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さいとう・たかを『ゴルゴ13 209 カルミアの髪飾りの女』(リイド社)(2023/07/19)

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第566話『カルミアの髪飾りの女』(2016/11作品)(脚本協力 氷室勲)

ページ数:139

依頼者1:東南アジア某国市民民主連盟代表ワウンスンサーシー

ターゲット1:ワウンスンサーシーのカルミアの髪飾り ワウンスンサーシーの息子アンドリューを自称する男(実際はミョウチ)

依頼金額:不明

狙撃場所:東南アジア某国

殺害人数・相手:1人(ワウンスンサーシーの息子アンドリューを自称する男(実際はミョウチ))

 

依頼者2:東南アジア某国市民民主連盟代表ワウンスンサーシー

ターゲット2:軍人議員だったが造反したユンダオン

依頼金額:不明

狙撃場所:東南アジア某国

殺害人数・相手:1人(ユンダオン)

 

その国の病院に入院している市民民主連盟支部長のミョウチは病気で余命半年と宣告されていた。

ミョウチやその病院の院長であるタンミューインや市民民主連盟幹部のフィンキョーは、この国の建国の父と言われるワウンスン将軍の娘であり市民民主連盟リーダーのワウンスンサーシーを指示している。

この国の憲法59条fの規定では、本人、両親、配偶者、子どもとその配偶者に外国人がいる者は大統領や副大統領になれない。ワウンスンサーシーの死んだ夫はイギリス人で息子アンドリューもイギリス国籍のため、彼女が大統領になることはできない。

だが、彼女は大統領を超える存在になる、と明言していた。

 

選挙で市民民主連盟は大勝した。しかしこの国の憲法改正には3/4以上の賛成が必要だ。この国では1/4の議席は軍人議員が占めており、当然憲法改正に反対するだろうから、ワウンスンサーシー率いる市民民主連盟だけでは憲法を改正できない。

 

大統領はフィンキョーがなり、彼はワウンスンサーシーを大統領府大臣兼外務大臣に任命した。

さらに首相相当の国家顧問という役職を新設しワウンスンサーシーを任命した。

 

准将で軍人議員のユンダオンはワウンスンサーシーと取引をする。

ユンダオンは、憲法第59条f項改正案を出せば軍に造反する、と言う。代わりに、身の安全を確保することと、アンドリューの殺害を要求する。アンドリューが生きている限り、軍が狙うからだ。

 

そして、憲法改正案が出され、ユンダオンはワウンスンサーシーとの約束通り造反した。

ワウンスンサーシーは大統領となれる!

 

ワウンスンサーシーとユンダオンはゴルゴ13と会い、自称アンドリューと名乗る男と自身のカルミアの髪飾りの狙撃を依頼する。その言い方を聞いたユンダオンは息子を息子と思わないようにするため、そんな言い方をしたのだ、と思った。

だが、実際はワウンスンサーシーは、死期が近いミョウチにハリウッドの特殊メイクで製作したマスクをかぶせアンドリューの身代わりにしていた。本物のアンドリューはミョウチの代わりに香港に飛び整形手術を受けていた。

 

軍はこのトリックに気づき、ユンダオンにその話をした。嵌められたと知ったユンダオンはワウンスンサーシーを問い詰めるが彼女はとぼける。ワウンスンサーシーはゴルゴ13に二度目の依頼、ミョウチ(本当はアンドリュー)の命を助けユンダオンの射殺をした。

 

ユンダオンは部下に、ミョウチを殺すことを命令する。

ミョウチの家に忍び込んだ部下だったが、ゴルゴ13に撃たれ、ユンダオンの元まで道案内させられ、ユンダオンは殺された。

 

そしてワウンスンサーシーは見事、大統領になったのだ。

 

タイトルのカルミアの和名はアメリシャクナゲで、花言葉は「大望・野心・裏切り」だ。

ワウンスンサーシーの大望と野心そして裏切りを見事にゴルゴ13が実現した。

東南アジア某国ではあるが、ミャンマーがモデルであることは一目瞭然だ。せっかく仕組んだミョウチとアンドリューを入れ替えるトリックがあっさりと軍に見破られてしまったが今後軍にアンドリューが狙われ続けるのではないか心配だ。この国が早く安定して経済成長することを祈る。

 


第563話『ラブバード』(2016/07作品)(脚本協力 ながいみちのり)

ページ数:35ページ

依頼者:不明

ターゲット:不動産王

依頼金額:不明

狙撃場所:マイアミ バージニア州

殺害人数:4人(不動産王、国際海洋インテリジェンスセンターに勤める夫、NGA(国家地理空間情報局)に勤める妻、国際媒体発掘センターのゴルゴ13専門エージェントの男

 

バージニア州のペットショップでつがいの鳥を見つけた夫婦がその鳥を飼うことにする。

そこで偶然居合わせた男が、鳥の名をラブバードと教えてくれた。

 

国際海洋インテリジェンスセンターに勤める夫とNGA(国家地理空間情報局)に勤める妻。

夫は、ジェントルマン・カンパニー所属の小型貨物船が動くとその行く先で狙撃事件が起こり迷宮入りになる、と上司に報告するが相手にされない。あの船が週末マイアミのエバーグレーズ港に入るのがわかったが報告しても無駄だと思う。

妻は日本の”ガンマン"のアジトが世界中にあり、ハママツ(SPコミック第202巻 第530話『獣の穴』参照)にもあることを突き止めた。”ガンマン”だから仮にGと呼ぶテロリストに関する情報の断片を国際媒体発掘センターが送ってきていたがそれ以上の証拠がない。Gのアジトが複数マイアミにあることはわかった。

夫と妻は、週末に、飼っていた鳥はペットショップでラブバードという種類であることを教えてくれた男に預けて、マイアミ、フォートローダーデールに、旅に出た。

 

二人は真の目的であるGを追い詰めることを話し、行動を開始する。

 

二人は期せずしてゴルゴ13を追っていたのだった。

 

数日後、新聞に不動産王が狙撃されたと記事になった。その新聞の片隅に、バージニア州からバカンス中の夫婦が交通事故死した、と新聞に載った。実際にはゴルゴ13が車を狙撃したのだろう。

 

そしてバージニア州のペットショップにゴルゴ13が現れた。

ラブバードを預かっていた男は国際媒体発掘センターのゴルゴ13専門エージェントだった。

彼のもとにゴルゴ13が現れた。

夫婦が政府系の情報機関エージェントで、彼らがゴルゴ13を追ったため殺され、彼らが男にラブバードを預けたので、ゴルゴ13から見ると、男も夫婦とつながりがあるとみなされたのだ。そしてゴルゴ13が拳銃で男を射殺した!!

 

アメリカの諜報機関が膨大で1200以上もあり、互いに統制されずに独自に活動しているとナレーションが入る。

 

アメリカの膨大な諜報機関と相互連携できていない官僚組織の問題点を、見事に表現した短編だ。

各地にアジトがあるのはわかっていたが、ゴルゴ13が貨物船を使って移動または武器の輸送をすることもあるのが今回判明した。

 

 

第571話『フトゥール・デ・ボリビア』(2017/06作品)(脚本協力 加久時丸)

ページ数:69ページ

依頼者1:ボリビアの現大統領ホセ・ムニョス

ターゲット1:ボリビアの副大統領マルコ・オロペーサとフトゥール・デ・ボリビアのリーダーハビエル・サンヒネス

依頼者2:ボリビアの副大統領マルコ・オロペーサ

ターゲット2:ボリビアの現大統領ホセ・ムニョスとフトゥール・デ・ボリビアのリーダーハビエル・サンヒネス

依頼金額:不明

狙撃場所:ボリビア ラパス ムリリョ広場 国会議事堂前

殺害人数・相手:2人(ボリビアの副大統領マルコ・オロペーサとフトゥール・デ・ボリビアのリーダーハビエル・サンヒネス)

 

日本からボリビア・ラパスに向かう日本人の男。

飛行機でその男の隣に座ったゴルゴ13

ラパスに着くと、児童労働組合フトゥール・デ・ボリビアのリーダー、ハビエル・サンヒネス率いるデモが、行われていた。ここまで隣の席にいた日本人の男にゴルゴ13が珍しく説明している。

この男は後でも登場するだろうか?

 

TIPNIS反対運動をする現地の少数民族のデモとフトゥール・デ・ボリビアのデモ隊が衝突した。ハビエル・サンヒネスがそれをうまく収めた。ハビエル・サンヒネスはTIPNISの高速道路建設ボリビアの経済を活性化するとして賛成しているのだ。ハビエル・サンヒネスの親はコカ畑の農民だったが、コカイン撲滅運動のせいで自殺していた。

 

TIPNISの高速道路建設の件で、ボリビアの副大統領マルコ・オロペーサは、ボリビアの現大統領ホセ・ムニョスの暗殺をゴルゴ13に依頼したが、依頼内容の変更のためゴルゴ13と再度会う。

マルコ・オロペーサは、3人の公開討論会で、ホセ・ムニョスとハビエル・サンヒネスの暗殺を依頼する。ただしハビエル・サンヒネスが殉教者にならないようにと条件をつける。

ゴルゴ13は3人の配置を指示する。「明後日には、いったい何が起きるのでしょうか?」ときくマルコ・オロペーサ。ゴルゴ13は「その質問に答える義務は、俺にはない・・・お前はただ俺に、言われた事だけをやればいい・・・」と答える。

 

そして、ボリビア ラパス ムリリョ広場 国会議事堂前で3人の公開等論会が行われた。

宣教師の服装のゴルゴ13が一発目の銃弾でマルコ・オロペーサとハビエル・サンヒネスを貫いた。そして二発目の銃弾がホセ・ムニョスの右肩を撃ち抜いた。

 

ホセ・ムニョスは、自分とマルコ・オロペーサを狙った銃弾の流れ弾がハビエル・サンヒネスを撃ったとして、ハビエル・サンヒネスの思いを継いでTIPNISの高速道路建設を国民に約束する。

 

実は2ヶ月前にホセ・ムニョスがゴルゴ13にマルコ・オロペーサとハビエル・サンヒネスの狙撃を依頼していたのだった。マルコ・オロペーサがゴルゴ13に依頼するときがその依頼発動の時だった。

 

ゴルゴ13が敵対する二陣営の依頼があった場合、断るのがルールだったのに、今回、受けていたので意外に思ったが、実はそれも折り込み済みだったのだ。コカインとボリビアの関係、多民族国家の複雑さ、児童労働の問題など、一筋縄でいかないボリビアの政治経済の矛盾について、わかりやすくまとめた作品だ。

 

 

 

 

 

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