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播田安弘『日本史サイエンス弐』講談社ブルーバックス(2022/05/20)

 

同じ著者の『日本史サイエンス』の第2弾だ。

 

第1弾はこちらを参照。

haruichiban0707-books.hatenadiary.com

本書の目次は次のとおりだ。

第1章 邪馬台国はどこにあったか

第2章 秀吉は亀甲船に敗れたのか

第3章 日本海海戦でなぜ完勝できたのか

終章 「翡翠」から「大和」へ

 

第1章では、日本の翡翠朝鮮半島や大陸の鉄の交換に船が使われたこと、神話と日食の関係、古代船による実験航海、『魏志倭人伝』の検証、について書いている。

著者は、天照大神の神話が皆既日食を表現しものであり、3世紀の皆既日食を調べ、北九州説を支持している。船の専門家だけあって、『魏志倭人伝』の記述検証は、興味深い。『魏志倭人伝』の記述どおりだと日本を通り抜け、太平洋の彼方になってしまうことは、従来、言われてきた。著者は、船や船員の調達にかかった期間や風待ちや波待ちの期間も含めて記述したのではないか、と述べている。確かに後の時代の『土佐日記』でもかなり時間がかかっている。

 

第2章では、豊臣秀吉朝鮮出兵の目的について、まず検討している。(1)鶴松死亡説 (2)功名心説 (3)領土拡張説 (4)東亜細亜交易説 (5)信長の野望継承説 著者はこれらの説には説得力がない、と断じ、スペイン対抗説が最も説得力がある、と書いている。

ここまでは他の人の説を説明している。

亀甲船のCGは、船の専門家らしくていい。また小西行長加藤清正の進み方が速すぎることに疑問を持っており、日韓協力して謎の解明にあたることが大事と結ぶ。

 

第3章は、既に他の誰かが言ったことを解説しているだけだと思った。東郷ターンや丁字戦法が日本海海戦勝利の秘訣ではない。

バルチック艦隊は、次のような状況だった。

大量の石炭を運搬しなければならなかった

日英同盟のために良質な石炭を補給できなかった

長い遠征や慣れない気候・風土で、乗員の健康や士気が落ちていた

長い遠征で、艦の整備ができず、フジツボなどが付着し、速度を出せなかった

 

上については、私はどこで見たか読んだかすっかり忘れていたが、いずれも知っていた。

 

本書の記載は細かい点で「?」と思う点がある。

参考文献がないのもどうかと思う。

しかし、これまで文系が、学習・研究するものと思われてきた歴史では、理系、特に技術者の観点から、見ていくことは、意義深いものがある、と思う。

そういう意味では、本書が文理統合した歴史学の探究の一つのきっかけになると思う。