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さいとう・たかを『ゴルゴ13 179 恐慌前夜』(リイド社)(2015/12/18)

 



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『恐慌前夜』(2008/12作品)(脚本協力 静夢)

■依頼

依頼者:アメリカ財務長官 ボルトン

ターゲット:巨大保険グループMIG 顧問ストックマイヤー

依頼金額:不明

狙撃場所:アメリカ ニューヨーク沖

 

殺害人数・相手:1人(ストックマイヤー) 

 

アメリカでサブプライムローンが焦げつきだした。

 

スラムに住む黒人のマーチン・ジャクソンはニューヨークのゲートサイド証券でメールマン(郵便配達係)として働いている。しかし、彼の本当の顔は、リストラされて社を去る不動産部門の男にプレゼントされたパソコンで金融危機に乗じてから売りを重ねて倍々ゲームで試算を膨らませていた"死神”と呼ばれるファンドだった。

SEC(米国証券取引委員会)の捜査官ラングレーは捜査を始める。

どうやらマーチンの金は、南十字慈善団の修道院を通じて、絵本に仕込まれてアフリカに送られていたようだ。

 

一方、アメリカの財務長官ボルトンは、世界恐慌を防ぐためにベアスターズ証券を救済合併したり住宅金融公社2社に公的資金注入するなどの手を打っていく。

 

巨大保険グループMIGでは、マードックCEOが公的資金注入を顧問のストックマイヤーに依頼する。しかし、ストックマイヤーは資金注入だけではなく経営に介入されるのを恐れ、公的資金注入に反対する。

 

そしてリーマン・ショックが起こった!

 

ボルトンは、ゴルゴ13にストックマイヤー狙撃を依頼する。

ゴルゴ13は「だが・・・恐慌は人の心から生まれるものだ・・・」と答えて去って行く。

 

MIGの緊急取締役会がニューヨーク沖のヨットで行われていた。

 

その時、ゴルゴ13銃口から放たれた銃弾がストックマイヤーの眉間を貫いた。

 

MIG救済のためにFRBが800億ドルの資金を供給し、政府が8割の株式議決権取得し公的管理になった。

 

SECのラングレーはマーチン・ジャクソンをインサイダー取引容疑で逮捕したが、証拠不十分で釈放された。

 

ボルトンの対策のおかげで株価は持ち直し、"死神"マーチンのファンドは破産し、彼はアフリカに去って行った。

 

いろいろな登場人物がそれぞれの思惑で動き、どこで接点が出るのか、誰がゴルゴ13にどんな理由で依頼するのか、面白い人間ドラマだった。

「”金融”は人類に大きな進歩をもたらした。しかし”金融”という怪物は抜け目なく膨張し、富める者は更に富ませ、楽観が極まると破裂して、貧しい者から淘汰する・・・そして歴史は繰り返す。」というナレーションで終わっている。確かにそうだ。金融は、自然界にはない、人が作ったシステムなのに、人がコントロールできない。まさに怪物だ、と考えさせられるストーリーだ。

 


『疑惑のペースメーカー』(2008/12作品)(脚本協力 山内富仁)

■依頼

依頼者:CIA・国外情報監視担当の男

ターゲット:スイス人ベン・クラハイム

依頼金額:不明

狙撃場所:イタリア マルタ島ヴァレッタ

殺害人数:1人

 

CIA・国外情報監視担当の男と国防総省・諜報専任官のウィルソンが酒を飲みながら話している。

スイスが28年ぶりに原発を作るに際して核燃料濃縮に必要な高性能遠心分離機についてベン・クラハイムという男が情報を集めている、とのことだ。

 

モスクワの原子力保安協会でベン・クラハイムは、クリス議員を籠絡し、秘密裡にロシアから遠心分離機についての情報を得る約束をした。

 

ベン・クラハイムは心臓にペースメーカーを入れていたが、咳が出るので病院に行った。彼を診た医師は、彼の身体の右側にある機器に疑問を抱き、医療機器販売・メンテナンスをしているチャンベルに相談する。チャンベルはベン・クラハイムの胸部レントゲン写真を入手しCIAに連絡した。

 

CIAの調査によると、ベン・クラハイムは先天性の心臓の病気がある。しかし、彼の身体の中にある機器は、心臓が止まったら、データを通信で飛ばし自爆するものだった。

 

ゴルゴ13は、一撃でペースメーカーとデータ転送用の機器を破壊するための特製の銃弾をドイツ ドルトムントで製作依頼し、その銃弾を持ってマルタ島ヴァレッタの工事現場に上がる。

 

クリス議員とプールサイドで休んでいるベン・クラハイムを、ゴルゴ13の銃弾が貫いた!

 

ゴルゴ13のスーパー・ショットが描かれた佳作だ。

 

 

グアンタナモの地雷原』(2009/10作品)(脚本協力 氷室勲)

■依頼

依頼者:グアンタナモ基地司令官アメリカ海軍中将リチャード・コーエン その息子アラン・コーエン少尉

ターゲット:グアンタナモ基地の情報漏洩者

依頼金額:500万ドル

狙撃場所:キューバ グアンタナモ基地

殺害人数・相手:1人 グアンタナモ基地の情報漏洩者ホック

 

キューバ租借地にあるグアンタナモ基地では、テロリストを投獄していたが、テロ防止のために拷問もいとわず行われていた。しかし、新大統領はグアンタナモ基地閉鎖を宣言した。

リチャード・コーエン中将は、グアンタナモ基地からの情報漏洩者の殺害を依頼する。

ゴルゴ13は依頼を受けるが、自身が永久に収容されないように、保険をかける。ゴルゴ13が1ヶ月以内に戻らない場合、秘密裡にグアンタナモ基地で使用されているビーム兵器について、リークするというのだ。

 

ゴルゴ13はニューヨークの銀行貸金庫にPCをしまい、頭取に対して1ヶ月以内に戻らなかったらPCの電源を入れることを依頼する。頭取の独白からはこれまでも何度も依頼されているようだ。

 

エミリオ・トウゴウとなったゴルゴ13は、グアンタナモ基地に収容される。

ゴルゴ13は、収容者名簿から3人の情報漏洩者候補を選び、その3人と同じ雑居房に入る。

3人とは、スペインバスク地方の過激派カルダノ、元キューバ難民のホック、インド人ハッカーのハルジーだ。

ドクター・デスと言われるジンネマンは、安楽死を請け負う医師だった。身寄りのいない裕福な老人に、遺産相続人に自分を指名させ、安楽死させて大金を手にする。

それを元手にして医療機器会社を設立し、医療資金貸付業もしていた。

笑顔もなく、非情な取り立てをする男だった。

 

ゴルゴ13は情報漏洩者をあぶり出すために、かつて地雷を埋設したところにもう一度地雷を埋設する、という情報をリークすることをコーエン親子に話す。

 

ゴルゴ13は、雑居房で、自分が脱走することを話す。

 

ゴルゴ13は、運動場から、アラン・コーエン少尉が運転するビーム付き装甲車に向かって走り出す。カルダノとハルジーゴルゴ13に続く。ホックは地雷が埋設されたことを知っているから留まった。装甲車の中に入ったゴルゴ13はM16を受け取りホックを射殺する。

 

ホックは読唇術で得た情報をラジオからの微弱電波で伝え、壁のすぐ裏にある受信装置を介して、グアンタナモ基地の情報をリークしていた。

 

そしてゴルゴ13はヘリコプターで去って行くのだった。

 

推理ドラマのように、ゴルゴ13が情報漏洩者をあぶり出し射殺した見事なストーリーだ。

 

『獣の爪を折れ』(2009/6作品)(脚本協力 石丸貴寛)

■依頼

依頼者:アルテミス社のエリック専用シューズ担当フレッド エリックのコーチであるラリー

ターゲット:エリックのライバルであるアレンが履くコンプリートギア社製シューズのピン

 

依頼者:エリックのコーチであるラリー

ターゲット:エリックのスターターブロック

依頼金額:不明

狙撃場所:北京オリンピック100m走競技会場

殺害人数・相手:0人 

 

北京オリンピックにのぞむエリックとアレン。アレンはオリンピック初出場。エリック・グレイはアテネオリンピックではフライングで失格だったからこれがそのリベンジだ。アレンはコンプリートギア社製のシューズを使っている。エリックのコーチはラリー。エリックはアルテミス社のシューズを使っている。アルテミス社のエリック専用シューズ担当のフレッドは、ラリーと昔、競い合った仲だ。

フレッドは自社のシューズを使っているエリックを何としても勝たせたい。

そのためにフレッドはコーチのラリーとともに、ゴルゴ13に、アレンのシューズのピンを撃つことを依頼する。

ゴルゴ13はM16では衝撃が大きすぎるため、アンシュッツ22口径LR銃を使って依頼を遂行しようとする。

 

ゴルゴ13の撃った銃弾は、スターターブロックに当たり、シューズのピンを撃ち抜いた!フライングだ!

依頼の中にスターターブロックを撃つことは入っていない。ゴルゴ13のミス・ショットか?

ここでゴルゴ13が「・・・・」というセリフとともに過去を思い出す。エリックのコーチであるラリーが一人でゴルゴ13に依頼する。依頼内容は、穢れた金メダルが生まれないよう、エリックを失格させることだった。

 

ゴルゴ13の銃弾がエリックのスターターブロックに当たったことによるフライングだった。

 

アレンはスパイクのピンが折れたのにもかかわらず金メダルを獲った。

 

ゴルゴ13の凄いテクニックが光る佳作だ。