この巻は200巻記念巻ということでカバーが二種類ついてきた。
第540話『亡者と死臭の大地』(2014/01作品)(脚本協力 横溝邦彦)
ページ数:102
依頼者:EU首脳
ターゲット:エチオピア副大統領ベキーム
依頼金額:不明
狙撃場所:アフリカーナ国とエチオピア反政府ゲリラ基地
殺害人数・相手:7人以上(政府軍兵士)
2人(エボニィを犯した男たち)
1人(エチオピア副大統領ベキーム)
9人以上(エチオピア反政府ゲリラ兵士)
2人(アフリカーナ国大統領ベアムと中国農業省幹部郭聡明)
アフリカ・中央アフリカーナ国
大統領ベアムと中国農業省幹部郭聡明が、向こう20年間アフリカーナ国の1000万平方メートルを貸与し代わりに中国が収穫した穀物の8割を納める契約書にサインした。
この契約の裏には中国製武器の引き渡しも含まれていた。
ベアムも郭もそれぞれの思惑を抱えていた。
反政府ゲリラを倒すために郭はヘリから、リーシュマニア症(黒熱病)に感染させたサシチョウバエを数万匹詰め込んだ箱を落とし、ゲリラが逃げまどっている間に襲いかかった。
ちょうどその時ゴルゴ13もバスに乗っておりサシチョウバエに襲われ、ゴルゴ13も刺されてしまった。治療薬のベントスタムの瓶が割れてしまった。
反政府ゲリラの女性エボニィはゴルゴ13とともに逃げるが、中国人に敵意を持つ彼女はゴルゴ13も中国人だと思っており、本心は協力したくない。
ゴルゴ13はシャーマンに会うためにアージャ村を訪ねる。
毛沢東の大躍進政策で両親が餓死した郭は、賞金100万ドルを賭けてゴルゴ13を追う。
ゴルゴ13とエボニィはワニのいる川に飛び込んだ。
郭は21世紀の「新チャイナ式植民地政策」で99年間アフリカーナ国を事実上の植民地にするつもりだった。
ゴルゴ13とエボニィはゴルゴ13が持っていた硫黄のおかげで一命をとりとめた。
ゴルゴ13はアージャ村のシャーマンであるンガジャの元に運ばれた。
エボニィはブロンニャドァという樹木の葉を取りに一人で出かけるが、男たちに見つかり犯されてしまう。
殺されそうになったその時ゴルゴ13の銃弾が男たちの眉間を貫いた。
ゴルゴ13はシャーマンの原始的な方法に賭けて黒熱病と戦うしかない。
ゴルゴ13をワニの川に落として殺したと思っている郭はエチオピアの副大統領ベキームと会った。
ベキームはエチオピア大統領の補佐をしていたが自分のふところが潤わないことに反感を感じており反政府ゲリラの武力による現政権打倒を目論んでいた。
郭はベキームとエチオピア反政府ゲリラにも武器を供給していた。
そこを何者かが襲撃しエチオピア副大統領ベキームは死に多数の兵士も死んだ。
郭はベアムのもとに駆け込み口論となる。
そこをゴルゴ13が襲った。
ベアムと郭はゴルゴ13によって眉間を撃ち抜かれ死んだ。
エボニィの村に戻ったゴルゴ13はエボニィに礼を言い、エボニィに大金を渡し「お前が困った時は、いつでも力になるから呼ぶがいい。」と言って、「俺の名は・・・デューク・トウゴウ・・・」と名乗って去って行った。
アフリカに対する中国の介入が抱える問題点を浮き彫りにした作品だ。
ゴルゴ13の超人的なアクション、医学的知識、女への優しさがあふれた名作だ。
第539話『奇跡を呼んだ少年』(2014/01作品)(脚本協力 ながいみちのり)
ページ数:35
依頼者:不明
ターゲット:アリゾナ州フェニックスの偉い政治家
依頼金額:不明
狙撃場所:アリゾナ州フェニックスの電波塔
殺害人数:1人(アリゾナ州フェニックスの偉い政治家)
アリゾナ州フェニックスの病院に入院するグレッグは、両親を事故で亡くし、脳腫瘍を患っていた。
主治医のニコルはグレッグに脳腫瘍を仕留めるイメージを持つことを勧める。
バードウォッチングが好きなグレッグはある時ゴルゴ13がコインを狙って射撃しているのを目撃した。
ある日、ゴルゴ13は電波塔の上から、グレッグが入院する病院の前に停車したリムジンから出てくる男を狙撃した。
グレッグは毎晩のようにゴルゴ13に狙われ、頭を狙撃される夢を見るようになった。
そして、数ヶ月後腫瘍はほとんど消えた。
ゴルゴ13による人助けの物語だ。
病は気からと言うが、ゴルゴ13の狙撃イメージで脳腫瘍が治るものだろうか?
さいとうプロダクションが、この治療方法を使う新興宗教を立ち上げてるのも面白いかもしれない。
第544話『欧州再生 EU自動車戦争』(2014/06作品)(脚本協力 静夢)
ページ数:103
依頼者:フランス ルドー社元会長ルメール
ターゲット:イタリア ティアット社カッサーノの「切り札」
依頼金額:不明
狙撃場所:ローマ・ティアット社迎賓館前の無人のビル
殺害人数・相手:1人(イタリア ティアット社カッサーノの「切り札」でありシシリー島工場工員のマルコ)
フランス ルドー社ゴンザレス会長の持つワイングラス
ドイチェモービル(DM)社シュナイダー会長と中王汽車社の董事長である林は、中王汽車がDM社の株式35%を取得することでDM社を救うという記者会見をしていた。
一方、合併によるリストラを恐れた労働者達は暴徒化していた。
ティアット社カッサーノ会長とルドー社ゴンザレス(カルロス・ゴーンによく似ている)は、ドイツ勢と戦うために提携しようとしていた。
イタリア・シシリー島の自動車工場では二週間の操業停止になっていた。工員のマルコはそれでも機械の整備に余念がなく仲間もあきれていた。
マルコの妻ソフィアが経営するバーにゴルゴ13が来て呑んでいた。
そこへボクサー崩れの酔っ払いが来てゴルゴ13にインネンをつけたが、ゴルゴ13は彼のパンチをかわして去って行った。
DM社シュナイダーと中王汽車の林が会議をしていた。林はDM社に最新技術を供与するよう依頼した。
しかしシュナイダーは中国が知的所有権を保護していないことを理由に拒絶する。
ルドーとティアットはDM社に3年間の協調減産とインセンティブ削減を提案するがDM社は拒絶する。
日亜自動車はルドー社に生産委託する契約の撤回をルドー社ゴンザレスに提案し合意を得た。
ゴンザレスは経営危機のピジェ社の救済合併をフランス政権幹部に提案する。
ティアット社カッサーノはゴンザレスがピジェ社を救済合併する話を耳にし、シシリー島のマルコに仕事を依頼した。
マルコは妻ソフィアに出張と言い家を後にした。何かを感じた妻はマルコがライフルを持って行ったことを確認し途方に暮れた。
マルコはピジェ社労働組合委員長を狙撃殺害した。しかし狙撃後マルコは腕に注射するのだった。
この事件を目にした元ルドー社会長ルメールがゴンザレスに釘を刺し、自身で動き始めた。
大統領ポランドとも会い全権委任してもらう。
ルメールは、ドイツ抜きまたは弱いドイツを含めたEU統合、財政統合を考える男だ。
ルメールはティアット社カッサーノの「切り札」を消すことをゴルゴ13に依頼した。
ルメールは裸で四つん這いにした愛人に首輪と鎖をつけ犬のようにするのが趣味だった。
ルメールの構想通り、EUの財政統合案についてドイツ一国が反対でその他の国は賛成となった。
イタリア ローマ・ティアット社迎賓館
背後からゴルゴ13が近づき、拳銃でマルコを射殺した。
その後ゴンザレスのワイングラスが狙撃された。
ルメールは「理念を持ったリーダーに後を託す」と言って、カッサーノやゴンザレスのもとを去る。
自宅でワイングラスを傾けるルメールは首輪で拘束している愛人に裏切られ鎖で首を絞められ殺された。
ソフィアは帰らぬ夫マルコを待ち続けるのだった。
ヨーロッパの政界や自動車業界の、一枚岩ではない複雑な状況をストーリーの中にうまく盛り込み解説している。
殺し屋マルコの妻ソフィアや、犬のように扱われていたルメールの愛人の姿が切ない。