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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 7』(小学館)(1992/01/01)



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もくじはこちら

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●無宿溜(スラム)〔二〕

 靄(もや)(一)

  濃い靄の中、與平ヱと錦源之助が漁に出る。何も見えない中でも與平ヱが的確に指示を出して網を仕掛けたところへ船を動かした。大漁だったが、急に天候が悪化して大時化になる。與平ヱはせっかく獲った魚を捨てて陸を目指す。船が岩にぶつかり二人は海中に没する。

  源之助が気づくと北浦の浜の衆に二人は助けてもらっていた。船を失ったって、命があればいつでもやり直しがきく、と源之助に話す與平ヱ。

 

 靄(もや)(二)

  與平ヱは船を買うためにイソを年季奉公に出すことになった。

  深川の戸面原(とずらっぱら)の無宿溜(スラム)に人が集まり大きくなってきた。そこへ無法者がやってきた。

 

 人質(一)

  戸面原に宮城音弥がやってきた。男に身体を売っている女が、宮城音弥を誘惑するが、音弥は女と同じ年頃の姉がいることを話し、誘惑を拒絶する。女は無法者のところに行き、輪姦される。

 

 人質(二)

  笹一角(草加竜之進)のところに、堀田備中守正俊と宮城音弥が来ていた。堀田備中守正俊は学問好きの宮城音弥に『左氏伝』の本をあげる。喜ぶ宮城音弥。そこに男達が仕事から帰ってきた。藩 物頭三百石武藤十左ヱ門や石垣という牢人達が酒を酌み交わす。石垣は大名が取り潰されてはいるが生まれてはいないので、牢人達に未来がない、という主旨の事を話し場をしらけさせる。笹一角は「牢人は武士だが武士ではない。が士であるとすれば、第三の道を見つけなければならない。」と言う。そこに冬木道無がやってきて「第三の道とは何か?」ときく。笹一角はわからないと答える。「しかしいつかは吹き溜まりにも芽が出て葉をのばし花を咲かせ実を実らせるかもしれない」と笹一角が言う。

  そこに日州が来て、無法者の牢人が茂助じいさんの家をのっとり、お玉という女を人質にしている、と報告にきた。猪狩芸州が自分の出番だと言うと、宮城音弥が自分があお玉の代わりに人質になると言う。そして「例の手を試してみよう」と言う笹一角。

  宮城音弥が無法者のところに行き、お玉を救い自分が人質になった。その間に皆が周囲を囲み竹槍を家に突き刺した。無法者は観念して引き揚げる。しかし宮城音弥をさらっていった。そこに馬に乗った笹一角が登場し無法者を斬り殺した。残った首領は生かしておいた。その様子を見ていた堀田備中守正俊と猪狩芸州は笹一角の剣術の凄さが予想以上だったことに驚いていた。

  無法者を追い払った皆は宴を催すのだった。

 

 異変(一)

  江戸の町に火災が起こったが幸い大事には至らなかった。火元は三枝蔵人の屋敷だった。

  江戸城では将軍の朝の支度がされていた。しかしその朝は食事がなかなか来なかった。様子を見に行くと二の膳の係だった石橋小弥太が自刃していた。石橋小弥太が自刃した理由はわからなかった。二の膳は毒味をしても毒は見つからなかった。

  数日後、目付の柳宗十郎が道を歩いているとタカという女が近づいてきて宗十郎を刺し殺した。

 

 異変(二)

  松平伊豆守信綱と酒井雅楽頭忠清が石橋小弥太の自刃について話をしている。「先代の時にも例がある。」と酒井雅楽守忠清が言う。「駿河大納言(徳川忠長)のことか」と松平伊豆守信綱が言う。「いかにも。竹橋のお方(3歳年下の次弟従三位中将右馬守徳川綱重)をかつぎ出そうという者らがあったとすれば・・・」と酒井雅楽守忠清が言う。「昨夜、目付の柳宗十郎が何者かに刺殺された。先日の裏二番町の火事の火元が配膳係の姉が嫁いでいる旗本某の屋敷だったのも気にかかる」という酒井雅楽守忠清。

 

 異変(三)

  堀田備中守正俊の屋敷内で堀田家家老若林杢左衛門が深夜、老中阿部豊後守忠秋のところに向かうという。城内で何かが起こっているが箝口令が敷かれていてわからないので確かめに行くのだ。部下を馬で戸面原に向かわせた。

  戸面原では無頼者を追い払った宴が続いていた。アヤメは上半身裸になって踊っていた。お玉もその踊りに入っていた。サブは笛で房州は太鼓で宴を盛り上げていた。「道無とサブは過去のどこかにおいて血のつながるものがあることになる」というナレーションが二人について謎を深める。

  そこに、あの山丈が現れ「カムイーーー」と叫んだ!!

 

 帯刀(一)

  牢人による謀反の企てがあるという密告により奉行所の者が戸面原を囲んだ。笹一角ら牢人達に堀田備中守正俊や宮城音弥は大人しく同道した。天馬町牢屋敷の揚屋牢(武士牢)に放り込み詮議もなく沙汰もなかった。当時、町奉行役人が相手の身分も確かめずに不逞牢人として捕らえる異様な事態だった。

  牢奉行の石出帯刀が現れ、堀田正俊と話をする。本来なら奉行所からの指示がなければ牢から出すことはできないが、帯刀は刀で格子を切断して堀田備中守正俊や宮城音弥を牢から出した。

 帯刀(二)

  帯刀は堀田備中守正俊に奉行所の与力の名前を尋ねたが、あまり詮索しない方がいいと警告された。

  屋敷に戻った堀田備中守正俊だった。若林杢左衛門に老中阿部豊後守忠秋が何を語ったかきいたが、阿部忠秋の機嫌が悪く答えてもらえなかった。

 

 北町奉行(一)

  堀田備中守正俊は出仕前に北町奉行の石谷十蔵貞清を訪ねていた。本来なら南町奉行を訪ねるべきだが、北町奉行を訪ねた理由をきかれた堀田備中守正俊は、上の方が絡んでいるため、紛糾しないよう側面から支援してもらいたい、と依頼した。

 

 北町奉行(二)

  老中阿部豊後守忠秋が出仕しているところに堀田備中守正俊が訪ねた。酒井讃岐守忠勝が牢人追放令を出そうとしたとき阿部豊後守忠秋が反対したことを話し、町奉行所で近頃何が行われているか、自分で調べよとつきはなす。

  老中阿部豊後守忠秋は箝口令が敷かれていること、つまり、配膳係の石橋小弥太の自刃を堀田備中守正俊に話した。

 

 確執(一)

  老中酒井雅楽守忠清の屋敷を南町奉行神尾備前守元勝が訪れた。酒井雅楽守忠清から勘定奉行を通じて南町奉行に依頼したことで手違いが生じた、と南町奉行神尾備前守元勝が話した。手違いとは牢人とともに陪臣を捕らえたことだ。北町奉行から南町奉行に照会があったとのことだ。酒井雅楽守忠清は明日にでも牢人達を放て、と言った。北町奉行には、陪臣を捕らえたのは遺法だが捕らえられた方も切腹ものなので、引き下がるだろう、とのことだ。そこで酒井雅楽守忠清は、その陪臣はどうやって牢から出たのか疑問を呈した。南町奉行も北町奉行も牢から出していいとは言っていないとすると牢奉行の一存となる。

  宮城音弥は南町奉行神尾備前守元勝を尾行していた。

 

 確執(二)

  戸面原の牢人15人は釈放された。二日分の日当も出された。皆は気晴らしに呑みに行く。笹一角は処用があると言って皆と別れる。猪狩芸州も途中で皆と別れる。それを駕籠の中で見た笹一角が尾行する。

 

 確執(三)

  深川戸面原に牢人達が戻ってみると小屋も人影もなくなっていた。サブと房州が現れ、牢人達を二隻の小舟に乗せる。

 

 確執(四)

  猪狩芸州は酒井雅楽頭忠清の目付方中山主膳と話していた。事前に一報がなかったことにむくれている猪狩芸州だった。中山主膳は急を要したこと、一緒にぶち込まれて信用されたことを話す。猪狩芸州は急を要したことの裏を知りたがったが中山主膳は話さない。中山主膳は牢人達が陰謀を企んでいるかきくが、猪狩は陰謀を企んでいないこと、笹一角が優れた統率力を持っていることを話した。中山主膳が拘束された陪臣が誰かきくと、猪狩は堀田正俊だと話す。

  中山主膳は、戸面原で拘束された陪臣が堀田備中守正俊だと伝える。酒井雅楽頭忠清は「すねの傷を見せおったか」と笑う。

 

 

[感想]

 酒井雅楽頭忠清と堀田備中守正俊の確執に笹一角や宮城音弥らが巻き込まれていく。笹一角(草加竜之進)はどうするのか?サブやカムイか?

 次巻も楽しみだ。