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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 3』(小学館)(1990/06/01)



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●佐渡守〔一〕

  望月城城主望月常陸守正成と猿投沢城望月佐渡守正次の会話の続きだ。

  佐渡守は兄常陸守に一筆書くように要求する。その中に、常陸守の息子国松の後継者は佐渡守の息子虎丸と書くよう迫る。

  襖の外では望月藩家臣達が心配しながら待機している。そこに御小姓組頭、石高三百石の団織部之助が現れ、ズカズカと主君の寝室に入っていった。ちょうど出てきた佐渡守に話の内容をきいた織部之助。「本人に聞け」と言って去る佐渡守。

  織部之助は常陸守と乳母子なので、虎丸を国松の後継者と書くのを止めようと直言する。

  その夜、城代のカゴに乗って城を出る織部之助を佐渡守の忍者達が書状を手に入れようとして襲った。

 

 人質(一)

  日置領で年貢の時期になった。

 人質(二)

  花巻村庄屋と市平ヱの娘加代が年貢を納めるのを待ってほしい、と代官錦丹波に頭を下げる。錦丹波は許さず市平ヱを笞打ちしようとする。市兵ヱが病気を患っているので自分を身代わりにしてほしい、と願い出る加代。加代を笞打ちにし市平ヱを釈放した錦丹波。

  錦丹波は部下の一心と酒を呑む。

  そこへ江戸から錦丹波の家来、山田勘助と娘の鞘香がやってきた。鞘香は勝手に出奔し、しかも道中で人を斬り、浪人に助けられて関所破りまでしていたのだった。江戸からの出女は厳しい取締があるので、鞘香は小普請方の中山伝平ヱの息子中山新之丞と入れ替わって江戸を立ったのだった。新之丞は女装して錦家にいるのだった。

  錦丹波は怒って、娘鞘香を牢に入れた。

 

 人質(三)

  鞘香は加代のいる牢に入り、加代を手当する。

  娘鞘香が気になる錦丹波の所に、一心が水野十郎左ヱ門自慢の吉光の小刀を持ってきた。水野が五代木の浜清に来るようにということだった。

  旧友の水野の頼みなので錦丹波は五代木の浜清に向かった。そこに佐渡守がいて、佐渡守のおごりだった。

  水野十郎左ヱ門は錦丹波に後日また何かを頼みに行くと話した。

 

 人質(四)

  鞘香は牢内の便所での排便の仕方を加代に教わり、「これでおまえとは本当の尻合いだ。くさい仲というだろう」と冗談を言う。

  加代は年貢を皆済したので釈放された。

  一人になった鞘香は、旅の途中で谷津の馬借という無頼者達との喧嘩を思い出す。そこに編み笠の浪人が現れて無頼者達を全員倒した。その男は左薬指と小指がなく、錦丹波の事を知っているようだった。次の宿場で無頼者達が待ち伏せしているので関所を通らない、という浪人の後を勘助と鞘香は追い関所を通らなかったのだ。

  錦丹波は娘鞘香の様子を見に行く。服を脱いで加代と同じように笞打ちにしてほしい、という鞘香。それはできない、と断る錦丹波。勘助と共に江戸に戻る、と言えば牢から出すと錦丹波が話している、と一心が鞘香に話す。

  鞘香は勘助とともに江戸に帰ると言って牢から出た。鞘香は兄の源之助が道場をやめ白柄組というならず者とつき合っていることや家の金を無心したり、将軍からたまわった家宝の太刀を持ち出そうとしたことを伝え、早く江戸に戻ってほしい、と言うが、三月までは戻れないと答える錦丹波だった。

 

 人狩り(一)

  水野十郎ヱ衛門は、仲間を斬った男を追うために山狩りをしようとしていた。そのために日置領の竹間沢や花巻の百姓を勝手に動員していた。それを知った錦丹波は怒り、百姓達を解放する。面子をつぶされた水野はその場では大人しくしていたが、内心は・・・。

  代官所に戻った錦丹波のもとに勘助が慌てて走ってきて鞘香に逃げられたと伝える。錦丹波の眉間にしわが寄る。

  勘助と鞘香を救った浪人は、草加一門や笹一角やアテナの墓を訪れていた。草加竜之進だったのだ。勘助のもとから逃げた鞘香は草加竜之進と会ったが、人違いだと言って船に乗って草加竜之進は去って行った。

 

 人狩り(二)

  鞘香は佳代のもとに来て、鉈を使ったり、シメジを採ったり、稗を食べたりした。裏の物置小屋で加代と鞘香は暮らすことになった。

 

 人狩り(三)

  水野十郎左ヱ門と一行は山狩りをしていた。日置領に入りそうになった時、錦丹波に止められたことを思い出し躊躇したが、佐渡守が許した。

  草加竜之進がミネのしゃれこうべを前に瞑想している。その背後に旅人らしき男が忍び寄り斬ろうとするが草加竜之進は既に気づいていた。草加竜之進と男は水野十郎左ヱ門達を待ち伏せする。

  水野十郎左ヱ門が佐渡守の領地の百姓を使って日置領内で山狩りをしていることに錦丹波は気づいたが、止めても無駄と思い、様子を見る。

  草加竜之進と男は水野十郎左ヱ門一味をことごとく倒した。一名除き峰打ちだった。おそらくその一名は水野十郎左ヱ門だろう。草加竜之進と共にいた男はカブト割りを自在に使う男だ。第一部で登場した男だろうか

  「なにもこちらまで手をよごすことはない。ここまでつき合えば充分というもの・・・。それにしても水野め、あれほどたわいないとは思わなんだわ・・・」と、上から戦いを見ながらつぶやく佐渡守。

  錦丹波と一心が草加竜之進と男に「同道願おう」と言ったとき、草加竜之進は断った。そして鞘香が関所破りしたことなどをほのめかし去って行った。錦丹波は「はて・・・あの声どこかで・・・」と心の中でつぶやいた。

 

 汲み取り(一)

  大根やシメジを売る加代と鞘香。ついでに汲み取りを頼まれたが慣れない鞘香はこぼしてしまった。そこに代官所の汲み取りも頼まれた。

  ちょうど錦丹波が排便中に肥汲みをしたため叱られる役人が二人を叱りに行ったとき、とっさに桶で守った鞘香だった。桶の便が役人に飛び、役人は逃げていった。

 

 汲み取り(二)

  加代の父である市兵ヱは、鞘香に早く帰ってもらえ、と言う。正助の舌を抜いたのが錦丹波であることを忘れるな、と言う。正助様のこと(『カムイ伝』第一部)の話をきいた鞘香は自分が鬼の娘であることを知る。

 

 傷魂(きず)踊り(一)

  鞘香は傷魂(きず)踊りを見る。夙谷の非人達が正助に扮して傷だらけになることで百姓達が悲しみと罪の深さを思い出し、施しをするのがならわしだった。

 

 傷魂(きず)踊り(二)

  錦丹波のもとに江戸勘定奉行からの使者が着き、年貢皆済上位十指のうちに入ったことを知らせた。老中からのお褒めの言葉と引き出物を賜ったのだ。

  錦丹波は庄屋たちを呼び、そのことを伝えた。

  一心は上司である錦丹波の出世を期待する。

 

[感想]

 錦丹波の嫡子がとんだどら息子であること、娘の鞘香がとんでもないお転婆であることがわかり、彼が家族の事で悩み苦しんでいるのを見ると、彼も人の親で鬼ではないことがわかる。

 『カムイ伝』第一部の重要な登場人物の一人、草加竜之進が生きていて、剣技も相変わらず凄いことがよくわかった。正助本人は登場しないが、正助様として登場し、傷魂踊りとして人々に伝わっていることがわかり悲しい。

 水野十郎左ヱ門と佐渡守が何か企んでいたようだが、草加竜之進の活躍で水野十郎左ヱ門が死んだ。佐渡守の次の一手は何だろう?常陸守と佐渡守兄弟の確執がこの後どう展開していくのだろうか?

 この後の展開が楽しみだ。