もくじはこちら。
「太平洋戦争」のifを、アメリカの視点で、検討した書籍だ。
第1章、第2章は、「外郭要地攻略」作戦をせず、当初のとおり、絶対国防圏の中で防衛に専念すればよかった。
第3章で、日本に戦勝をもたらしうる戦略として、次の10項目をあげている。
1.「勝利病」を退ける
2. 効果的な縦深にわたる国家防衛圏を構築する
3. 日本商船を護衛する
4. 敵の戦略的爆撃を阻止する
5. 敵の補給路へ潜水艦攻撃を続ける
6. 敵に制空権を握らせない
7. 温存艦隊(fleet in being)を保持する
8. 敵にもっと沖縄型戦闘を強いる
9. 米軍の出撃計画を中断させ、遅らせる
10. 太平洋戦争の大終局を1946年から1947年まで引き延ばす
第4章では、商船の損耗が日本の降伏を早めた、という事実をあげている。
第5章では、日本の潜水艦を通商破壊線に使うべきだった、と主張している。
第6章では、「過剰な拡大路線を回避し、統合的な縦深国防圏を構築し、消耗戦を戦うことを断固拒否し、もっと効率的な戦いをすることによって、より長く生き延び、日本に対して文句なく圧倒的完全勝利を収めるという敵の目標は、その甚大な代価に値しないということをアメリカに思い知らせることにあった。」と主張する。
第7章では、日本のパイロット養成人数が少なすぎたことがあげられている。日米の航空機生産については、グラフを見たことがあるが、パイロット養成人数については、寡聞にして見たことがない。p.206では「年間約100名の新人パイロットを送り出したに過ぎなかった。」とある。これに対してアメリカは一ヶ月に8000人のパイロットを送り出していた、という。これが事実なのか他の資料で確認したい。
第8章は、日本陸軍が中国に多数の師団を置き、太平洋に師団を送らなかったことを批判している。
2. 効果的な縦深にわたる国家防衛圏を構築する
3. 日本商船を護衛する
4. 敵の戦略的爆撃を阻止する
5. 敵の補給路へ潜水艦攻撃を続ける
6. 敵に制空権を握らせない
7. 温存艦隊(fleet in being)を保持する
これらは著者の言うとおりだと思う。その結果、敗戦が1年か2年遅れるかもしれない。
10. 太平洋戦争の大終局を1946年から1947年まで引き延ばす
だが、その結果、どうなるかは、わからない。著者は、冷戦が始まり、もっと違った形の講和が結べただろう、ということだ。
原爆がどう使われるか。ソ連が参戦するだろう。冷戦が始まり、ソ連参戦が遅れるだろうか。
他のifを研究した本に比べれば、重要かつ本質的なifをとりあげている、と思う。
訳者の茂木弘道氏が随所に、訳注を入れて、著者の間違いを指摘したり、自身の意見を述べており、本書は二人の著作と言っていい。