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さいとう・たかを『ゴルゴ13 208 最終兵器小惑星爆弾』(リイド社)(2023/04/19)

 


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第564話『最終兵器小惑星爆弾』(2016/08作品)(脚本協力 テーラー平良)

ページ数:137

依頼者1:ロシア国防相ゴラン

ターゲット1:レールガンの設計者でタタール人 ハージ・ギレイ博士

依頼金額:不明

狙撃場所:ロシア ズラトウストの古城にある秘密基地

殺害人数・相手:5人(ズラトウストの警備員、ギレイ博士)

 

依頼者2:サハロフ博士

ターゲット2:小惑星ルドラ

依頼金額:不明

狙撃場所:ロシア ズラトウストの古城にある秘密基地

殺害人数・相手:3人(ズラトウストの警備員、ロシア国防相ゴランとセチン大佐)

H:なし

 

2013年のウクライナでロシアFSB(旧KGB)で拷問を受けるタタール人達。それを見るガウリ博士は、タタール人達を見捨て、ロシア人に対する復讐を誓うのだった。

 

ロシア ズラトウストの古城の秘密基地で、ガウリ博士とギレイ博士とサハロフ博士の3人は、タタール人だが苦労して研究を重ねた仲間だった。だが、最近、ガウリ博士とギレイ博士の仲が悪くなっていた。ギレイ博士はレールガンの研究と設計をしていた。ガウリは惑星探査の研究をしており、小惑星からレアメタルを採取することをロシア政府から命令されていた。サハロフ博士の元にはガウリ博士の娘イリーナとその夫で日本人の星田マモルが働いていた。

 

ロシア国防相ゴランの依頼を受けたゴルゴ13は、スラトウストの古城に侵入しギレイ博士を殺し設計資料を焼却し脱出した。ゴランは、ミサイル製造会社のバルマーズ・バンテイ社から賄賂をもらっており、ギレイ博士のレールガンが完成するとバルマーズ・バンテイ社の収益が減り、自身への賄賂も減るため、ギレイ博士の暗殺を依頼したのだった。

 

バイコヌール宇宙基地ではハヤブサの開発にも携わっていた太田が何者かに殺された。その頃、小惑星ルドラを捕獲したロシアの探査機シバが行方不明になっていた。実はガウリ博士がロシアへの復讐のために小惑星ルドラをモスクワに落とそうとしてシバを捜査していたのだ。太田はそれを知ったために殺されたのだ。しかし太田は死ぬ間際に星田に証拠を残していた。その証拠をもとにガウリ博士の企みを知ったサハロフ博士はすべてをロシア側に話し対策をとろうとする。

 

サハロフ博士はギレイ博士のレールガンを使ってゴルゴ13に射撃させ、小惑星ルドラを破壊しようとする。

 

銃職人のデイブもズラトウストの古城に呼ばれ、銃弾二発を作成する。

 

モスクワを目指していたルドラの軌道がずれ、タタール人の移住先のチェリャビンスクになった。ヤルコフスキー効果のためだ。

 

タタール人を滅ぼそうと考えているゴランは何もしない決断をする。

 

しかしチェリャビンスクには核廃棄物が多数あった。もし小惑星ルドラが激突すると核汚染物質がチェルノブイリの比ではない規模で拡散する。それをゴルゴ13が指摘すると、ゴランはすぐにルドラを破壊するよう命じる。

 

最初の一発は、ロシア人狙撃手が発射したが外れた。ギレイ博士が試射の時に浮かぬ顔をしていたのは作製したレールガンの弾丸が左にずれる癖があるからだった。ゴルゴ13はその癖を見抜いた。

 

ゴルゴ13がロシア人狙撃手を一撃のもと倒して、2発目を射撃しようと配置につく。しかし充電が足りない。

そこにガウリ博士が飛び込み自身の身体を電線にして充電を完了させる。

ゴルゴ13がレールガンを射撃し見事に小惑星ルドラを破壊した。

 

ゴランとセチン大佐は、仕事の後、ゴルゴ13を殺そうと狙ったが、ゴルゴ13に返り討ちにされてしまった。

 

ゴルゴ13とデイブはズラトウストの古城を後にするのだった。

 

小惑星ルドラを地球に衝突させてモスクワを破壊するというアイデアを見て、『宇宙戦艦ヤマト』に登場する遊星爆弾を思い出した。人類の持つ核兵器が高速で突き進む小惑星に対して無力なことがわかりやすく説明されている。

2023年現在も続くロシアによるウクライナ侵攻だが、2013年に既に始まっており、その根底にロシアによるウクライナタタール人への差別と強制移住と虐殺の歴史があった。その歴史の過酷さを考えるとウクライナがロシアに降伏することはあり得ないと思う。

ロシアとウクライナタタール人の問題と、小惑星探査やレアメタルの問題、そしてレールガンの威力をゴルゴ13の神業と結びつけた巧みなストーリー展開が光る傑作だ。

 


第567話『i-Construction(アイ・コンストラクション)』(2017/01作品)(脚本協力 綾羅木恭一郎)

ページ数:69ページ

依頼者:中国政府

ターゲット:二重スパイ 洪東興(ホン・ドンシン)=李選平(リー・シュエンピン)

依頼金額:不明

狙撃場所:日本 伊豆下田

殺害人数:1人(洪東興(ホン・ドンシン)=李選平(リー・シュエンピン))

 

アメリカ、カリフォルニア州サンディエゴ郊外で、中国人スパイの洪東興(ホン・ドンシン)が持つ中国の海軍の軍事機密を、主任とナジェフが買い取る。その席でナジェフがキャサリン・グッドマンと会っていたか、と洪に訊くが、洪は会っていないと否定する。

 

3日後、キャサリン・グッドマンがスパイだったことを調べた主任とナジェフが洪の家に突入したが、洪は既に出国していた。洪は二重スパイで、3日前に日本に既に向かっていたのだ。

 

日本S出版社の月間テクノ編集室で、北村が深沢にi-Constructionについて記事を書くように指示していた。

深沢は国土交通省港湾局技術企画課の浅田を訪ねi-Constructionについて話を聞く。

この2人は第175巻第477話『死を呼ぶ汽笛』にも登場していた仲だ。

既に建設現場では三次元データを使っているが、規制で二次元データに落とさないといけない。それを三次元データのままでいいという規制緩和の話がi-Constructionだった。

浅田の紹介で伊豆下田の現場のSPORC(海洋・港湾調査センター)の大黒を紹介された深沢は、大黒を訪ねる。そこで怪しい一軒家とそこを監視するアメリカ大使館のダニエル・マッケンジーを北沢は見つけた。

北沢とマッケンジーは第167巻第461話『至近狙撃』第142巻第401話『大地動く時』第198巻第536話『神の鉄槌』でもおなじみだ。

 

マッケンジーは、怪しい一軒家に中国人スパイ李選平(リー・シュエンピン)がいること、彼を中国政府が狙っておりゴルゴ13に依頼したらしいことを話す。

 

二次元の地図で見ると、その一軒家を狙撃するポイントがどこにもなかった。

 

しかし、ほんの一瞬のすきに、洪東興(ホン・ドンシン)=李選平(リー・シュエンピン)は狙撃されてしまった。

 

マッケンジーと深沢は、ゴルゴ13がどこから狙撃したのか調査する。

 

二次元の地図ではわからなかったが、三次元で見るとわずか30cmの穴が空いていることを発見した。

 

松の木の根元にザイルを固定し、崖で一瞬の狙撃タイミングを何時間も待ち続けたのだった。

 

ゴルゴ13のモンスター級の狙撃に驚かされる話だ。

三次元データを使った建設現場の現状の話も面白かった。

 

 

第569話『国交回復の朝』(2017/03作品)(脚本協力 香川まさひと)

ページ数:71ページ

依頼者:元サイ・ヤング賞投手のホセ・ラモスとバッテリーを組んだキャンディ

ターゲット:亡命請負業者で薬物も取引していたジョージ

依頼金額:不明

狙撃場所:不明

殺害人数・相手:1人(亡命請負業者で薬物も取引していたジョージ)

 

1959年キューバ革命が起こり、1961年アメリカがキューバと国交断絶。

それから54年後の2015年7月20日

そのアメリカとキューバの国交が回復しようとしていた。

 

引退して15年経つ元サイ・ヤング賞投手のホセ・ラモスは今でも人気だった。

 

ジョージはホセを亡命させた男で今もしばしばホセにタカリに来ていた。

 

ホセとバッテリーを組んでいたキャンディもジョージによって亡命した男だった。

彼は4回も失敗し5回目でようやくアメリカの土を踏んだのだった。

 

二人の友人ジャック・アルバレスはジョージによって薬物中毒患者になっていた。

 

ホセはジョージを殺すことを考え殺し屋にジョージを殺すよう依頼する。

しかしホセは罪の意識にさいなまれていた。

 

ホセの様子がおかしいと思ったキャンディは、ホセを誘って、オハイオ州シンシナティに旅に出る。キャンディは地下鉄道に関する博物館に連れて行った。かつてそこには黒人を逃亡させた地下鉄道があったのだ。

 

シンシナティまでジョージは追いかけてきていた。キャンディはうまいこと言ってカネをやってジョージを追い返した。

罪の意識にさいなまれていたホセはキャンディに殺人を依頼したことを話す。

そして、後悔して、依頼をキャンセルした。

 

二人は旅をやめて帰ることにした。

 

翌朝、ジョージが射殺されたことが新聞に載っていた。

 

ゴルゴ13の仕事だった。ホセに殺人を依頼させないようにした真の依頼者はキャンディだった。

 

アメリカとキューバの国交断絶により、人生が狂った人々。命がけの亡命をして人生が変わった人々。

様々な人達の人生が交錯する。切ない佳作だ。