haruichibanの読書&視聴のおと

読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

ドストエフスキー『罪と罰』(上)(下)

 

手塚治虫が一番好きだ、と言っていたので、若い頃に読んだ。

ただその時は面白さがよくわからなかった。

だが、ず~~~~っと心に引っかかっていた。

 

そして、ようやく自分なりに消化できてきた。

この物語は、貧しい学生ラスコーリニコフが、何だかんだと理由をつけて、高利貸の老婆を殺す。しかし、良心の呵責に苦しむ。

 

たとえどんなにいい思想を持っていても、たとえどんなに凄い才能を持ったエリートだとしても、たとえ相手が悪人であっても、その悪人を殺す権利は、法によって裁く以外、誰にもない。個人に殺人の権利はないのだ。作者の主張はそこなのではないか。

 

21世紀の現代でも、SNSで誹謗中傷する人やワイドショーで悪役っぽい人を攻撃するテレビ局など、ラスコーリニコフっぽい人が沢山いる。

 

新約聖書』で、娼婦に石を投げる人達に、イエスが「罪のない人だけ、この女を裁く権利がある。」と言ったところ、罪のない人などいないことに気づいた人々の話が重なる。

 

ストーリーがなかなか進まず、テーマが重くて暗い小説だが、これは必読な小説だと思う。