『ACT-X』(2010/07作品)(脚本協力 綾羅木恭一郎)
■依頼
依頼者:記載なし(アメリカの軍関係か?)
ターゲット:元カリフォルニア大学医学部教授エンリケ・ロドリゲス博士
依頼金額:不明
狙撃場所:メキシコ カンクン
殺害人数・相手:不明(2人以上) アナ・リベラ、マリア・ナランホ、トラック1台に乗車した傭兵たち
コロンビアの麻薬組織バランキージャ・カルテルのドン ホルヘ・ペレス
グアダラハラの夜のジャングルで、陸軍兵士4名が、2人の女性に首を切られて殺された。
東洋通信メキシコ支局で、環境テロ組織エスペランサ・ベルデの総裁とのインタビューの約束をとりつけた朝比奈。だが、支局長は、居眠りばかりしている梶本を向かわせる。朝比奈にはカンクンで行われるビーチ・バレーの取材に行かせる。
朝比奈はカンクンで、コロンビアの麻薬組織バランキージャ・カルテルのドン ホルヘ・ペレスを見つけ、彼とアンヘルの話を盗み聞きした。その内容は、このビーチ・バレーの大会で、ACT-Xという薬の効果をテストする、というものだった。
朝比奈はアンヘルを脅し、ACT-Xを開発したロドリゲス博士の元に向かおうとするが、
その時誤ってアンヘルを射殺してしまう。
朝比奈はロドリゲスがいるコテージに向かうが、そこは、小さいが外からは入れない要塞のような建物だった。そこにビーチ・バレー大会に出場していた無名選手アナ・リベラとマリア・ナランホの二人がナイフを持って立っていた。
二人は朝比奈が撃った銃弾をかわし、朝比奈の首を掻き切った。
ニューヨークでゴルゴ13が35時間魔に依頼を受けている場面。ACT-Xは、コカインとアンフェタミンからロドリゲス博士が作った人間の神経伝達速度を高速化させる薬品だった。依頼者は2度、攻撃に失敗していてゴルゴ13に依頼したのだ。
ゴルゴ13は、ビーチ・バレーを見学しているホルヘ・ペレスのサングラスを狙撃し、ロドリゲス博士の元に向かわせ尾行する。
ゴルゴ13とアナ・リベラとマリア・ナランホの対決は、あっさりゴルゴ13の勝利で終わる。2人の動きを予測し、引き金を引いたのだ。
ロドリゲス博士はコテージの中から傭兵を呼び出した。傭兵達は、1台のトラックに乗ってコテージの外にやってきた。ゴルゴ13と傭兵達の銃撃戦になり、やがて銃声がやむ。ホルヘ・ペレスがコテージのドアを少し開けた隙間を通して、ロドリゲス博士の眉間にゴルゴ13の銃弾が命中した。
「ホルヘ・ペレスは殺されないのか?」と思ったら、依頼の時点で、「ターゲットは、ロドリゲス博士だけだった。
東洋通信メキシコ支局に、取材中に強盗に遭った梶本が帰ってきた。
朝比奈と連絡がとれないことを心配する支局長。そこに朝比奈の死が支局長に伝えられた。
薬品を使って優秀な兵士を養成しようとする話は、よく出てくるが、本編もそんな物語の一つだ。ゴルゴ13はそれをも上回る凄い能力を持っていることが証明された一編だ。
『日・ASEAN会議』(2011/05作品)(脚本協力 綾羅木恭一郎)
■依頼
依頼者:国土交通省大臣官房審議官 日村忠彦
ターゲット:テロの未然防止
依頼金額:不明
狙撃場所:瀬戸大橋中央部の海上
殺害人数:0人
2010年12月、高松でASEAN会議が開催される。その下見に国土交通省の福山が、高松に出張する。
霞ヶ関に戻った福山は、この会議を日本が開催することのメリットについて、日村官房審議官に質問する。表向きは日本の規格を輸出することで入札時に日本が有利になることだが、台頭する中国を包囲することが真の目的だった。
2011年4月、日村官房審議官に中国政府筋の華独秀から、秘密裡にASEAN会議でテロが起こる可能性がある、と連絡が入る。日村は、保険として、世界の主要新聞に広告を出す。
2011年5月、高松中央警察署に、愛知県警国際捜査課の小畑繁雄、大阪府警の川口恵子ら、西日本一帯の国際犯罪や爆弾テロの精鋭多数が集まる。小畑は、SPコミック第151巻『爆弾魔(ボマー)』で、川口は、SPコミック第159巻『エアポート・アイランド』にも登場している。
日村は、保険として、ゴルゴ13に依頼する。ゴルゴ13のルールでは、通常あり得ないが、標的を明確にしないで依頼した。
高松で一番高いシンボルツリービルの最上階に王玲物産という会社が入っていたが、そこを訪ねた小畑と川口に対して、中国人が、射撃してきた。「米原大臣暗殺は失敗したが、3時間後に爆弾が爆発する」と言って、自殺した。
小畑は、自決した中国人が「3時間後」と言ったことが仲間を逃がすための時間稼ぎで、高松空港、ラクイラ、瀬戸大橋の3カ所に爆弾が仕掛けられていると推理した。
小畑はラクイラの柱に隠されていた爆弾を発見する。
岡山県警の笹木と川口は空港に向かう。テロリストが持っていた携帯から電話をかけると、目の前にいたCAが答えた。2人はCAとその仲間を捕らえたが、笹木がテロリストが死んだことを話してしまった。捕らえられたCAは爆弾の隠し場所を言わない。
川口は女子トイレの天井に隠された爆弾を発見し自分自身で処理した。
小畑は、日村に、爆弾が高松空港、ラクイラ、瀬戸大橋に仕掛けられたことを見破った理由を話した。テロリストの目的は米原大臣暗殺だった。大臣が通るのは、空港か瀬戸大橋のどちらかで、ラクイラの近くのシンボルツリービルに拠点を持つと、この三拠点を見渡すことができる。
3個目の爆弾は瀬戸大橋の橋桁で見つかった。しかしそこを狙撃するのは至難の技だ。ゴルゴ13は、1000t列車を時速30kmで走らせろ、と指示する。
1000t列車を走らせることで、橋の中央部が5m沈み込み、爆弾のコードを狙撃できるようにするためだ。
爆発まであと13秒で、ゴルゴ13の銃弾がコードを切断した!
ゴルゴ13が、明確なターゲットがいない、テロの未然防止という曖昧な依頼を、受けた珍しいケースだ。絶体絶命の状況下で、アクロバティックな狙撃を成功させたゴルゴ13のすご技を堪能できる作品だ。
『ジンネマンの1時間』(2010/06作品)(脚本協力 ながいみちのり)
■依頼
依頼者:不明(ジンネマンに祖母を殺され全財産を請求された馬主の男)
ターゲット:通称”ドクター・デス"ジンネマン
依頼金額:不明
狙撃場所:アメリカ バージニア州 ドーソンタウンから1時間ほど西の路上
殺害人数・相手:1人 ”ドクター・デス"ジンネマン
ドクター・デスと言われるジンネマンは、安楽死を請け負う医師だった。身寄りのいない裕福な老人に、遺産相続人に自分を指名させ、安楽死させて大金を手にする。
それを元手にして医療機器会社を設立し、医療資金貸付業もしていた。
笑顔もなく、非情な取り立てをする男だった。
そんな彼の車がパンクして路上に停止する。目の前をフォルクスワーゲンが走ってきて電柱に激突して炎を上げる。
ジンネマンは救急車を要請し、フォルクスワーゲンの運転席にいる女性を救出する。
彼女が糖尿病患者で臨月を迎えた妊婦であることに気づいたジンネマンは、彼女を助け、出産を補助した。
もう何十年も笑いを忘れていたジンネマンが、笑った。そして「ここからまた新しいジンネマンの人生が始まるんだ。」と思った時、ゴルゴ13の銃声が響き渡った。
悪徳医師が生まれ変わり新たな人生を歩もうとした瞬間に殺された、切ない物語だ。