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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 11』(小学館)(1995/03/01)



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●野望〔三〕

  雉子を追う鷹と犬。初心(うぶ)な狩人(綱重)が逆上して、馬を走らせ矢を射ようとする。尾張藩の徳川光友は不吉な結末を予期し犬を押さえるよう部下に指示する。綱重が射た矢が鷹に刺さった。何者かが綱重に矢を射て、綱重の左腕に命中した。

  すぐに犯人を追ったが見つからなかった。据罠が残っていた。

 

 放鷹(二)

  尾張藩上屋敷に老中松平伊豆守信綱が駕篭に乗ってやってきた。綱重の状況を聞いた松平伊豆守信綱に徳川光友は箝口令を敷いていた。始めに松平伊豆守信綱に相談した理由は、公にして事態が紛糾することを恐れたためだった。

  そしてその様子を天井裏で何者かが聞いていた。

 

 中根忍び(一)

  旗本四千石ご書院番組頭中根正朝の屋敷に老中松平伊豆守信綱の使いの森が、正朝の父正盛のもとにやって来た。

  松平伊豆守信綱の元に戻った森が中根正盛が幽仙と号してあちこち移動しており家にはめったに戻らないと報告した。

  そこに矢文が射かけられた。そこには幽仙からのものだった。明日明け六つ(朝5時から6時)、大橋(現在の両国橋)で待つ、とのことだ。松平伊豆守信綱が戻らなかったら阿部豊後守忠秋に手紙を渡すように言い、松平伊豆守信綱は翌朝、幽仙と会った。

  幽仙は船を上流に向ける。松平伊豆守信綱が将軍ご膳番係の小姓の自殺の件は裏がない、と答える幽仙。そして今回の尾張藩のお狩り場での綱重負傷について質問しても幽仙は答えず、美女木が原のあばら屋に入った。そこで将棋を指しながら会話が続く。将軍家綱は若くて病弱。世継ぎがいないし懐妊しても流産する。将軍毒殺の陰謀。それが失敗し小姓が自刃。その小姓の姉の嫁ぎ先の旗本の家が出荷の火元。探索中の目付がある秘密をかぎつけ暗殺される。将軍の後継者争いが激化し、自滅し、この陰謀を企んだものが徳川家に替わって天下を握る。

  中根正盛はかつて幕府の隠密頭だったのだ。松平伊豆守信綱は、この陰謀を阻止するよう、中根正盛に依頼する。だが、幽仙(中根正盛)は断る。しかし、綱重に矢を射た者を追うことはできる、と言う。忍犬シジマに矢の臭いを嗅がせ、後を追う。石の下に抜け穴があった。幽仙と松平伊豆守信綱は抜け穴を通り外に出て船に乗った。そこに綱重を射た少年が水中から姿を現し矢を射た!!矢は松平伊豆守信綱の眉間を貫いた。「見事ぞ。一太郎」と少年を褒める幽仙。死の間際、伝書鳩を飛ばそうとした松平伊豆守信綱。しかしそれを一太郎クナイが撃墜した。中根正盛と一太郎が松平伊豆守信綱の死体を船で運んで行った後、伝書鳩が低空を飛んで行く。実はカムイがクナイをツブテを落とし、身代わりの鳥を用意していたのだ。

 

 桜下三学の舞(一)

  柳生道場で宮城音弥は師範代の村井と稽古していた。音弥は先輩に対して失礼とも言える構えで戦い、逆上した村井が襲いかかると、宮城音弥はカウンターで村井を倒した。

 

 桜下三学の舞(二)

  江戸城中御殿の奥、ご休息の間で将軍家綱が宮城音弥とともに大作を作成している。そこに小姓が墨を持ってきたが転んで作品が墨で汚れてしまった。怒って手打ちにしようとする家綱。それを諫める宮城音弥だった。

  二人が一服しているところに突然男が茶菓を持って入ってきた。宮城音弥がその男を取り押さえてしまった。その男こそ酒井雅楽頭忠清だった。

  酒井雅楽頭忠清はお世辞を言って家綱に取り入ろうとする。家綱が辟易としているところに堀田正俊がやってきて、酒井雅楽頭忠清を嘘で追い払う。

 

 桜下三学の舞(三)

  酒井雅楽頭忠清が上屋敷に戻ると大勢の家臣が何者かに襲われ倒れていた。しかも一滴の血も流されていなかった。幽仙こと中根正盛がそこにいた。

  幽仙が松平伊豆守信綱を殺したことを話した。理由は将軍実弟綱重を立てる将棋倒しの策を松平伊豆守信綱が見抜き、幽仙に陰謀の首魁を叩き潰すように行ってきたからだった。死体の顔を切り刻み浅草の溜まりに放り込んだので今頃は非人達が処理しているだろう、とのことだった。幽仙は酒井雅楽頭忠清に野望を持つのは勝手だが事を焦っては失敗することと、幽仙と酒井雅楽頭忠清との間の約束を忘れぬように、と念押しして去った。それを天井裏で聞いていたカムイだった。

 

 済松寺(一)

  老中阿部豊後守忠秋の上屋敷から阿部豊後守忠秋が駕篭に乗って出ていき船にのった。それを尾行する姉御と呼ばれる女と一太郎。阿部豊後守忠秋が船宿若潮で会っているのは尾張徳川光友だった。この二人は松平伊豆守信綱の最期の手紙を受け取り、次に狙われるのは綱吉だと読んでいた。

  二人が帰る頃、船宿若潮の裏口から船で蔵屋敷河岸と霊岸島の間を抜けて神田川へと向かった僧体の男がいた。

  阿部豊後守忠秋らを尾行していたのはサエサと一太郎だった。二人のところに幽仙が帰ってきた。幽仙は一太郎に褒美の金を渡した。サエサはカムイへの愛情が募りすぎてかえって恨みに変わり殺意を持っていた。幽仙はそんなサエサをもてあそぶ。

  一太郎のもとにカムイが変装したサブがやってきて、一太郎の家族が生きていること、幽仙やサエサがやっていることがよくないこと、時期が来るまで命を大事にすることを伝えて消える。一太郎は月影でサブを仕留めたと思ったが、サブは獣遁変わり身の術で消えていた。

 

 済松寺(二)

  牛込済松寺の周囲は、芦原や灌木の生い茂る大湿地帯だった。船宿若潮の裏口から出た僧体の男が船で済松寺を訪れていた。その男は阿部豊後守忠秋だった。迎えたのは済松寺の庵主祖心尼だった。彼女は春日局の縁戚で娘が家光の子を産み側室となった。生まれた子が尾張家徳川光友に嫁いだので、光友の義理の祖母にあたり、大奥に隠然とした勢力を保っていた。

  祖心尼が連れてきた九官鳥が、幽仙と松平伊豆守信綱の会話を再現する。そして松平伊豆守信綱が殺される。とそこに松平伊豆守信綱本人が現れた。祖心尼の身の回りの世話をする里佐が済松寺に忍び込んだ二人組を倒した。

  祖心尼と松平伊豆守信綱と阿部豊後守忠秋が食事をしながら会話する。

  幽仙が、松平伊豆守信綱と阿部豊後守忠秋を裏切っていること。息子は問題無さそうなこと。幽仙の願いは中根家の無事安泰であることは確かなようだ。将棋倒しの謀略による自壊によって徳川家の転覆を謀る陰謀だ。

  大奥も、将軍家綱の乳母矢島局が年寄りとして束ねていたが、正室浅宮についてきた飛鳥井と姉小路が暗躍しており矢島局が押され気味のようだ。将軍家綱の子を妊娠しても皆流産したり早世している。飛鳥井と姉小路と酒井雅楽頭忠清が接近し政事にくちばしを入れようとしている。

  酒井雅楽頭忠清に対抗できるような若い人材がいないか、という話になり、春日局の孫である稲葉正則がいるが酒井雅楽頭忠清の言いなりになっている。祖心尼は、堀田正俊を薦めた。

  堀田正俊が奏者番に任命された。奏者番とは諸侯以下が将軍に謁見するときに指図したり進物を披露したり、殿中の礼式を司る役職だ。奏者番=>寺社奉行=>大坂城代=>京都所司代=>若年寄=>老中となるのが当時のエリートコースだった。

  翌年、将軍弟君綱重公、綱吉公がそれぞれ甲府、館林にて二十五万石の大名となる。

  寛文二年(1662)、若年寄が設けられ、将軍側衆から久世広之と土屋数直が若年寄になった。

  時はまた戻り、将軍家綱の大作桜下三学の舞が完成し、披露の宴が催された。

  しかし家綱の心は暗い。皆がほめるのは自分が将軍だからおもねっているのではないか、と疑っていた。

  宮城音弥は、作者が心で決めればいい、と話す。柳生からの急の使いが来たので宮城音弥は辞去する。そこに酒井雅楽頭忠清がやってきて、迷っている家綱に、絵を展示し隠れて皆の評判を聞くという策を伝える。将軍に盗み聞きをしろ、と命じるのかと激怒する家綱。だが、兵法でも探索するのだから卑怯ではない、という酒井雅楽頭忠清。悩む将軍家綱。

  狩野探幽が現れ、批評する者はいろいろだから参考になる意見もあるが、そうでないものもある。だからこそ己がしっかりとした心づもりを持っていなければかえって動揺しみじめになる、勇気が必要で覚悟の上で将軍自身が決めるべきだ、と話す。決断を保留する家綱だった。

 

 泥亀(一)

  柳生家に行った宮城音弥だったが柳生家からは使者を出していない、とのこと。どうやら酒井雅楽頭忠清にしてやられたようだ。そこで木村勘九郎は宮城音弥を船で深川の岡場所、通称晒野の泥亀という店に連れ出す。そこに記憶を失った錦丹波の息子錦源之助がいた。錦源之助を助けた武士は針ヶ谷夕雲(せきうん)といい、52度に及ぶ他流との真剣勝負に一度も敗れたことはなく、一生、浪士で、無住心剣術、夕雲流を生み出し、小田切一雲という高弟がいた。

  泥亀の店主はかなり変わっていて活け作りと称して生きたままのタコ一匹を投げて自分で切れと言う。音弥がそのタコを見事にさばく。店主は先払いだというので、木村勘九郎は財布を預けた。しかし木村は何かを盛られたようで寝てしまった。音弥も酔い潰れた。木村が預けた財布に十両入っていることをみた男たちが、始末しろ、と命じる。

 

[感想]

 サエサに一太郎らが現れた。しかも敵方の幽仙一派のようだ。

 抜忍カムイが敵の様子を探るために積極的に動いている。

 宮城音弥は将軍家綱に気に入られてどんどん接近している。そうなると今後どうなるか心配だ。陰謀の黒幕が少し見えてきたようだが、まだまだはっきりしない。

 次巻以後も楽しみだ。