキシコからの不法移民であるアルベルト・メンデスがチャンピオンになり20度も防衛を重ねた。
 弟の死を知り、仇であるガルシア将軍とともに死ぬ。
 弟への贖罪のつもりだというのはわかるが、ガルシア将軍だけ殺せばいいのに・・・。
 ラストシーンがなんとも切ない

  

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