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白土三平・岡本鉄二『カムイ伝 第二部 5』(小学館)(1991/04/01)



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●念者〔二〕

 道無(一)

  笹一角(草加竜之進)が助けた女は冬木という医師の娘アヤメだった。手術を終えた冬木と草加竜之進は酒を酌み交わすのだった。

 

 道無(二)

  永井播磨守の大名行列が通る。播磨守の駕篭の傍を播磨守ご自慢のお小姓である菱川水之丞が歩く。

  それを見る町人達が噂する。音弥と武吉という少年達も水之丞の噂をする。

  音弥は明論塾という塾に入っていった。塾長が漢文の授業をしていたが、二人の浪人の姿を見ると音弥に代講を頼み出ていった。次は29日、暮れ六つ、初音町、団子坂、文珠院だと約束し、浪人が去って行った。二人の浪人から塾長は杉山と呼ばれた。

  杉山と宮城音弥が話をしている。宮城音弥の才能を惜しむ杉山は何とかしてあげたいと話す。そこに北町奉行所の者が訪ねてきて、同道するように伝える。杉山は身支度をする、と言って中に入り、十文字腹を切って自決した。

  宮城音弥が道を歩いていると錦源之助とその仲間達とぶつかった。傘貼りをして糊口をしのいでいる宮城音弥の父を知っている錦源之助と仲間達は音弥をバカにする。音弥は道は天下の公道だからと正論を吐いて道を譲らない。錦源之助と仲間達は音弥をなぐりつけて去って行った。

  そこに笹一角(草加竜之進)が現れ、音弥が耐えたことを褒める。音弥が杉山の見事な最期を見届けたことを知った草加竜之進は「同志だった。」と言って去った。

 

 親子(一)

  宮城音弥の家は、父と病気の母お秋と姉の四人家族だった。母が喀血したので、医師を呼びに行く音弥。音弥は冬木の屋敷に入っていき笹一角(草加竜之進)と再会した。冬木は宮城家に急ぐ。

 

 親子(二)

  江戸に戻った錦丹波は幕府勘定所で表彰された。同時に表彰された小泉某から声をかけられ飲みに行くことにした。

  小泉某が知っている店の櫻茶屋で呑む二人。外を見ると一目を忍ぶ男女を恐喝する三人組が見えた。その一人が息子の錦源之助であることがわかった錦丹波は小泉に謝罪してその場から離れた。

  三人組に恐喝されていた男は髙嶋藩江戸家老、石川隼人助次男弥平太、女は幕府祐筆役、瀬川文右ヱ門の養女アヤだった。三人組はアヤの旦那にバラすといって三百両を三日以内に持ってくるように言って脅す。

  三人組が去った後、錦丹波が二人に「事情をきかせてもらおう」と言って近づく。

 

 親子(三)

  宮城音弥の姉ハツは髪結いの見習いと偽り料亭の女中になった。

  仕事を終わって帰るハツを三人組が襲って誘拐し十両で深川の岡場所に売った。千種の婆が手淫指(さわり)で女の心を打ちのめす。

  三人組はもらった十両で酒を呑む。その三人組をつける編み笠の武士・・・

 

 親子(四)

  欽次という部下からハツの居場所を調べた錦丹波がハツを呼び、着替えさせ、店の男のマゲを切り、ハツを連れて家に送った。

 

 親子(五)

  ハツを連れて行かれた店の男達は、後金をもらいに来た三人組を殴る蹴る。そこに勘助が登場して錦源之助を家に連れて帰った。

  錦丹波は一族の者を呼んでおり、その前で源之助に嫡男としてふさわしい行動をとることを誓わせる。また鞘香が死んだことを発表する。

  錦源之助は川原で頭を抱えて悩み苦しむ。

  その横を宮城音弥が通り過ぎる。

  治療を終わった冬木がアヤメに笹一角(草加竜之進)を呼んでこい、と言う。

  アヤメが呼びに行くと、笹一角(草加竜之進)の背中を洗う宮城音弥だった。「どうやら子供(ガキ)に色男をとられてしまったようだのう」とからかう冬木。

 

 恋敵(コイガタキ)(一)

  冬木道無は徳命館という塾の先生の胃けいれんを治す。謝礼の代わりに何か願い事をする。

  冬木道無の家ではアヤメが笹一角(草加竜之進)の服を縫っていた。そこに宮城音弥がやってきて論語の一節について笹一角の意見を聞く。嫉妬するアヤメ。冬木道無が音弥に「徳命館で一名欠員が生じたので試験を受けないか。金なら受かってから考えろ。」と奨める。

  帰宅した音弥に姉が父親が内職でできた傘をしょっていった、と言う。

 

 恋敵(コイガタキ)(二)

  宮城音弥の父親、宮城双兵ヱに錦丹波の息子錦源之助が因縁をつける。刀を抜こうとした双兵ヱだったが腰の刀を売ってしまい竹光であることを思い出し、源之助に殴られるままにしていた。それを見た音弥が助けに入ろうとしたが、それを水野十郎左ヱ門とおぼしき男が止める。

 

 恋敵(コイガタキ)(三)

  宮城音弥は徳命館の試験を受ける。冬木道無は塾長の「誰に習ったのか?」との問いには「父母から」、「親はどういう人か?」ときかれると「十石五人扶持だが母方は実力者」だといけしゃあしゃあと適当に答える。

 

 恋敵(コイガタキ)(四)

  数日後、冬木道無の所に徳命館の塾長が来て、詫びを入れていた。三千石の大身の旗本の馬鹿息子を入れるため、宮城音弥は入塾できないということだった。そして青山美濃守の所で小姓衆を募集している話を持ってきた。それを聞いた宮城音弥は礼を言って道無の家を去って行った。

 

 恋敵(コイガタキ)(五)

  笹一角(草加竜之進)にアヤメが話をしている。笹一角が自分のことをどう思っているのか、ときくアヤメ。「もちろん好きだ」と答える笹一角。そこに宮城音弥が走ってきて果たし合いをするので立会人になってほしい、と頼む。

 

 春一番(一)

  貧しい家で恥辱を受けた父のために、その恥辱をすすぐために果たし合いをする、というのが宮城音弥が語った果たし合いの理由だった。笹一角は宮城音弥を激流の中に誘い、溺れた彼を助け、剣を教える。

  「一歩踏み込めば、相手の太刀が己の身に届く距離を一刀一足の間合いという。こおの時己の太刀も相手にとどく・・・この間境(まざかい)を知ることが第一じゃ・・・」といって、間境の重要性を教える。

 

 春一番(二)

  アヤメは宮城音弥と笹一角の二人に剣で攻撃されて斬られる夢を見てうなされる。冬木道無は「お前も女になったか・・・」と娘を慰める。

 

 春一番(三)

  宮城音弥の果たし合いの相手は錦源之助だった。立会人は水野十郎左ヱ門ら5人だ。笹一角は日州牢人と名乗る。果たし合いを断るなら今のうちだという水野十郎左ヱ門。遠くで見ている錦丹波。果たし合いは互角で両者が倒れて終わった。

 

 春一番(四)

  酒を呑んで荒れる錦源之助。居酒屋で喧嘩になった。白柄組が錦源之助を助けようとしたが相手の編み笠の武士は「水野を連れて飛鳥山ムジナヶ原の三本杉で待っている」と言って、背中の蜘蛛の入れ墨を見せて「血蜘蛛の団十郎」と名乗って去った。

 

 春一番(五)

  飛鳥山ムジナヶ原の三本杉で、馬に乗った水野十郎左ヱ門と徒歩の血蜘蛛の団十郎が戦いを始めた。水野十郎左ヱ門の仲間が銃を撃ち、編み笠が外れ、団十郎が錦丹波であることが判明する。錦丹波が水野十郎左ヱ門を峰打ちにして倒す。錦丹波は、今後源之助からは手を引くように水野十郎左ヱ門に言う。水野十郎左ヱ門は、子供の喧嘩に親が出てくるとは、とあざ笑う。錦丹波もそれはよく承知していた。

 

 春一番(六)

  錦丹波は息子源之助の立ち直りを見ることなく任地の日置に戻っていった。源之助は相変わらず酒を呑んですさんでいた。橋から飛び降り死のうとしたが死ねなかった。アヤメを町で見かけて追いかけていったが、アヤメに投げられて川に落ちてしまった。川に落ちた音をきいた目の鋭い町人がアヤメの姿を追ったが既に彼女は去っていた。

 

 念者(一)

  結局、宮城音弥は青山美濃守の小姓になった。二十石取り三人扶持である。冬木道無に借金を返済に来て、笹一角(草加竜之進)と話す。笹一角に「念者になってくれ」と頼む。そして互いの身体を切り合い血を吸い合う。そして音弥は、自分の左手の指(どの指かは左手全体に包帯をしていて不明)を箱に入れて笹一角に渡す。

 

 念者(二)

  薬問屋から薬の材料を仕入れるアヤメ。牢人仲間と別れて歩く笹一角。その後ろを春一番(六)でアヤメに鋭い目を向けた町人が尾行する。それに気づいたアヤメが尾行する。笹一角は尾行している男をまくために郊外に出る。アヤメが狂女と入れ替わり、男と対決する。男は蛇(クケナワ)の辰と名乗った。アヤメは髪の毛から取り出した手裏剣を投げて男の目をつぶし短刀で男の首を斬り、殺した。その様子を笹一角は木の陰から見ていた。

 

 

[感想]

 法令に厳しい錦丹波も人の親であることがとてもうまく描写されている。旧友だが道を外れた水野十郎左ヱ門にそそのかされる錦源之助。ぐれてしまった錦源之助は立ち直ることができるだろうか。

 冬木道無とその娘アヤメはなんだか怪しい。忍者のような気がするが忍者だとすると誰に雇われているのだろうか?

 宮城音弥とアヤメと笹一角(草加竜之進)の三角関係の描写も面白い。音弥に嫉妬するアヤメ。衆道には興味がない、という笹一角だがそれでもいい、と答えて念者になってもらう音弥。そしてそのために指を一本切り落とす。凄惨な展開だ。念者という言葉は知らない言葉だったが、男色で年長の方を指す言葉だそうだ。

 この巻は比較的動きのない巻だが、この後どう展開するのだろうか?楽しみだ。