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白土三平『カムイ伝21 滄海の巻』(小学館)(1971/05/10)




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もくじはこちら

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第一章 大白州

 大白州

  日置藩ではスダレが率いる一揆衆が代官所を襲った。京都奉行所東与力相沢新兵衛は一揆衆を深追いし行方不明になった。小六の背中には一揆代表者の江戸行きがなければ再び一揆をするという貼り紙がしてあった。

  自首した一揆首謀者11名が江戸に向かった。江戸へ着くまでに半数近くが死んだ。江戸から戻ってきたのはたった一人だった・・・。

  江戸の牢を伊丹播磨守と夢屋七兵衛が見にくる。幕府牢奉行石出帯刀が出迎える。 

  伊丹播磨守と夢屋七兵衛が話をする。夢屋七兵衛は、自分は始末をつけた、と言うが、伊丹は輪島修理をどうするか決めかねていた。そこへ石出帯刀からの使者が来て、一揆首謀者を町奉行の命令でそちらに移したとのことだった。狼狽する伊丹播磨守。夢屋は「これでお別れですな。」と言って去って行った。

  夢屋七兵衛が帰るところを黒川と呼ばれる男が率いる忍者らしき男達が襲ったが、赤目が機転を利かせて、夢屋七兵衛は助かる。

  江戸幕府では寛文二年(1662)、松平伊豆守信綱が逝き、保科正之が幕政から退いた。酒井雅楽守忠清が台頭してきた。阿部豊後守忠秋が延宝三年(1675)に亡くなり、酒井忠清一人の手に権力が集中するのだった。

  望月領百姓武助が直訴状を渡そうとして叩かれ斃れた。瀬川という武士が直訴状を拾い、勘定奉行役宅に行き伊丹播磨守に渡そうとしたが留守だった。直訴状の写しを小普請奉行の妻木という男のところに持っていった。妻木は三井にそれを見せる。三井は日置領の直訴状も入手できれば現在の勘定奉行を追い落とし妻木がその座に座れるとそそのかす。三井はまず目付に渡すように指示する。

  ダンズリは直訴状をどう渡したものか考え、葵の紋がついた箱に入れ、忘れ物とした。葵の紋がついた箱なので、町奉行から老中、将軍へと渡ることになる。

  江戸城の奥で、老中酒井雅楽守忠清と町奉行村越長門と大目付北条安房守の三者で直訴状について議論していた。大目付の北条安房守による探索ではほぼ直訴状の通りだった。イタミ屋や夢屋七兵衛も含めて物的証拠をつかむよう、黒川に指示する。黒川はサエサに指示を出す。

  老中酒井雅楽守忠清は、「一勘定所役人の不正を暴くのが目的ではない。一揆の原因の追及処罰を徹底し、幕府のご威光に傷をつけぬこと、特に見分の失敗、10万日延期証文の前例を許さないこと。」と指示をする。

  江戸の大白州までたどりついたのは正助を始めわずか七名だった。

  大白州では、正助が、シブタレが、その他の百姓代表が、命がけで日置領の一揆について話した。村請新田開発をしりぞけ町人請負新田開発と隠し田摘発。勘定奉行や夢屋やイタミ屋がグルになっていたこと。などを話す。

  その頃、イタミ屋の水死体があがった。

  大塚にある酒井家下屋敷で、三井と酒井雅楽守忠清と大目付北条安房守が話し合う。大目付北条安房守は、勘定奉行伊丹播磨守や夢屋七兵衛を徹底的に裁くべきだと主張する。しかし酒井雅楽守忠清は、伊丹播磨守が大御所様からの信頼が厚く、最初の勘定奉行(当時は勘定頭といった)になった三人の一人であることから、おおごとにはしたくはない。そこで三井がアイデアを出す。伊丹播磨守は隠居し息子に地位を譲り、息子が失策をしたら潰すのだ。そこに錦丹波が呼ばれる。錦丹波はもう一度日置領代官に戻りたい、と言う。ただし、見分は中止し、見分や検地実施時期は錦丹波に一任すること、百姓の処分は厳しくやるが一人だけ錦丹波に命を預けてほしい人がいる、と条件を出す。

  寛文二年(1662)四月。見分役勘定所留役輪島修理は切腹。同行した普請役一名、京都奉行所組同心二名、案内役望月藩士数名が中追放、押し込みなど・・・それぞれ処分された。勘定奉行伊丹播磨守は隠居を申し出てジュリされ、嫡子伊丹播磨守蔵人が跡を継いだが、八月免職された。小普請奉行だった妻木彦右衛門が勘定奉行になった。

  一方、百姓達は舌を抜かれたり千住の小塚原にさらされた。

  また、日置にも一揆首謀者の首がさらされたり身体が磔にされた。そこにはゴンや五郎や佐平次やシブタレの顔もあった。

 

[感想]

 一揆後の幕府の対応は、なんとも凄惨だ。五郎もゴンも佐平次も死んだ。竹間沢の庄屋もおそらく・・・。こうなるのがわかっていても一揆を起こすとは、言葉も出ない。多くの主要登場人物が死んだ。生きている者はどうなるのだろう?これまで栄華をきわめていた夢屋七兵衛も危うい立場になった。カムイはどこに?赤目はどうする?スダレはどうする?笹一角(草加竜之進)は?橘玄蕃と橘一馬は?

 

第二章 海原

 海原

  一揆首謀者の家族達への刑が実施されているとき、代官として再着任した錦丹波が刑の執行取りやめを命ずる。正助を無罪放免した。だが、百姓達は正助が裏切ったために一人だけ生きて帰ってきたと疑い、殺そうとする。ナナが正助に近寄る。正助の舌は切られていた。キギスら非人が正助とナナを助けに向かうが・・・。「その後、正助の姿を見たものはなかった・・・」というナレーション。

  そして、見分が中止となり、町人請新田開発も取り下げとなった。村請新田開発は採用されたが、10万日延期証文はなかったことにされた。一揆首謀者に関する情報に対して百両の懸賞金がかけられた。また繭や綿は自由売買となった。年貢も半分は金納となった。

  錦丹波の所に鬼涙(きなだ)の百蔵という狩人が来た。

  翌日、錦丹波は山狩りをする。百蔵は陰衆三人を見つけ殺した。百蔵や錦丹波が狩っているのは一揆の首謀者達陰衆だった。特にスダレ(苔丸)だった。スダレは熊の毛を使って犬や馬たちを追い払った。百蔵と彼が飼っている犬の不動には熊の毛の匂いは効かない。百蔵がスダレを追い詰めたとき、望月の百人衆が囲んだ。スダレが「狩人は獣を追って生業をするもの。人を狩るのは狩人ではない」と言って、百蔵を崖下に突き落とす。

  海で夢屋七兵衛の船が沈んだ。夢屋七兵衛がお客さんに謝罪するが、その船の船頭ガシラの吉次が酒を呑んでいた。きっと脅されてやむなく船を沈めたのだろう。夢屋七兵衛は彼を殺すよう指示する。ようやく到着した夢屋の船の積み荷はなんと石だった。買い占めていた物資を保管していた倉庫が放火にあった。夢屋七兵衛が追い詰められていく。船で海にいるとき、海賊に襲われた。その海賊は知り合いだったはずだが、頭が夢屋七兵衛を八分にした、とのことで、夢屋七兵衛は十組問屋から追放されたのだった。

  隠れ家に戻ってきた夢屋七兵衛に、日の市(赤目)が夢屋七兵衛を追い詰めたのが三井だと話す。それを知っていたのに七兵衛に言わなかったことに驚き怒った七兵衛は赤目を拳銃で撃って殺してしまった。

  海ではクシロとカブツが多数のサメを殺して帰ってきた。依頼者は地面に金を放り投げる。サヨリという依頼人の娘が金を拾ってクシロに渡す。クシロは、一本のモリで三匹の犬を殺して堂々と引き揚げる。

  クシロとカブツは、サメを求めて船を出す。赤目の死体が流れてくる。サメを見つけたクシロがモリを投げる。サメがモリを外そうと海中で暴れ回る。クシロとカブツの船が大波の中を進んでゆく。

 

[感想]

 錦丹波が日置領に帰ってきた。正助もついに・・・。苔丸は生き延びたようだ。笹一角こと草加竜之進やカムイはどうしただろう。第一部の終わり方はなんとも哀しい終わり方だ。この後第二部に続くのだが、第二部はどうなっていくのだろうか?