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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 12』(小学館)(1995/04/01)



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●野望〔四〕

  泥亀の二階から女が逃げてきた。下女奉公と聞いていたが体を売れと言われた女が女衒の伊佐次の下を噛みきったのだ。錦丹波の息子で記憶喪失の錦源之助が彼女を助けようとする。宮城音弥が助っ人に入り、次々と悪党を斬り殺す。悪人のリーダーらしきブルドッグのような男が針ヶ谷夕雲に五十両を渡して助太刀を頼む。目を覚ました木村勘九郎が針ヶ谷夕雲と外で対決するが、やれば相討ち、と言って針ヶ谷夕雲は去って行った。

  女を助けて錦源之助と宮城音弥は船で去って行った。

 

 帝鑑の間(一)

  帝鑑の間とは、その襖に歴代帝王の亀鑑となるべき唐土の帝臣の図が描かれていたことでその名がある。そこで、大名たちが会話していた。大久保と呼ばれる武士が帝鑑の間の襖絵が変わっていることに気づいた。誰もがその絵を褒めるのに、堀田上野介正信だけが、武士本来の姿を忘れ、茶会、歌会のと風流の名を借りて堕落していく様だ、と言って、襖を取り除こうとした。その後ろには将軍家綱がいた!!

  その頃、江戸城内では幕閣たちが審議をしていた。酒井雅楽頭忠清は、帝鑑の間であったことを聞き、喜びの表情を隠せなかった。それを見ていた阿部豊後守忠秋は、何か悪の企みが進行していることをかぎとっていた。

 

 帝鑑の間(二)

  柳生上屋敷奥の間には、柳生飛騨守と木村勘九郎と宮城音弥がいた。今日、将軍家綱の剣の稽古が家綱の病のため中止となった。その理由を確認するために木村勘九郎と宮城音弥が堀田備中守正俊の屋敷を訪れた。しかしその門の前には、大目付の命令で堀田備中守正俊閉門中と言って遮る武士がいた。やむなく引き揚げる二人に乞食姿のサブがいて、思案橋の傍で待つとメッセージを渡した。

  船の上で、サブが話すには、諸事件の黒幕は老中酒井雅楽頭忠清とその一党であることを話し、船宿に案内し、堀田備中守正俊につなぎをつける算段をする。宮城音弥の作戦とサブの作戦が同じだった。内容は木村勘九郎には知らせなかった。そして、サブが宮城音弥に、下女の里の姿に宮城音弥が変装した。

  里の姿になった音弥が出かけると、音弥の姿になったサブと木村勘九郎が船で出かけた。その時、サブの正体を聞こうとする木村勘九郎に、サブは木村勘九郎が既に死んでいることを話し、お互い正体を話したくないのはおあいこだと言った。

  二人は言平町の角屋で落ち合うことを確認して別れた。

  その頃、堀田備中守正俊上屋敷裏木戸から下女の里に化けた音弥が屋敷に入り、堀田備中守正俊と会い、阿部豊後守忠秋への密書を書いてもらい、音弥がそれを届けることとなった。

 

 帝鑑の間(三)

  その頃、柳生家の人脈を活かして、木村勘九郎は大久保と言う武士の屋敷にいた。彼は帝鑑の間にいた大久保だ。そして帝鑑の間で何があったのかを聞き出そうとした。箝口令がしかれているが、大久保が話し出そうとしたとき、天井裏にいるくせ者を木村勘九郎が刀を投げて殺した。そのくせ者の首実検をしたところ、大目付の配下石橋某だった。くせ者の死体とともに事の次第を大目付に届け出ると、大目付が今回は穏便に、と言ってくるだろう、と木村勘九郎が話した。そして、大久保は帝鑑の間で起こったことを話した。木村勘九郎は内藤や茶坊主などあの時帝鑑の間にいた他の者にも会って話を聞いた。尾行していた二人組を倒して、言平町の角屋に上がった。

  そこには音弥に変装したサブ(カムイ)と下女の里に変装した宮城音弥がいた。

  酒井雅楽守忠清の陰謀によって、堀田上野介正信が襖絵を外そうとして将軍家綱と鉢合わせになったことが今回の閉門につながったことがわかった。そのことを阿部豊後守忠秋に知らせる密書を、宮城音弥が持っていくことになった。紹介状は柳生飛騨守宗冬の名で木村勘九郎が書き判も押した。宮城音弥が阿部豊後守忠秋のもとに向かった。

  阿部豊後守忠秋の上屋敷に着いた宮城音弥だったが、阿部豊後守忠秋は誰にも会わないと言う。そこでサブ(カムイ)が放火しその騒ぎのスキに宮城音弥が阿部豊後守忠秋に会う作戦となった。

  作戦通り、阿部豊後守忠秋と会った宮城音弥は帝鑑の間であったことを話し、それが酒井雅楽頭忠清の策略であることを話した。そこに祖心尼も現れた。音弥は自分を将軍家綱の所に行かせてほしいと頼んだ。だが、家綱は大奥にいて酒井雅楽頭忠清配下の者に囲まれており、阿部豊後守忠秋とて手が出せない、と言った。家綱が大奥にいることがわかった宮城音弥は祖心尼に頼み込んだ。そして阿部豊後守忠秋から堀田備中守正俊への手紙を下女の里に変装したサブ(カムイ)に預けるように頼んだ。

 

 別式女(べっしきめ)(一)

  将軍家綱は自己嫌悪に陥っており、医師にも会いたくないし、正室のことを雌豚呼ばわりしていた。

 

 別式女(べっしきめ)(二)

  腹を切ろうとして、妻達や酒井雅楽頭忠清らに笑われている夢にうなされて目覚めた将軍家綱。その時、大奥の山里の東屋から笛の音が聞こえてきた。笛を吹いていたのは祖心尼のお声がかりで新たに召し抱えられた別式女だった。別式女とは女性の武芸者で武家の女子の武芸指南のために雇われる女だった。

  翌日、大奥中の話題となり、天覧試合が催された。別式女は強く、将軍家綱に呼ばれた。袷久里(あわせくり)と名乗った。

  袷久里に褒美の扇を投げた将軍家綱に何か歌を書いて袷久里は将軍に返した。

  将軍家綱と袷久里が試合をし、最初は家綱が勝つようにしたが、二度目は家綱に打ち太刀をさせる非礼をした。激高した家綱は袷久里を打擲し、地下牢に放り込み、祖心尼を追い出し、正室の用意した精進料理のような料理を蹴散らし、ハゼの唐揚げを持って来い、と叫んだ。

  祖心尼と矢島は別式女の袷久里が殺されたら自分達も死なねばならない、と話す。

  「酒を持って来い」と叫ぶ将軍家綱の所に、鈴という女が酒を持っていき、煮干しを肴に渡す。そして将軍家綱は鈴を犯した。別式女の袷久里が扇に書いた歌は「風吹きて 送りこまれし 糸鳴りの はぜの紅葉(くれない) 思い懐かし」というものだった。別式女が宮城音弥の変装であることを見抜いていた将軍家綱は刀を持って、祖心尼とともに、地下牢に向かう。

  別式女(袷久里)(宮城音弥)を成敗しようとした将軍家綱だったが、微動だにしない宮城音弥を見て、赦すこととした。そして葬式饅頭と酒を持ってこさせて、二人で酌み交わすのだった。祖心尼に笛を所望したが彼女は笛を吹けないので、彼女に仕える理佐が代わりに松風という曲を吹く。

  酒井雅楽頭忠清の謀略だったことを知った将軍家綱の病は癒えた。

  祖心尼と理佐は、将軍家綱が成敗した別式女の遺体を舟で運び外に出した。途中、水門固めの伊賀者の検問を受けたが、そこを通り抜けた。理佐は忍術の一つ、妙活の術の一つ、催眠の術で、伊賀者達にこの日の記憶をなくすようにした。

  

 海跡湖(一)

  ここで少し時が戻り、下総、椿湖の調査へ向かった庄左ヱ門(正助)、笹一角(草加竜之進)、カムイ、熊沢蕃山の動向に移る。椿湖は匝瑳、海上、香取の三郡に渡る、東西12km、南北6km、周囲40kmの湖だ。正助達の測量は外川浦の大網主、崎山治郎右ヱ門に紹介された湖漁師の松造老人と孫の小助の案内で進められた。椿湖の深さは二尋(五尺から六尺:約1.5-1.8m)だった。測量している一行に石が投げられた。

 

[感想]

 酒井雅楽頭忠清の策略が進んできて、堀田備中守正俊が閉門されてしまった。宮城音弥が大活躍した。そしてカムイもだ。理佐に化けたのはカムイだろう。将軍家綱に犯された女、鈴は誰だったのだろうか?また、木村勘九郎を名乗っている男の正体は何なのか?

 謎が謎を呼ぶ展開だ。

 

 

●佐倉十一万石〔一〕

  椿湖を干拓されたら生きていけない地元の漁師達が投石していたのだ。

  地元の人々と争うことを避けるために、庄左ヱ門(正助)一行は舟を逃がそうとする。カムイは一軒の家に放火し漁師達の気を家に向けようとした。カムイが放火しようとしたその一瞬前に、誰かが先に放火した。

  一行の前に湖の北から鏑木村の庄屋、平山忠兵ヱがやってきて、一行を舟に乗せ、平山忠兵ヱの家に向かう。

  カムイより先に放火したのは老人だった。老人を尾行したカムイだったが、老人によって溺死してしまった。驚いた老人だったが、カムイがカラスを使った術で、老人を気絶させた。老人は世捨て人で草鬼(そうき)と名乗った。ナレーションでは、銚子市史に早器居士(そうききょし)という老人が載っていること、物語の進展とともにその正体が明らかになることが、書かれている。

  草鬼と松造は既に顔見知りだった。

  鏑木村の庄屋、平山忠兵ヱの屋敷で一行の歓待の宴が催された。今回の騒動を起こしたのは湖南の井戸野村、仁玉村の衆で、既に平山忠兵ヱが、両村の庄屋と話をつけていた。

  夜中、皆に酒が回り寝静まった中、笹一角とカムイだけは起きていた。どうやら眠り薬が仕込まれていたようだ。そこにおミネという奉公女が引き込み役で、盗賊達10人が侵入してきた。

 

 

[感想]

 椿湖干拓に対する暴力的な反対運動で庄左ヱ門(正助)達の測量が妨害された。ここで新たに草鬼という老人忍者(?)が登場した。しかもいわくありげなナレーションだ。そこに盗賊まで現れた。もしかして冬木道無とアヤメだろうか?次が気になる。