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読書メモや映画やテレビ番組視聴メモです

さいとう・たかを『ゴルゴ13 3 狙撃のGT』(リイド社)(1973/10/25)

 

 

第12話『狙撃のGT』(1969/08作品)

ページ数:85ページ

依頼者:中国統一戦線工作部(情報部)最高責任者 生 

ターゲット:中国ヨーロッパの情報責任者 王徳明

依頼金額:3000万円

狙撃場所:目標の列車トランサルビン号がスイスーオーストリア国境のある地点に差し掛かったときに線路と並行する路上を走る車

殺害人数:2人

殺害相手:中国ヨーロッパの情報責任者 王徳明とボディガー

H:1人(狙撃時の運転手である統一戦線・工作部 麗花)

 

仕事の依頼を受けたゴルゴ13だが、会見場所はCIAに知られていた。

ゴルゴ13への連絡員の運転手と自称したゴルゴ13は、中国情報部の男を助け、中国情報部の隠れ家に送り届ける。

助けた男が統一戦線・工作部の麗花に報告し、麗花が本国に連絡し休もうとした時、ゴルゴ13が部屋に侵入していた。

麗花は、本国の指令を仰がなければいけない、と話し、女2人をつけて接待する。

 

ゴルゴ13は接待の女2人には目もくれない。

 

朝になり、麗花が仕事の依頼をする。麗花の後ろにいた俆生が最高責任者で、真の依頼者だった。

 

ターゲットは、中国ヨーロッパの情報責任者 王徳明で、依頼金額は3000万円だ。

 

狙撃は、ウィーンからバーゼルまで平均時速110kmで走るオーストリア連邦鉄道のトランサルビン号を、線路と並行する自動車からだ。一瞬のズレも許されない。

狙撃のために中国統一戦線 工作部の面々は、訓練をする。

運転手の麗花もだ。そして、狙撃前夜、麗花とゴルゴ13は、イキを合わせるために寝る。

 

そして、列車は、狙撃ポイントに迫る。

麗花が運転する車の速度が上がる。

そして、狙撃ポイントで、ゴルゴ13が引き金を引く。

口にくわえたもう一発の弾丸を素早く装填して二発目を撃つ!

 

一瞬の狙撃ポイントでのチャンスに向けて訓練しているシーン、列車と並行して速度を上げる麗花の車、口にくわえた銃弾を装填し一瞬のうちに二発目を撃つゴルゴ13

映画のワンシーンのような迫力あるコマ割りが魅力的な作品だ。

 


第11話『駅馬車の通った町』(1969/07作品)

43ページ

依頼者:1)不明 2)なし

ターゲット:西ドイツ通商産業視察団団長ウゼッペ・ニール

依頼金額:不明

狙撃場所:

 1)ラスベガスのホテル・フラミンゴ

 2)ネバダ州トノバーから南東70kmの町バレンネス

殺害人数:13人(西ドイツ通商産業視察団団長ウゼッペ・ニール バレンネスの町で暴れ回っていたダディとリッキーとその仲間達12人)

H:赤毛の娼婦モーリィ

 

かつては日に4便、馬車が通った町バレンネスだが、今はすっかり寂れてしまった。

その駅にゴルゴ13が現れた。

この町は、保安官に恨みを持つダディとリッキーとその仲間達合計12人によって、荒らされていた。保安官も無力だった。

 

12人は翌日PM6時30分保安官に13発の銃弾を撃ち込み公開処刑する。

13発目のとどめをダディが撃ち込むと、13という数字からゴルゴ13を思い出した。

 

ゴルゴ13は「そろそろ汽車もくる・・・いかせてもらうぜ・・・。」と言う。ダディはゴルゴ13であることに気づき、息子のリッキーに「いかせろ!」と言うが、リッキーは「な、なにをビクビクしているんだよ、おやじ!!」と言い、ゴルゴ13に銃を向ける。ゴルゴ13は樽の背後に身を潜め、M16を組み立て、一瞬のうちにリッキーを含め7名を射殺する。そしてダディも射殺した。ゴルゴ13の横顔の向こうで、「ポォー ポォー」と汽笛の音が聞こえてきた。

 

画面上は8名しか射殺していないが、ダディとリッキーの仲間達は、p.123には12人描かれている。

おそらくこの12人が保安官に一発ずつ撃ち込み、最後にダディがとどめの一発を撃ち込んだのだろう。

ゴルゴ13がこの12人を取り逃がすことはないだろうから、今回の殺害人数は12人とした。

また、町の酒場で呑んでいるときのラジオ放送で、西ドイツ通商産業視察団団長ウゼッペ・ニールが狙撃されたニュースが流れたが、その時のゴルゴ13の表情から、これが彼の仕事で、この町に来た理由だろう。

銃撃戦下でのゴルゴ13の凄腕が光る作品だ。

 

第13話『メランコリー・夏(サマー)』(1969/08作品)

43ページ

依頼者:MI6(英国秘密情報部)DG(部長)ヒューム

ターゲット:元外務相上級公務員アーノルド・グラストン

依頼金額:20000ポンドのスイス銀行小切手

狙撃場所:マルタ島

殺害人数・相手:1人 元外務相上級公務員アーノルド・グラストン

 

マルタ島ゴルゴ13が現れた。

ステラ・グラストンという女に強引に言い寄る男。

ゴルゴ13はステラを見張っていた。

 

とある葬儀の場で、MI6(英国秘密情報部)DG(部長)のヒュームが、20000ポンドのスイス銀行の小切手を渡してゴルゴ13に依頼した。

標的が元外務相上級公務員アーノルド・グラストン。

彼がKGBにシークレット・ファイルを流していたこと。

新婚旅行と見せかけマルタ島で消息を絶ったこと。

女はそのままマルタ島に残っていること。

KGBから国外追放処分を受けたこと。

などを、ヒュームが話した。

 

女は利用されただけだからグラストンがマルタ島に現れない、とMI6は読んでいたが、ゴルゴ13はステラを見張り続ける。

 

ステラの元に花束が贈られてきた。花束と共に渡されたメモを見て涙を流すステラ。ゴルゴ13はそれがグラストンからのものと考え、ステラを尾行する。

 

そして操船するグラストンを発見し狙撃する。グラストンの最期の言葉をゴルゴ13読唇術で読み取る。その言葉は「ス・・・テ・・・・ラ・・・・」だった。グラストンは本当にステラを愛していたのだった。

 

ゴルゴ13はMI6に連絡し、騒ぎが起こる前にグラストンの死体を始末するように依頼し、グラストンを待つステラの前を歩いて去って行くのだった。

 

夫のグラストンをひたすら待ち続けるステラは悲しく切ない。

グラストンの死体をすぐに始末するように伝えたのはステラに対するゴルゴ13なりの思いやりだったのかもしれない。

 

第14話『猟官バニングス』(1969/09作品)

42ページ

依頼者:ビリー・コーナンの妻(実際はICPO捜査官キョウコ)

ターゲット:M&M工業株式会社会頭ビリー・コーナン(実際は本物のビリー・コーナンに似た犯罪者ジム・ヘンダーソン)

依頼金額:不明

狙撃場所:アメリカ サンフランシスコ

殺害人数・相手:1人(元ICPO捜査官バニングス)

 

ICPO(国際刑事警察機構)のバニングスがゴルゴ13について3年にわたり調べ上げていた。

キョウコ、オーギュスト、クーガーの3人がゴルゴ13を殺すための囮捜査に投入される。

バニングスは囮捜査に対して反対意見だった。

 

M&M工業株式会社会頭の妻(実際はICPO捜査官キョウコ)はコーナンを殺して財産を奪おうとしていた。

ゴルゴ13コーナンが偽物であることを見抜き、コーナンの代役だったジム・ヘンダーソンに証言させたテープを公開しようとしていた。

 

そこにバニングスがやってきて勝負を挑む。

 

バニングスはゴルゴ13を撃たずにジム・ヘンダーソンを撃った。

ゴルゴ13の弾を受けたバニングスはもう目が見えなくなっており、ゴルゴ13に狙いをつけることができなかった。

バニングスの最期を見たゴルゴ13は、ヘンダーソンの証言テープを燃やして去って行った。

 

ゴルゴ13バニングスの行動に何かを感じ、ヘンダーソンの証言テープを燃やすことにしたのだろう。

この後、囮捜査をした3人と指揮官がどうなったか気になる。

 

 

 

第19話『ベイルートVIA』(1969/11作品)

43ページ

依頼者:CIAフーバー KGBキニスキー MI6DGヒューム フランス情報部オマイリイ マザー・ヨシュア

ターゲット:パレスチナゲリラのスパイダー6と呼ばれる6人 アルドウ(大地)、シャムス(太陽)、シッキーナ(ナイフ)、ガミールリーハ(美しい風)、ハマーム(鳩)、ガマル(らくだ)

依頼金額:500,000ドル

狙撃場所:レバノン ベイルートから北12kmドッグ・リバー

殺害人数・相手:6人(パレスチナゲリラのスパイダー6 アルドウ(大地)、シャムス(太陽)、シッキーナ(ナイフ)、ガミールリーハ(美しい風)、ハマーム(鳩)、ガマル(らくだ))

 

とある教会にCIAフーバー KGBキニスキー MI6DGヒューム フランス情報部オマイリイが集まった。6人を殺す相談をしているが、どの国も万一のことを考えると、及び腰だ。そこでマザー・ヨシュアが提案する。一人100,000ドルずつ出し合い、ゴルゴ13に依頼するのだ。

 

レバノン停戦成立した。レバノンベイルートで、共同記者会見が開かれる。そこにゴルゴ13は記者として参加していた。

共同記者会見の場にパレスチナゲリラのスパイダー6と呼ばれる6人が登場した。アルドウ(大地)、シャムス(太陽)、シッキーナ(ナイフ)、ガミールリーハ(美しい風)、ハマーム(鳩)、ガマル(らくだ)の6人だ。

ゴルゴ13が記者会見の場で、「あなた方6人を停戦協定成立後最高の訓練を受けた殺人組織が狙っている。」そこでゴルゴ13の左肩が何者かに狙撃された。6人は、ベイルートの北12kmのドッグ・リバーの基地にゴルゴ13を運ぼうとしている。

 

ゴルゴ13はそこでナイフを使ってガマルを殺しトラックから突き落とす。

 

ゴルゴ13はスパイダー6の基地に運び込まれ、意識を回復する。

そしてCIAからグリーンベレーKGBからイリーガルズ、英仏から共同派遣員が送られると話す。

 

スパイダー6は迎え撃つと士気を上げる。

 

ガミールリーハはゴルゴ13がカミソリに仕込んだ毒で死ぬ。

それを知ったシャムス(太陽)、シッキーナ(ナイフ)、ハマーム(鳩)の3人はゴルゴ13が放った手榴弾で死ぬ。

 

ガマルの死体を路上で見つけたアルドウは、ガマルの死体をトラックに乗せ、基地へ急ぐ。そこへゴルゴ13が現れ、アルドウはゴルゴ13の銃弾を10発受け、死ぬ。彼の最期の言葉は「おれたちを殺して・・・一番とくをする・・・のは・・・虫(インセクト)・・・や、やつに・・・お・・・ま・・・え・・・・」だった。

 

ゴルゴ13が自分自身を撃たせたのは驚いた。間違って頭に当たったらどうするつもりだったのだろう?

ゴルゴ13が、毒殺するのは他に例がないのではないだろうか

ゴルゴ13は、自分が虫(インセクト)に利用されたことを知った。虫(インセクト)とは誰か?

 

第20話『最後の間諜ー虫(インセクト)ー』(1969/12作品)

43ページ

依頼者:なし

ターゲット:虫(インセクト)

依頼金額:なし

経費:6,000,000ドル以上

狙撃場所:スイス ユングフラウ山麓マットブルンネン村

殺害人数・相手:1人(虫(インセクト)(マザー・ヨシュア))

 

第19話『ベイルートVIA』の続編だ。

ゴルゴ13スイス銀行に自身の口座番号56513の金庫を確認しに行った。そこで赤外線照射位置が変わっていることに気づく。しかも赤外線ではなく殺害できる光線であることに気づいたゴルゴ13スイス銀行頭取に事情をきく。虫(インセクト)からの情報によりヒトラーからもスイスの銀行業を守り切ったため、第19話『ベイルートVIA』でゴルゴ13レバノンに発つ前日に、ゴルゴ13を消せ、という虫(インセクト)からの命令に逆らえなかった、と頭取は白状した。

 

第10話『ゴルゴin砂嵐(サンドストーム)』第19話『ベイルートVIA』でもゴルゴ13は虫(インセクト)と接点があった。

第10話ではソ連の高級技術将校2人の居場所を虫(インセクト)が教えた。

第19話では、パレスチナゲリラのスパイダー6のリーダーであるアルドウの最期の言葉が、「おれたちを殺して一番とくをするのは虫(インセクト)だ。やつにおまえは(利用された)」だった。

 

ゴルゴ13は自分を殺そうとした虫(インセクト)に、自身のルールを適用しようとする。

 

ゴルゴ13スイス銀行に預けてある全額を引き出し、旅行用チェックに変えた。

そして、メッサーシュミット109戦闘機2機、DC4旅客機1機、搭乗員たちとエキストラ30名と第二次世界大戦時のコスチュームや小道具一式を6,000,000ドルで揃えて、スイス ユングフラウ山麓マットブルンネン村に向かった。

ディレクターのD・ランバートと名乗ったゴルゴ13は、撮影と称して、村を1時間借り切った。撮影が終わったらスイス銀行頭取が教会の鐘を鳴らすことになっていた。

 

マザー・ヨシュアの元に、「スイスの永世中立がドイツ軍によって破られた。」と言って、パットン麾下の第10期講師弾第3小隊コンウェイ中尉が、現れた。マザー・ヨシュアは村人に確認しようとするが、村人達は誰もいない。マザー・ヨシュアジープに乗ってコンウェイ中尉達とともに飛行場に行く。そこにはDC4があった。

マザー・ヨシュアはDC4に乗り込む。マザー・ヨシュアは自分だけ年とっているが25年前の1944年に戻っていることがあり得なくて罠だと確信している。マザー・ヨシュアイスラエル諜報組織のかげの実力者であることを知っているのは世界中で4人だけだ。その4人とはCIAのフーバー、MI6のヒューム、KGBのキニスキー、フランス情報部オマイリイだ。

DC4に対して、メッサーシュミット109戦闘機2機が機銃を撃ちながら接近してきた。

撃墜されて殺されると思ったマザー・ヨシュアは操縦室に駆け込み、無線で「こちら虫(インセクト)!スイス上空における全空軍の攻撃を中止せよ!中止せよ!」と叫ぶ。

それを横目で見た操縦室にいたゴルゴ13は虫(インセクト)がマザー・ヨシュアであることを確信した。

 

頭取が教会の鐘を鳴らした。それは虫(インセクト)の弔鐘だったのかもしれない。

 

ゴルゴ13を殺そうとした虫(インセクト)の正体を確信するために、村を借り切り、エキストラやメッサーシュミット109戦闘機2機とDC4輸送機を借り切ったゴルゴ13の金の使い方が凄い。

マザー・ヨシュアが1969年はユダヤ諜報機関の人間でありながら、第二次世界大戦中はナチス諜報機関の人間だったことは、驚きだ。

虫(インセクト)を追い詰める迫真のシーンが印象に残る作品だ。