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白土三平『カムイ外伝 九』(小学館)(1998/05/10)



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第3部[盗人宿]

 傷ついた夙の三郎ことカムイが意識を取り戻した。塩の平宿でお京の身請け金をカムイから受け取った竜神の安兵衛がカムイを助け、温泉宿に運んだのだ。安兵衛の話では、巨大熊の三本指がカムイを抱えて雪からカムイを守っていたのだった。

 三ヶ月ほどして、カムイは温泉宿の老人仁助や孫娘おけいらによって、回復していった。

 温泉で、安兵衛はカムイが誰に追われているのか、事情を聞こうとするが、カムイは話さなかった。

 ある時、カムイの行方を探りに役人がやってきた。安兵衛はその役人を背後から殺した。既にカムイは置き手紙を置いて出ていった。仁助は安兵衛を小頭と呼んでいた。

 安兵衛はカムイに人として惚れた、と言って急いでカムイの後を追いかけた。

 安兵衛は馬に乗り、カムイの後を追う。上田宿のハズレの船宿辻平の女が男達に襲われているところをカムイが助ける。そこに安兵衛が追いついた。

 辻平に着いたカムイは、女が自分を何らかの意図があって誘っていることに気づきその誘いに乗って船宿に腰を落ち着けた。また、安兵衛が自分を尾行していることにも気づいていた。

 安兵衛が辻兵の女、お梶に金をやってカムイを引き留めるようにしたのだった。

 ある時、更科屋という店の前におけいがやってきて倒れた。更科屋が彼女を助けた。   

 そして、更科屋に盗人が入った。首領は鬼火の五郎造、小頭が竜神の安兵衛、飯盛の吉次、水車小屋の番人灰かぶりの茂吉、小頭海坊主の松造だった。その様子を屋根の上で見ていたカムイだった。

 カムイのもとに安兵衛が現れ、居酒屋に誘い、カムイがなぜ追われているか、自分が助けになる、と言う。カムイはちょっとした誤解から追われているが、弟を探している、と答える。安兵衛が呼び出されて水車小屋に行くと、首領の鬼火の五郎造がいた。そこに隠していた金5000両が綺麗になくなっていた。おそらく、水車小屋の番人灰かぶりの茂吉は殺されているだろう。

 安兵衛が、金を集めるので自分にまかせてほしい、と言って、去る。安兵衛を尾行していた男2人をカムイが斃す。その頃、鬼火の五郎造が捕まった。

 鬼火の五郎造は捕まったが自白しないうちに自ら命を断った。

 鳩首にあった五郎造の首を見て、安兵衛の片腕、夜烏の六蔵に安兵衛が指示を出す。

 五郎造や安兵衛らは、金のない奴からは盗らねえ、女は盗まねえ、生命は盗らねえ、の三つの掟を守ってきた。カムイと話している安兵衛のところに、三人組が襲いかかってきた。三人組を送ったのは小頭海坊主の松造の手下である定七だった。

 定七を殺せ、と憤る鬼火一味の盗人達を落ち着かせたカムイ。そして、見張りも置かず定七を放置する。定七が縄を抜けたのを見て、尾行する。

 小さな廃寺に入っていった定七を追いかけた安兵衛やカムイ達だったが、網が仕掛けられていて皆捕まってしまった。

 カムイが松造を落ち着かせ、仲間割れを防いだ。

 安兵衛でもなく松造でもないとすると、次に疑われるのは飯盛の吉次だ。

 カムイは、自分に策がある、と言って、皆を落ち着かせる。

 カムイが与力の滝沢から通行手形を奪い、鬼火一味が彼の妻子を誘拐する。そして、鬼火一味のもとに滝沢を連れて行き、誰が密告したかを訊こうとする。

 ある寺に案内され妻子の姿を見た滝沢だったが、密告者が誰かは言えない、と言う。その姿を見て、妻子をとらえている夜烏の六蔵が密告者であることがわかったカムイは滝沢の妻子を助ける。六蔵はカムイが首にかけた縄を切って逃亡した。

 鬼火一味は六蔵を殺そうと言うが、カムイは掟が嫌いだから掟の手助けもしたくない、と言う。金は六蔵からカムイが奪って、水車小屋の空箱の下にある、と言った。

 三人の虚無僧が、夙の三郎と名乗っている男が怪しい、と話していた。そのそばに六蔵は隠れていた。

 カムイのもとに六蔵がやってきて、身の上話を始めた。彼は遠州屋という商家の坊ちゃんだった。あるとき盗人が入り、両親は首を吊り、家は没落した。六蔵は盗人になり、少し経つと密告することを繰り返すようになった。カムイはそんな六蔵に「犬は死ぬまで犬だが、人はもしかしたら生まれかわることもあるやもしれぬ」と言って、姿を消した。

 カムイを追っていた三人の虚無僧のうちの一人が殺されていた。

 六蔵は残った虚無僧二人にカムイの居所を教えると言って、銃で狙ったが、返り討ちにあった。

 盗んだ金を分ける代分けをしていた鬼火一味に安兵衛は自分が辞めると言う。後は海坊主の松造が次の頭になった。

 そこへ瀕死の六蔵がやってきて、カムイが二人の虚無僧に追われていて危ないこと、犬は死ぬまで犬だが、人はもしかしたら生まれかわることもある、と言ってこときれた。

 カムイの後を追う安兵衛。金で雇った男達に虚無僧を襲わせるがことごとく返り討ちにあう。鬼火一味の面々が後からついてきており、二人の虚無僧と戦うが、次々と虚無僧が鬼火一味を斃す。

 舟で川に出た虚無僧を追う鬼火一味だったが水中から鬼火一味を襲う虚無僧達のために小頭の吉次も殺された。鬼火一味が総力をあげて虚無僧を襲ったが、虚無僧達には歯が立たない。安兵衛も瀕死の重傷を負った。そこへカムイがやってきて、飯綱落としと変移抜刀霞斬りで虚無僧を斃した。

 カムイの腕の中で安兵衛は満足そうに死んでいった・・・

 (1985/04/25作品)

[感想]

 盗人達の切なく哀しい物語だ。盗人達がその家業故の厳しい掟。それゆえに強い信頼感。だが、それはもろくも六蔵によって、壊されそうになる。カムイが何とか落ち着かせ信頼感を取り戻させるが、そのために追忍の虚無僧によって命を奪われることになる鬼火一味。

 人が人を信頼する、ということの重要性を考えさせられる物語だ。

 

第3部[掛け捕り]

 風鳴り(ちぎなり)、卍投げといった手裏剣技を見せる三人の追忍。

 橋のたもとで魚を売る漁師の老人。その老人が漁の途中、心臓発作を起こして倒れた。彼を救ったのがカムイだった。

 漁師の息子は清吉と言い、妻は生臭いものが好きではなく、漁師が持ってきた魚をもらおうとしない。孫の丑松は祖父である漁師清次とは遊ぼうとしない。

 カムイが清次の代わりに神代橋のたもとで商売をしていると息子の清吉がやってきて、3日までに活け鯉5匹ほしい、と頼んでいった。

 清次とカムイは舟を出すが、冬なのでまだ鯉は動いていない。そこで清次は水中に入り抱き捕りをしようとするが身体がいうことをきかない。そこでカムイが清次に教わりながら抱き捕りに挑戦する。なかなか捕れないが、清次の教えを守り、カムイが夜捕ることに成功した。

 清次が清吉のところに鯉を持っていったが、鯛が入ったのでいらなくなった、と言われる。川甚の旦那が清次に声をかけ、鯉を買い取った。

 「人には生まれつきがある。川漁師の家に生まれたからといって漁師に向くとは限らない。それなのにあてにされたら当人はたまらない。だが、人は何かを後に残していきたいものだ。」と川甚に魚を届ける時に、清次はカムイに話す。

 カムイの漁師としての才能に驚く清次は川漁師にならないか、とカムイを誘う。

 そして、鱒の掛け捕りを見せる。

 カムイは鱒の掛け捕りも身につけた。

 しかし、清次は掛け捕りをしようとして心臓発作を起こし、死んだ。

 翌日、鱒を清吉のところに届けたカムイ。清吉は何かを察し、父の家に向かう。

 カムイの元に、三人の追忍が現れた。

 カムイが変わり身の術で姿を消した。三方に別れて追跡する追忍。カムイは水中で鯉の陰から、一人の追忍を掛け捕りして斃した。

 

[感想]

 自分の技量を後に残せるカムイの存在が、清次にとっては嬉しかったのだろう。幸せに死んでいった・・・。「人には生まれつきがある。川漁師の家に生まれたからといって漁師に向くとは限らない。それなのにあてにされたら当人はたまらない。だが、人は何かを後に残していきたいものだ。」という清次の言葉は、父親の気持ちを見事に代弁してくれている言葉だ。