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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 2』(小学館)(1989/11/01)



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●猿山〔二〕

  カミナリが戻ってきた。ダルマとキズは従おうとはしなかったが、恐怖と緊張感に負けてしまう。だがカミナリは無関心だった。メスの求愛にも無関心だった。

  三匹の流れ猿、アバタとハゲと一文銭は、カミナリを挑発し、カミナリの眼前でメスに求愛する。カミナリは無関心だ。三匹はカミナリに挑戦する。

  だが、カミナリは一文銭を一撃で殺してしまう。

  カミナリは群れにいることに興味を失っていた。タテガミを見たカミナリは、「まだ見ぬ己の新たなる姿を求めて、まだ己の力の試されぬ・・・外界へとカミナリは旅立った」のだ。

 

[感想]

 カミナリがタテガミのように孤猿になり、群れを離れるとは意外な展開だ。そろそろ人間社会の描写に移り、以前の登場人物達の話に変わってほしいころだ。

 

●谷地湯

 道づれ(一)

  喜太郎という男が日置山系の谷地湯に住み着いた。ここはかつて横目が傷を癒やし、正助とナナが愛を語り合い、白狼のカムイが傷を癒やした所だ。喜太郎は、群れを追われた猿の歯ッカケを看病していた。傷が癒えた歯ッカケは去って行った。

  しかしある時、喜太郎のもとに現れた。喜太郎は歯ッカケに餌をやる。歯ッカケは餌をもらい、代わりに喜太郎に金の塊を渡した。しかし、餌をもらい金も盗っていく。喜太郎は罠をしかけ歯ッカケを捕まえ、餌をやる代わりに金塊を取ってくるように教えるが、歯ッカケは喜太郎をいいようにあしらう。

 

 道づれ(二)

  喜太郎の餌に野鳥が集まってきた。歯ッカケは餌を奪われ腹を立てる。喜太郎は歯ッカケが集めた金塊を袋に貯めておいたが、歯ッカケに盗られる。そこを野鳥たちに襲われた。喜太郎は餌代の不足に悩み、人里におりて盗みを働くが捕まってしまった。喜太郎は縛り首にされそうになった。そこに馬に乗った武士が現れ、五両で喜太郎の命が助かった。

  喜太郎はその武士に、猿に餌をやり野鳥に盗られたので、餌を盗もうとした、という事情を話した。

  武士が喜太郎の湯宿に行き、湯に浸かっていると、忍者達が襲ってきた。武士と家来はその忍者達を全員返り討ちにした。忍者達にその武士は「佐渡守」と呼ばれていた。喜太郎にカネを払って去って行った。

 

 下剋上(一)

  カミナリが去った猿の群れは、一位ダルマ、二位キズ、三位アバタ、四位ハゲとなった。

ある時、メス猿一位のヒミコの子と、メス猿最下位のカズラの娘テゴの喧嘩から、ヒミコとカズラの喧嘩に発展し、ヒミコが劣勢だった。ダルマの介入でその時は収まったのだが、仔猿が一匹鷲にさらわれ、別な一匹の仔猿が死んだ。

 

 下剋上(二)

  ある日、狐が人家の鶏を襲った。気づいた人々が後を追いかける。狐は二匹のタヌキに襲われた。その間に鶏が逃げ出した。

  その鶏が猿の群れに紛れ込み卵を産んだ。その卵をめぐって、ヒミコとカズラが争いを始めた。カズラと配偶関係にあるアバタがヒミコを襲った。ヒミコが退散すると、アバタは卵を入手した。そこにダルマが襲ってきてアバタから卵を奪った。卵を奪われたアバタはヒミコに八つ当たりした。

  その後、鶏が卵を産む=>ダルマが卵を入手する=>アバタがヒミコに八つ当たりするのが常態化し、カズラの地位が上がりヒミコの地位が下がっていきとうとうヒミコとその家族はメスと子どもだけで群れを去って行った。

  白い狼カムイとその仲間達は数日間、鹿の群れを追っていた。若い狼が慌てて移動したため鹿に気づかれてしまった。鹿の群れは沢に入り川を下って臭いを消して去って行った。狼の群れは鹿の臭いを追跡できなくなった。カムイは仲間を召集するために遠吠えした。

  その声がヒミコの群れにパニックを引き起こし、群れがバラバラになった。そしてヒミコの子どもが行方不明になった。

 

 下剋上(三)

  谷治湯の喜太郎の所に旅の女がやってきて倒れた。喜太郎が看病すると彼女は元気になった。そこに歯ッカケがヒミコの子どもを連れてやってきた。餌をやる喜太郎。それを背後からこっそりのぞく女・・・。

 

 異変(一)

  喜太郎の宿に来た女のおかげで喜太郎の宿は繁盛してきた。そしてとうとう喜太郎と女は結ばれた。

  喜太郎の宿に托鉢僧がやってきて女に「うまく入り込んだな」と言い、女は「お館さまによろしく」と答える。托鉢僧は佐渡守の従者だ、とナレーションが入る。

  喜太郎が餌を与えていたら、歯ッカケが久しぶりに金塊を持ってきた。そして後ろにはヒミコの群れもいた。

  頭を抱える喜太郎。

  喜太郎は餌場を変えることにした。喜太郎の新しい餌場に猿たちが集まり、金塊もたくさん持ってきた。

  それを見た女を喜太郎は殺してしまった!!

 

 異変(二)

  ここで少し時間が戻る。

  野良猫が鼠を弄んでいるのを、歯ッカケが見物している。そのうちに自分も参加する。野良猫が飽きて去ってしまった。そこに大きなフクロウが飛んできて鼠を食べてしまった。フクロウは歯ッカケを気に入り、自身が捕った鼠を歯ッカケに与えようとする。昼間は歯ッカケが餌をフクロウに渡そうとする。夜行性のフクロウが歯ッカケにつき合い外に出たところをカラスが襲った。そこを歯ッカケがフクロウを助けたことでこの一匹と一羽の奇妙な共同生活が始まった。

  あるとき、はぐれたヒミコの子どもを二匹の狸が襲った。その声を聞いた歯ッカケがヒミコの子どもを助けようとタヌキたちに襲いかかった。フクロウも加勢したのでタヌキたちは去って行った。

  歯ッカケとヒミコの群れが再会した。オスの猿がいなかったヒミコの群れは、旧知の歯ッカケをボスとして迎えた。フクロウは自分が孤独に戻ったことを知った。半月後風鳴り(ちぎなり)の谷にいる歯ッカケとヒミコの群れを見つけた。そこは喜太郎が作った新しい餌場だった。そこにフクロウも仲間として加わった。

 

 異変(三)

  日置領五代木。そこは小さな漁村だったが今ではちょっとした港町になっていた。そこに質屋兼両替屋の「大文字屋」があった。その奥座敷で、辰と呼ばれる男が大文字屋の主人に金塊を見せていくらかきいていた。大文字屋は一両出した。辰がごねると五分足した。

  辰が大文字屋から出てくると喜太郎が「いくらだったか」ときいた。「五分」と答えた辰。喜太郎は辰を石で殺してしまった!そして辰が一両を持っていることを知った。

  だがその殺害現場を大文字屋の番頭である市が目撃していた。市は五両を喜太郎に渡し死体を船に乗せてどこかに去った。

 

 佐渡守(一)

  望月城城主望月常陸守正成七万石。城内で弓の稽古中、何者かによって傷を負わされる。斃れた彼は「佐渡を呼べ」と言う。

  猿投沢城望月佐渡守正次一万石。望月領で鷹狩りする佐渡守。望月領は実高十万石と言われる。百舌兵ヱが鷹狩りを支援する。

  そこに日置領代官錦丹波が現れた。佐渡守は日置領内に入ってしまっていたのだ。

  佐渡守が自分の非を認め去ろうとしたとき、陣内と呼ばれる佐渡守の部下が犬を放った。錦丹波はその犬たちを一刀両断した。佐渡守は錦丹波の剣が二階堂流とみた。

  佐渡守が錦丹波に詫びて去った。そこに望月城からの使者が来て望月常陸守正成が斃れたことを知らせた。佐渡守は「兄者が!」と言って、城に向かった。

 

 佐渡守(二)

  日置領と望月藩と猿投沢の地図が描かれている。五代木は両領地の間を流れる川の最下流の港だ。猿投沢は日置領と望月藩よりかなり小さく内陸にある。

  望月城に来た佐渡守を病床に呼んだ望月常陸守正成は、十歳である息子の国松の後見人に佐渡守になってもらいたい、と話す。佐渡守はお墨付きを要求する。

 

[感想]

  猿の群れ話が続くが、ようやく人との関わりが出てきた。金塊の欲にまみれた喜太郎と猿の群れに接点が出てきた。谷治湯に来た女(佐渡守の間者か?)と、知人の辰の二人を、喜太郎は殺してしまった。金塊の欲にまみれてしまったのだ。

  第一部に登場した港町五代木が登場した。五代木といえば夢屋七兵衛やクシロが思い出される。

  また第一部に登場した錦丹波と佐渡守が会い、佐渡守が日置領の隣にある望月藩藩主の弟であることがわかった。彼は喜太郎の金塊を狙っているようだ。第二部ではこの金塊をめぐって人々が争うのだろうか

  ようやく物語が人間社会に移ってきて、第一部との接点も生まれてきて次巻以降が楽しみだ。