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白土三平『カムイ伝18 荒魂の巻』(小学館)(1970/01/01)


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もくじはこちら

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第一章 朝露

 朝露

  水無月右近はアテナのもとを訪れ、彼女を抱こうとするが、抱けなかった。

  望月藩兵本陣では、幕府名代見分役伊那甚左衛門から鎮圧の命令が下ったが、望月藩兵は自領のことではなく幕領なのと責任を負わされたくないので、百姓鎮圧の命令に従わない。

  ゴンが交渉に来る。村受け新田開発が優先するので、そのことを江戸と京都に参上しているので、お上の決定が下るまで静観するように、という主旨だった。

  ゴンに知恵をつけたのは夢屋七兵衞の番頭日の市(赤目)だった。

  江戸では、勘定奉行岡田豊前守、作事普請両奉行らが会議をし、見分を一時中止すること、ご直領一切の物品取引の権限を商人イタミ屋に申しつけること、代官笹一角(草加竜之進)はこれに全面的に協力すること、人別改めをすること、を申し渡した。

  怒った笹一角に柴田という侍がぶつかり、笹一角に斬りかかった。笹一角が柴田を一刀両断し、「ことの顛末、お見届けになったな。」と言って去って行った。

  日置領に帰った笹一角。

  庄屋たちには人別改めを適当にやるように指示を出す。だが、横目の暗躍で厳格に人別改めが行われた。イタミ屋は店を建築しようとするが、笹一角は届出と異なる点を追及し壊してしまう。

  笹一角と横目が戦うが、横目の毒入りの手裏剣によって笹一角の馬が死んでしまう。

  笹一角に斬り殺された柴田外記の妻八重と子鈴之助が笹一角に仇討ちをしようと向かってきたが笹一角は返り討ちにする。

  それは百姓と笹一角を分裂させようとする横目の策略だった。

  アテナの塾で学ぶ子ども達だったが、ある時、子ども達が川で溺れたところをアテナや百姓の里が助けたのだが、ただ一人タケという非人の子が溺れ死んだ。非人たちはタケが非人の子だから助けなかったのだと解釈した。そして百姓の子が殺され里が犯されて殺された。それは横目がキギスに命じてやらせたことだった。非人と百姓の間で互いを疑い合い、暴力沙汰になった。アテナが止めようとしたが、止められずアテナは死んだ。

  アテナの死を見て怒った水無月右近は百姓達を皆殺しにする。

 

[感想]

 百姓と非人の分断をはかる横目とキギス。アテナの死。なんともやるせない展開だ。

 

第二章 カンダチ

 カンダチ

  松林剣風と楓ら浪人達は百姓として開墾していた。カンダチとは季節の移り変わりに雷雨をともなった突風が吹くことだ。

  剣風の所に、逆茂木隼人という浪人が現れ、対戦する。

  剣風は逆茂木隼人の両脚を斬ったが命までは取らない。そこに、日置陰組玉手五十人衆と名乗るスダレ(苔丸)が現れ、逆茂木隼人と仲間の源次を殺して埋める。

 

 嵐

  笹一角はイタミ屋の店に放火する。イタミ屋は笹一角が放火し自分を妨害していることは百も承知で警告する。

  笹一角はアテナの墓参りをする。

  水無月右近は百姓達を殺した後、地面に横たわる。そこを鉄砲水が襲う。

  正助達、百姓は、堤防を鉄砲水から守った。

  笹一角は己の人生に悩んでいた。そこに別な代官が着任する、という話を耳にする。笹一角は日置領の境界で、新代官を斬り殺した。代官所に戻ると、そこには新代官錦丹波がいた。横目が錦丹波に指示していたのだ。

  錦丹波は笹一角を峰打ちにし牢に閉じ込めた。

  橘玄蕃と橘一馬は笹一角を待ち伏せしていたが、待ちぼうけを食い、笹一角(草加竜之進)を斬り損ねた。

  

[感想]

 笹一角(草加竜之進)は百姓や非人のために善政を敷こうとしたが、解任されてしまった。彼一人の才覚だけではどうしようもないのがやるせない。

 

第三章 嵐

 嵐

  シブタレの密告で、百姓達が望月藩の一揆首謀者をかくまう、という話が代官のもとに伝わった。代官は望月領との境を警戒していて、百姓達を見つけた。彼らは夜参りだと言い、妙が裸で神と交わっている演技をする。

  またある百姓の家に隠れている者がいないか、武士達が探索した。そこには本当に狂人の小六がいて連行された。拷問にあう小六。横目が小六が本物の狂人であることを話し、錦丹波は彼を放免する。

  そして人別改めや御直領家作法違反を厳しく取り締まる。弥助やナナたち非人が百姓達と分断された。

  セリが始まったが、イタミ屋が全て牛耳っており、イタミ屋が全て競り落とした。

  年貢は厳しく取り立てられた。

  村受け新田開発の許可が下りた。しかし町人主導の新田開発の許可も同時に下りた。

  そして日置城には隣領望月藩兵が駐留した。

  百姓達が集結した。その上空を多数のムクドリが飛び交う。岩の上に座る小六。

 

[感想]

 笹一角(草加竜之進)が治めていた頃の日置藩が、新代官錦丹波によってまたもとの日置藩に戻りつつある。だが一致団結した百姓達はこれまでと違う力を持っていた。この後どうなるかますます楽しみだ。