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第一章 不穏
不穏
アケミと竹間沢の五郎が祝言をあげた。
面白くないゴンの回想シーンに移る。第10巻第2章のラストの場面。役人を襲おうとした百姓たち。草加竜之進や笹一角やゴンたちは止めに入る。
正助の家が火事になりみんなは火消しに向かう。正助が小六を使って火をつけたようだ。突発的な暴動を正助が収めたのだ。
翌日、正助は庄屋とともに鍬下年季の延長申請に役所に行く。そのほか十ヶ所の村から役所に陳情に訪れていた。
領主と城代と橘軍太夫は話し合い、百姓の陳情は認めるが非人との交流を禁ずる高札を立てて引き締めをはかる。
嵐の中、ゴンと五郎は喧嘩をするが五郎は腰痛に苦しみアケミを追って喧嘩は終わる。
ここでゴンの回想は終わる。小さな女の子のサチと出会う。サチはゴンが兄のにおいがする、と慕う。
嵐の中、五代木に肥料を取りに行った牛たちがぬかるみにはまる。力持ちのゴンが牛たちを救う。
[感想]
アケミにふられ意気消沈するゴンだが、正助がいなくてもみんなの力で村をかえる決意を固める挿話だ。男は負けることもあるが悲しんではいられずまた立ち上がらないといけない、というメッセージだ。
第二章 飢餓
旅をしていた正助は飢饉に苦しむ村々を通る。一揆に銃火を浴びせ、捕らえて処刑する武士たち。それを口減らしできた、と話す武士たち。
心がすさんだ百姓たちに襲われ荷物やモモヒキを奪われた正助はただ呆然とするだけだった。
[感想]
飢饉の悲惨な光景、武士たちの残酷な行動が丹念に描かれ言葉がでない。
死んでいる百姓たちが家族や仲間たちとダブる正助の驚愕と悲しみが伝わってくる。
第三章 非常法
漸風
暴れ牛を一瞬で切り捨てた凄腕の編み笠の浪人が登場する。彼は日置藩に向かう。
モヤイ
ゴンが唐箕をみなに見せていた。作ったのはカブラと吉だった。正助以外の人材も育ってきたのだ。
馬の便秘に対してはブツが、託児所ではおフクが活躍していた。
老人の畑を若者組が管理していた。
正助は玉手と部田(へた)の水争いのために現地に行き、その間の勉強会はゴンが仕切っていた。
花巻村はだいぶ豊かになった。一人ではダメだが協力すること、人に頼るだけではダメだと話すゴンだった。
蛍
村祭りの音を聞きながら草加竜之進と笹一角は話す。百姓たちは一歩ずつ成長しているが武士であることの意味は何か、仇討ちの意味は何か、二人は答の出ない問に悩む。
非人のツクテと百姓の娘幸は愛し合っているがキギスに見つかり、身分の違いゆえに引き離される。
そんな人間たちの営みをよそに蛍が飛んでゆく。
無人流(むにりゅう)
ゴンと五郎が協力して水車を回す。
釣りをする橘軍太夫の息子、一馬。編み笠の浪人がその邪魔をし、一馬をのして軍太夫の屋敷に連れて行く。浪人は軍太夫の弟の玄蕃だった。
玄蕃は一馬を居酒屋に連れて行き喧嘩に巻き込み一馬を一人置いていく。一馬は喧嘩で気を失いコモに包まれ堀に投げ捨てられた。
喧嘩の相手は玄蕃が金で雇った男たちだったが玄蕃は金をもらいに行った男たちを斬り殺した。
玄蕃と軍太夫、蔵屋が会って今後について何やら話す。
玄蕃とすれ違っただけで草加竜之進と笹一角は玄蕃が凄腕であることを見抜く。
玄蕃の前に城代の用心棒が現れた。玄蕃は猫を斬りながら同時に木の上に潜む赤目に手裏剣を投げ命中させていた。
橘軍太夫たちが非常法を検討しているのを知った城代は江戸の藩主に密書を出す。
それを横目からの注進で知った玄蕃は使者と用心棒を斬り殺す。無人流(むにりゅう)突破の太刀。相手の剣を奪い相手を頭上に投げ落ちてくるところを刺すのだ!
樹上で見ていたカムイ。
[感想]
新たな登場人物、橘玄蕃。剣の腕が凄いが狡猾な男の登場だ。ますます面白くなってきた。
第四章 再会
捨て犬
橘一馬は背中が丸まった男、カサグレに拾われるが面倒はみてもらえない。自力で生きていかねばならないのだ。一馬はまさに捨て犬だった。
非常法
江戸からの使者を橘玄蕃が斬り殺す。橘軍太夫たちは非常法を出すために城代を妨害する。城代は用心棒たちを解雇した。橘玄蕃は彼らを皆殺しにした。
用心棒たちの死体を前に怒り狂う城代の部下たちだが、城代は解雇した後の用心棒たちだから何も騒ぎを起こすな、と諭す。軍太夫派におそるべき使い手がいることに気づいた城代だが「そやつもうまくかかりおった」とほくそ笑んだ城代。
夢屋七兵衞は城代からの密書を預かったが江戸には急がない。
日置城では会議が行われており、ついに非常法が発動されることになった。非常法が何かはまだ明らかにされない。武士達は城代派と目付派の争いが激しく斬り合いも起こった。
ボンテン(梵天)
村では梵天祭りが行われている。非人達は横目の指示のもと捕縛訓練だ。
江戸から城に使者がつき、非常法が発動されることになった。非常法とは藩札発行のことだった。
異変
日置藩はひどい日照りに襲われていた。
武士の存在意義について悩んでいた笹一角はとうとう草加竜之進と袂を分かち江戸へ行き仇討ちのために領主を斬ることにした。
百姓達は雨乞いをし、効果が出て雨が降ってきた。
悩む竜之進のもとに橘玄蕃が現れ決闘になりそうだ。狂人の小六が二人の間に現れた。
激しい嵐からやがて雹になり綿の葉に多数の穴を開けた。その葉を持って正助は「不吉だ・・・」とつぶやく。
[感想]
新田開発と綿作の成功により百姓達の生活は改善した。唐箕のような技術革新も起こった。勉強会により人々の知識も増えた。
非常法により藩札が発行されたり、異常気象が発生し、この後の不吉な気配が漂う。
第五章 再会
再会
笹一角は関所破りをして日置藩から江戸に向かう。
橘玄蕃と草加竜之進の決闘の場面で、橘玄蕃が名乗った。
激しい戦いが始まった。最初の激突時、玄蕃が竜之進の小刀を盗ろうとしたのに気づいた竜之進は距離をとった。二度目の激突の時、竜之進は一馬の突きをかわした時の流光の太刀を試みたが、玄蕃はそれを防ぎ、竜之進を空中に投げ上げた。竜之進は上空から太刀を投げて玄蕃の攻撃を防いだ。竜之進にとどめを刺そうとした玄蕃は突然倒れた。背後には小六がいた。
小六はカムイの変身だった。「そやつ(玄蕃)にトドメを刺すも刺さぬもおぬし(竜之進)の自由だ。」と言って、カムイは去る。
去り際、「おぬし(カムイ)、なんのために生きているのだ?」という竜之進の問いにカムイは「出直しのきくやつは良い。」と答える。カムイは、日置藩の秘密を知ったら殺され、秘密を探れなくても任務を遂行できないために殺されるというのが自身の運命だった。
青木鉄人とその娘(養女にしたか?)アテナが関所に来た。アテナは笹一角を探すために日置に来たようだが、数日前に関所破りをしたのがその笹一角だとはもちろん知らない。百舌兵衛と夙の三郎とすれ違ったアテナは三郎がカムイとすぐにわかった。アテナに三郎の犬がセミがらを渡した。鉄人はそれで三郎がカムイで関所破りが笹一角と見抜いた。アテナは笹一角を求めてまた旅に戻るのだった。そこに水無月右近が現れ、アテナを追って行く・・・。
[感想]
新田開発がうまくいき、百姓達は豊かになってきた。だが、非人との交流は断たれ、武士達は何かをたくらんでいる。天候も悪い。藩札が発行された。何か悪いことが起きそうな気配だ。日置藩の謎は謎のままだし、橘玄蕃という強敵が現れた。
この後どう物語が展開するのか目が離せない。