haruichibanの読書&視聴のおと

読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

さいとう・たかを『ゴルゴ13 2 檻の中の眠り』(リイド社)(1973/08/01)

kindle版

紙版

 

 

『檻の中の眠り』(1969/03作品)

■依頼

依頼者:青い目ザラスが死刑になるまで待てない者

ターゲット:青い目ザラス

依頼金額:不明

狙撃場所:アラスカ ブリストル湾に浮かぶ刑務所(通称パンドラの島)近く

殺害人数:1人

殺害相手:青い目ザラス 

 

アラスカ ブリストル湾に浮かぶ刑務所(通称パンドラの島)に囚人としてデューク東郷が入所してきた。デューク東郷は所長のキッカースを挑発し、とうとう西の特別房に写される。

そこで青い目ザラスと会う。

デューク東郷は、青い目ザラスとともに、刑務所を脱走をはかる。

サーチライトが31回目に1回、ハレーションを起こすことを計算し、屋上に上り、冷たい海に飛び込む。

二人はすぐ近くに潜み、刑務所のパトロール船を奪取し、刑務所近くに上陸する。

そこでデューク東郷は準備しておいたM16を組み立て、青い目ザラスを射つ。

そして、「あんたが死刑になるまで待てないというやつがいたんだ・・・これがおれの仕事でね。」と言い、

「おれの名は・・・ゴルゴ13・・・・おれが相手に名乗ったのは・・・今度がはじめてだ・・・青い目ザラス!!」と言い、続けて2発撃ち、ザラスにとどめを刺す。

 

青い目ザラスが何をしたのか?

彼はどんな秘密を持っていたのか?

誰がゴルゴ13に依頼したのか?

 

様々な疑問が湧く佳作だ。

ゴルゴ13が自分から名乗ったり、依頼者について話したり、1発で仕留めなかったのは珍しい。

おそらくザラスとは何か通じるものがあったのだろう。別な場で出会っていたら、ゴルゴ13といいパートナーになったかもしれない。


『白夜は愛のうめき』(1969/04作品)

 

依頼者:不明

ターゲット:50歳から60歳代の白人の男とその手下

依頼金額:不明

狙撃場所:ノルウェー トロムセ

殺害人数:3人(50歳から60歳代の白人の男とその手下 ニューヨークからノルウェーに飛び一夜を共にした女)

 

ニューヨークのホテルのバーで呑むゴルゴ13

前夜、共にした女と一緒に呑むゴルゴ13だが、女に「いいからもう行ってくれ・・・」と言う。

 

そこに1人の女が来てカウンターに座る。

 

別の客の女とその恋人らしい男が別れ話をしていた。男は「おまえひとりが女だと思っているのか!?」と言う。

その言葉から女の過去が描き出される。

浮気した夫を追った女に対して夫が吐いた言葉がこの言葉だったのだ。

女が男を押したときに、後頭部を打って男が死んだ。裁判で女は懲役6ヶ月、執行猶予1年の判決になった。

ここでニューヨークのバーに場面が戻る。女は気を失って倒れた。

 

翌朝、女とゴルゴ13は、ホテルから空港に、同じ車で向かう。ユニオンのストライキがありタクシーが来ないため、ホテルの車で空港に向かったのだ。

 

女は途中で降りて、雨の中、空港に歩いて行く。

 

飛行機で、女とゴルゴ13は、隣の席になった。

 

飛行機は、主車輪が出ないアクシデントになり、胴体着陸することになった。

 

胴体着陸に成功し、二人は一夜を共にする。このシーンは絵のタッチが全然違う。

 

ゴルゴ13は、城から50歳から60歳代の白人の男と手下を射殺する。手下が死ぬシーンはないが、2発撃っているので、二人を殺したものと思う。

 

仕事が終わってゴルゴ13は城の階段を降りる。すると、そこに昨日の女がいた。

目を見開いて驚くゴルゴ13

そして汗をかいて苦悩の表情を見せるゴルゴ13

銃口を向け、ゴルゴ13は女を射殺する。

 

この頃のゴルゴ13は、素人の女に尾行されて驚いたり、目撃者を殺すルールと女を殺したくないという葛藤の表情を見せる。

 

偶然の出会いと死を、ノルウェーの白夜の下、描いている。

せつない作品だ。

 

 

ブービートラップ』(1969/05作品)

■依頼

依頼者:フランス保安局

ターゲット:労働総同盟(CGT)書記長アンドレ・ゼギー

依頼金額:2000万フラン

狙撃場所:フランス パリ

殺害人数・相手:10人 制服警官 帽子をかぶったスーツの男 シャルル・リネット 薔薇十字同盟(ローゼンクロイツ)が送った刺客7人

 

CGTと民主労働総連合(CFDT)と労働の力(FO)の三派が、フランス始まって依頼と言われる空前のストライキを実施した。アンドレ・ゼギーの力によってこの三派が結束したのだ。

バスも地下鉄も動かない静かなフランス・パリの街を歩くゴルゴ13に、自転車に乗った制服警官が近づいてきた。

話しかけた後、彼は拳銃をゴルゴ13に向け、2発発砲した。ゴルゴ13はかわして警官の眉間に銃弾を命中させて仕留めた。街角からまた別な男に射撃されたゴルゴ13

 

ここで依頼を受けた時の回想シーンになり、ターゲットが労働総同盟(CGT)書記長アンドレ・ゼギーであり、彼が労働三派をまとめて史上空前のストライキを実施すること、依頼金額が2000万フランであることが明かされる。

 

そこに男が話しかけてきたが、ゴルゴ13は、さっき街角で撃った男であることを見抜き射殺する。

 

ここでまた回想シーンになり、電話により、ゴルゴ13への依頼がキャンセルされた。

 

フランスの国歌治安調は、保安局が計画していたゼギー暗殺によるスト回避策の注視を厳命したのだった。そして、このことを知っている者の口封じも要求したのだ。

 

ゴルゴ13は、「町が生きかえるまでもぐりこめるところをさがさなくては・・・」と独白する。

 

狭い道で4人の男に挟まれたゴルゴ13はいきなり逃走し、女性が助手席に乗っているオープンカーに飛び乗る。

 

最初は運転席だったが、どこかで席が変わり、ゴルゴ13が助手席で、運転する女に拳銃を突きつけている。

女のハンドバッグから、女がシャルル・リネット24歳、独身、EAMAC工業 電子計算機プログラミング課、住所がオルレアン河岸32であることを突き止める。

ゴルゴ13はリネットの自宅に入る。

突然ゴルゴ13はリネットに服を脱ぐように命じる。

リネットは「にげたりしない」と言う。

 

リネットが薬の時間だ、と言い、引き出しを開け、拳銃を取り振り向きざまに撃った。

だが、ゴルゴ13は一瞬早く、かわして、拳銃でリネットを殺す。

「ふつうのマドモワゼルなら、男に服をぬげといわれたら・・・想像するのはひとつだ・・・」とゴルゴ13

リネットがにがさないためと答えたのはプロの考えだったからだ。それをゴルゴ13は見抜いたのだ。

 

リネットの元に連絡が入った。相手は薔薇十字同盟(ローゼンクロイツ)となのった。1952年に解散し、復活した西ヨーロッパ唯一の殺人集団だ。

 

薔薇十字同盟(ローゼンクロイツ)が送った刺客7人を始末したゴルゴ13は、翌朝、去って行くのだった。

 

密室のようなパリの町で、どんな敵が何人いるかもわからない状況での、緊迫感ある戦いが、まるでアクション映画のようだ。

パリの空気感が伝わってくる描写がいい作品だ。

 

 

『黒い熱風』(1969/05作品)

■依頼

依頼者:ソ連軍事情報機関(GQU)殺人課非合法工作員

ターゲット:ガボン共和国革命評議会オーバーメ将軍

依頼金額:100,000ドル

狙撃場所:ガボン共和国

殺害人数・相手:0人

 

ゴルゴ13が今まさに銃殺されようとしていた。

銃口が向けられた時、回想シーンになる。

そこで、ソ連軍事情報機関(GQU)殺人課非合法工作員が、ガボン共和国革命評議会オーバーメ将軍を親米派であるため、暗殺する、とゴルゴ13に、100,000ドルで依頼する。

 

回想シーンが終わり、今まさに死刑になるという時、カイヨーテ大佐が、ゴルゴ13死刑を止めに来た。どうやらゴルゴ13は既に仕事を終えてオーバーメ将軍暗殺に成功したようだ。

その後つかまって銃殺が決まったのだ。

カイヨーテ大佐によって、ゴルゴ13の死刑は中止となり、革命評議会軍事法廷が再開された。カイヨーテ大佐は黙秘を続けるゴルゴ13に「答えるのだ!!狙撃屋ゴルゴ13!!」と叫ぶ。

ゴルゴ13は「熱いな・・・さすがにアフリカだぜ。」と答える。

 

ここでまた回想シーンになる。ガボン共和国に潜入し、ドルトン准将の通行許可証を受け取ったゴルゴ13は、依頼主が差し向けた女と寝た後、ターゲットを狙う。

指定の時間までまだ5分あるので、葉巻に火をつけた時、ターゲットを何者かが射殺した。

ゴルゴ13は逃亡できずに捕まった。

 

回想シーンは終わり、再び、革命評議会軍事法廷の場面だ。カイヨーテ大佐は、ゴルゴ13を雇ったのがドルトン准将である、と糾弾する。

その時、ゴルゴ13は、カイヨーテ大佐がオーバーメ将軍を殺した、と話す。

前夜抱いた女が、カイヨーテ大佐のことを何もかもしゃべった、と言う。「あの女に聞いてみろ!!」と叫ぶと、カイヨーテ大佐は思わず「ア、アリーナにかぎって・・・」とうめいてしまう。

この法廷の会話はすべてカイヨーテ大佐の隠しマイクで外にも聞こえていた。カイヨーテ大佐は兵士達に囲まれ・・・・。

いつの間にかゴルゴ13は消えていた。

 

『南仏海岸(コートダジュール)』(1969/05作品)

■依頼

依頼者:スイス銀行ドワイト・グリンヒル

ターゲット:金のブラック・マーケットの20%を握る男 フランソワ・ギョール

  金のブラック・マーケットの男オレグ・コンスタンチン

依頼金額:不明

狙撃場所:フランス ニース

殺害人数・相手:1人と1匹(盲目の殺し屋 イクシオンと彼の盲導犬ケンタウロス)

 

フランス南仏海岸で水上スキーをする男をスコープにとらえたゴルゴ13。引き金を引く寸前、何者かがその男を撃っていた。

 

スイス・バーゼル国際決済銀行で、ドワイト・グリンヒルが、金のブラック・マーケットを叩き潰さねばならないこと、そのためにプロを雇ったことを話す。

そこにゴルゴ13から電話が入り「ギョールを殺ったのはおれじゃあない!!」と伝える。

 

ゴルゴ13は次のターゲットのオレグ・コンスタンチンの身辺を探る。護衛のシュワルツ兄弟がいる。その時、盲導犬と一緒の若い男に遭遇する。

オレグ・コンスタンチンは、誰がギョールを殺したか探らずに笑ってカジノで遊んでいる。ゴルゴ13がオレグ・コンスタンチンを殺すのは、ギョールを殺したのが誰で、誰が依頼したのか、ゴルゴ13の存在を浮き上がらせたのが誰かをはっきりさせてからだ、と心の中でつぶやく。

 

そのホテルのエレベーターで、盲導犬ケンタウロスと一緒の若い男イクシオンと会う。

 

イクシオンとケンタウロスのことを調べるように依頼したゴルゴ13。調査結果をホテルのロビーで待つ間に、オレグ・コンスタンチンとシュワルツ兄弟が射殺された。

 

イクシオンとケンタウロスに会ったゴルゴ13は、名乗った上で、明日午前5時東海岸で会おうと約束する。

 

そして5時。イクシオンはオレグに雇われギョールを殺したのだと告白した。中近東のブラックマーケットが手入れを受けて金が押収され、金を入手できないオレグがギョールを殺そうとしたのだ。オレグは、目が見えないイクシオンに偽札を渡し「半端者」と言ったため、イクシオンはオレグとシュワルツ兄弟を殺したのだった。

 

そして、二人の決闘が始まる。

ゴルゴ13はM16を遠くに捨て、ジャンプしてM16を手に取り、イクシオンを殺した。その後ケンタウロスも。

南仏海岸のジリジリとした太陽の暑さと湿気がない風を感じる作品だ。

美しい南仏の空気感とは反対の、プロの殺し屋同士が出会ったときの哀しい対決の話だ。

 

『ゴルゴin砂嵐(サンドストーム)』(1969/06作品)

■依頼

依頼者:モシェ・ダヤン

ターゲット:ソ連の高級技術将校2人

依頼金額:300,000ドル

狙撃場所:エジプト ベニスエフ他

殺害人数・相手:7人(アラブ諜報部員3人と宿のフロント 指定連絡地点の軍の建物にいた軍人 ソ連の高級技術将校2人)

 

イスラエル・レビウイムで抱き合う男女の元に電話が入る。戒厳令がしかれたとの連絡だった。フロイラインと呼ばれる女は、母が病気だと言い、自分の乗ったグライダーを、相手の男に引っ張るよう依頼する。

男の元に戻ったフロイラインは、男を殺した。

 

1967年5月20日シナイ半島シャルムエルシェフ近くで、アラブ連合がアカバ湾を封鎖し、イラクアルジェリア、クエート、サウジアラビアレバノン、シリアのアラブ諸国イスラエル国境に軍団を終結させた。

日本による真珠湾奇襲作戦の解説映画を大きな会議室で上映していた。会議室にいるのはイスラエルの軍人とダヤンだ。ダヤンの賭けが今始まろうとしていた。

 

テルアビブ ヤッファ イスラエル統合参謀本部の司令室にダヤンはいた。フロイラインによく似たミス・ヘーゼラーに時間を聞く。21時32分だ。ダヤンは4人の男を22時に来るよう迎えの者を出さずに招待したのだ。

他の3人は足止めされ国外追放になったが、ゴルゴ13は負傷した諜報員に化けて潜入に成功した。

フロイライン・ヘーゼラーがゴルゴ13銃口を向けたがダヤンが止める。

 

フロイラインとゴルゴ13は輸送機に乗り、パラシュート降下した。

 

ダヤンは、300,000ドルを払い、依頼を説明した。アラブ側に多数のミサイルが送られた。そのミサイルと同時に二人の高級技術将校を派遣した。この2人を引退させることが今回の依頼だ。しかも12時間後にだ。

その高級技術将校の居場所を知っているのは虫(インセクト)で、4個しかないウォーキートーキーで23時丁度に通信するのだ。

 

フロイラインとゴルゴ13は、虫(インセクト)と連絡するためにパラシュート降下したのだった。

エジプトに潜入し、エジプト軍の哨所はフロイラインが諜報員と名乗って突破しジープを借りて、虫(インセクト)との連絡場所の安宿に着いた。

フロイラインはフロントに「部員を集めて1時間後にへやへふみこんで!」と命令する。どうやらダブルスパイのようだ。

 

フロイラインとの情事の後、アラブの刺客3人と宿のフロントが突入したが、ゴルゴ13は4人を返り討ちにする。

 

ゴルゴ13はフロイラインを連れて、指定連絡地点の軍の建物に向かう。そこで虫(インセクト)との連絡に成功したゴルゴ13は、そこにいた軍人を射殺し、その男の服に着替える。フロイラインをアラブ側に射殺させ、うまくすり抜ける。

 

「約束の時間まで、あと2時間30分・・・じゅうぶんだな・・・」とつぶやいてジープで去って行く。

ターゲットのソ連の高級技術将校2人を射殺したかどうかは劇中ではわからない。だが、イスラエル軍第三次中東戦争で完勝したということはこの2人の射殺は成功したのだろう。

 

1967年6月5日、第三次中東戦争は、イスラエル軍の完勝に終わったのだ。

 

ゴルゴ13』に実在の人物が登場するのはこの話が最初だ。

ダヤンが登場し、ゴルゴ13に依頼する。

ダブルスパイのフロイラインとの暗闘や戦争開始直前の緊迫した状況下で任務が遂行できるのか、スリル満点の物語だ。

ソ連の高級技術将校2人を殺したシーンは本編にはないが、イスラエルが完勝したことから、ゴルゴ13の任務は成功したことは明らかだ。