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さいとう・たかを『ゴルゴ13 185 天空の毒牙』(リイド社)(2017/07/19)

 




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『天空の毒牙』(2010/10作品)(脚本協力 横溝邦彦)

■依頼

依頼者:ビルト銀行頭取シュミットとジュラ銀行頭取ビヤール

ターゲット:ディック・マクラーレンの妾の子 ガート・マクラーレン

依頼金額:不明

狙撃場所:スイス シュルトホルン展望台近く

殺害人数・相手:1人(ガート・マクラーレン) ほかに小さな黒い物体1機

 

スイス チューリッヒで銀行家のブルクハルトやマイヤーが空飛ぶ小さな黒い物体によって毒殺された。

その捜査に、第462話『ドナウ・ライン』(SPコミックス第168巻)で、ゴルゴ13を追ったことがあるジャヌー警部が乗り出してきた。

小さな黒い物体は毒蛇の牙を備えており、そこに青酸性の毒を詰めていたのだ。

 

チューリッヒ ビルト銀行ではビルト銀行シュミットとジュラ銀行ビヤールの二人の銀行家が自分達が次の目標になることを恐れて相談していた。2人はゴルゴ13に依頼することにした。

シュミットは小さな黒い物体に襲われ死亡した。

 

殺された4人の銀行家は、かつて、ディック・マクラーレンの相続について、妾の子であるガート・マクラーレンの要求を断っていた。ガート・マクラーレンが本当にディック・マクラーレンの子どもかどうか証明するものがなかったからだ。

 

ガート・マクラーレンは、元NASAの技術者で、そのスキルを活かして、ドローンのようなものを開発し、それを使って3人の銀行家を襲ったのだ。

 

ビヤールはジュウ渓谷の別荘に隠れ、ガートを迎え撃つ。ジャヌー警部は、軍隊を動員し、ビヤールを別な場所に移動させた。ジャヌー警部は、シュルトホルン展望台で、ガート・マクラーレンゴルゴ13を一網打尽するつもりだ。

 

ゴルゴ13ヤマキ社の船穂に80kgの重さを吊り下げられるよう、ドローンの改造を依頼する。

 

ガート・マクラーレンは小型飛行機のラジコンで展望台に迫る。ゴルゴ13は、船穂が操縦する改造されたドローンに吊り下げられて展望台に向かう。

 

マクラーレンの小型飛行機が展望台を襲い、黒い小さな物体を放出した。ゴルゴ13は、上昇を指示し、吊るしたワイヤーを外し下降に入る一瞬の静止した瞬間に黒い小さな物体を撃墜した。そのままスキーで着地し、ガート・マクラーレンを狙撃した。

 

その後はスイス軍や警察の追跡をスキーで振り切った。

 

ジャヌー警部が帰宅すると、家はもぬけの殻だった。かつて妻のブレンダはゴルゴ13を追ったら離婚する、と言っていたのだった・・・。

 

失ったものの大きさを痛感しガックリするジャヌー警部。

 

最新兵器のドローンさえ翻弄するゴルゴ13の狙撃テクニックが光る一作だ。

ジャヌー警部との知恵比べも見所がある。

 


『史上初の狙撃者 ザ・ファースト・スナイパー』(2010/03作品)(脚本協力 井沢元彦)

依頼者:杉谷俊一

ターゲット:元建設大臣 敷島開発会長 島崎大吾

依頼金額:不明(奥滋賀の土地を売った金)

狙撃場所:滋賀県の山中

殺害人数:1人

 

元亀元年(1570)、近江・伊勢国境の千草峠で、杉谷善住坊織田信長を狙撃したが、外れてしまった。CIA・国外情報監視担当の男と国防総省・諜報専任官のウィルソンが酒を飲みながら話している。

 

現代 滋賀県大津で、杉谷俊一が父の仇である元建設大臣 敷島開発会長 島崎大吾の狙撃を依頼する。

条件は、①杉谷が持ってきた火縄銃を使うこと、②二挺に弾を込めておき、一発目は外し二発目で仕留めること、だった。

古武道砲術指南の瀬間一心斎から、その火縄銃を譲り受けたのだった。

奥琵琶湖をリゾート開発しようとしていた島崎によって、杉谷の父は殺されたのだった。

そのことを杉谷に伝えた社長秘書の行橋裕美子は、一ヶ月前にレイプ殺人事件の被害者となっていた。

 

杉谷の祖先は杉谷善住坊であり、杉谷は信長への狙撃を再現し失敗の理由を知りたい、というものだった。

 

ゴルゴ13はイタリア ウンブリア州アッシジで、アフリカで入手した極上の羊の皮を使って、グローブを爺さんに作ってもらった。

 

三重県和歌山県の県境の廃校で、火縄銃の練習をする。六条有香に、西洋の銃のように反動を壁にして受け止めるのではなく、流れる水のように反動を”流す”ようにアドバイスを受ける。

そして二人は結ばれ、朝になるとゴルゴ13は去っていた。

 

滋賀県の山中で、ゴルゴ13は仕事を完遂した。

 

依頼者には二度と会わないというゴルゴ13のルールを破り、杉谷はゴルゴ13に会った。

杉谷善住坊がなぜ外したか、理由をきくためだった。

「"撃ち方待ての弾は伸びる”という言葉を知っているか・・・?」とゴルゴ13はそれだけ言って去って行った。

 

瀬間にその意味を杉谷はきく。

砲身が温まると飛びすぎて外してしまう。だからゴルゴ13は水で濡らしたサラシを火縄銃の銃身に巻き、銃身が温まるのを防いでいたのだった。

 

爺さんが孫に日本製のゲーム機を買ってあげて喜ばれ、旅客機に乗ったゴルゴ13は去って行く。

 

歴史作家の井沢元彦氏が脚本協力している異色作だ。

ゴルゴ13井沢元彦氏がどうつながるのかと思ったが、見事なつながりだった。

杉谷善住坊織田信長狙撃に失敗した理由が明確になった。

 

ゴルゴ13の少し変わったスーパー・ショットが描かれた名作だ。

 

 

『カリブの人喰い菌』(2009/12作品)(脚本協力 真崎駿)

依頼者:マーサの夫

ターゲット:ライマン・ブラザースの重役ベネット・ベイル

依頼金額:妻マーサの保険金 金額不明

狙撃場所:カリブ海

殺害人数・相手:0人(ゴルゴ13到着前に既に死んでいたため)

 

カリブ海で誰も乗っていないヨット ミダス号が発見された。沿岸警備隊の船がミダス号に向かう。そこにはCDC(アメリカ疾病予防管理センター)医師のエリザベス・マクレーンが乗っていた。

ミダス号は3日前「急病人発生のため最寄りの港へ向かう」という連絡を最後に消息を絶っていた。この船には、世界恐慌のきっかけを作ったライマン・ブラザースの重役達が乗っていたはずだ。

 

ミダス号の船橋では無線機が銃で破壊され床には血痕があった。

エンジンは問題無いが、ラフト(救命いかだ)は無くなっていた。SART(携帯型捜索救助用レーダトランスポンダ)は残っていた。

まるで1872年にあったメアリー・セレスト号のようだ。

 

航海日誌には、トーマス航海士が下痢から回復したこと、オーナーのベネット・ベイルとグレッグ・ブルーム、マイク・ガラハーは、ロバート医師が治療中だったことが書かれていた。

医師のカルテから、3日前の午前、3人が死んだことがわかった。

マクレーンは、カルテから、ミダス号で発生した病気が、人喰い菌と呼ばれる「ビブリオ・バルニフィカス菌」であることを見抜いた。死んだ3人は肝臓や腎臓に疾患があり重症化する可能性があった。

 

人喰い菌の治療薬で船にあるドキシサイクリンがリストにあるのに、1人分だけ無くなっていることに気づいた。

 

また、その者がベネットのカルテを読み、ベッドサイドにあるベネットのモニターも確認していた。

 

ミダス号遭難のニュースがテレビで流れ、それを見ている男がいた。彼は「老後の蓄えを投資し、すべてを失った・・・その心労から妻を・・・マーサまで失った・・・」と言う。

「俺が着く前に標的(ターゲット)は死んでいた・・・金は返す・・・」とゴルゴ13が言う。

男は「いらんよ!」と言い、ゴルゴ13にとっての金の意味をきく。

「俺にとって金はものさしの一つに過ぎない・・・」とゴルゴ13が答える。

ゴルゴ13が去ると、妻マーサの遺影の前で、男は頭を拳銃で撃った。

 

メアリー・セレスト号の遭難を思わせる謎解きが面白い。

数分のうちにDNA鑑定を済ませているがそんなに短時間でできるのかは疑問だ。

エリザベス・マクレーン医師は、ゴルゴ13の船内での行動をすべて推理してしまった。また登場してほしい人物だ。