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さいとう・たかを『ゴルゴ13 207 アームストロングの遺言』(リイド社)(2022/12/19)




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第565話『アームストロングの遺言』(2016/10作品)(脚本協力 竹内亨)

ページ数:69

依頼者:国防総省の男

ターゲット:ウォール街の魔女 アレクシア

      ケーブルテレビ会社テレビ・キャスター ルーク・ウォルフォード

依頼金額:不明

狙撃場所:アメリカ ニューヨーク トロンプタワーの向かい

殺害人数・相手:2人(ウォール街の魔女 アレクシア、ケーブルテレビ会社テレビ・キャスター ルーク・ウォルフォード)

H:なし

 

アポロ11号が実際には月に行っていない」という噂はいろいろな所から出てくる。

しかし、今回は、実際に月に降りたアームストロングが動画で「私は、この人生の中でたったの一度たりとも、月面に降り立った事はないんだ。それは神に誓って断言できる!」と語っていた。

 

そのため、宇宙関係の企業の株価が大暴落した。

 

その映像を流したのは”強いロシア”再興を願う右翼政治家ドローニンとその腰巾着の”ペテルブルガ"紙記者イグナチェフだった。だが、彼らの黒幕は、ウォール街の魔女と言われるアレクシアとその愛人であるケーブルテレビ会社テレビ・キャスターのルーク・ウォルフォードだった。

彼らは宇宙開発関係企業の株価を操り一儲けしようとしていたのだった。

 

彼らはドローニンにアームストロングの映像を渡しアメリカ政府を脅迫させたのだった。

それだけでなく、「アームストロングの映像は偽造だった。アームストロングは月面に立った。」という主旨のことをドローニンが話す映像も作っており、公開した。

 

立場を失ったドローニンはイグナチェフを射殺し自殺した。

 

ゴルゴ13は、トロンプタワーにカーテンを閉めてこもるアレクシアが、PCに向かって取引する瞬間に射撃した。ルーク・ウォルフォードも狙撃し、仕事を終えた。

 

アポロ11号の月面着陸が嘘だったというフェイクニュースはよくあるが、真犯人の動機が株価操作であり、動画偽造のテクニックにハリウッドの技術を使っていたというのは斬新だった。

ゴルゴ13が見えないターゲットを射撃するシーンも圧巻だ。

 


第561話『The Grate Game(ザ・グレート・ゲーム)』(2016/04作品)(脚本協力 静夢)

ページ数:102ページ

依頼者:1)ロシア ラスキン安全保障担当書記

    2)吉村国家安全保障局

ターゲット:1)リドキスタン大統領マリコ

    2)ロシア ラスキン安全保障担当書記

依頼金額:-

狙撃場所:リドキスタン大統領官邸

殺害人数:10人(1)リドキスタン大統領マリコフ 2)リドキスタン大統領官邸を警備するロシア特殊部隊8人 ロシア ラスキン安全保障担当書記)

 

日本の安川首相と吉村国家安全保障局長は、中央アジアの国リドキスタンに向かっていた。安川首相はk日米同盟、安保法制整備、TPP妥結により中国の太平洋進出を抑えた。中国は「一帯一路構想」を通じて西に向かった。中央アジアを抑えれば中国の西への膨張を止めることができる。またリドキスタンの石油や天然ガスも魅力だ。

 

上海黄華石油集団の董事長の馬は、突然拘束された。そして中国国務院中央書記処の劉常務書記の尋問を受けていた。業務上横領と不正蓄財の罪で共産党の党籍剥奪をちらつかせながら、劉は馬に外交部副部長として中央アジア攻略を命じた。

 

ロシアでは、ラスキン安全保障担当書記を大統領が呼び出した。ラスキン安全保障担当書記は、中央アジアに進出しようとする中国に、友好関係を壊さずに進出を食い止めるように約束する。

 

馬はリドキスタンの大マリコフ統領にメルセデスの最高級車マイバッハと現金の賄賂を送り、日本より2割安価で石油プラントを建設し、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を通して資金を融資する、と提案する。

 

ロシアのラスキン安全保障担当書記に対してリドキスタン大統領は基地使用料として年間5億ドルを払うよう要求した。ラスキンは一旦持ち帰ることとした。

 

中国のリドキスタン進出を止めようとするラスキンに「もうロシアは超大国ではない」と馬は言い切る。

 

ラスキンは吉村と会い、中央アジア進出を狙う中国を止めるために協力しようと話す。

 

そしてリドキスタン大統領マリコフと中国の馬外交副部長による石油プラント建設計画の調印式の日、ゴルゴ13マリコフ大統領を射殺した。

 

イスラム過激派が大統領官邸を包囲したが、それをロシア軍部隊が撃退した。

リドキスタンのNo.2タジモフが次の大統領になり、石油プラントは日本に再発注することになった。

 

ラスキンは吉村に、石油プラント受注の見返りにサハリンから北海道へのパイプライン敷設を依頼した。

吉村が断ると、ラスキンは工事中に事故があっても日本は完成責任を負うと脅す。

 

ロシアがウクライナに侵攻したので、ドイツはロシアからの天然ガス輸入の段階的削減を発表した。

それはリドキスタンからロシアへの天然ガス輸出が減ることを意味する。そこに中国の馬が天然ガスの輸入増を認めるが見返りに中国によるリドキスタンの基地利用を求める。

 

日本の吉村はトルコに石油プラント建設工事への協力を依頼する。

 

馬はイギリスに、ネパール山岳民族出身者で構成され、勇猛で抜群の戦闘力を誇るグルカ兵を紹介してもらう。

 

リドキスタンの大統領官邸をグルカ兵達が襲った。大統領府にいるロシア特殊部隊が撃退した。

グルカ兵の背後に馬がいるとにらんだラスキンはリドキスタン警察を使って馬を拘束した。

 

リドキスタン大統領タジモフに、石油プラント建設にトルコを加える話をする。そこにラスキンが登場し「結局は力だ。現に我が国がリドキスタンを実行支配している。」とホンネを話す。

 

リドキスタンの大統領官邸に、ゴルゴ13が侵入し、大統領官邸を守るロシア軍特殊部隊の兵士達と銃撃戦になる。その流れ弾に当たって馬は死ぬ。

銃撃戦を終えたゴルゴ13は、ラスキン安全保障担当書記の前に現れる。吉川が「今回は、私が依頼しました」と言う。

そしてゴルゴ13は黙ってラスキンの眉間に銃弾を撃ち込んだ。

 

リドキスタンは速やかに軍を動かし、ロシアから主権を取り戻した。

 

吉川は通勤途中の満員電車でロシア製ナイフで刺されて死亡した。

 

それをきいた安川首相は「これが・・・米国の傘を離れた”独自外交”の現実なのか・・・」と心の中でうめくのだった。

 

 

各国の思惑が錯綜する複雑なエネルギーや外交の世界を描いた作品だ。

日本政府がゴルゴ13に依頼した珍しいケースだろう。

国際社会の現実が、やはり”力”だということをまざまざと見せつけられる話だ。

 

 

 

第560話『縄文の火』(2016/03作品)(脚本協力 香川まさひと)

ページ数:68ページ

依頼者:国立帝都大学教授 但馬祥太郎

ターゲット:但馬の弟子 藤山

依頼金額:不明

狙撃場所:日本 青森県四内外山遺跡

殺害人数・相手:1人(但馬の弟子 藤山)

 

青森県四内外山遺跡で中学生に縄文土器の魅力を教える藤山は、恩師の但馬と疎遠になっていた。

但馬が土器を復元していることに対して藤山は、修復ではなく創作だし、修復業者から賄賂をもらっているのではないか、と詰め寄る。但馬は怒って帰ってしまった。

 

そんな藤山のもとにアランという男が接近してきた。アランは縄文土器土偶のバイヤーだった。

真っ正直な藤山はアランの申し出を断った。

 

藤山は、但馬に、金儲けのために土器や土偶を修復し販売していることを、問い詰める。

 

藤山に暴露されてはおしまいだと考えた但馬はアランを通じて、ゴルゴ13にコンタクトをとった。

但馬は藤山を四内外山遺跡で殺すことを依頼する。遺跡内で殺人事件があれば立ち入り禁止になるだろうが、但馬は例外で、その間に土器や土偶を持ち出すためだ。

 

雷雨が迫る中、四内外山遺跡に入ったゴルゴ13は避雷針をセットした上で、拳銃で至近距離から藤山を射殺した。

 

四内外山遺跡にある柱穴が避雷針の可能性があるということをゴルゴ13が示した。

 

数日後、東京帝都大学の研究室で、但馬は心臓発作を起こして死んでいた・・・。

 

学問とカネの問題を扱った作品だ。「学問をやる人は金儲けをするな」という不文律が日本にはある。しかし研究をするにもカネがかかるものだ。最近、国立科学博物館クラウドファンディングをして話題になったが、どうやってカネを工面するかは、日本の大きな課題だ。