タイトル通り、日本語の作文技術を、具体的、かつ論理的に解説した本だ。
著者本多勝一氏については、賛否両論あるだろうが、例文が豊富で、日本語で文章を書く上では、本書は必読の書だと思う。
以下、本書の概要をまとめながら、感想を青文字で書いておく。なお、原文は縦書きのため、漢数字を使っている所を、このブログでは横書きのため、数字に直している部分があることを、お断りしておく。
凡例に記載があるルール
1)数字の記載は、四進法とする。
例:×503,987,146円 ○5,0398,7146円 ○5億0398万7146円
これは、日本語が4桁ずつ位が上がっていくからだ。日本語としては確かにわかりやすい。
だが、3桁ずつカンマを打つ欧米式が当たり前になっているので、欧米式に合わせた方がいいと思う。
2)人名は、その人物の賊する国の表記法の順序とする。
例:イギリス人やフランス人は「名・氏」の順。
日本人や中国人は「氏・名」の順。
これは、今や常識になっていると思う。
3)The United States of Americaは「アメリカ合州国」と書く。
これは、そうすべきかもしれないが、「連邦」という言葉もあるので、「アメリカ連邦」に統一する方がよりいいと思う。とはいえ「合衆国」で通用しているから難しい。
4)ローマ字は日本式(いわゆる訓令式)とし、ヘボン式を排す。
これは、ヘボン式にすべきと思う。ローマ字は、ヨーロッパ由来の言語を使う外国人にわかりやすくするべきで、日本人向けではないからだ。ヨーロッパ由来の言語を使う外国人にはsiはshiに聞こえるし、tiとchiは異なり、日本語のチは、chiに近いからだ。
5)外国語の分かち書き部分をカタカナ書きするときは中点(・)を排し、二重ハイフン(=)とする。
例 ×ホー・チ・ミン、ジョン・F・ケネディ、毛沢東
「、」は思想の最小単位を示すときに使うべきで、名詞を羅列するのに使うべきではない、という、著者の主張には、賛成する。
第1章 なぜ作文の「技術」か
国語の授業で、「、」や「。」の付け方や、段落の区分などの作文の「技術」は確かに習っていない。
その結果、我流になってしまうことが多い。社会人になって、ビジネス文書を書く際に慌てることになる。
本書が売れる理由でもある。
第2章 修飾する側とされる側
修飾・被修飾語は近い位置にする。
これはまさにその通り!!
第3章 修飾の順序
1)節を先に句を後にする
2)長い修飾語は前に、短い修飾語は後に
3)大状況=>小状況、重大=>重大でないものの順にする
4)親和度(なじみ)の強弱による配置転換
これだけでも注意すると文章がかなり変わると思う。
第4章 句読点のうちかた
1)長い修飾語が2つ以上ある時、その境界に点を打つ
2)語順が逆順の時に点を打つ
3)点=思想の最小単位
4)重文の境目
5)述語が先に来る倒置文
6)呼びかけ・応答・驚嘆の後
7)挿入句の前後
句点はどこに打つかわかりやすいが読点は難しい、とずっと思っていたし、そう思う人が多いだろう。
本多勝一氏は、このうち1)2)が大原則で、それ以下は、1)2)に含まれると言っている。
少しこじつけっぽいが、概ねその通りだと思う。
第5章 漢字とカナの真理
第6章 助詞の使い方
1)題目を表す係助詞「ハ」
2)対象(限定)係助詞「ハ」
アメリカ人に、「ハ」と「ガ」の違いを質問され、答えられなかった経験が私にはある。
高校生向けの国語便覧や本書を読むと、「ハ」は、「題目」や「限定」を表すそうだ。
「Aは、Bである」という文なら、「これから(CやDではなく)Aについて話しますよ、AはBですよ」というわけだ。
なるほど。アメリカ人に質問された時に、知っていたらよかった。
3)マデとマデニ
マデは期間を表す。マデニは時点を表す。
4)接続助詞の「ガ」
もともとは逆接の意味だが、「そして」という程度の使い方がある。
確かにそうだ。そういう使い方は、少なくとも私は使わないように意識したい。
5)並列の助詞
英語は、「クジラ・ウマ・サル and アザラシ」と最後の名詞の手前にandが入る。しかし、日本語は、「クジラやウマ・サル・アザラシ」と最初の名詞と2番目の名詞の間に助詞を入れるべきだ、というのが本多勝一氏の主張だ。理由は英語が前置詞的言語であるのに対し、日本語が後置詞的言語だからだ。
○出席したのは山田と中村・鈴木・高橋の4人だった。
×出席したのは山田・中村・鈴木と高橋の4人だった。
そうなのかもしれないが、慣れという感じもする。
第7章 段落
第8章 無神経な文章
1)紋切型
2)繰り返し
「ノダ」「ノデアル」「ノデス」は、1)前の文に(なぜならば~ノダ」と続くとき 2)強調・驚きの時に限定すべきだ。
文末が同じ言葉の繰り返しになるのは個人的に気になっていたので、参考になった。
3)自分が笑ってはいけない
4)体言止めの下品さ
反省!!気をつけます。
5)ルポルタージュの過去形
6)サボリ敬語
「あぶないですから白線まで下がってお待ちください。」どの駅でも見たり聞く文だ。
だが、これは文法上、おかしいのだ!!「え?何を言ってるの?」ととても驚いた。
「ダ」「デス」は、接続は次の三種に限られる。
①体言(名詞・数詞等)に
②「の」などの助詞に。
③未然形と仮定形だけが、動詞・形容詞および動詞型活用の助動詞・形容詞型活用の助動詞・特殊型活用の助動詞の、それぞれの連体形に。
「危ない」は、形容詞だ。
活用は、次の通りだ。
未然形「危なかろ」
連用形「危なかっ」「危なく」「危のう」
終止形「危ない」
連体形「危ない」
仮定形「危なけれ」
命令形 なし
③より、連体形の「危ない」に、「だ」「です」の未然形「だろ」「でしょ」や仮定形「なら」が接続するのだ。
つまり「危ないだろ(う)」や「危ないでしょ(う)」や「危ないなら(ば)」は正しいが、「危ないですから」は、「危ない」も「です」も終止形なので、文法上、正しくないのだ。
これには驚いた!!「彼女は美しいです。」「部屋が綺麗だ。」と言う表現には、何となく違和感を私も持ってはいた。しかし、こうして文法書をひっくり返すと、「私の違和感は正しかったのだ」と改めて思う。
本多勝一氏は文法は後からついてくるとわかっていて、「あぶないですから白線まで下がってお待ちください。」を「危険ですから・・・」「あぶのうございますから・・・」と言うべき所を、敬語をサボったものだと書いている。
「危険ですから・・・」はともかく「あぶのうございます・・・」はないだろう。これはこれから変わっていくのだろう。
第9章 リズムと文体
1)文章のリズム
音読することでリズムがよくわかる。
2)文豪たちの場合
多くの文豪達の小説の冒頭部分を並べている。
一つ一つ細かく解説していないが、ここまでの説明を読んだ後だと納得できる。
私が感想を書いた、第2章 修飾する側とされる側・第3章 修飾の順序・第4章 句読点のうちかた・第6章 助詞の使い方・
第8章 無神経な文章は、何度も読み直したいと思う。