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白土三平『カムイ伝10 激潮の巻』(小学館)(1968/01/10)


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第一章 怒濤(どとう)

 怒濤(どとう)

  赤目に大人しくしろ、と言われたクシロはおキクが心配で落ち着かない。老人の左卜伝とクシロが船に乗り海に出る。左卜伝は弓の達人で武士として大活躍していたが、領主に夜襲を提言したが無視され、領主共々、自分の家に戻ると、妻子が殺されていた。領主を殺し、領主を変えて戦いを続けるが太平の世になり自身のような武辺者が不要になたことを知る。

  左卜伝は縄をつけた矢をサメに放ち、サメが弱ったところをしとめた。

 クルス

  おキクは拷問を見せられて打ちこわしの原因が夢屋にあるよう自白を強要されていたが、あくまで取り壊しを頼んだとだけ言ってシラを切っていた。牢に戻されるとき十字架を落としたが、弥助が拾って隠した。だが横目がそれを見ていて十字架を奪った。赤目が十字架を奪った。

  夢屋七兵衛が城代に賄賂を渡しおキク釈放を願い出る。

  橘軍太夫のもとに着いた横目はおキクがクリスチャンであることを話すが、証拠の十字架は赤目に奪われてなかった。

  だが橘軍太夫は村中の者に踏み絵をする。

  

 パライゾ(天国)

  日置藩領内で踏み絵が始まった。しかしおキクは自分の意志でキリスト教の信仰を続ける。赤目がおキクを力づくで助け出したが自ら牢に戻ってしまった。

  夢屋七兵衛のカネも、赤目の忍術もおキクの意志を変えることはできなかった。

 

 奇跡

  おキク達キリシタンは殺されても信仰を止めない。十字架にかけられたおキクの所にクシロが殴り込みをかけておキクを救おうとする。老人の左朴伝も馬に乗り弓を持って助太刀する。赤目も助けに入る。

  クシロは左腕を失うが赤目に救われる。おキクが止血する。左朴伝は崖から海に落ちた。

  島で左朴伝はこときれた。そこに城代がやってきておキクに皆を助けるために踏み絵を依頼する。そして左手小指を切って誓文書に血判し切った指を渡す。

  城代は左朴伝の死を見て墓を作らせてくれ、と依頼するがクシロは断った。

  「朴伝、またおぬしに救われたのう」と言って城代は去っていった。

 神

  五代木でクシロとおキクは一緒になり、おキクは妊娠した。しかしおキクの健康状態は悪化していった。七兵衞や赤目を嫌うクシロは医者に診せようとしない。

  とうとうおキクは死んでしまった。

 

[感想]

 キリシタンのおキクの悲しい最期だ。老人の左朴伝と、城代、橘軍太夫との過去のいきさつも興味があるが語られない。

 

第二章 査問

 査問

  カムイと手風の戦いの場面に戻る。毒が回ったカムイを、サエサを突き落とした理由について問い詰める手風。

  カムイは仕事がやりにくいからと言う。

  手風と忍者達の手裏剣をカムイはほとんどかわして倒れた。手風は他の忍者達にカムイの処分を任せて去った。他の忍者達はカムイの体力に賭けることにした。

 

 "竜之進覚え書き"より

  百姓たちは綿の花が咲いてそれまでの苦労が報われ、喜びの涙を流す。密告者のシブタレまでもだ。そして皆労働に汗を流す。竹間沢から庄屋や五郎も来て勉強する。非人部落ではスダレの指揮のもと養蚕の仕事が進む。だが正助はどこかに行って不在だ。

  綿は権が中心になって夢屋に販売する。安く買いたたかれないように日の市(赤目)の言動や書類を厳しくチェックする。

  ナナのもとにダンズリが来て孫の一太郎を抱く。

  正助は返ってきてナナを抱く。

  正助は大阪に行き綿の値段を調べ上げていたのだ。そのため夢屋七兵衞も安く買いたたけなかった。

  綿の値段の上昇は畿内の中でも摂津、河内が飢饉だったからだ。

  新田をどうするか村中の者が集まって話し合いがもたれた。鍬下年季の間は若者組に任せることになった。

  日置藩領主と城代と橘軍太夫は新田からの年貢を早く取るための手段を相談していた。

  アケミはゴン(権)に自分をどうするか早く決めろと迫る。ゴンは長男だから家を継がなければいけない。アケミは婿を取らないといけない。アケミは竹間沢村の五郎を婿にするとゴンに迫る。

  武士達が鍬下年季の期間短縮のために村々に調査に入ってきた。それを止めようとする百姓達。

  一方、どこかに出かけるために村を出ようとしていた正助を見つけた手風率いる忍者達は正助に手裏剣を投げる。

  

[感想]

 草加竜之進の覚書という体裁で新田開発後どうするか話し合いが行われる。ゴンとアケミと五郎はどうなるか?正助は何をしに村を出ようとして手風に見つかったのか?謎が謎を呼び展開が楽しみだ。

 

第三章 蔵六屋敷

 南無谷沢

  鷹匠の百舌兵衛が重傷を負ったカムイ相手に手風と正助の状況を話していた。手風と正助の対決現場に野鍛冶の伝次が現れ正助の身元を保証する。鷹匠の百舌兵衛も姿を現し、山窩の日置の一(はじめ)と手風を会わせる。一は正助の身元を保証し、正助に唐箕を壊せという。山窩達が箕で生計を立てているから、唐箕ができると困るのだ。正助はそれは別な話だと断る。一は裁定を下す。正助は村に戻りそこで何があったか話してはいけない、ということになった。

 蔵六屋敷

  カムイと左朴伝が雑談する。カムイは表向きは日置藩鷹匠百舌兵衛につかえる犬番だから犬を訓練している。

  手風は蔵六屋敷に目を付ける。表祐筆兼藩塾講師立川澄人を眠らせ古い資料を集める。日置藩では亀のために何人も死んでいた。寛永をさかのぼること数年前にはべっこう細工師と御殿医が死んでいた。また藩主への手紙の中で「お亀様」という記述もあった。

  手風は亀について江戸の上屋敷にいるサエサにも伝え、べっこう細工師と医者の死についても調べることにした。そして左朴伝やカムイには伝えるな、と指示した。

 

 輪中

  手風は部下に可能ならカムイを殺すよう指示した。部下はカムイを尾行したがカムイの輪中という術にはまり返り討ちにされた。

  洞窟内でカムイは亀に餌をあげていた。この亀は一体?

 

[感想]

 日置藩の秘密に一歩近づいた。亀の中に何か隠しているのだろう。その秘密は一体なんだろう?次巻も楽しみだ。

 それにしても野鍛冶の伝次のような一度ひょいっと登場した人物がどこでどう関わっているか全て記憶している白土三平には驚くばかりだ。創作ノートを作っていたのだろうが見てみたい。