軍事行動を左右するが、ほとんどの人が一顧だにしなかったのが、兵站である。
特に日本軍が軽視していたのは有名である。
本書では、ヨーロッパの陸戦における兵站の歴史を、ナポレオン戦争以前から、ノルマンディー戦まで、詳細に扱っている。
戦争の勝利が目的ではなく、とにかく兵士を食べさせることによって、戦場での移動の方向が変わっていたことには驚いた。
独ソ戦やロンメルのアフリカ戦線にしても、ドイツ軍の補給が不十分だったことは知っていたが、意外と補給を軽視していたことは驚く。
一方、ノルマンディー戦では、あまりに詳細に計画を立てたために、補給の段取りが崩れてしまったことに驚く。もともと補給する物資が無かった日本軍からするとあまりに贅沢な悩みではあるが・・・。
本書と同じ事を日本の戦史や太平洋戦争での補給戦と比較して調べてみると興味深い。
日本の戦国時代では、豊臣秀吉が補給を重視した武将としてはナンバーワンだろう。彼の本能寺の変直後の行軍は、おそらく当時世界最高水準の軍事行軍だったのではないだろうか。
逆に、ノモンハン戦やガダルカナル戦やインパール作戦における補給戦は、当時世界最悪というか、史上最悪の補給戦ではないだろうか。
なお、本書の内容は、巻末に付されている石津朋之氏の解説論文を読むと全てわかる。この解説論文が本書を短くよくまとめている。