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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 9』(小学館)(1994/05/01)



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●野望〔一〕

  葛の者ノスリが望月佐渡守の屋敷に戻ってきて、笹一角らを倒すことに失敗したことを報告した。猪狩芸州が酒井雅楽守忠清に報告するだろうから、ノスリらの失敗を隠すことができない、と話す佐渡守。その天井裏にはカムイがいて聞いていた。

  酒井雅楽守忠清の屋敷で武芸者達が試合をしていた。そこに佐渡守がやってきた。笹一角らへの攻撃が成功か失敗か気になる酒井雅楽守忠清だが、佐渡守は、武芸者にノスリを倒させようとする。ノスリは武芸者らを全滅させた。

  それを見せた上で、佐渡守は、ノスリと同じくらいの力量の者8人と雇った男10人が返り討ちにあったことを報告した。さらに佐渡守にも秘している何かがあると考えた彼は聞き出そうとする。

  酒井雅楽守忠清は堀田備中守正俊の父は三代将軍家光の第一の出頭人で、春日局の養子でもある。出頭人とは能力や才智で徴用された側用人だ。そのため酒井雅楽守忠清から見ると成り上がり者なのだ。

  酒井雅楽守忠清の祖父、酒井忠世は二代将軍秀忠に仕えたが、三代将軍家光とはしっくりいかず、寛永11年(1634)、江戸城の火事による対処が原因で失脚した。改易は免れたが、父忠行も38歳の若さで死んだ。

 

 葛衆(一)

  葛衆ノスリの後をカムイが尾行して、葛衆の隠れ里に到達した。ノスリが葛衆の面々に攻撃が失敗したことを報告した。そこに一人の忍びが現れ、葛衆に捕らえられた。カムイは屋根裏で気配を消している。

  岩牢に閉じ込められた忍びの前にカムイが現れ、忍びを逃がす。葛衆の隠れ里に火事を起こし、馬で逃亡するカムイと忍び。その忍びは桂のアシビと名乗った。二人は別れた。ナレーションでは、「桂のアシビ」という名前をよく覚えておくように、と念押ししている。

 

 葛衆(二)

  網代の網主、茂造の所に、笹一角(草加竜之進)らがいた。茂造は嵐に遭って多数の漁師や船を失い、残ったのは家と借金だけだった。そこに、笹一角に助けてもらった漁師の網主である、外川浦(銚子)の網主、崎山治郎衛門がご馳走を持ってやってきた。崎山治郎衛門は紀州の人で、外川の町を開いた人で、九十九里に大地引き網漁を伝えた人だ。

  浜に出た笹一角のもとにカムイが現れ、酒井雅楽守忠清と猿投沢城の望月佐渡守がグルであること、襲ってきたのが葛衆で、佐渡守の家来であることを報告した。

 

 納屋集落(一)

  笹一角らは九十九里の納屋集落に住み込んだ。そこで漁をし、干鰯を作ったりしていた。房州は五郎という名だった。サブも戻ってきた。ホヤリの与七という干鰯づくりの名人もいた。崎山治郎衛門が腕利きの漁師を手配し、冬木道無が資金を出してもらい、生活していた。

  ホヤリとは、晴天一日干したものを俵に入れ、広場に配列して筵(むしろ)でおおい、一夜間温蒸しし、頃合いを見て俵から取り出し、冷所から出して乾燥させる干鰯の作り方を言う。

  豊漁が続き、人が集まり村ができてきた。

  猪狩芸州が居酒屋で文を仲間に渡した。サブ(カムイ)が術をかけてその書状を読み、笹一角に内容を知らせた。

 

 納屋集落(二)

  網代の茂造の屋敷に江戸深川の口入屋、日州が無宿者達を連れてきた。サブと笹一角は船で釣りをしていた。そこに二隻の船がやってきて二人に襲いかかった。炸裂弾が爆発し、サブと笹一角は死んだ・・・

 

 納屋集落(三)

  サブや笹一角の遺体が浜に上がった。二人の通夜がいとなまれた。刺客達は残った牢人達を皆殺しに使用としていたが、猪狩芸州が自分一人でもたおせるから皆は引き揚げろ、と言った。猪狩芸州の言葉に従い刺客達は引き揚げた。カムイと笹一角は船の底板から姿を現し何処かへ去って行った。

 

 外川浦(一)

  屏風ヶ浦を超えて外川浦(銚子)に向かう笹一角とカムイ。崎山治郎衛門が銚子に移ったのは明暦二年(1656)、外川浦に港(本浦)が完成したのは万治元年(1658)、そして今、新浦の築港中だった。そこに笹一角とカムイがやってきた。崎山治郎衛門の姪、八重が紹介された。カムイと八重が話をしていると、黒鍬衆の頭、庄左ヱ門という覆面をした男とカムイの目が合った。

  庄左ヱ門は正助だった!!ナナと次郎丸という子どももいた!!一太郎は神隠しにあっていた。

  正助が日置大一揆の後、拷問され舌を抜かれ解放された後、瀕死の状態だった正助を助けたのが河村瑞賢で、日置を抜けるためにかくまったのが崎山治郎衛門だった。

  正助は、人が動けば幼虫が蛹になり蝶になるように世の中が変わる、と言う。

  庄左ヱ門(正助)と笹一角(草加竜之進)とカムイらは、崎山治郎衛門の屋敷に出向き、海上、香取、印旛郡に向かう、と話す。

  崎山治郎衛門の屋敷には熊沢蕃山もいた。彼は石切り場で恐竜の化石を発見していた。熊沢蕃山の夢に恐竜が現れ、「この世には滅びるものと行き続けるものがあり、滅んだ原因はうぬぼれだ」と言った。熊沢蕃山が発見した恐竜の化石は既になくなっていた。

 

 椿湖(一)

  現在の匝瑳、海上、香取に東西12km、南北6km周囲40kmの椿湖があった。

  

  江戸城では、松平信綱、阿部忠秋、稲葉正則、保科正之、酒井忠清らがいた。

 

  江戸の町では、小普請組塚原小源太と岡山藩普請方組頭坂本半兵ヱが喧嘩しそうになったが、坂本が藩命を受けているゆえ私闘はできないので、後日またと言って別れた。

 

  その夜、岡山藩江戸屋敷で藩主池田光政のもとに家老の伊木長門が現れ、坂本半兵ヱが致仕したい、と申し出ていた。理由を語らないが、池田光政が伊木長門に切腹を命じると、理由を話した。

 

  本庄、百名木ヶ原(どめきがはら)で、幕府公認で、坂本半兵ヱと梶原小源太の果たし合いが行われた。坂本半兵ヱの立会人は柳生新陰流の木村勘九郎、梶原小源太の立会人は白柄組の水野十郎左ヱ門だった。果たし合いは坂本半兵ヱの勝利となった。

 

  江戸城、松平伊豆守信綱と北町奉行石谷十蔵が話をしていた。堀田上野介正信が大川で実践さながらの軍事訓練をしたいと許可を求めてきたのだ。酒井雅楽守忠清の鶴の一声で、許可が出て、高札があちこちに掲げられた。

 

 

[感想]

 一番気になっていた正助とナナが生きていて黒鍬衆の頭になっていた。『カムイ伝』第一部の主要メンバーが揃ってきた。

 人が動くと世の中が動き、幼虫が蛹になりやがて蝶になる、と正助に言わせている。白土三平は『カムイ伝』第一部の最後で「テーマがまだ見えてこない」という主旨のことを書いていたが、これが『カムイ伝』の主要テーマなのではないだろうか?

 酒井雅楽守忠清=望月佐渡守vs堀田備中守正俊=笹一角(草加竜之進)の対決がどうなっていくのだろうか?