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白土三平『カムイ伝12 震天の巻』(小学館)(1968/03/31)


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第一章 銀札くずれ

 銀札くずれ

  非人のツクテと百姓の幸は愛し合っていたが横目に見つかり引き離された。

  雹が降ったが日置の農作物の出来はいいようだった。

  城代三角重太夫は目付橘軍太夫に破れ謹慎処分を受けていた。城代と夢屋七兵衞と正助が話し合っていたが、非常法のせいですべてのもうけが蔵屋に集まることになり、夢屋は日置から撤退する。藩札では日置藩の外で商売できないからだ。城代は復活のために一揆が起こることを願う。

  橘玄蕃は城代を失脚させて命を奪わないことが不満だった。軍太夫はそれをなだめる。

  日置藩内では藩札と銀の交換を厳しく禁じていた。そのため藩札の価値が暴落した。対策として藩札をもっと刷るため物価が高騰した。

  下級武士の中には金に困って自殺するものも出てきた。新田開発の人夫たちは故郷に帰れなくなった。そしてとうとう打ちこわしが始まった。

 

 

 カサグレ

  カサグレのもとに来た橘一馬は自力では食べていけないのでゴンの家に強盗に入った。ゴンが米一俵を渡す。一馬が運んでいると多数の百姓たちに囲まれた。

[感想]

 不換紙幣の乱発による物価騰貴で日置藩の経済がガタガタになった。せっかく農作物は豊かに育ったのに日置藩の経済が大混乱して人々の生活は幸せにならない。皮肉なことに武士たちの生活も苦しくなった。

 混乱が拍車をかけそうな状況になってきて目が離せない。

 

第二章 意図あり

 イヌ

  他領から日置藩に来ていた人夫たちの突発的な暴動は武士たちや非人達によってちんあつされた。しかも非人たちには褒美まで渡され、それを見ていた人たちと非人たちの分断がはかられた。

  百姓の幸と愛し合っているツクテは非人の掟で鼻と耳を切り取られた。その鼻と耳は幸のもとに送られ、幸は気を失った。

 

 意図あり

  日置藩は藩札による経済的混乱が広がっていた。そして偽札を作るものも現れた。

  その偽札作成者の工場は役所によって摘発されたが、犯人たちは何とか逃げおおせた。そこに赤目が来て偽札を彼らに渡し使うことを命じた。

  城代派の武士も困窮し町人を辻斬りする。その武士を橘玄蕃が殺す。

  橘軍太夫と玄蕃と蔵屋は一揆を起こさせないこと、起きたら徹底的につぶすこと。「権力は奪い、支配し、かつまた奪う(搾取)」とうそぶく玄蕃だった。

 

 米と女と仇と

  百姓たちに囲まれた橘一馬は百姓たちにボコボコにされた。正助が一馬の命だけは助けた。

  一馬はカサグレとともに城下に行く。軍太夫が城にいるとき玄蕃は一馬の母が玄蕃に犯されるのを見た。一馬は玄蕃に憎しみを抱き強くなろうと決意する。

 

 乱雲

  草加竜之進は武士としての己の存在について問い続けていた。正助のように何世代もかけて力をつけていくことはできない。ではなぜ武士が存在するのか、自分は何をするべきか悩む竜之進。

  そこにカサグレが現れ竜之進を襲う。

  竜之進とカサグレの対決場面が描かれないうちに場面は百姓たちの方に変わる。ゴンたちは一揆に向かう。正助も悩んだあげく一揆に同意する。

  激しい雨が降ってきて堤が切れそうになる。百姓たちが集まってきた。そこに横目が現れ正助を逮捕する。保護検束だ。村に竜之進が戻ってきて正助が捕まったことを知ると馬に乗り城に向かって走る。城門は閉じている。竜之進は、自分が草加竜之進だと名乗るが城門は開かない。

 

[感想]

 百姓たちの努力を搾取する橘軍太夫と蔵屋。城代は一揆が起こることで軍太夫たちが失脚することを望む。七兵衞は偽札を撒いて日置藩の経済が破綻することを狙う。彼らのエゴイズムに翻弄されるのが百姓であり非人たちだ。そして草加竜之進は己の存在意義に悩む。草加竜之進とカサグレの対決がどうなったのか疑問だがすくなくとも竜之進はカサグレに殺されなかったのは確かだ。

 今後の展開が楽しみだ。

 

第三章 梟首(きょうしゅ)

  他領から来た人夫たちの反乱は鎮圧され首謀者は磔にされた。

  正助や有力な村の庄屋たちは逮捕された。彼らは江戸への直訴を検討していた。   

  百姓たちはゴンかま指揮して集結し始めていた。

  城代は百姓たちに責任を押し付け蔵屋を殺そうと画策する。

  橘軍太夫と橘玄蕃は何か画策し、玄蕃は蔵屋を送っていく。

  蔵屋に城代派の武士達が乱入したが橘玄蕃によって返り討ちに遭った!

  集結した百姓たちを横目の部下が扇動し札会所を襲わせようとしたがゴンが気づき皆で止めた。

  役人が現れ、捕らわれている百姓たちが釈放されること、蔵屋他役人に不正があり捕まったことを告げた。

  橘軍太夫と橘玄蕃が話し合っていた。千手の鬼兵衛という町人を玄蕃が連れてきた。藩札が額面通り通用するようにするためだ。

  軍太夫が城代をどうするか玄蕃にきくと玄蕃は日置藩には何かあるから城代を徹底的に始末することはできない、と言う。軍太夫も玄蕃もまだ日置藩の秘密には気づいていない。

  橘軍太夫の屋敷を逃走した公儀隠密の忍者とサエサが会った。

  翌日、札会所では藩札を本当に銀と交換するようになった。ただし他領との取引およびそれに類似する特殊な場合のみだ。それでも物価が下がり始め、藩札への信用も回復した。蔵屋は獄門に処せられ蔵屋の看板が大蔵屋に変わった。

  城代は亀にエサをやりながら、蔵屋が処刑されたことや大蔵屋が現れたことを知る。そこに江戸からの使者が来て領主の死が告げられた。城代は登城しようとしたがやめた。

  

  海上では夢屋七兵衞と日の市(赤目)が大蔵屋や日置藩が気になるが去ってゆく。

  橘軍太夫と玄蕃は百舌兵衛や夙の三郎(カムイ)らと鷹狩りをする。

  カムイの所に左朴伝が来て何かをカムイのいった通りのところに隠した、報告する。

  そこに手風たちが囲んだ。カムイを捕らえて海に逆さに立てた十字架にカムイを縛り付けた。

  サエサは日置藩の池で捕まえた亀を連れてきた。甲羅にかなりの磁力を持った鉄片が入れてあるのだ。医師と細工師に多額の報奨金が支払われたが十日目に二人とも死んでいた。どの亀かはわからないが亀の甲羅に秘密が隠されているのだ。

  任務を終えたサエサはカムイの所に行く。見張りの二人を殺したサエサだが、カムイの顔は既に水面下だ。サエサも誰かの手裏剣を背中に受けて砂浜に倒れた。

  

[感想]

 日置藩の藩札乱発による経済的混乱は大蔵屋の登場で一時的に落ち着いた。そして、いよいよ日置藩の秘密に近づいてきた。だがカムイやサエサはどうなるのか?謎が謎を呼び展開が楽しみだ。