haruichibanの読書&視聴のおと

読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 15』(小学館)(1996/10/01)


f:id:Haruichiban0707:20240424155308j:image


もくじはこちら
f:id:Haruichiban0707:20240424155356j:image


登場人物
f:id:Haruichiban0707:20240424155340j:image

 

●不知火〔二〕

  下総、布佐(現我孫子市)から松戸に向かう道は鮮魚(なま)街道と呼ばれていた。銚子でとれた魚は利根川をさかのぼって舟で運ばれ、木下(きおろし)河岸で陸揚げされ、大森、白井、鎌ケ谷、八幡、行徳から江戸日本橋の魚問屋に運ばれていた。しかし新たに布佐から松戸を経て江戸川を通り日本橋へ運ばれる道が開発され、次第に増えていった。松戸にその日の昼間、日本橋には銚子を出た翌日夜には荷が着いた。

  そのルートの舟の中に猪狩芸州とタカとその妹タキがいて酒を呑んでいた。アヤメは縛られて牢に入れられていた。

  縄抜けをしてタキを格子越しに蹴って身体を拘束し、アヤメが脱走した。しかし猪狩芸州が捕まえた。危急を告げる色違いの二段狼煙が上がった。それを見た猪狩芸州は「いやな予感がする。」と心の中で思った。

 

 罠(二)

  善後策を練る冬木道無、笹一角(草加竜之進)、草鬼、庄左ヱ門(正助)、熊沢蕃山に小助だった。冬木道無、草鬼、笹一角は一行とは別れた。伝書鳩を飛ばそうとしたところに、鷹が襲ってきた。曲者はタカとともにアヤメを捕まえた眼帯をした男だったが、笹一角や冬木道無の手裏剣によって死んだ。彼の矢文には「女はあずかった 江戸にて待つ」と書いてあった。

  鷹に襲われた鳩は囮だった。本当の伝書鳩を放つ草鬼。

  激しい嵐の夜が明けて、名張の五つがサブの使いとしてやってきた。五つの案内で隧道を通り関所や番所をかわして一行は江戸に向かった。

 

 罠(三)

  浅草乞胸頭(ごうむねがしら)仁太夫(タブテ)が支配する非人溜に草鬼が放った伝書鳩が飛んできた。仁太夫はサブに情報を伝達し、シメ、ワリコ、ナギ、トラフ、マメダコらに船の支度を命じた。非人と乞胸の違いは乞胸は何らかの芸を見せて金銭を得る点だ。

  仁太夫は、サブと会い、サブから、アヤメをさらったのが老中の目付頭中山主膳の手のもので、アヤメが義賊不知火一味のものであることを聞き、人質をどこに置いているかを調べること、宮城音弥と日州に情報を伝えることを頼まれた。また仁太夫が連れてきたシジマという忍犬を預かった。

  酒井雅楽頭忠清の下屋敷に、猪狩芸州とタカがアヤメを連れて行き、目付頭の中山主膳と会い、佐倉藩で二万両が不知火一味に盗まれたこと、アヤメが不知火一味であること、北町奉行石谷十蔵が餌に食いついてくることを、話した。

  天井裏ではサブ(カムイ)がこっそり聞いていた。

 

 犬笛(一)

  北町奉行所には日州が行き、賄賂をつかませ早川という武士に女の囚人が預けられたか聞いたが、来なかったようだ。

  酒井雅楽頭忠清の中屋敷には女装した宮城音弥が調べに来たところに駕篭が通ったが、それは囮だった。

 

 犬笛(二)

  酒井雅楽頭忠清の下屋敷では、目付頭の中山主膳が、アヤメを北町奉行所石谷十蔵に渡し彼が不知火一味を捕らえれば大手柄となり酒井雅楽頭忠清に対して借りができる。もし捕らえ損なえば世間の笑いものとなり失脚する、という猪狩芸州の策を話す。猪狩芸州は3人分75両の報酬を中山主膳からもらう。

  その間にサブ(カムイ)はアヤメの牢に行き、必ず仲間が助けに来る、というメッセージを伝え、犬笛を渡す。

  そしてその情報を五つが下総・安食へ伝えに走った。

  江戸霊岸島沖の河村瑞賢の船上に、笹一角(草加竜之進)とサブ(カムイ)と草鬼と仁太夫と名張の五つと日州と宮城音弥に不知火一味が揃って作戦会議に入った。

  笹一角が作戦を説明する。

  作戦は表と裏に分けられるが表裏一体絶えず変化する。

  

  表の作戦

   目的:人質奪回

   襲撃のタイミング

    1.酒井下屋敷から奉行所への移動中を襲撃する場合

    2.奉行所襲撃

    3.天満町牢屋敷で死罪が宣告された場合

    4.刑が市中引き回しの上磔獄門となり処刑場へ送られる時を襲撃する場合

  裏の作戦

   笹一角の予想では、酒井雅楽頭忠清は1.4.に罠を仕掛けるだろう。

   これへの対処として、情報収集、陽動作戦、攪乱戦法が必要だ。

   作戦イ.不知火一味

   作戦ロ.宮城音弥と草鬼

   作戦ハ.笹一角

   サブや仁太夫や日州は情報収集、探索、連絡を担当する。

   そして名張の五つは軍目付になるのと、中根正盛や望月佐渡守の動静に気を配ること

 

  江戸城にて北町奉行所石谷十蔵貞清に酒井雅楽頭忠清が不知火党の一人を捕らえていることを伝えた。

  そして酒井雅楽頭忠清の下屋敷に石谷十蔵貞清を呼び、地下牢にアヤメを見に行く。

  地下牢の天井がどんどん低くなり最後は潰してしまう仕掛けになっていた。

  アヤメは顔色一つ変えずに耐えていた。

 

 犬笛(三)

  北町奉行所石谷十蔵貞清の孫娘小百合は奉公人のお梅によって縁日に連れて行ってもらってから祭り好きになった。今日もお梅に両親には内緒で祭りに行った。祭りの人だかりの中で小百合が消えてしまった。謝るお梅のかんざしに結び文があり、「娘はあずかった 不知火」と書いてあった。

  箝口令がしかれ小百合はお梅と一緒にお梅の実家向島にいることにした。

 

 犬笛(四)

  猪狩芸州とタカは長唄指南の看板を掲げ、酒を呑み、抱き合っていた。タカの妹タキは、外に出た。

  釣りをしていた弁天の音二郎(宮城音弥)が釣果がないことに腹を立てているところにタキが来た。もくぞうガニを臼でついて粉にした味噌仕立ての汁をガン汁といって美味いのだと言って、音弥がタキを誘う。

  催淫剤入りの水飴をタキになめさせ、草鬼に大金を払って舟を借り切った、音弥だが、タキは睡眠薬で音弥を眠らせる。実際には音弥は睡眠薬を飲んでいなかったが、催淫剤の影響でタキは眠った音弥と性交渉し何度も絶頂に至って失神した。草鬼がタキを連れて行った。これが陽動作戦ロだった。

  人間とは一体何なのだろう、神や仏はいるのだろうか、と考える音弥のもとに名張の五つが現れ、音弥と酒を酌み交わす。五つは「ただ、人はみなその解けぬ謎を求めて生きているってことじゃないんですかい・・・」と言う。

 

 犬笛(五)

  猪狩芸州とタカは極真神明流茨木道場に向かう。道場主の茨木に猪狩芸州は手練者50名を5日以内で集めるように、と伝え前金を渡す。成功の暁には残金はもとより酒井雅楽頭忠清から任官の儀も考えていると伝えられた。

  茨木道場の門下生が集まったところに、笹一角(草加竜之進)が全員を斬り殺した。

  猪狩芸州とタカは次に斉藤幻心済の霞流道場に向かった。そこでは既に道場生達が多数斬り殺されていた。慌てて逃げ出す猪狩芸州とタカの目の前に笹一角が現れた。笹一角は二人をコテンパンにのした。手足は二、三箇所は折れており、あばら骨も内臓に達しないように折っていた。服をひんむき、髪を刈りとばし、非人溜に放り込むよう、笹一角が非人達に命じた。これが作戦ハだった。

 

 犬笛(六)

  早朝、酒井雅楽頭忠清の下屋敷から奉行所へアヤメ護送のために駕篭を囲んだ行列が出立した。

  カムイが忍犬シジマを使って、駕篭内にアヤメがいるか匂いをかがせたが、シジマは反応しない。どうやら囮だったようだ。その知らせを受けた仁太夫の合図を受けて和泉橋のあたりで狼煙が上がった。

  別ルートを通って、アヤメは護送された。シジマの吠える声とともに江戸中の犬が遠吠えを始めた。その声を聞き、勇気づけられるアヤメだった。

  

[感想]

 アヤメ奪還作戦はうまくいくのだろうか?

 次巻も楽しみだ。