haruichibanの読書&視聴のおと

読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

白土三平『カムイ伝5 転生の巻』(小学館)(1967/07/10)


f:id:Haruichiban0707:20240214211502j:image

もくじはこちら


f:id:Haruichiban0707:20240214211627j:image

 

第一章 割り付け状

 雉子役

  参勤交代の際、藩主が江戸で将軍家にキジを献上するために田畑を荒らしてキジを追い立てる。雉子役とはそのための追加の税のことだ。日置藩では白いキジを捕まえた。白キジを捕まえた山方役は徒士の遠藤小平太と言った。

 狼藉

  参勤交代の行列を草加竜之進が妨害する。真っ先に草加十兵衛が斬り殺された。橘軍太夫目がけて斬りかかる草加竜之進に対して行列の武士達が襲いかかる。笹一角が助太刀に入る。戦いの最中に白キジが逃げてしまった。藩主が怒り狂う。カムイも助太刀して竜之進を逃がす。

 黒い夢

  横目がカムイに腹を切られて倒れているところに水無月右近とサエサとキギスが来る。水無月右近はカムイが横目を斬ったことを聞いて去って行く。サエサはそれを聞きカムイを追う。

 割り付け状

  今年も不作だ。百姓たちは年貢の割り付けがどうなるか気になって仕方ない。百姓代が死んで後任がいないので百姓自ら百姓代を選ぶように、と勉強している子ども達が親たちに話す。

  困った庄屋親子は、考えられる手は三つ。一つは殺し屋にやらせる、次は舌でも抜く、三つ目は・・・

  養蚕をしている正助を密告屋のシブタレが追う。そして正助に刺客が・・・   

 指令

  雲水が、草加竜之進に斬られた山方役の遠藤小平太の家族が仇討ち願いを出したため、彼らを殺せ、という指令をカムイに出す。

  女子どもを殺すのに躊躇するカムイだが、指令を守って3人を殺す。

[感想]

 草加竜之進と笹一角が参勤交代の行列に突っ込んだのは無謀だった。しかしそんな草加竜之進達を守ろうとする雲水の行動は謎だ。刺客に狙われた正助がどうなったのかも気になる。

 

第二章 赤目

 変身(かわりみ)

  草加竜之進と笹一角を助けたカムイは彼らに非人の服を着せ頭も非人らしく剃った。

  日置の城では藩主と橘軍太夫と城代が話している。草加竜之進と笹一角は、草加十兵衛と遠藤小平太だけを斬り殺しており、あとは死に至るほどの傷は負っていなかった。城代は橘軍太夫が原因だと詰め寄る。白キジを逃がした藩主は、遠藤小平太の家族による仇討ちを許可し、今回怪我した武士を切り、かわりに腕の立つ者を新たに召し抱えることにした。

  カムイは城に忍び込んでいたが、橘軍太夫はそれに気づき剣を投げる。カムイは「竜之進参上」という紙を城に貼った。橘軍太夫は横目を呼ぶが横目が重傷を負ったことを知る。

  意識を取り戻した草加竜之進と笹一角の傍に謎の雲水がいた。そして非人村に二人を連れて行く。夙谷の弥助の所に来た雲水は、竜之進と一角をタツとカクと呼ばせ弾左衛門の命令であることを伝え、雲水は消えた。

  

 付け帳

  正助を襲おうとした刺客の場面に戻る。刺客は人を殺したところだったのだ。目撃者の正助を生かしておくわけにはいかない。そこに庄屋がやってきて正助の命乞いをする。金で釣っている間に百姓達がやってくる。それより早く苔丸(スダレ)達が到着し刺客をコテンパンにのしてしまった。

  百姓達は庄屋に百姓代を自分達に選ばせろ、と要求した。

 

 夙の者

  竜之進や一角に斬られて負傷した武士達はお役御免となった。妻子を殺し切腹する者が出た。

  夙谷にいるタツ(草加竜之進)とカク(笹一角)は非人としての生活が始まった。タツは武士としての誇りを捨てられず食事をとらない。スダレ(苔丸)は、そんなタツに、ナナが物乞いをしている姿を見せて、武士も百姓も非人も同じ人間だ、そして目的のためには生きるべきだ、と諭す。

 タツはようやく食事をとるようになった。

 そこに正助が来た。正助はタツが草加竜之進と気づき、オミネのしゃれこうべを見せる。そして草加竜之進は真の敵が領主であることに気づいた。

 

 帳付け

  領主の江戸出府があるので今年も不作だが年貢はちゃんと取り立てるという方針が下された。庄屋達にもそのお達しが来た。竹間沢の庄屋は、今年の取り立てが厳しいと来年百姓共が苦しむ、と反論するが、大庄屋に庄屋は領主の下僕だと諭される。

  竹間沢の庄屋達が奉行所に年貢のかけあいに行きそのまま捕まってしまった。花巻の庄屋は行かなかったので捕まっていなかった。彼は正助を呼び出し、年貢の割り付け状の写しの代わりに休耕田をあげて帳付け百姓にする、と言った。正助はその条件を呑んだ。

 赤目

  カムイに斬られた横目はキギスとサエサが夫婦になって自分の後を継ぐようにと伝える。カムイを慕うサエサは、カムイが父の仇であっても、父の話を断った。横目はカムイをおびき寄せるためにある書状をサエサに渡し、山片役の遠藤小平太の妻の所に届けさせる。喰葉根の森に向かう遠藤小平太の妻子たち。助太刀の武士数人もそこに向かおうとするが謎の雲水が殺してしまう。

  遠藤小平太の妻子たちが倒れている道に、別な誰かの気配をカムイは感じた。カムイは彼らを殺せなかったのだ。殺したのはカムイの師匠である赤目だった。「しょせんうぬも忍びになりきれぬ男よ。」「おまえの師匠として最後になにかしてやりたかった。」「自分であみだした術はだれにも明かしてはならぬぞ。術は下忍の宝じゃ」と言って赤目は去って行った。

  そこに頭と呼ばれた雲水が現れ、遠藤小平太の妻子を殺したのがカムイでないことを見抜く。そして赤目殺害を指令する。理由を問うカムイに頭は「やつは抜忍じゃ。」と言って消えていった。

 

[感想]

 目的のためとは言え武士や百姓から非人になった草加竜之進や笹一角や苔丸。

 本百姓になる夢をかなえた正助。

 任務を遂行できず師匠を殺す指令を受けたカムイ。

 それぞれに遅いかかかる過酷な運命。次がどうなるか目が離せない。

 

第三章 谷地湯

 儀民

  日置領にガラの悪い浪人達が集まってきた。水無月右近と出会った彼らだが、水無月右近の技量を知り去って行く。その様子を見ていたアケミの父は言葉もなく座っていた。

  花巻の庄屋は正助を大坂に送り、息子の藤十郎ともども百姓どもに、騒ぎを起こさずちゃんと年貢を納めるように、頭を下げる。選挙で選ばれて百姓代になったアケミの父、武助は悩んでいた。正助に助言を得ようとしてアケミに呼びに行かせるが、正助はいない。

  百姓らに頼まれて武助は、江戸に目安を持って行くことを約束する。しかし、シブタレの密告により武士達に囲まれ秘密の抜け穴から武助は抜け出し竹藪で怪我をした。江戸までのカネと食料を得た武助は旅を続けようとするが警戒が厳しい。

 

 谷地湯(やちゆ)

  狼の三ツ目の群れを白狼のカムイはつけていた。

  ある時、見慣れない動物と出会った三ツ目は不用意に近づき傷を負わされた。

  しばらくしてもとの場所に戻ってみると白狼のカムイがその動物を倒した。その動物は猫だった。それ以来白狼のカムイが三ツ目の群れのボスになった。そこに片目がやってきてボスの座を奪った。

  日置山系には温泉が湧いていた。そこで白狼のカムイは傷を癒やしていた。

  横目もサエサとともに温泉に来ていた。横目はカムイが忍びで、サエサが追っても無駄だと話す。そこに江戸から来た小男が温泉に入りに来た。スダレのように顔を切り刻んだような男だ。

 高持

  正助の本百姓としての生活が始まった。正助は小六と共に暮らし始めた。普通、百姓は野カジに敷居もまたがせないが正助は野カジと食事を共にし新型のクワを設計し作成を依頼した。

  正助は庄屋に借りを作らないように懸命に頑張っていたが怪我をしてしまった。見かねたスダレが庄屋の所に行き米を二俵借りる。正助は谷地湯に出かける。そこに夙谷のナナが来て看病していた。それを見たスダレの心には強い打撃を与えた。

 

 タカ匠

  百姓代の武助はまだ行方不明だった。橘軍太夫は直訴されると困るのでそのまま行方不明にしてしまおうとしていた。そのために水無月右近や浪人達を雇っていた。

  谷地湯から帰った正助の田を皆が耕してくれていた。

  武助は谷地湯に入っていた。

  そこへ橘軍太夫が鷹狩りに来た。鷹匠は百舌兵衛と夙の三郎だった。三郎は二羽の鷹を一人で操ることができた。姿はカムイだった。三郎を見た水無月右近は彼がカムイだろうと見て剣を抜く。三郎はすんでの所でかわす。兄弟子にひどく叩かれる三郎。

  そして谷地湯の狭間では、百姓代の武助がバラバラになって死んでいた・・・

 

[感想]

 この章は皆に選ばれて百姓代になった武助が中心だったが、彼の最期は悲劇だ。正助もカムイも一歩上昇したように見えるがそこにはまた新たな壁が待っていた。

 

第四章 作造り

 抜忍

  抜忍になった赤目は必死で逃亡する。追っ手は次々とやってくる。きりがないので町に出て泥棒に入り捕まった。

 

 落着

  赤目が変装した泥棒は信州無宿の日の市と名乗り牢に入れられた。牢内にも身分制度がありカネの流れがあった。

 作造り

  作造りとは牢内の囚人を殺して一人当たりの面積を増やすことだ。赤目が変装した日の市は牢名主達を殺して、牢内の身分制度を廃止し平等にした。日の市こと赤目は御蔵島送りとなった。

 

[感想]

 『カムイ伝』との出会いは、床屋で待っている時だった。行きつけの床屋に全巻あったのだ。待っている間に読み始め、面白かったのを覚えている。髪を切る順番が回ってこないように願ったものだ。少年の頃ちょっと大人の漫画を気兼ねなく手にとれたのは床屋だった。『ゴルゴ13』との出会いも床屋だった。最近は皆スマホを見るから床屋に漫画は置いていないので今の少年達は床屋で漫画に出会うこともないだろう。

 この巻を読んで、江戸時代の牢内の厳しい序列に驚いた。

 草加竜之進と笹一角や苔丸は非人に落ちたが、正助は本百姓に、カムイはより強くなった。だが、二人は上昇したのにまた新たな掟に縛られることになった。

 抜忍になった赤目。同じ船に乗ったワケありな男。この後どうなっていくか楽しみだ。