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白土三平『カムイ伝4 乱雲の巻』(小学館)(1967/07/10)


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第一章 のろし

 のろし

  下人ダンズリの息子である正助が庄屋とその息子藤十郎に拷問を受けている。理由は下人の身分で禁止されている読み書きを習っていたからだった。誰に習っているか口を割らない正助だった。そこに父ダンズリが帰ってくる。ダンズリを拷問する庄屋親子だった。

  正助は庄屋が年貢割り付け帳の不正をしていることを知っており、その証拠を友達に預けていて、正助に何かあれば代官所に届くようにしてある、と庄屋を脅す。

  誰に預けているのか言わなければダンズリの指を切り落とすと脅す庄屋。ダンズリは自分で指を切り落とす。

  庄屋親子は正助の縄をほどき去って行った。

  密告したのはシブタレという男だった。庄屋からカネをもらったが、ダンズリに見つかり殴られる。殴られたシブタレはダンズリの妻が非人だったことを話す。かつてダンズリは妻が非人であることを打ち明けたとき怒り、妻は首を吊って死んだのだった。

  ダンズリの妻、正助の母の墓をきれいにするダンズリと正助。そして差別が無くなる日がいつか来ることを願う正助だった。

  山の頂上からのろしが上がる。そののろしが正助が生きているという知らせだった。

 かいぼり

  すでに荒おこしやくろかきが始まっていた。子どもたちは川に行き魚を捕まえていた。そこに竹間沢村の子どもたちが現れ、喧嘩になる。

  花巻の正助、権と竹間沢村の五郎たちが激しく戦う。それを崖の上から見るサエサとカムイ。

  

 一騎打ち

  花巻と竹間沢の喧嘩はまだ続いていた。正助が花巻の皆に石を投げるよう指示する。深追いを禁じ草むらにおびき寄せたり崖におびき寄せたり竹藪に罠をしかけたりして戦う。

  そして川で正助と五郎の一騎打ちになる。正助は走って五郎を翻弄し、「まいった」と五郎に言わせ、勝利し、魚を全て持ち帰る。

 面影

  田植えが始まった。百姓たちの忙しい季節だ。

  竹間沢の五郎に勝った正助は村内の女たちにモテる。だが彼の意中の人はオミネだった。そんな正助を村の女が誘惑するが、正助は相手にしなかった。   

 石神

  雨が続き川が決壊しそうになった。正助とダンズリが堤を切って荒地に水を逃がし田を救った。二人は庄屋から赤飯を食べさせてもらうのだった。

  カムイは、サエサの前で、鷲にさらわれたように見せかけた。

  正助と仲間たちはキノコを採りに行った。そこに竹間沢村の五郎たちが現れる。正助は「別な所に行く」と言う。もっと沢山のキノコが生えているいいところがあると思った五郎たちは正助たちについていく。しかし正助たちは仕事をさぼっているだけだった。その間に別な仲間がさっきの場所でキノコを採っていたのだった。

  血びき岩で正助と仲間たちは字を読めるようになるために勉強していた。そこを竹間沢村の五郎たちが囲み急襲する。それを助けるために多数の犬をけしかけたのは非人たちだった。正助は「おらは非人とも仲よくしてるだ。」と皆に言う。

  正助は、かいぼりの時に刃にカエルが多数引っかかったことから、千歯扱きを発明した。しかし、コキ棒を使っていた後家たちの仕事を奪ってしまった。史実では千歯扱きの発明は元禄年間だからこれはフィクションである。

 怪声ーカムイー

  カムイを探すサエサを男達が襲う。

  襲われていたのはサエサだけではなく白狼もだった。阿仁の狩人と犬たちが白狼を追っていたのだった。白狼は足場の悪い場所に逃げ込み、戦闘犬のアラクサを一撃で仕留め、他の犬たちを次々と屠っていった。

  阿仁の狩人が様子を見に行くと犬たちは絶命しており白狼は既にいなかった。

  そこで彼が見たのは、あの巨人だった。狩人は「山丈だ」と言って怯えながら山を駆け下りていった。白狼を見た山丈は「オオ、カムイ」と何度も叫ぶのだった。これ以後、この白狼も「カムイ」と呼ばれるようになった。

 

[感想]

 文字を読むことで知恵を獲得し村をよくしていく正助。白狼を見て「カムイ」と叫ぶ山丈。時代の動きを感じる章だ。

 

第二章 玉手騒動

 出づくり

  男達に襲われたサエサだが、抵抗するがかなわない。そこに通りかかった正助だが、彼もかなわない。サエサが自分が枯れ木屋敷のサエサだと名乗ると、男達は「何だ非人か」と言って去って行った。

  正助たちは山に草刈りに行く。そこでまた竹間沢村の五郎たちに会うが、正助は風上に行きヨモギを焚く。五郎たちが煙を避けるために逃げた頃合いを見計らって、正助たちは草刈りに行く。そして滑車を使って下に草を運ぶ。

  そこに玉手村の苔丸が来る。彼らは蚕を飼っているため煙は蚕にとって命取りなのだ。権を倒し正助を投げた苔丸だったが正助がマムシに噛まれると毒を吸い取ろうとする。正助は苔丸に虫歯があることを見て、吸い取ると苔丸が死ぬと言う。

  権が代わりにマムシの毒を吸って正助を救った。

  

 百姓代

  面影で正助を誘惑した女の名はアケミと言った。

  血びき岩での子どもたちの勉強は続いていた。アケミや正助ファンの女たちもそこに加わる。

  子どもたちが字を読めることを知り始めた百姓の大人たちは村全体の年貢がどのくらいなのか百姓代の長兵衛のところに聞きに行くが、彼ははっきりしない。そして首を吊って死んでしまう。

  庄屋親子は「お前たちが人殺しをしたようなものだ」と百姓たちを責める。

 

 

 玉手騒動

  庄屋は正助を呼び、養蚕を学ぶために藤十郎と一緒に玉手村に行くように指示する。百姓たちの動きが怪しいから正助を村から引き離すことも目的だった。

  しかし、玉手村は打ちこわしの最中だった。そのリーダーは苔丸だった。正助は苔丸に協力する。苔丸は各村々に、一揆に協力しないと火をかけると言って使者を送った。打ちこわしの原因は、繭の売買を蔵屋だけにしたことだった。領主には運上金が入るからだ。勘定奉行の石坂が目付の橘軍太夫に話した。橘軍太夫は武士や非人たちを集め蔵屋を守らせる。

  苔丸の要求は、一、今までのように繭の自由売買を認めること。二、陳情にいった代表が一ヶ月もとらわれているのでただちに釈放すること。三、公平な割り付けをすること。四、代官や下役人全員の交代。夕方までに書面で回答することだった。

  その間に橘軍太夫は蔵屋と話して糸会所をもうけ、そのとりしまりを蔵屋がやること、生糸の取り扱いも蔵屋がやること。その代わりに運上金を倍にすることを決めていた。

  橘軍太夫は、勘定奉行の石坂を叱りつけ、何か策をとっていた。

  非人の横目たちが一揆の中に忍び込み苔丸や十蔵ら一揆の首謀者を捕まえた。

  すぐに苔丸たちは助け出されたが、首謀者不在の時に武士たち非人たちが一揆勢に攻勢をかけた。一揆勢は壊乱した。

 

 スダレ

  玉手村の一揆は壊滅した。首謀者の苔丸が見つからないので山狩りが行われていた。苔丸に間違われて謎の剣士が危うく捕らわれようとしていた。彼は彼を囲む男達を峰打ちにして倒した。

  彼の近くにいた別な男が捕らわれた。顔を切り刻んでおり苔丸かどうかわからない。本人は「流れ者の無念」と名乗った。苔丸の父親が拷問され死んだ。だが無念は白状しない。とうとう無念は夙谷の非人部落に送られた。流れ者は非人だからだ。夙谷では切り刻まれた顔から「スダレ」と呼ばれるようになった。

  スダレの近くにいた武士が鉄人流道場の看板を掲げる建物の中に入っていった。彼は草加竜之進だった。そこで道場主の老人と話す草加竜之進だった。そこにはカムイとアテナもいた。

 

 その頃

  サエサは強くなるためにキギスと訓練に励むのだった。それを遠くから見る横目。

  ナレーションの中で「日置一大一揆」という言葉が出てきた。この後、正助がそれに関わるようだ。

 

[感想]

 玉手村の一揆は壊滅した。苔丸とおぼしき男スダレは非人部落に落とされた。草加竜之進やカムイやアテナの居所がわかった。ここからどう展開していくのか楽しみだ。

 

第三章 霞ぎり

 驟雨

  かつて露木鉄山やアテナがいた小屋に近づく水無月右近。そこにはひどい熱の笹一角がいた。手当をする水無月右近。外には、カネのために笹一角をつけ狙う男達がいたが、水無月右近が片付けた。

  驟雨の中、一角は逃げようとするが熱のために途中で倒れた。サエサが彼を助ける。横目が気づいたが、横目を監視する忍びが警告した。

 

 ボテフリ

  夙谷の非人部落ではスダレが牛馬の処理に出かけ、百姓たちにひどい目に遭わされる。カムイの姉ナナがスダレを介抱する。

  玉手村の平助と茂助がつかまった。しかし罪状は泥棒だった。その処刑をスダレが命じられ、彼は槍を突き刺した。

  正助はスダレを訪ねてくる。ナナが案内する。スダレが苔丸であることが正助には苔丸の虫歯でわかったのだ。スダレに頼まれて八声の風穴に正助が向かった。そこでは養蚕をしていた。スダレに教わりながら、正助とナナは養蚕を始めたのだった。

 霞ぎり

  鉄人流道場に道場破りがやってきた。道場主は鉄心といい、稽古を見ていけ、と言う。その道場破りは腰を抜かして逃げたところを、別な道場破りの風穴坊に殺される。

  風穴坊の相手をアテナがして、風穴坊の左手を切断した。風穴坊にかつてアテナの兄が殺されたからアテナが相手をしたのだった。

  カムイは道場で稽古はしないが技を高めていた。ある日アテナを呼び、技を見せてもらった。そしてカムイがとうとう変移抜刀霞ぎりを編み出したのだった。そして竜之進に彼から奪った長刀を返すのだった。

 

 赤目

  カムイの回想シーンだ。カムイは雲水の指示で百舌兵衛の所に行った。それはカムイにとって楽しい日々だった。その後雲水に連れられて伊賀の里に入り、赤目を師匠にして訓練を積むことになった。通常二日が限度なのに、カムイは五日間も赤目と戦い続けた。カムイは強くなるためにその後も修練を積んでいた。

 

 乱雲

  領主が参勤交代で江戸に向かうという情報を得た草加竜之進は、父草加勘兵衛の仇を討つため領主を襲おうと走り出す。雲水がカムイに「すぐに行け」と命令する。竜之進をアテナが追う。途中で会ったサエサと笹一角も竜之進とカムイを追う。カムイの正面に横目が現れた。カムイが変移抜刀霞ぎりで横目を倒した。

 

[感想]

 草加竜之進、笹一角、正助、苔丸(スダレ)、カムイ、アテナ、ナナ、サエサ達の主人公たちが一つの流れに集まってきた。次巻がまたまた楽しみだ。