もくじはこちら
第一章 陣屋
陣屋
改易となった日置藩。廃墟となった日置城。狂人の小六が日置城に小便を垂らして歩いて行く。
日置藩内は暴力が支配していた。浪人達が勝手なことをし放題だった。そこに現れた編み笠の浪人が、暴力的な浪人達を斬りまくる。また、百姓達も黙っていない。数に任せて浪人達を撲殺する。
暴力的な浪人のリーダーで片目の男を、編み笠の浪人が斬り殺す。「うぬにはカシがある・・・」と言っていた。
さらに忍びと思われる男(カムイか?)が、逃亡中の残った浪人達にトドメを刺す。
夙谷の者達も農作業をする。
アグリの銅山近くにいた左平次と妙も花巻にやってきた。妙は亭主探しにやってきた、と言う。
スダレ(苔丸)の情報によると、陣屋ができ天領になるとのことだ。正助の家にスダレが泊まって話をする。それを陰で探る男は横目のようだ。
陣屋に呼び出された百姓代表達。新代官は笹一角(草加竜之進)(木の間党首領)だった。
物語は寛文年間(1661-1673)に入った。
百姓、非人の区別なく、農業生産に関わる日置領。
それを陰で見つめる不気味な横目の存在・・・。
[感想]
日置藩が改易になり、日置城がボロボロになっていたが、いくらなんでもそこまでボロボロにならないと思う。
日置藩が改易になって、正助達百姓やナナ達非人の理想射界ができるかと思ったが、ことはそうは甘くはなさそうだ。行方知れずの橘玄蕃や橘一馬が気になる。横目の存在も不気味だ。
第二章 共鳴り〔一〕
共鳴り〔一〕
寛文元年(1661)
百姓達は、大量のスズメを退治した。
やり方はスズメを地上に降りないようにさせて、酒で酔わせて動けなくなったところをつかまえる方法だ。多数の百姓の動員が必要なのと自在に移動させることが必要だ。
笹一角(草加竜之進)は部下の中島鉄之助を連れて、笹家と草加家の墓を訪れる。中島は笹の人柄をとても尊敬していた。
そこに笹一角を慕っていたアテナが、尼の姿で現れた。笹一角は、アテナにはやってほしいことがある、と言った。アテナを慕う水無月右近も現れたが、彼には、「あなた次第だ。だがブラブラしていると百姓らにかたづけられても知らない」と言う。
アテナを追いかける水無月右近。
[感想]
百姓達によるスズメ狩りの光景と解説は凄い。
笹一角はアテナに何をやらせようとしているのだろうか?
第三章 共鳴り〔二〕
共鳴り
この年の米は豊作だった。綿や養蚕もだ。多数の人々が集まってきた。自由に商売もできたのでセリが行われていた。正助はそこで大活躍だ。
秋になり、年貢の徴収が行われる。
笹一角は、百姓の立場で武士達を取り締まる。米を調べる時に地面に落ちる散米は武士の取り分だったが今後は百姓のものにする。上げ底の枡を見破る。枡の中の米を前に掻くのは遺法だと取り締まる。賄賂を笹一角に渡そうとしたイタミ屋だが、笹一角は受け取らない。
中島はそんな笹を尊敬するが、他の武士には不満が溜まりそうだ。
アテナは村で読み書きを教えていた。水無月右近もその手伝いをしていた。
梵天祭りも盛大に行われた。
村は大きくなっていた。
正助とナナの息子一太郎の頭上に沢山の丸太が落ちてきた。キギスと編み笠をかぶった謎の男がとっさに丸太を支え、一太郎を救った。謎の男はすぐに去って行った。
笹一角は中島に稽古をつける。
笹一角が庄屋たちを集め、年貢皆済御直領中一番ということでお褒めの言葉と引き出物をもらったことを話し、庄屋たちに引き出物を配った。
百姓達が集まり話し合っている。今の懸念事項は、検地をして水田が見つかると隠し田として摘発を受ける。それをどう防ぐかということだった。そこに笹一角が現れる。正助は村受け新田開発の申請を代官見立てで出すことを依頼する。
笹一角のもとで中島鉄之助が笹一角を止めようとしていた。村受け新田開発が当時の法律違反だからだ。
キギスがある男を追っていた。その男が持っていたものは人別帳で、非人には△の印がついていた。横目が現れ、一太郎の頭上に丸太が振ってきたことが横目の仕業だとわかる。そして、人別帳の残りをキギスが埋めることを命じる。
中島鉄之助がいなくなったことに気づいた笹一角は馬で彼を追う。中島鉄之助は笹一角が法律違反を犯していることを知らせに勘定奉行に駆け込もうとしていた。笹一角は彼を斬り殺した。
[感想]
日置藩がどんどん発展し、人があちこちから集まってきた。それとともに身分が曖昧になってきた。しかし、新田開発が隠し田となり、御法度になる、という点については、私の理解不足なのだろうが、納得がいかない。
第四章 見分
見分
日置藩で始まった綿作や養蚕が近隣に広がっていく。それに伴い人の動きも活発になり、隧道ができて、人の交流がますます活発になった。
幸はツクテの子を産み、アケミは五郎の子を産んだ。
望月藩の代官と日置藩の代官笹一角が会話する。望月藩にイタミ屋が入り綿とマユの独占をする。日置藩は自由売買で笹一角は命を賭けて自由売買を守ると言った。
非人のサネが石を抱いて自殺した。キギスひとりを除いて誰一人気づいていなかった。
日置藩領内の新田を勝手に測量している男達がいた。百姓達は彼らを囲むが、男達が勘定奉行からの証明書を見せる。代官の笹一角が現れ、男達を追い返した。
江戸勘定奉行名代安藤が江戸からやってきて、イタミ屋による町人請け負い新田開発と測量していた男達の釈放を笹一角に申し渡す。代官見立ての村受け新田開発については安藤は知らぬ存ぜぬだった。
隠し田が御法度だし、新田が町人のものになり百姓は地代を払わなければ行けなくなる。
百姓達が騒ぎ出した。
代表を選び京都西町の奉行所に出頭し、町人請け負いの不当性を訴える。そして、「先格」に従って農業をしているのだから、先格が破られれば農業ができないことを伝え、新田開発が必要なら村受けを認めてもらう、というのが正助の案だ。
笹一角は江戸へ向かい、正助達は京都に向かった。
入れ違いに、勘定役名代伊那甚左衛門、普請役波多野小源太、介添として京都南町奉行所組同心から二名、隣領望月藩から伊藤某以下数名、願人江戸町人イタミ屋輩下五名他三十数名が日置藩に現れ見分を始めようとした。
怒った百姓達は暴力に訴えようとした
そこにゴンが帰ってきた。ゴンはバラバラに戦っても勝てないことを話し全ての指揮を自分に任せることを伝えた。
百姓達は橋を壊したり田を水浸しにして見分を妨害する。
隣領の望月藩から兵隊達が来たことを知らせる男が走る。
[感想]
百姓が自分達主導で新田開発をする村受け新田開発と町人主導の新田開発があることがわかった。町人は幕府に運上金という名の賄賂を配るから、村受け新田開発が却下され、イタミ屋による新田開発が通ったようだ。町人主導の新田開発による見分の結果、隠し田と判断される田が見つかると百姓達が取り締まられるし、新田と認められても町人の支配下になる、というなんとも納得がいかない法が百姓を縛っている。
これが史実かどうかは私にはわからないが、百姓は気の毒だ。
ゴンが生きていて帰ってきたのは嬉しい限りだが、この後どう展開するのだろうか?
第五章 突破クズシ
突破クズシ
見分を妨害しようとする日置藩領内の百姓達と隣領望月藩の兵隊達が川を挟んで対峙する。
自由のない自然では逆に鳥や獣たちは自由にふるまっている。
自由気ままに生きている水無月右近はアテナを抱きたくて仕方がない。
望月領安食の宿で、イタミ屋が、橘玄蕃と橘一馬と思われる二人の編み笠で顔を隠した浪人に二百両を渡して、誰かを斬ってもらおうとしていた。二人の浪人はその二倍は必要だ、と言う。
三人の話は誰かに聞かれてしまった。後ろ姿は老人だった。
仇討ちの現場に場面が移る。仇の名は左紋字一鬼。仇討ちをしようとしているのは姉と小源太と呼ばれる弟だ。姉は服を切られ、弟は両腕を斬られた。三人の武士が助太刀するが、左紋字一鬼は三人を斬り殺した。一鬼は「剣に正邪はなかっ。強かものが残るたい。」と言い放つ。
イタミ屋の話を聞いていた老人が一鬼と対決する。老人はかつて一鬼を破門したのだった。二人の対決は老人が勝利した。
この老人は青木鉄人だった。
そこに橘一馬が現れ対決する。最初の激突で二人は互いに相手の小刀を奪い合っていた。鉄人流腰回り無刀取りであり、無人(むに)流三区別(みつのけち)のうち乱断ち(あやたち)抜き取りの法だった。二人の次の激突で、青木鉄人は、無人流突破の太刀を仕掛けたが、一馬はそれを破って青木鉄人を肩口を切った。
橘玄蕃は「代官の首が五百両か」と言いながら日置領に向かう。
寛文元年(1661)、青木鉄人は享年七十五歳で、宛てなの暮らしぶりを気づかった旅先で死亡した。
[感想]
平和が訪れた日置領内の遠くに大きな黒雲がわきあがってきた。この後どういう展開になるのだろうか?目が離せない。