haruichiban0707の読書のおと(ネタバレ注意)

読書メモなのでネタバレあります

ジェームズ・B・ウッド『「太平洋戦争」は無謀な戦争だったのか』ワック(2009/12/10)


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もくじはこちら。
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「太平洋戦争」のifを、アメリカの視点で、検討した書籍だ。

 

第1章、第2章は、「外郭要地攻略」作戦をせず、当初のとおり、絶対国防圏の中で防衛に専念すればよかった。

第3章で、日本に戦勝をもたらしうる戦略として、次の10項目をあげている。

 1.「勝利病」を退ける

 2. 効果的な縦深にわたる国家防衛圏を構築する

 3. 日本商船を護衛する

 4. 敵の戦略的爆撃を阻止する

 5. 敵の補給路へ潜水艦攻撃を続ける

 6. 敵に制空権を握らせない

 7. 温存艦隊(fleet in being)を保持する

 8. 敵にもっと沖縄型戦闘を強いる

 9. 米軍の出撃計画を中断させ、遅らせる

10. 太平洋戦争の大終局を1946年から1947年まで引き延ばす

 

第4章では、商船の損耗が日本の降伏を早めた、という事実をあげている。

第5章では、日本の潜水艦を通商破壊線に使うべきだった、と主張している。

第6章では、「過剰な拡大路線を回避し、統合的な縦深国防圏を構築し、消耗戦を戦うことを断固拒否し、もっと効率的な戦いをすることによって、より長く生き延び、日本に対して文句なく圧倒的完全勝利を収めるという敵の目標は、その甚大な代価に値しないということをアメリカに思い知らせることにあった。」と主張する。

第7章では、日本のパイロット養成人数が少なすぎたことがあげられている。日米の航空機生産については、グラフを見たことがあるが、パイロット養成人数については、寡聞にして見たことがない。p.206では「年間約100名の新人パイロットを送り出したに過ぎなかった。」とある。これに対してアメリカは一ヶ月に8000人のパイロットを送り出していた、という。これが事実なのか他の資料で確認したい。

第8章は、日本陸軍が中国に多数の師団を置き、太平洋に師団を送らなかったことを批判している。

 

2. 効果的な縦深にわたる国家防衛圏を構築する

3. 日本商船を護衛する

4. 敵の戦略的爆撃を阻止する

5. 敵の補給路へ潜水艦攻撃を続ける

6. 敵に制空権を握らせない

7. 温存艦隊(fleet in being)を保持する

これらは著者の言うとおりだと思う。その結果、敗戦が1年か2年遅れるかもしれない。

 

10. 太平洋戦争の大終局を1946年から1947年まで引き延ばす

だが、その結果、どうなるかは、わからない。著者は、冷戦が始まり、もっと違った形の講和が結べただろう、ということだ。

原爆がどう使われるか。ソ連が参戦するだろう。冷戦が始まり、ソ連参戦が遅れるだろうか。

他のifを研究した本に比べれば、重要かつ本質的なifをとりあげている、と思う。

 

訳者の茂木弘道氏が随所に、訳注を入れて、著者の間違いを指摘したり、自身の意見を述べており、本書は二人の著作と言っていい。

 

 

横山光輝他『忍法十番勝負』秋田書店(1966/10/05)


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大阪城の抜け穴が書かれた巻物をめぐり、忍者同士が戦う連作・忍者コミックス。

当時第一線で活躍していた漫画家たち以下の10人による連作漫画だ。

 

堀江卓

藤子不二雄

松本あきら

古城武司

桑田次郎

一峰大二

白土三平

小沢さとる

石森章太郎

横山光輝

 

もくじはこちら
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それぞれ物語は完結しているが、次の作品にバトンタッチして進んでいく。

伊賀、甲賀、真田の忍者たちや架空の忍者集団が大活躍する。

この漫画を描いたほとんどの人が鬼籍に入ったが、この漫画はとても面白いし、エポック・メイキングな漫画だと思う。

川淵三郎『黙ってられるか』新潮新書(2018/08/20)


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もくじはこちら
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川淵三郎氏がJリーグ開幕を宣言したとき、正直言って、「失敗するだろう。」と思った。スポンサー企業名をチーム名につけない。地域密着でJ1、J2・・・という階層的なリーグ構成。当時のサッカー界はガラガラのスタジアムが当たり前だったが、その状況からはほど遠い観客目標設定はとうてい実現不可能だろう、と思っていた。

 

それが現在は、プロ野球や大相撲やプロゴルフを超えて大盛況だ。

 

川淵三郎氏は、その後、2リーグに分裂しており、オリンピック出場が危ぶまれていたバスケットボール界の改革を成し遂げた。ある意味、サッカー界とはライバルになるバスケットボール界の改革を引き受け、外から入ってきて改革を実施したのには驚いた。

 

皆の合意を得ていたら時間がかかり、何事も成し遂げられない。日本では、川淵三郎氏は独裁者と言われるが、民主主義国でも欧米ではこのくらいのリーダーシップは当たり前だ。

 

ビジョンをぶち上げること、そのためにグイグイと引っ張っていく力は凄いと思う。きっとそのぶん敵も多いと思う。

 

東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会森喜朗会長(当時)の後任に名前があがったが、見送りになったのはそのせいではないかと私は想像している。

 

停滞している日本を元気にするには、こういうリーダーシップが必要だと思うが、敵が多くて引きずり下ろされるのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

猪瀬直樹 田原総一朗『戦争・天皇・国家』角川書店(2015/07/10)


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目次は以下
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ペリー来航による開港から現代までの日本について、概略をまとめ、猪瀬直樹氏と田原総一朗氏が語り合った本。

 

日本が大東亜戦争に突入したのは、「軍部を含めた官僚機構が縦割り化してそれぞれの部局ごとに暴走し・・・国家としての意思統合ができない状況に置かれた」と分析している。(p.19)

そのとおりだと思う。

「公正な評価」とは陸軍士官学校の席次であり、縦割りの官僚機構の中で成績のよい秀才たちが順番にポストに就き、意思決定を先送りしていくシステムができあがっていった。(p.33)

結局、熱河作戦では、政府と大本営が別々の方針で、関東軍の暴走を許したことで・・・戦争への泥沼を突き進むことになった。(p.37)

関東軍を罰していたら違っていたと思うが、罰せられなかったので戦争へと進んだのだと思う。

実際には戦前も戦後も「官僚主権」なのである。(p.53)

そのとおりだと思う。

陸軍と海軍の意見が一致しないときは天皇のところで裁可する以外にないけれど、要するに全部がバラバラで意思決定ができない。(p.101)

天皇は意思を表明できないのだが、陸海軍で方針がバラバラで、結局、国家としての意思決定ができなかったのだと思う。

戦後の日本経済界の仕組みを作ったのは岸信介で、それは「1940年体制」と呼ばれる。具体的には、直接税中心の税制、補助金として地方に配る仕組み、終身雇用・年功序列源泉徴収制度、日本銀行法、経済統制の道具として重要産業団体令に基づいた業界団体の立ち上げ、公社・公団の設立などの政策だ。

源泉徴収制度は凄い発明だった、と思っていたが、それも岸信介だったのかぁ・・・。

そして、猪瀬氏は戦後の日本を、アメリカが門番で安全保障について考えなくてよい「ディズニーランド」に例える。

一度、自立について考えてほしい。その上で、自立するコストについて考える。失っているものについて考えてみる。自立するためのコストと失っているもののコストを比べてみるべきだ。(p.203)

新書だから読みやすかった。官僚が縦割りで統一した国家意思を持っていないのは、現在でもそうだと思う。将来の日本のためにどうするか、考えるためにも概要をよくまとめた本だと思う。

 

 

松本零士『潜水艦スーパー99』秋田書店(1975/10/20)


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沖博士が設計した潜水艦スーパー99と世界征服を目指す謎の組織、ヘルメット党の戦いを描いた物語。

 

沖博士の息子、五郎とススムが大活躍する。

スーパー99の名称の由来は五郎が戦時中に使っていた99式小銃からだ。

 

沖博士と五郎はヘルメット党に捕らわれの身となるが、何とか脱出し、ススムと合流する。

 

世界征服を目指すヘルメット党が実は海底人ゼスに操られていることが判明する。

しかしゼスは本当は平和を求めているのだった。

 

そしてスーパー99は日本へ帰る最後の航海をするのだった。

 

松本零士の漫画はストーリーが破綻することが多いが、この漫画は引き込まれるストーリーで謎が謎を呼び、最後はちゃんと回収される見事なストーリー展開で面白い!

松本零士の傑作の一つだろう。

播田安弘『日本史サイエンス弐』講談社ブルーバックス(2022/05/20)

 

同じ著者の『日本史サイエンス』の第2弾だ。

 

第1弾はこちらを参照。

haruichiban0707-books.hatenadiary.com

本書の目次は次のとおりだ。

第1章 邪馬台国はどこにあったか

第2章 秀吉は亀甲船に敗れたのか

第3章 日本海海戦でなぜ完勝できたのか

終章 「翡翠」から「大和」へ

 

第1章では、日本の翡翠朝鮮半島や大陸の鉄の交換に船が使われたこと、神話と日食の関係、古代船による実験航海、『魏志倭人伝』の検証、について書いている。

著者は、天照大神の神話が皆既日食を表現しものであり、3世紀の皆既日食を調べ、北九州説を支持している。船の専門家だけあって、『魏志倭人伝』の記述検証は、興味深い。『魏志倭人伝』の記述どおりだと日本を通り抜け、太平洋の彼方になってしまうことは、従来、言われてきた。著者は、船や船員の調達にかかった期間や風待ちや波待ちの期間も含めて記述したのではないか、と述べている。確かに後の時代の『土佐日記』でもかなり時間がかかっている。

 

第2章では、豊臣秀吉朝鮮出兵の目的について、まず検討している。(1)鶴松死亡説 (2)功名心説 (3)領土拡張説 (4)東亜細亜交易説 (5)信長の野望継承説 著者はこれらの説には説得力がない、と断じ、スペイン対抗説が最も説得力がある、と書いている。

ここまでは他の人の説を説明している。

亀甲船のCGは、船の専門家らしくていい。また小西行長加藤清正の進み方が速すぎることに疑問を持っており、日韓協力して謎の解明にあたることが大事と結ぶ。

 

第3章は、既に他の誰かが言ったことを解説しているだけだと思った。東郷ターンや丁字戦法が日本海海戦勝利の秘訣ではない。

バルチック艦隊は、次のような状況だった。

大量の石炭を運搬しなければならなかった

日英同盟のために良質な石炭を補給できなかった

長い遠征や慣れない気候・風土で、乗員の健康や士気が落ちていた

長い遠征で、艦の整備ができず、フジツボなどが付着し、速度を出せなかった

 

上については、私はどこで見たか読んだかすっかり忘れていたが、いずれも知っていた。

 

本書の記載は細かい点で「?」と思う点がある。

参考文献がないのもどうかと思う。

しかし、これまで文系が、学習・研究するものと思われてきた歴史では、理系、特に技術者の観点から、見ていくことは、意義深いものがある、と思う。

そういう意味では、本書が文理統合した歴史学の探究の一つのきっかけになると思う。

 

 

 

 

 

中屋敷均『遺伝子とは何か?』講談社ブルーバックス(2022/04/20)

 

「遺伝子とは何か?」という問いは、改めて聞かれると、意外と答えに窮する。

 

何が遺伝子なのだろうか?メンデルの法則で言うと、マメの表面が丸いか、シワと習った。だが、遺伝子に「マメの表面を丸くしろ」と書いてあるのだろうか?

遺伝子に「人間だから指は5本にしろ」とか「二重まぶたにしろ」と書いてあるのだろうか?「身長は親に似て170cmくらいにしろ」と書いてあるのだろうか?もしそうなら、指とは何か?170cmとはどんな大きさか?という定義も必要だろう。そんなことも遺伝子に書いてあるのだろうか?

 

その遺伝子の探求の歴史をまとめたのが、本書である。

古代ギリシャ時代に始まり、メンデルの研究。タンパク質に遺伝子がある、という仮説。ワトソン、クリックによるDNAの構造の解明。DNAの4つの塩基の暗号解読。RNAの発見と役割の探求などである。

 

現在、学校で教わる理科では、最新学説に基づいて学習する。その中に時々、先人の研究について語られる。そうすると、昔の科学者の実験の意義が、よくわからないと思ったのは私だけだろうか?

本書の説明は、次のように展開している。そのため、仮説が設定された背景や、実験の意義がよくわかった。

 1)当時、わかっていたことを示す。

 2)その中でどんな仮説があり、議論されていたか、を説明する。

 3)仮説を検証するためにどんな実験を行ったか

 4)なぜその実験により、ある仮説が否定され、ある仮説が証明されたのか、理由を解説している。

 

この説明方式をとることによって、「科学的思考がどういうことか」がよく理解できると思った。教科書はこういう説明の仕方にするべきだと思う。

 

現在、遺伝子がDNAにあることはわかってきているが、遺伝子にどんなことが書いてあるかはわからない。「このアミノ酸を作れ」(本書では「タンパク質をコードする」という表現をしている。)ということだけはわかってきたが、それだけである。

 

本当だったら、ヒトの胎児期に「てのひらまでできたから、これから指を作るぞ。指の遺伝子はここにあるから、それをm-RNAにコピーして、指を作るよう指令を出そう。」という制御する部分(本書では「制御配列」と呼んでいる。)がどこかに書いてあると想像できるが、それが全くわかっていない。ヒトの場合、「タンパク質をコードする領域」は、わずか1.2%にすぎないらしい。非コードゲノム配列の大部分は、制御配列と非コードRNAだが、機能はほとんどわかっていない。

ヒトのDNAはA4用紙400万枚分に相当するらしい。これはA4用紙を横に並べると、アメリカ大陸横断往復分になるらしい。それだけの情報量から特定の部分を探し出して、「このタンパク質を製造しろ」と的確に指示するのは人間にできることではない。

それを生命はやっているのだから凄いことだと思う。

 

また、私は、「進化は、DNAの中にif文があるから進化できるのではないか」という仮説を持っている。例えば、DNAの中に「もし、周囲の環境が乾燥した場合、この遺伝子を発現させて適応しろ。」とか「もし、年平均気温が○○度を上回ったら、この遺伝子を発現させて、発汗効果をあげろ。」のような遺伝子があるのではないだろうか。

そして、「環境の変化によって、発現する遺伝子が異なるのではないか」というのが私の仮説である。そうでないと新種の生物が登場するような大きな進化を説明できない、と思うのだ。これは私の妄想にすぎない、と思っていた。

 

だが、1944年のオランダで、飢餓を経験した母体から生まれた子どもは、成人後、高頻度で肥満となり糖尿病の罹患率が高く、統合失調症発症率が通常の2倍だったそうだ。驚くべきことに、それが飢餓の経験がない彼らの子や孫にも遺伝したのだという。エピジェネティクスというそうだ。どういうふうにDNAに書かれているかは分からないが、私の仮説、妄想のような仕組みがあるようだ。

 

DNAやRNA、遺伝子については、まだよくわかっていない。おそらく私が死ぬまでには解明できないだろう。また、現在わかっていることが、将来、否定されて新しい学説が定説になることもあるだろう。

現在、遺伝学が経てきた道や到達したところを簡単に理解するためには、本書はとてもおすすめである。